次を書き終わってからにしようと思いましたが、更に一ヶ月近く空いちゃいそうだったんで。
「なっ……」
「へっ……」
それは突然のことだった。
ヒルダの持ち物の検査を行っているアクラと、それに付き添っていたバットンが、顔を合わせる。
二人同時に感知したのだ。
とんでもない魔力を持ったものがダンジョンの中へ侵入してきたのを。
「あ〜こりゃヤバそうだな。俺ぐらいしか対応出来ないぞ……」
侵入口はヒルダが侵入してきた所。
転送トラップは止めといたはずだが、場所に当たりを付けられたのか利用されたようだ。
魔法技術もあり、ゲルニカでは全く歯が立たないであろう魔力。
それならば、アクラがやるしかない。
英雄には魔王しか戦えないのだから。
「アクラさま〜……」
「そんな心配そうな顔すんな。俺はまだ負けないさ」
そう言ってバットンの頭を一撫でしたアクラは転移する。
魔王城の中ならば魔王であるアクラは自由に転移出来るのだ。
魔王としてはどうかとは思うが、ダンジョンに無駄な被害が出る前にラスボスとして登場させて貰うつもりだった。
「…………」
「あれが……?」
アクラが疑問に思うのも無理はない。
膨大は魔力を纏う存在の一つ前の部屋に転移したアクラが見たのは一人の少女だったのだ。
身長は元々大きくないアクラより更に低く、140cmないくらいだろう。
巨大な魔法使いの帽子から見えるシルバーの髪は肩までかかるくらいの長さで、サラリとした綺麗な髪。
瞳はアメジストのような紫で、肌は白いが頬だけがほんのりと赤く染まっている。
整った目鼻立ちだが幼さが残り、まだ成人前ということがわかる。
しかし彼女には何よりの特徴があった。
黒いマントを羽織っているのだが、中に見える白いローブの胸元が凄いのだ。
低い身長ながらGカップはある巨乳、いや爆乳は重力に逆らってツンと上を向いているのだ。
そんなロケット爆乳を持つ少女だが、感じる魔力は本物なため、この少女で間違いはないのだろう。
「やぁ侵入者さん。凄い魔力だねぇ」
「…………」
少しでも情報が欲しいため、アクラは軽い口調で少女に話しかける。
しかし少女は頭に被った魔法使いの帽子の隙間から無表情にアクラを見ているだけだ。
「だんまりね……じゃあせめて名前くらい教えて欲しいな」
「……ルナ」
「ルナね。ふふっ可愛い名前じゃないか」
「……」
「どうしたんだい? 可愛い名前じゃないか。俺はアクラって言うんだよ。よろしく頼むよルナ」
「……あなたは一体、なに」
あまりに軽口の過ぎるアクラに無表情ながら少女、いやルナが困惑しているのが分かる。
表情にあまり出ないだけで無感情というわけではないらしい。
「なにって……きみが倒しに来た男さ」
「……魔王?」
「そう。初めまして、勇者よ」
「……!」
そこでアクラは魔力を解放する。
黒いローブをはためかせ、両手を水平に広げると、今までこんなものを抑えていたのかと言いたくなる暗黒の魔力が部屋全体に広がっていく。
「我が名は魔王アクラ。この世に混沌をもたらすもの。勇者が倒すべき悪なるモノ。さぁかかってくるがよい」
魔王たる威圧感。
魔王としての言葉。
そして魔王としての圧倒的な力。
それら全てを持ってして、アクラはルナに自らを示し。
「もはや再び挑まぬよう、そなたの子宮を犯し尽くしてくれるわっ!」
「……え?」
壮大に決め台詞を言い放ったつもりのアクラだったが、その言葉を聞いたルナはキョトンとしている。
アクラ経由で映像を見ているバットンやゲルニカも頭を抱えているだろう。
そう、これがアクラの中の魔王像なのだ。
「ん?どしたん?」
「……理解、不能……!」
アクラの意味不明な言葉をからかいと判断したのか、ルナの身体から膨大な魔力が溢れ出す。
ルナの使う氷魔法の冷気によるものか、空気が凍てつき、辺りの温度が下がっていく。
「コキュートス!」
「特級魔法!?」
最上位魔法の更に上。
魔力に優れる魔族であっても使えるものは限られる魔法。
氷の精霊の力を作り出し、絶対零度にまで下げられた空間を生み出す魔法だ。
「くっ……」
部屋全体を覆う極寒の世界。
術者であるルナ以外全てが凍りついていく。
そしてそれは本来高い魔法耐性を持つアクラとて例外ではない。
「あ〜これはマズイか……も……」
「……終わり!」
アクラの全身が氷漬けにされていく。
そしてコキュートスが切れた時、ルナ以外に動くものは全くいなかった。
部屋の中、いや外まで余波で完全に凍りついてしまっている。
「っ……はぁ……はぁ……」
そのルナも魔力の大量消費により、凍りついた床に膝を着く。
アクラが驚くほど魔力量でも特級魔法の負担は大きいのだ。
「でも……これ、で……」
「これで……俺の勝ちだねルナ」
「っ!?」
勝利を確信したルナの背後から声がかかる。
その声は先程聞いたばかりの声。
そして二度と聞くことはないはずの声。
「なん、で……」
ルナの無表情が崩れ、信じられないというばかりの表情を浮かべる。
それもそのはず、今ルナの背後にいるのはアクラだ。
しかし目の前にも氷漬けになったアクラが居るのだ。
幻術などの類いではなかったのはきちんと確認したので、ルナの困惑は相当の物だ。
「魔力があるから本物。間違ってはいないよ。ただ俺は……2つに分かれられるんだ」
「分身……」
「人間が使うのとは少し違うけどね」
頭の回転が良いのか、ルナはすぐに答えを出す。
忍などのスキルの中には己の分身を作り出すスキルもある。
それすらも見破ることはルナには容易だが、魔族
が同じようなスキルを使うなど聞いたこともないため、考えもしなかった。
「さっきの俺と今の俺。どちらも本物の俺だよ。きみが一発にかけてくれて良かった。そうじゃなかったら……結果は逆だっただろうからね」
「う……ぁ……」
その言葉を最後にルナの意識は途切れた。
彼女自身は殺されたと判断したと思うが、アクラには勿論そんなつもりはなく、意識を刈り取っただけだ。
流石に強大な魔力を持つとはいえ、特級魔法を無詠唱で撃った後に防御する魔力はなかったようで、アクラは一安心する。
「あ〜……危なかった」
結果だけ見ればアクラは無傷で強大な魔力を持つルナを楽勝に捕獲した……ように見えるが、実際には全く余裕などありはしなかった。
分身を使わずにコキュートスが直撃していれば、アクラは今頃氷漬けになっていただろうし、上手く騙せるように魔力の殆どを分身の方に回したためにアクラ自身も魔力が殆どない状態なのだ。
ルナがもし余力を残していたら、アクラの負けは濃厚だっただろう。
だが、そこまでの危険を犯しただけの価値はある。
「さて、どうやって転送トラップを突き止めたとか、色々聞かなきゃな。それに……ククッ」
情報と極上の獲物が同時に手に入ったことに機嫌良く笑いながら、アクラはルナを背負う。
爆乳の感触が味わいたいのもあるが、転移する魔力が残っていないので長い距離を徒歩で移動しなきゃならないのだ。負担は少ないに限る。
結局1時間近くかけてアクラは自室に戻ったが、コキュートス以降、アクラ達の様子が分からなかったため、本当に心配していたバットンの怒りのキックがアクラを襲ったのは言うまでもない。
「…………」
それからどれだけ時間が経ったか、ルナが目を覚ました時には状況は完全に詰んていた。
黒マントは何故かついたままだが、それ以外の衣服は帽子も含めて奪われており、その爆乳も全く毛の生えていない美しい裸体も丸出しであり、手には魔力封じの枷が付けられている。
その枷はルナの背後の壁から鎖で繋がられており、強制的にバンザイの姿勢を取らされていた。
足は空中に浮かぶ紋章のようなもので左右に大きく開かれて固定されており、毛の全く生えていない秘所が丸出しになっている。
恥ずかしくも解けない拘束。
羞恥心は薄めの彼女だが、この拘束は流石に恥ずかしく白い肌を軽く朱に染めながらも気絶しているフリを実行していた。
既に詰んでいても簡単に好き勝手されるつもりはない。
魔王を倒す。それだけは諦めるつもりはない。
「起きてるんだろう?ルナ、メイル」
「…………」
名乗った覚えのない自らのフルネームを言われ、反応しそうになるがぐっと堪える。
こちらが反応するのを待っている可能性もあるからだ。
「まさか先代勇者パーティの一人、シンシア・メイルの家が宮廷魔術師になっていたとは……きみはその娘、けどちょっと訳ありみたいだね」
「…………」
「シンシア・メイルは国家反逆罪で夫と共に処刑されている。ただ本当は幽閉されたってわけだ。先祖返りのハイエルフであるシンシアに権力が渡るのを嫌がったって所かな。夫は本当に処刑されたみたいだけどね」
「…………」
「きみはハーフエルフみたいだし……何かあった時の捨て駒かな?あれだけの魔力があるのにそんな扱いってことは雷帝の適正がないからかも?」
「……っ」
(ダメ……これはゆさぶり……お母さん……)
アクラのゆさぶりだと分かっていながらも次々とルナの人生の辛い点を言い当てられ、涙が一筋流れてしまう。
そう、アクラの言う通り、ルナはエルフの魔術士の名門メイル家に先祖返りで生まれたハイエルフの女、シンシア・メイルの娘である。
母は、彼女が生まれた時から幽閉されており、そんな母の愛情を受けて幼少期は育った。
しかし彼女はメイル家の通称である雷帝と呼ばれる強大な雷魔法の適性が全くなく、しかも夫が人間であったためにハーフエルフとして生まれてしまい、程なくして母からも離され、使い捨ての道具として育てられ始めた。
だが、ルナは諦めなかった。
手柄を立てればきっと叔父たちも認めてくれるはず。
そして考えたのが、母が言っていたいずれ現れるであろう次代の魔王の単独討伐だ。
魔王の情報を事細かく調べたルナは、都市伝説になっている不思議なダンジョンに目を付けた。
魔王の仕業の可能性がある。
ただそれだけで一部付き合いのあった冒険者に追跡の魔法を施した腕輪を渡していたのだ。
焦りと、一部の諦めが彼女に強引な手を取らせ、結果的に敗北してしまった。
これが、ルナの真実。そしてアクラが調べた内容でもあった。
「俺に殺されたかったのかい?母親を助けるのを諦めてさ」
「……貴方に、何が分かるん、です」
諦める。その言葉に我慢しきれなくなったルナが目を開ける。
育ちのせいか感情の起伏があまり出せないルナでもその瞳は憤怒を秘めている。
「私、が……どけだけ、努力したと……何をやっても、認めて、貰えない……お母さんに、会わせて、もくれ、ない……でも、魔王なら……世界の、危機、なら……」
「手柄を奪われてお役目ごめんだろうね。きみのお母さんがそうだったんだから」
「っ……な、ら、わたしは……どう、したら……よかった……死にたい……もう、いや……お母さんに、会いたい……」
元々喋るのが得意ではないのと、嗚咽混じりなのもあってルナの言葉は非常に辿々しいものだ。
しかしそこに秘められた絶望や怒りをきちんとアクラは聞いていた。
流れ出る涙を流しながらも何処までも無表情しか作れない彼女の言葉をきちんと聞いているのだ。
「ならさ、ルナ……きみ、魔族にならないかい?」
「えっ……?」
「それが良いよ。きみが魔族になって俺に尽くしてくれたらお母さんも絶対助けてあげる。そのエッチでいやらしい身体で俺にいっぱい奉仕してくれたら、きみをいっぱい可愛がって愛してあげる」
「…………」
「良いじゃんメイル家なんて。家名なんて俺のないし……じゃあ今日は月が出ていないみたいだからノームーン家にしようか。ルナを俺の奥さんにしてルナ・ノームーンにしてあげるよ。そしたらもうメイル家なんて関係ないからね」
「……ぷっ」
先ほどまでの真剣にルナのトラウマを抉ってきたのは何だったのかと思うアクラの滅茶苦茶な理論。
ルナが今まで会ってきた人間には絶対に言わないであろう、エッチで滅茶苦茶な理論を自信満々に語る。
謎の名乗りもそうだったが、ルナが思っているより魔王という存在は、相当変らしい。
暫く唖然としてたルナだが、それを感じ取ると思わず吹き出してしまう。
「滅茶苦茶……ですよ、そんなの……」
そして幼少期以来、いつ最後だったか分からないほど浮かべていなかった笑顔を思わず浮かべていた。
真面目な話をしているが、ルナはおっぴろげ拘束中である。