セックス次元のTSデュエリスト 作:エロデュエル良い
三月生まれで歳は十六、家族構成は遅くまで家に帰ってこない両親と既に独り立ちした姉が一人。
教師からの評価と学校の成績は中の中くらい。素行が悪いわけでもなく、それなりに友人もいる。
好奇心は旺盛な方で、何事にも挑戦するタイプではあるが要領はそれほど良くない。
とある一点を除けば特筆することがほとんどない男子生徒。
そんな僕、
何かとスリリングな事が好きで、その上極度の負けず嫌いだった僕にとって、デッキひとつあれば面倒な用意が必要無く手軽であり、プレイする人口自体も多いカードゲームはもはや学生時代のコミュニケーションツールみたいになっていた。
先述したように別に学校で友達がいなかったとか、断じてそういうわけではない。ただ単に、僕が所属する学校でのコミュニティと比べてカードゲームでの繋がりの方が多かったというだけの話だ。強いて言えば、もうひとつの趣味である読書で繋がっていた友人もまあそれなりにいたくらいだろうか。
何にせよ、僕はカードゲーム……特にデュエルモンスターズにがっつりとハマっていた。
どうしても欲しいという物が無かったら基本的にお年玉は全部パックの箱買いやストラクチャーデッキの購入に注ぎ込んでいたし、時にはお昼ご飯代や交通費をケチってまでカードをシングルで買い漁っていた。人生において自分の意思で使ってきたお金の内、その半分以上をデュエルモンスターズに使っていたのは間違いない。
このレベルとなるともう中毒と言っても差し支えなかったかもしれない。けれども、僕はデュエルモンスターズを心から楽しんでいた。
そんな折、僕の人生に大きな転機が訪れた。
その日の放課後もいつものように、カードショップに行ってストレージでも漁ろうと往路を急いでいたのだ。
帰宅して制服から着替えることも無く、教科書が詰められた通学カバンにデッキを一つ紛れさせて、まるでカードゲームを題材にしたアニメのキャラクターのよう。そろそろ受験が話題に上がり始める頃だったのもあって、この時分の僕はありふれた逃避から一層カードゲームに熱を出していた。
近道をしようと、狭いのに妙に車の往来が盛んな道を歩いていた。
特に何も考えていなかったと思う。もしくは新しいデッキの構築について考えていたかも。
ふと横断歩道に目が行った。近くには公園があって子供達が遊んでいる声がなんだか印象的だった。いくらか見知った顔もあった気がする。
花壇があるくらいで柵も何も無くて、周りを囲う道路は車通りが多い。いろいろと問題視されているらしい公園だけど、僕も小さい時は遊んでいたし今まで事故も無かったから大袈裟だと内心嘲っていた。
信号待ちで暫く待っていたら、サッカーボールが道路に転がっていくのが目に入った。
ああ、勿体ない。車にぶつかって使い物にならなくなるところまで予測して、次の瞬間、僕は己が目を疑った。
僕よりも十歳近く年下であろう少年がボールを追い掛けて道路に飛び出して行ったではないか。子供だし視野が狭いのは仕方が無いことだが、赤信号かどうかくらい確認しろよなと他人事のように思っていた。
子供が小さくて見えていないのか、減速する気配は全くない。あのままではあの子は轢かれてしまうだろう。周りに助けに入れそうな人間はいない。
ただ一人、僕を除いては。
何ともテンプレート。異世界転生モノか? ネット小説もまあまあ読み漁っていた僕は妙に冷静な心境でそんなことを考える。
でも、僕には関係の無いことだ。これ以上見たくない。でも目を瞑るには遅い。気が付かなかったことにならないだろうか。でも気が付いてしまった。もう無理だろう。でもまだ手遅れじゃない。
これから引き起こされる大惨事について考えると、冷静で怠慢な僕と、今更お人好しぶる僕が頭の中でせめぎ合っていた。
きっと、僕はこのまま動けないだろう。
冷めた僕の方が強いはずだ。しようもないことに。
────気が付けば、僕は少年を追って道路に飛び出していた。
何をしているんだろう。これではまるで本当に異世界転生モノの主人公ではないか。
僕ってそんなやつだったか? どうせ一歩を踏み出すこともできず精々が野次馬をする程度で、後々胸糞悪くなって後悔するような、そういう人間だと思っていたのに。
分からない。分からないけど、ここでやっぱりやめたと言うのはダサい気がした。もうやるしかない。
そう思ったら後は簡単だった。
力強く一歩を踏み出して、そのまま少年を反対側の歩道まで押し飛ばせば良い。一車線の狭い道路だ、勢いがあれば少年くらいの体躯なら余裕だろう。どうせ小説とかだと、こういう時には火事場の馬鹿力みたいなものが発揮されるんだ。後はなるようになる。
諦観とは違う。自暴自棄とも違った。なんだろう。
まあ、もう死ぬんだし、なんでも良いか。
信じられないくらいの衝撃が僕の全身に襲いかかる。地面に打ち付けられて、何回かバウンドしたらしい。
霞む視界、ぼやける感覚。血の味がする。血塗れなのか、それとも中身が大変なことになっているのか。幸いなことに、痛みはほとんど感じない。
しかし、僕がこのまま死ぬということだけは分かった。
こういう時、どうすれば良いのだろうか。取り敢えず、先ずはお世話になった人に感謝でもしておこうか。
お父さん、お母さん、姉、友人共、カードショップの顔見知りの人達、皆ありがとう、そしてさようなら。
……そう言えば、来週は予約していた新パックの発売日だったなぁ。
なんて、なんとも僕らしいことを思いながら、僕は意識を失った。
□
「───あのまま死んだ方がマシでしたね」
僕の物とは未だに信じられない、鈴の音を転がすような可憐な声が零れた。
さらりときめ細やかな桃色の髪の毛が視界の端に揺れる。次いでに白の簡素なワンピースの胸元を押し上げる
「……君の動揺も分かる。けれども、わしの話を聞いて欲しい」
苛立たしげに靴を鳴らしながら窓越しに外を見詰める僕の後ろで、ソファに座った物腰穏やかな中年男が宥めようとしてくる。
だが、そんなの知ったことではない。僕は今、人生最大と言っても過言ではないような憤りに全身を焦がされているのだ。
鏡に映る見知った面影を残した
まるで、僕の気持ちを代弁するように。
結論から言えば、僕は生きていた。
いや
男の身体を失い、忌々しいことにこの女の身体を得て僕は蘇生されたのだ。この異世界に。信じ難い話だが、僕の現状を考えれば信じるしかあるまい。
中年男、青羽琉が言うには元々僕のことを腕の立つ
一人になったところで誘拐しようとした矢先、僕が子供を庇い車に轢かれて危うく事故死しそうになった為に、見て見ぬふりをできなかったらしいエージェントが治療の次いでに誘拐という本来の目的を達成してくれやがったのだとか。
まあ、確かに顔立ちや骨格は中性的な方だったし、声も今程では無いが高かったのは認める。女性と間違われたこともそれなりにはあるし。
それにあのままでは確実に死んでいたところを助けてくれた事にも一応の感謝はしている。一応。
だが、流石に女だと勘違いされてストーカーされた上、死にかけたところを誘拐された挙句、まるでおまけとばかりに性転換させられたのはキレて良いと思うのだ。
しかも最悪なことに、死に体の人間をほぼ別人に変えて怪我や病気自体を無かったことにしてしまうこのトンデモ医療技術はまだ治験が始まったばかりの技術であり、内容が内容ゆえに現時点では秘匿されていて世間的な認知度もほとんど無いとか。僕の場合は恐らくその副作用なのだと言うが、どういうわけか変わってしまった性別を元に戻すことは今の技術では不可能らしい。
本当なら必ず事前に承諾を得なくてはならないのだが、急を要する容態であった為に僕の承諾を得ることなくこの治療に踏み切ってしまったのだと言う。
はっきり言おう、クソである。この生における全ての恥と引き換えに命を拾ったようなものだ。
「分かった。では、こうしよう」
「……なんですか?」
「特別なデュエルに出て欲しい。もちろんデッキは君の物を使ってもらって構わない。ファイトマネーはちゃんと出す」
特別なデュエルと聞いて、怒りと不平不満で荒れ狂っていた僕の心が、漣が立つ程度にまで治まった。
どうやら僕はこんな状況に置かれてもデュエルという単語に惹かれてしまうらしい。
さて、特別なデュエルとは言うが僕のことを腕の立つ決闘者だと見込んで云々の話と関係があるのだろうか。
やっと話を聞く体勢になった僕を見て、青羽琉は胸を撫で下ろしつつ掻い摘んで事情を説明し始めた。
「私達の次元では、デュエルモンスターズが最大の娯楽として流行しているんだ。プロの決闘者も存在していて、生計を立てている人間も少なくない」
「……っ!?」
なん……だと……???
僕はあまりにも衝撃的な事実に暫しの間呆然とする他なかった。次元だとか、よく分からない単語も出てきたが重要なのはそこでは無い。
デュエルモンスターズが最大の娯楽として流行している。しかも、プロの決闘者なるものが存在していて、それで食って行けているという点。
だって、つまりそれは僕にとってあまりにも都合の良過ぎる世界ではないか。
決闘者であることが、娯楽の面どころか生活の面において一種の人権となっているということだろう。他に趣味のある人間なら知らないが、デュエルモンスターズ以外に読書しか趣味の無かったような僕にとっては何よりもそれが重要だ。
「君のいた次元と、私達の次元は別世界そのものだと思ってくれて良い。君の次元には無かったであろう先進的な技術を君は体験しているはずだよ」
「……」
確かに、僕はその先進的な技術とやらを身を持って体験している。
こんな技術は僕の元々居た次元とやらには無かった。他にも、僕が目覚めたSFチックなカプセルや、この部屋に来るまでの道中にあった近未来的な設備などなど、僕の元居た次元との差異を見る機会は幾度かあった。
それらが全て僕の夢か、やたらと大掛かりで無意味なドッキリの仕掛けでも無い限りは、彼の話を信じるのが妥当だろう。
「君を女決闘者だと勘違いしていたのは謝る。しかし、我々には君のような腕の立つ決闘者で、尚且つ見目麗しい女性が必要だったのだ」
「……見目麗しいと女性は余計です」
「試合に出てくれたなら、後は君の望む通りにしよう。君を元の次元に帰すし、元の性別に戻れるよう最大限サポートする」
無視するなよ。
……でも、なんとなく事情は把握した。性転換したことにはまだまだいろいろと物申したいところだが、一先ずはそれも飲み込もう。
試合に出てデュエルをしただけでお金が貰えて、しかもちゃんと元の世界に元の性別で帰してくれるのだ。どうせ死ぬところだったのだから、そう考えれば悪くはない話である。
きっとこの時の僕は死んだはずなのに性別が変わって生存していたことへのショックや、腕の立つ決闘者だと何度も煽てられたことなどが重なって正常な判断力を失っていたのだ。間違いなく。
「頼む、特別なデュエルに出てくれないか?」
「……」
だから、その申し出に、僕は────
「……分かりました」
「おお、ありがとう! 君ならそう言ってくれると思っていたよ!」
確と頷いて返した。
この後、僕の身にどのような出来事が降り掛かるとも知らずに。
――次回予告――
え、次回予告?
あー、うん。はじめまして、小鳥遊累和ことルイナです。
いきなり死にかけたり、変な世界に拉致されたり、性転換させられたりと大変ですが元気です。多分。
そんなことより次回は念願の初デュエル。僕の世界には無かった技術で展開されるデュエルモンスターズに、正直期待はしています。とても。
……え? エロデュエル? ゴブリン? 衣服破壊? 愛撫? 巨根で処女喪失に無様イキ? 挙句妊娠出産……?
え、ちょ、ちょっと待って、え?
次回「エロデュエルの洗礼! ルイナVSゴブリン小島」
う、嘘ですよね……? ぼ、僕、元男ですよ?