※この作品はR-18です。

タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。   作:Marchhatter

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 三人称(国領ハルカ視点)です。長くなったので前半を投稿します。
 ☆は保険です。ほとんどまったく何もありません。
 後で整合性を取るために少し修正するかもしれません。


114 河を渡って木陰に憩う(7)(三人称)☆?

 

 ――切り抜けられた、かな?

 

 彼女、国領ハルカは志野と対談を持った公園から脚の震えを押し隠しつつ歩みさりながら、さりげない自然な風を装って、振り返って手を振り、志野の様子を伺った。

 

 志野は、まだこちらをあの飢えた目で凝視していて。

 その異常な執着をうかがわせる、ジャッカルのような執拗な凝視に、彼女は思わずびくっとしてしまいそうになったが。

 志野は今日のところは牙を収めることを選んだのか、ぎこちなく笑って手を振り返した。

 彼は怒りを、一応沈静化させたようにみえる。

 しかし、――本当は?

 

 彼女(国領ハルカ)は、思わず走り出したくなる足を叱咤し、なにげない風を保ちながら、びくつく胸に片手を当てた。

 今日の対決中、せわしなくトクトクと鼓動を立てて存在を主張していた胸に。

 

 ――急な動きは禁物。野犬は逃げると追いかけてくる。

 

 危機は去った。

 まだ背中に死神の凝視を感じるが、イザナギの黄泉くだりの話を思い出し、振り向かないように努力しながら。

 国領ハルカは、今日一日に渡る羽目になったタイトロープの数々を思い返す。

 そう、今日の朝から、この今に至る経緯を。

 

 ―――――

 

 生徒会室に7時集合!

 昨日、そう生徒会で言われた国領ハルカは、眠い目をこすりながら5時半に起床し、ゾンビのようなぎくしゃくとした挙措動作で自分と家族の朝食を用意する。

 6時すぎに起き出してきた伯母にあいさつし、一杯のインスタントコーヒーで無理やり体を目覚めさせながら、学校へ行く準備をする。

 コーヒーのおかげでなんとか家を出るころには何とか生きた人間を装えるくらいに元気になった。

 ちなみに従兄とは、朝はほとんど顔を合わせない。伯母によると、10時すぎまで寝てることも多いらしい。

 新聞を読んでいる伯父とクロスワードパズルを解いている伯母に、行ってきます!と快活に言い、いってらっしゃい、という声を背中に聞きながら、彼女(国領ハルカ)はあわただしくローファーをつっかけ、家を飛び出す。

 今日は、さすがに体力を温存したい。バスだな。

 

 今日明日くらいで生徒会の仕事も一段落だ、と彼女(国領ハルカ)は最寄りのバス停へ小走りに走りながら、考える。

 そうしたら、やりたいことがいろいろある。

 稲中○球部と諸星大○郎の連載も行きつけの本屋さんで立ち読みしないと。立ち読みばっかりじゃ悪いから、単行本が出たらちゃんとあの本屋さんで買うつもりだ。

 調布さん(さとみん)が言ってたチーズケーキのお店にも行ってみたい。たしかイートインがあるって言ってた。みなりんは忙しそうだし、この際さとみんを誘ってみようかな。

 あと、今回の救出作戦でみつけた面白いスポット。あの山奥の神社とかいってみたい。神社に行く途中の、あの小道のあたりも。あの声は、何だったんだろう。志野(ち○こ男)は危険だって言ってたけど、危険は冒険の醍醐味だよ、何言ってんのかな。

 

 今日は合気道の日だから、ジャージを補助バッグに詰め込んである。ぺたんこにつぶして、先生には怒られない程度にデコってる彼女(国領ハルカ)の鞄には、荷物はろくに入らない。だけど今日ばかりは薄めの教科書を押し込まないと、補助バッグだけではムリだった。

 今風の頭の少し軽そうな見かけを装っているけど、彼女(国領ハルカ)は成績は良い。

 クラスで1番となったことはないけど、クラスで5位以内、文系クラスに限れば学年で20~30位くらいをキープしてきた。

 でもガリ勉と思われないように、ちょっと服装その他は崩しておくべきだと考えている。でないと、変な侮りや、やっかみを受けかねない。

 もっとも中学校の頃と違い、高校に進学してからはそういう理由でいじめられてる人を見たことはないので大丈夫かもしれない。だから高校に入ってからはわざと試験などで手を抜いたことはない。

 そして今回の試験。まだ結果はもらってないけど、今までのうちで最も手ごたえがあった。あの性獣・志野にも、勝ったとは思うんだけどな、――

 

 いつもの時間帯だとバスがすごく混んでて、運が悪いと時々痴漢に遭遇することもある。

 だから国領ハルカは、時間が許す場合には歩いて学校まで行くことも多い。学校へは割と近いし、待ち時間を考えると徒歩でもバスとそこまで違わないので定期は買っていない。バスは時間どおりに来ないから嫌なんだ、と思う。

 

 でも今日はかなり早い。座れはしないが、さすがにそこまで混んでない。そもそも座席が空いてても座るのはちょっと気が引ける。健康な若者が率先して座ると、おばあさんとかが座れなくなるよ。おばあさんたちだって、譲ってもらうのも気が引けるだろうし。

 10分ちょっとで学校近くのバス停に到着する。ぷしゅ、とドアが開く。

 さーて、今日も頑張ろう。そう彼女(国領ハルカ)は気合を入れて、バスを降り、学校に向かった。

 

 ――――

 

 生徒会室に入る。同級生の生徒委員で、副会計の北沢 芦花(きたざわ ろか)が先に来ていて、爽やかにおはよう!と言ってくれる。

 生徒会の仕事は面倒だけど、こういう超いい子と出会えるんだよね、と挨拶を返しながら心の中で彼女(国領ハルカ)は思う。

 

 人格者っていうのかな。ボクみたいなまがい物とは違う。ナチュラルに育ちや性格がいいんだ。

 その彼方此方の違いに鼓舞されることもあれば、しゅんとしていじけてしまいそうな気分になることもある。

 でも、聖人のまねをする人は聖人だし、狂人のまねをする人は狂人だ、と徒然草にも書いてた。

 ボクも、聖人のまねをする聖人になればいいんだ。

 

 二人で書類チェック、お礼状の発送準備、記念写真の案内、アルバム用写真の選定、アンケートのとりまとめ。やることが山積みだ。

 でもその後来た数人の生徒会役員たちも協力して、相当進めることができた。

 

 「あ、それでさ。」

 

 今日は習い事があって、放課後は来れない、代わりに昼休みに来てやっとくけど、良いかな?と顔の前で手を合わせて、相方に懇願する。

 もちろん大丈夫だよ!朝にどんどん進められたし。と、北沢が本当に嫌味のない笑顔で言う。他の役員たちも、それはしかたないよー、と笑ってる。

 その寛容さが眩しくて、思わず目を瞬いてしまう。みんな、ホントにいい子たちだよね。

 本当にごめんね!ありがとう!と言って、手を振って別れる。

 

 廊下を急ぐ。遅刻ギリギリの子たちが、あわただしく教室に向かって走ってる。

 誰かいるかな?C組で、知ってる子。

 

 あ、いた。

 

 1年のとき同じクラスだった男子。ワカヤマ君って言ってたっけ。

 ちょっと小柄でぽっちゃりしてて引っ込み思案で、あまりしゃべったことはないけど悪い子じゃない。

 

 「若山君、ちょっとだけごめん。これ、志野くんに。いいかな?」

 

 急いでノートの切れ端に手紙をしたため、それを性獣に届けてくれるよう依頼する。放課後、ちゃんとカタをつけようと思って。

 若山君は押しに弱い。こくんと頷いて了承してくれた。

 若山君が、志野とあともう一人の子と一緒に体育館から帰ってきてるのを一度見たことがある。多分友達なんだろう。

 

 ―――――

 

 生徒会室で昼休みを半分使って仕事を進め、ちょと疲労した国領ハルカは休息を求めて志野一味の仮部室を訪れる。

 創作ダンス部の使ってる多目的室でもいいけど、場所が遠いし、あんまりのんびりできない。ソファとかないし。

 文芸部の部室でもいいけど、先輩たちが良く来る。別にぐでーっとしてても怒られはしないけど、あまりのんびりくつろげない。

 そういうわけで志野の一味に加わって以来、秘密基地ができたようでうれしいのもあって、彼女(国領ハルカ)はしばしばこの部屋を訪れ、ときどきこっそりソファで昼寝したりしている。

 

 からから、と戸を引き開ける。

 ぱっと、こちらを向く少し色の薄い髪の頭。紫藤みなりだ。

 見たところひとりで、机の上には何冊か雑誌のようなものが置かれている。

 

 「あー、ハルカちゃん!元気?」

 

 ぱっと輝く顔が、まぶしい。

 

 「やっほー、みなりん。おや、今日は一人なのかい?」

 

 うれしくて彼女(国領ハルカ)も顔が明るくなる。

 それでも疲労は隠せず、横の席に座ると思わずあくびが出かけてしまい、あわててかみ殺す。

 紫藤みなりは、それに気づいたのか。ちょっといたわしげに、こちらをしげしげと見つめている。

 睡眠不足が、バレちゃったかな?

 昨日はあれから、食後も本を読みふけってしまい、宿題や予習復習をすると日付が変わってしまったのだ。

 身づくろいも、少し今日は甘いかもしれない。

 

 紫藤みなりのの裏表のない表情に、どこかきまりが悪くなり。

 つかれたよー、と彼女(国領ハルカ)は紫藤みなりにじゃれつく。

 紫藤みなりも心得たもので、んもうハルカちゃんは、と甘やかしてくれる。

 紫藤みなりの膝で頭をなでられ、グルーミングされていくばくか元気を回復した彼女(国領ハルカ)は、対決のことを思い出し、志野についての推測の確証を得ようとする。

 志野は基本的に善人。体の関係のある彼女たちにしたって、無理やり犯したわけではないだろう、という、今回の彼女(国領ハルカ)の志野に対する強気の態度を支える推測の確証を。

 

 「みなりんは、志野とつきあってるんだよね?」

 

 「え?――う、うん。そうだけど。」

 

 ぱあっと、紫藤みなりの頬が上気する。

 見とれてしまう。

 女癖はともあれ、志野という男は女を魅了するすべは心得ているようだ。そして、女の側も、幸せなのだろう。紫藤みなりのいかにも恋する乙女風な様子に、思わず国領ハルカも頬を緩める。

 

 ここまでは、良かった。

 しかし、その後の会話で、彼女(国領ハルカ)はどんどん追い詰められていくことになる。

 

 「彼は、――どうなの?ひどいこと、されてないかい?」

 

 「うん、優しいよ!」

 

  ひどいことなんか、ないよ。今回も、こんなに頑張ってくれたんだよ?ハルカちゃんも、知ってるよね。

  ときどきわざといじわるなことをすることもあるけど、ほんとうにわたしがいやなことは、絶対にしないよ!

 

 そう、うれしそうに、照れながら紫藤みなりは言う。

 しかし、彼女(国領ハルカ)には、一点ひっかかることがあった。

 

 「いじわるなこと、って?彼に何をされたんだい?」

 

 彼女(国領ハルカ)の知る限り、紫藤みなりは悪意にみちた行為をも善意に解釈しかねない、温厚で善良な性格だ。

 その彼女が、「いじわる」と表現する行為。――それは、何だろうか?

 胸が不規則に、どきん、と打った。

 

 「うーん。それはちょっと、――」

 

 そこをなんとか。ほら、頼むよ!

 冗談半分を装って手を合わせて、押してみる。

 彼女(国領ハルカ)は知っている。紫藤みなりが、彼女(国領ハルカ)のような自分に近しい、信頼している人に甘いことを。

 その頼みを断れない性格をしている、ということを。

 

 「ハルカちゃんだけだからね。ほかの人に、ぜったい言っちゃだめだよ?

  ――動けないようにして。

  うーん、その、いろいろと。

  ほら、さわったり、たたいたり。もっとたくさん何かしたりとか。いっぱい。」

 

 その、ほわほわと上気したかわいらしい顔から洩れる、おぞましい真実に。

 彼女(国領ハルカ)は、背筋に氷柱を差し込まれたような衝撃を受けた。

 真夏の学校の部屋。

 吹き抜ける風こそあるが、真昼の正午すぎだけあって暑い、乾いた元教室。

 しかし、彼女(国領ハルカ)は自分の周りだけ空気が冷たく、そして重力が増したように感じた。

 聞いてない。聞いてないよ、そんなの。

 あっ。だとしたら。

 もしかすると。ボクも敗けたら、志野に、――

 

 「う、うん。そうなんだ。それって、みなりんは嫌じゃないの?気持ち悪かったり、しない?」

 

 すがる思いで、情報の補足を求める。直截的には、聞きにくいが、――

 

 「うん、くすぐったくて。自分が自分でない感じがしてくるよ!」

 

 感覚がおかしくなるくらいに、くすぐられるのか。

 じゃあ、叩かれるのも。きっと、執拗に、ーー

 

 「その、ーー叩かれたりして、痛くないの!?」

 

 少なくとも、ここまでのやりとりでわかったことがある。間違いない。

 つまり、このふたり。

 倒錯した性関係を結んでいるのだ。

 一人がもう一人を支配し、しいたげ、苦痛を与える、という。

 そう、志野は、このほわほわとした、小動物のような愛らしい少女を。

 自分の欲望のままに、――

 

 「アナルほど、感じが(な)いかな。でも、その、あの、ふわふわして気持ちいいよ。

 だからハルカちゃんも、きっと心配しなくて大丈夫だよ!

 

 そう、さすがに恥ずかしいのか赤くなって、ちょっと噛みながら言う。

 だが、そこで言わんとしていたことは、明らかだった。つまり、あの性獣は。

 肛門性交(アナルセックス)も、そして嗜虐・被虐行為(SMプレイ)をも、彼女(紫藤みなり)に強いたのだ。

 そのうえで、彼女はまだしも前者の方がマシだ、という。

 後者は、ふわふわと意識を失いかけるくらいに、打擲されるらしい。それを気持ちいいと思い込まされているのだろう。

 くらっ、とする感覚があった。

 

 目の前の少女は、かわいらしく顔を赤らめている。

 そうだ。彼女(国領ハルカ)は、この少女(紫藤みなり)のことを知っている。

 この少女(紫藤みなり)は、とても善良で、世間知らずだ。

 きっと、何も知らないこの少女に。まっしろな白い布に墨汁を落とすように。

 あの悪魔のような男は、この少女の処女を奪い、様々な、おぞましいプレイで、その身を汚して――

 

 「そ、そうなのか――。」

 

 ただ、その残酷な事実を今、この目の前の少女に指摘し、自覚させるわけにいかない。

 もし知ってしまったら。この少女の精神は、打ち砕かれかねない。愛されていると誤信して、その行為を受け入れているのだろうから。

 ゆっくりと常識を教え、そしてあの男の魔手から救い出さねばなるまい。

 

 しかし。

 さすがに自分には荷が重すぎるのでは、ないだろうか。

 貧血気味になっている自分を、彼女(国領ハルカ)は自覚する。

 

 自分を支えていられなくて、彼女(紫藤みなり)は自分が座る座席の机に肘をついた。

 本当なら、この机の上に崩れ折れたい。

 しかし、どういうわけか、目の前の少女から目を離すことができなかった。

 奇妙な力。そう、あの志野にも感じたのと似た、奇妙な引力が彼女の目を捉えて離さない。

 

 「言わないでよ?」

 

 少女は、ちょっと心配そうに、そう彼女(国領ハルカ)に言う。

 しかし国領ハルカは、その言葉がまだ頭に入っていなかった。

 ひとえに志野の善性に対する自分の信頼が、間違っていたということの衝撃のために。

 

 「いや、でも、まさかそんな!そんなことが、――」

 

 思わず、口から自分の考えが漏れていたのだろう。

 そう、彼女(国領ハルカ)はひしひしと実感していたのだ。

 今知ったこの事実が、今、決行されようとしている志野と彼女(国領ハルカ)との勝負にもたらす影響を。

 何という計算違いをしてしまったことだろう。それが本当なら、彼は彼女(国領ハルカ)を犯し、責め抜くことに、全く何の躊躇も覚えないのではないだろうか?

 そう。

 あの傍目にも大事にしている、味方である彼女(紫藤みなり)より、敵である自分(国領ハルカ)の扱いが良いものとなるなんて、彼女(国領ハルカ)には到底思えなかった。

 胸でズキズキと、うるさいくらいに心臓が跳ねている。

 悪い夢の中のようだ。

 どうしよう。誰かに相談したい、助けを求めたい。せめてこの心の重荷を聞いてもらって、――

 

 「ハルカちゃん!絶!対!言わないでよ!?――さとみんにも、だよ?」

 

 いつのまにか目のすぐ前に、紫藤みなりのどこか狂信的なものを底に秘めたまなざしがあり、のけぞってしまう。

 読心術を使ったのか。そう思いたくなるような勘の良さで。

 そう、紫藤身なりは彼女(国領ハルカ)に、強く強く念押しした。どこか黒いものの漂う声音で。

 そして、その紫藤みなりの目は、今は彼女(国領ハルカ)の胸元に注がれていた。

 ごく慎ましやかにしか隆起していない。「大平原」と自分で自虐してみせてウケを取ることもある胸。

 

 ただ、目の前のこの幼げな姿の彼女(紫藤みなり)も、似たようなものだろう。

 そして、その幼い彼女を、性獣は文字どおり嬲りつくしたわけだ。

 ということは、――

 考えがまとまる前に、紫藤みなりの声が響く。

 

 「もし言ったら。約束を破ったら、針千本。

  いや、千本はかわいそうだから、10本。5本ずつでいいよ。

  ――これ、冗談じゃないよ。もし、もしもほかの人に言ったら。

  本当に、してもらうからね?

  家庭科室の、待ち針。あの白とかピンクの丸いのがついてるやつで。」

 

 そう、警告される。

 針を刺す。刺しつらぬく。

 もし彼女(国領ハルカ)が口外したら。

 彼女(国領ハルカ)の、そのささやかなふくらみに。

 そう、紫藤みなりは言っているのだ。

 

 彼女(国領ハルカ)も、「かまとと」ではない。知っている。

 そういうプレイが、あるということを。

 いきつけの書店の、肌色が目立つ、そんなコーナー近くで。

 立ち読みしている中年男の開けていた、いかがわしい写真集。

 ボンレスハムのように縄が巻きつけられた女性の乳首に、針が刺し貫かれているショットを垣間見たことがあった。

 あまりの衝撃に、今でも覚えている。

 その夜はなんだかそわそわして、あんな残酷なことをされる痛みはどんなものだろうと思って、自分でお風呂場で胸の先をぎゅっとつまんでみたりしたっけ。

 

 もし、彼女(国領ハルカ)が口外したら。

 そう、きっとそうした彼女の失点があれば。紫藤みなりの通報をうけた志野は、それに乗じて躊躇もなく嬉々として実行するだろう。

 1000本を、片胸につき5本ずつに減らされたとしても。まったく慰めにはなるまい。

 彼女(国領ハルカ)の乳首を、きっと彼は、家庭科室の待ち針で、貫くのだ。

 医療用の細い針などではない。あの太い待ち針で。残酷に、喜色を浮かべながら。1本、2本、と。

 

 彼女(国領ハルカ)には、もはや操り人形のようにぎこちなく従順に頷くことしか、選択の余地は残されていなかった。

 

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