※この作品はR-18です。

タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。   作:Marchhatter

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109 河を渡って木陰に憩う(2)(志)

 

 紫藤実父たちを救出した日の午後。

 国領はすでに一足先に出ていったし。

 紫藤もいったん自宅に帰った。その後、母の入院してる病院に行くそうだ。

 僕はもちろん、紫藤を家まで自転車運搬要員を兼ねて送って行ったよ。買い物も行けるかどうかわからないしな、食料品とかもある程度持たせた。

 自宅に紫藤弟がいたら、実父との面会を促そうかと思ってたけど、空振りに終わる。

 友達と遊びに行くという紫藤弟の書置きがある。まあ少しは元気が回復したんだろうな。

 紫藤に、実父のことについて機会を見て伝えてくれるように頼んだ。

 

 ちなみにこってりと絞られたらしい紫藤実父(マコトさん)と紫藤とは、まだ少しぎこちないながらも親しみを取り戻しつつあるようにみえた。

 マコトさんはしばらくは潜伏してないといけないから、経済的な支えは期待すべくもない。だけど、少なくとも精神的支柱にはなってくれるだろう。いざというときに、紫藤姉弟に逃げ場所があるというだけでも十分だ。何しろ、今は母が意識不明でDV継父しか保護者がいない状態だもんな。いざというとき家出できる先があるだけでも違うだろう。

 もっとも。マコトさんからはいろいろ頼りない印象を受ける。

 僕が言うのもなんだけど、少し要領悪いタイプ。うん、同類嫌悪まではいかないけど、なんかマコトさんのときどきやらかすへまをみると「ああっ、――」って自分も顔が赤くなっちゃう感じ。

 自分の欠点を少し拡大して見せられてるような。

 紫藤の反応をみると、マコトさんのことは継父より好きみたいだ。ある意味、ダメ男なんだけどな。

 うん?

 紫藤が僕を好きと言ってくれてるのは、もしかするとこのダメ親父と頼りなさが似てるからか?

 うわあっ。

 僕のスペックの低さはどうしようもないけど、まあ2倍の経験あるし。クズ男なりに頼られる存在に脱皮したいものだ。

 

 ナギさん母子とマコトさんはしばらくここで隠遁生活。二人には、何か在宅でできる仕事とか、住み込みの仕事が見つからないかと考えてる。

 住み込みの仕事の方は、ちょっと近すぎると危険だから、少し離れた土地で。

 

 少し前から、元さん経由で無理やりなルートで顧問というかコンサルティング(笑)のまねごとをしようとしている。うん、この時代はまだパソコン通信の方がまだしも知られてるけど、そのうち主流となるインターネットのウェブサイトを作ってみたりとか、PCなどOA機器導入のサポートとか。

 そう、父親のPCを手伝ってて思ったんだ。この時代、世間の人はまだPCの使い方自体、あんまりわかってない。

 なんたってほとんどの文書はワープロ専用機で作るし、情報はフロッピーでやりとり。

 PCを使うにしても、せいぜい表計算ソフトで集計表作ってる程度。マクロなんて存在もしらない。

 インターネットも、使ってる人は「おたく」というイメージ(そう、この時期の「おたく」ってびっくりするほどイメージ悪いんだ。悪口になるくらい)で、ほとんど認知されてない。

 

 いや、僕も詳しいわけじゃない。ただ、ここらのことは、社内のシステム部門にいたことがあるから少しだけ土地勘がある。もっともそんな高度な知識はないし、本当のプロに比べると貧弱なものなんだろうけどね。

 元さんの探偵事務所にも勧めてPCを導入してもらって、元さんの探偵事務所の宣伝、兼、僕の事業(?)の宣伝を兼ねてウェブサイトも無料で作ってあげることになってる。

 実用性については半信半疑だったけど、絶対、そのうちイエローページじゃなくてこっちが主流になるって説得したよ。

 とりあえずは数ページだけ、アクセス先と相談・受注の流れみたいなのを入れるだけ。そのうち、Blog形式に発展させてもいいかもしれない。テンプレがないのが苦しいけど、何とか作ろう。

 

 この似非オフィスオートメーション事業を通じて職が探せたらな、と思っているが、やや期待薄かもしれない。

 顧問先(笑)は、まだ元さんのところと、元さんを通じて声を掛けてもらった、もう一社だけ。2つだけだ。

 あ、父を含めたら3つかな。

 こっちも軌道に乗ったら、調布とか紫藤に手伝ってもらいたいな。あいつらの方が、多分僕より地頭はいいし。

 

 ―――――

 

 紫藤を送って、また日蔭谷に戻ってきた後。

 調布とバイクで国道沿いのスーパーで食料品の買い出しをした。かなり多めに。

 この日用品の買い出しとかも、しばらくは顔バレしないように僕たちがしないといけないが、毎日来れるか怪しいからな。

 お米とみそと乾物関係は揃えたから、ある程度は籠城できる。肉や魚、野菜とかの生鮮食品だよね、問題は。

 これは近くに店はないので、歩きだと国道沿いまで出ないといけない。やっかいなことに冷蔵庫はあまり大きくないので、買いだめはあまりできない。

 

 国道沿いのスーパー。カートを僕が押し、調布に野菜や調味料とかその他の雑貨とかを入れてもらう。

 なんだか以前感じた多幸感がまたもふわふわと生じてしまう。調布と新婚生活を送ってるみたいだ、という。

 もっとも調布より、どちらかというと僕の方が自炊生活に一日の長がある。

 だから、実際の買い物では、調布にいろいろと指図する感じになってる。

 なんとなく悔しげな波動を、調布の方から感じる。

 いや、調布はすごいんだから、こんなので僕と張り合わなくても。

 調布は僕が親と暮らしてると思ってるだろうし、まあそれはそうなんだけどさ。本当は20年近いひとり暮らし歴があるんだ。

 ひとり暮らしして3年もすれば嫌でも覚えるよ、生活必需品の脳内リストアップなんて。

 

 いつまでマコトさんたちが引きこもっていればいいか、というのが難問だ。いつかは社会に復帰しないといけないが、この地では無理なんじゃないか、というのが僕の読みだ。

 新しい土地に行って、仕事をみつけてやりなおすとして。

 二人とも保証人とかろくに準備できないし、つまり部屋も借りられない。中々ハードル高い。

 かといって、親族に救援を求めるのは危険だし、だいたい無理だと思う。

 飯場側が本気で逃げ出した労務者たちを追跡して捕獲しようと思ったら、把握してる縁者などを監視するかもしれない。もちろん、ナギさんの方についても同様だ。

 そこまで組織がやるか、やれるかわからない。マコトさんは、親族などについては一切飯場に伝えていないそうだけど、やや珍しい名前だからな。一応は注意しておかねば。

 ナギさんも家族の縁は切れている、というか家族丸ごと没落して離散してしまっている。ナギさんもマコトさんも、頼れる親戚はいない。だから、そちら方面の追跡を受けても、まあ居場所は割れないだろう。

 ただ逆にいえば、なかなかやり直すにしても糸口がない。

 

 それはともかく。

 さしあたりは「道端でぱったり」というパターンだろうか、気にしないといけないのは。

 多賀島も中核市でかなりの人口がいるから、繁華街に行ったりしない限りは大丈夫だとは思うんだけどな。でもこれが一番怖い。

 しばらくは引きこもり生活を要請せざるを得ない。買い物とかも、僕とか紫藤とかが代行するしかないか。

 運動不足に気を付けないとな。

 

 買い物を済ませると、僕と調布は後のことをナギさんとマコトさんに任せて、バイクを返し、久しぶりの自宅に帰ることにした。

 ナギさんとたっくんとマコトさんが並んで見送ってくれた。なんとなく夫婦の風情が漂う。

 うん?

 こっちがくっついちゃったら、どうしようか?

 だって体の関係もあるしな、お互いにそれほどイヤそうではない。

 下手をするとこっちが発展したりして。

 ううむ、漠然と、紫藤母が回復したら紫藤実父とよりを戻す感じになるかと思ってたんだけどな。

 まあ、まだ心配するのは早いだろう。

 

 ―――――

 

 その後。

 調布と僕は途中で買った洋菓子を手土産に、満タンにしたバイクをカゴちゃんなる子に返した。

 なかなかいいバイクだった。ちゃんと整備されてるし。正直、少し愛着がわきかけてた。

 バイクを返すと、こんなに早くていいん?とカゴちゃんは言っていたが、手土産の洋菓子には喜んでいたようだった。

 上手くいったん?と調布ににまにましながら言ってた。そこはかとなく赤くなってた調布がかわいい。

 僕は相変わらず路傍の石だったけどね。一言、「やるやん」って言われたけど。

 

 また下町の路地を抜けて、調布を自宅まで送って行く。

 少し雲が出始めてる。夜は降るかもな。

 蒸し暑い通りを並んで歩く。ヤンキー風な日焼けした僕たちと同じくらいの年恰好の2人乗り自転車が走り抜ける。後ろの粗暴そうな少年がちらっとこちらを伺い見ていたが、特にいちゃもんをつけては来なかった。

 選挙カーが候補者のアピールをしながら通り過ぎていく。そういえば来週の日曜が参院選だったな。

 

 「これで、カタがついたって考えていいのかしら。」

 

 「紫藤のお父さん関係は、な。」

 

 それ以外にあるんだ、まだ。この前少しだけ言ったと思うけど。

 そう、調布に言う。

 具体的なことは何一つ話してない、話せない。でも、これよりヤバい山場が実はあるんだということは、伝えてある。

 調布はふんふんと聞いていたが、ふとそれとは別の話かもしれないけど、と言って疑問を呈した。

 

 「あなた、結構今回のだけでもお金をかけたでしょう?」

 

 あの家だって、あなたがお金を出して借りてるんでしょうけど。

 いくらかかるか教えてもらってないけど、一軒家なんてただじゃないだろうし。

 ましてや今回使った資材費だけじゃなく、あの人たちの生活費とかも当分持つのよね。

 高校生がそんなお金、続くの?と。

 

 まっとうな疑問だ。今までは聞かれると大丈夫大丈夫、と答えてはぐらかしてきたけど。

 

 「いくつか、考えてることはある。」

 

 例の似非オフィスオートメーションの導入コンサル事業(?)のことを話してみる。

 僕だってよく分かってるわけじゃないけどさ。少しは土地勘みたいなのがあるし。

 それを使って知識やスキル、経験も得たい。ついでにお金も調達したい。

 将来のキャリアにつながるか、まではわからないけど。

 そう、説明してみる。

 

 調布は僕の構想をじっと聞き入っていた。

 手伝ってくれないか、というと快諾したが、まだ何か考えている風だ。

 

 「それって。その分野が伸びるって、あなたは考えてるのよね?PCとか、ネットワークとか。」

 

 「ああ、そうだな。」

 

 典型例は、いわゆるGAFAだよな。

 もちろんまだ誕生してない会社もあるけど、微小ソフトとかりんご社とかはもうすでにある。

 今でも株価急騰中とか思われてるけど、こんなもんじゃない。10年後くらいには100倍以上になるはずだ。

 大学生の手堅い人気就職先、今もバブル崩壊後のこの時代も金融機関なんだけど。

 十数年後にはほぼ逆転なんだよな。IT関係が伸びる。

 マスコミとかも今は超人気業界だけど、長期的には実は斜陽産業かもしれない。音楽業界も。

 そんな未来を見てきたようなことを(実際見てきたんだけどね)言ってみる。

 

 「そう、それよ。株式投資は考えないの?」

 

 「したいんだけど、手がないんだよな。」

 

 そう、未成年者だしな。口座が作れないし作れても監視下になってしまう。

 今回の家を借りる奴とかはなんとか元さん経由でできたけど、それも相当多額の保証金を渡してる。

 そのことを言うと。

 

 「それ、あたしの方で何とかなるかも。」

 

 ほう?

 

 調布の話を要約すると。

 調布の家は、親が共働きで両親ともに多忙。父親も非常勤があるらしく、週の半分はいなかったりする。

 その分、かなりのことを任せてもらってる。

 証券会社口座での現物取引でのポートフォリオ運用くらいは許してもらえると思う、と。

 なんでも、親から一度、興味があるか聞かれたことがあるらしい。

 ずいぶん先進的だな?

 この時代、バブル崩壊後、株式投資というのはかなりリスキーと言うイメージが定着しつつあるけど、どうやら調布の両親はそうではないようだ。

 

 しかし、願ってもない話だ。

 例の北海道拓○銀行や山○証券の破綻あたりや、2000年直後くらいのITバブル崩壊には気を付けないといけないけどな。まだずっと先だけど。

 僕も早速、もし可能だったら協力というか投資に一口乗りたいと表明しておく。

 あ、でもこれもなんか法に触れそうな気もするな。名義貸しじゃないんだろうけど。

 いまさら、だな。あれだけ違法行為、やりまくってるし。

 

 調布の自宅に近くなると、調布は僕の袖を引いて近くの公園に誘った。まだ時間はあるし、否やはない。

 調布が女の子みたいで新鮮だ。いや、女の子なんだけどね。

 あまり人気のない公園のブランコに並んで揺られる。横の調布が聞いてきた。

 

 「あなた、夏休みはどうするの?」

 

 「それもあるんだよな。」

 

 これまで少し考えなかったわけじゃない。だけど、救出計画を前倒ししたので、予定が変わってくる。

 僕は実のところ、補習には参加しないか、ほとほどの参加にとどめてヤツザキ関係とか各方面の調査に注力しようと思ってたのだが。

 そう、言ってみる。

 

 「そう。あたしも迷ってたのよね。」

 

 いや、調布はせっかく成績いいんだからさ。補習出て維持してもいいんじゃないか?

 そう思ったのだが。

 

 本人的には、補習に少なくとも全部の回、出るつもりはもともとなかったらしい。両親も、同じ考え。

 漠然と、一度東京に行ってみたい、とは考えていたようだ。

 だけど今回、バイクという足もできたし、多賀島周辺をいろいろ調べてみてもいいと思ってる、とも。

 うん、それは魅力的だ。僕もそれ、やってみたいよ。

 少なくとも谷津崎老人関係では、樋木崎渓谷あたりには出張ろうと思っていた。

 もっといえば、僕も東京か大阪に行きたい。この時代、インターネットにはまだ情報がないから、調べたいことがあれば大学図書館とか、そこでなければ国会図書館とかに行くしかないんだ。

 姉にいろいろ依頼はしてるんだが、姉も忙しいんだろうし。

 また本当に調べたいことが危険なことにつながりそうだったりして、なかなか頼みづらいんだ。

 もちろん、元さんにも頼んではいるけどね。

 

 「よかったら、夏休み、学校以外でもときどき会わないか?」

 

 いや、もちろん時間があえば、でいい。

 僕と調布でツーリングを兼ねて、調査や遊びに行ってもいいだろうし。

 紫藤と調布と僕との3人で、いろいろ進めてもいい。

 

 例の谷津崎の関係、直接、二人にかかわらせるつもりはない。なんといっても、紫藤は1回目で殺された実績(?)があるし、調布まで捕まって残酷に殺されたりなんてあっちゃいけない。

 だからもし何か、ガチでやりあわないといけないとしたら、僕はアキさんを頼るつもりでいる。

 だけど、調査とかで助けてもらえたらうれしい。

 

 「そうね。そうしましょう。」

 

 調布も受けてくれた。

 

 「そうだったわ、それに10倍返しもしないといけないし、ね?」

 

 忘れたとは、言わせないわよ?と微笑まれる。

 うわっ。怖っ!

 まあいいや。おとなしく調布の足指でもねぶって許してもらおう。

 いや、そんなんで許してもらえるかな?

 横で僕とほぼ同じ速度でブランコに揺られてる調布に目を向ける。

 うん、サド気に満ちた笑顔を向けられて、ぞくぞくする。

 それより過激なことって何かあるかな。――顔に座られるとか、かな?

 聞いたことはあるが未体験のプレイだ。期待が膨らむ。

 

 調布も楽しみにしてる(?)ということだし。

 補習は基本出るが、ときどきサボっていろいろ悪さをやらかそうということに。

 委細は連絡して調整しよう。

 ただ、連絡手段については、注意喚起を受けた。

 親の勤務先の大学の授業期間が終わると、親が早く帰ってくるので電話がしづらくなるかも、と。

 ただ、しづらくなるだけで、あたしの親なら親ブロックはないと思う、とも言ってる。

 

 そうだよな。

 連絡手段とかも含めて、いろいろ決めないといけないこともある。

 いますぐここで決める必要は、ないだろうけど。

 

 紫藤とも、話さないといけないな。

 紫藤は、補習はどうするかな。多分真面目な紫藤はちゃんと受けるんだろうな。

 そう考えると、僕も受けたい気もしてくる。

 でもな、全部出席はちょっと厳しいんだよな。

 この時期の多賀島の県立高校、なんと終業式後、8月の第1週くらいまで補習がある。

 内容は、ほぼ通常の学期中の授業そのまま。もちろん美術とか体育とかの授業はないし、その分少し早く(6時限で)終わるけど。

 1回目のときは何にも思ってなかったけど、今はこの時間で、いろいろやりたいことがある。

 とりあえず第1週は1日サボって、バイクの免許をどうにかしたいと思ってる。

 原付もいいけど、やっぱり普通二輪の方がいい。

 でないと、調布と一緒に出掛けるにしてもおいてけぼりにされてしまいそうだ。

 

 ―――――

 

 その後、話が途絶えると。

 急に僕は調布と逢引状態であることを意識してそわそわしてしまい。

 散歩に誘い、人目がなくなる機を見澄まして、植え込みの陰でぎこちなく、歯がぶつかりそうなキスをした。

 抱き合ったときの胸のふくらみや、しっかりした弾力のある体に、鼓動がただごとでなく早くなる。

 一昨日はじっくり見て、今更じゃないかって?いや、ぜんぜん別腹だよ。

 風姿花伝だっけ。秘すれば花ってやつだ。隠してあると一層興味関心が膨らむ(?)。

 救いは、どぎまぎしてるのが僕だけじゃなくて、どうやら調布もそうらしいということだ。

 顔に血が昇って茹った状態でしばらくいちゃついた後、手をつないで、歩きにくいながらも調布を送って行った。

 

 そうしてこの日は、調布を自宅に送り、僕も家に帰って母から小言をもらいはしたが。

 日常に戻り、普通にぐっすりと寝ついた。

 

 そう。その時の僕は、気づいていなかった。

 僕はあの開かずの部屋から、小さな頭蓋骨を持ち出したままで。

 頭蓋骨は、もちろん割れたりしないようにハンカチとかでくるんでいたのだが(もっとも検分するとすごく丈夫そうで、そうそうは割れそうにない感じはあった)、そのハンカチの結び目の一部がほどけてて。

 そのわずかに露出した部分が、部屋の窓から差し込んでた曇り空の月の淡い光を吸って、かすかに輝き始めていたことを。

 ぐっすりと寝こんでしまっていた僕は、気づく由もなかった。

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