※この作品はR-18です。

タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。   作:Marchhatter

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ご感想をいただきました。ありがとうございました!

主人公、脱DT成った、──でしょうか(→定義によるかもしれず、登場人物紹介ではごまかしました)。

前半、第三者視点(国領ハルカ視点)、後半、志野視点です。
粗い部分は、後で修正します。


141 王国は常に爾の胸に(17)(志/国)接続

 

 やわらかい暖かさが、体を包んでいる。

 あたたかい陽だまりの中にいるように。

 そのあたたかみは、彼女(国領ハルカ)に過去の記憶を呼び覚ます。

 幼稚園のころだっただろうか。

 あるいは、親を離れて遊んでいたということは、小学校に上がってからだっただろうか。

 彼女は、過去の一場面を夢見る。

 

 遠い、幼い日の思い出。

 川べりの砂地で手を泥だらけにして、団子やお城やダムを作った。

 清流なんかじゃない。ドブ川とまでは言わないけど、ごく普通の川。水路の岸辺。

 

 川沿いの家からは直接、生活排水も流れてた気もする。

 たとえばコンクリの堤防の壁の一部にしなだれかかるみたいに、作られたバラック。

 おそらく流しがあるんだろう、かすりガラス越しに人影がみえると。

 十数秒後に、その下の堤防の水抜き穴からじょぼじょぼ水が流れ出てきたりする。

 

 それも全然気にしないで、遊んでた。

 2階建てのボロアパートに、まだお母さんと一緒に住んでたころのことだ。

 

 毎日のように一緒に遊んでた相手の男の子の顔も、もう思い出せない。

 緩やかな傾斜のコンクリの擁壁に囲まれた、流路沿いの地面。

 高水敷って呼ぶらしい、その雨が降ると水面下に沈む土地は、ふたりの秘密基地。

 

 大きなススキの株にかこまれた物陰で、親に言えない遊びもした。

 捨ててあった、えっちな雑誌を一緒にみたり。

 それを参考に、彼女はスカートをめくらせ。

 下着を下げ、お尻の穴とかをさわらせたおかえしに。

 トウガラシみたいに小さい、男の子の棒や。

 ぼよぼよする、袋に入った玉をさわらせてもらった。

 お互いに、さわること以上のこともした。

 

 なんかいけないことをしてるって、少なくとも彼女はわかってて。

 すごくどきどきするけど、そのうち罪悪感がこみ上げてきて。

 夕方になったら疲れたふりして不機嫌になってみせて。

 まだ彼女のお尻や胸を触るのを続けたそうだった相手の子を置いて、帰ったりもした。

 もちろん、送ってあげることが多かったけど。

 

 相手の男の子、たぶんさみしかったんだろうな、と彼女は思う。

 家庭事情が複雑だったのかもしれないってのは、幼なごころにわかってた。自分もそうだったから。

 相手の家。くすんだ壁の市営住宅に送っていくと。

 あまり素行のよくなさそうな太った男が、どっしり動きたがらない太めのお母さんととぐろを巻いてて。

 今にして思うと、濡れ場の途中のようなこともあった。

 お母さんに新しく男ができたんだろう。あの子、居づらかっただろうな。

 相手の子が、まだ一緒にいてほしいんだってわかってたけど。

 でもその太った男の視線に嫌なものを感じて、逃げるように帰った。

 

 義をみてせざるは勇なきなり?

 

 そうなんだけどね、できることじゃない。

 ご立派だね、昔の人は。

 

 そう、彼女は思う。

 

 そのうち、その子は転校したかなにかでいなくなり。

 彼女も女の子の友達ができて、川べりの秘密基地に行くことも少なくなっていった。

 

 トンボが飛び交う土手を、夕焼けの中で二人で並んで歩いて帰った夏の夕暮れ。

 つないでた、ちょっとべたべたした男の子の手。

 捨ててあったスプラ○イトやポカコーラのガラスびんを集めてお店でお金に換えて買った、ラムネの甘い味。

 かすかに褐変した思い出だけが残ってる。

 

 ―――――

 

 わずかに空気が動いたせいか。

 意識が浮上して、幼いころの夢は薄れて流れていく。

 空気の流れでスースーするのと、温かさとの奇妙な混ざり具合。

 彼女(国領ハルカ)は、みじろぎする。さわさわ、と衣擦れの音。

 

 気がつくと、体に雑多な服がこれでもかとかけられまくってる。

 服で覆われてるところは、なんなら少し暑いくらい。

 でも裸のせいか、かかってないところは、すーすーする。

 彼女(国領ハルカ)はまだ覚醒しきっていない。思念はとりとめもなく流れる。

 

 竜神に種付けされて、志野と致す前は、寒くてしかたがなかったけど。

 あの嫌な寒気が完全になくなってるな、と彼女は気づく。

 

 それどころか。

 背中側一面、足先まで、なにか快い暖かさ。

 おばあちゃんちの灯油ストーブをすごくおだやかにした感じのぬくもり。

 輻射熱って、いうんだっけ。

 そして、ぽかぽかとお腹のそこから湧き出す活力。

 注ぎこまれる、無限のエネルギー。

 

 あれ、と彼女は思う。

 

 注ぎ込まれる?

 いや、なんだ?このお尻に入ってるモノ。

 なにかのエネルギーが伝わってきてる、これ。

 固くて、おおきくて、さっきからなんかトイレ行こうかなって思ってでも心地よくて動きたくなくて、その原因になってる、このぽかぽかした棒、――

 

 あ。

 女の人。竜神の娘。

 地下牢。

 縦穴。

 竜神。

 割って入るぬるりとした触手。

 彷徨、骨に沁みるような冷気。

 そして、しのりん。

 ボクをつかむ、熱いしのりんの手。

 そして、入ってくるしのりん。

 

 思い出した。

 思い出したよ。

 

 だとしたら、これって。

 

 おそるおそる、彼女は身をひねる。

 気が付くと、自分が枕にしていてちょっと低いなと不満に思ってた暖かい何かは、男(志野)の腕だった。

 そっと頭を上げ。

 暗闇の中、おぼろげなペンライトの光を頼りに。

 自分の下半身に接続されている、そのあたたかいつながりをみる。

 

 うん、つながってる。接続されてるよ。

 しのりんの股間に。

 

 ああ。

 どうしよう。

 頭がフット―(略)。

 

 これ。

 はずしたら、しのりん起きるよね。

 気まずい。スゴく気まずい。

 どんな顔をしていいか、わからないよ。

 でも、これ。

 はずさないわけにもいかない。

 トイレに、やっぱり一度行っておきたい気がする。

 起こすことになるよね。

 

 しのりんは、――怒ってるかな?

 いや、怒ってはいないだろう。でも。

 すごい失望ってていうか心外っていうか。

 そういう感情があるんじゃないかな。

 

 だってさ。

 警告だってしてたのに、さ。

 それを無視して軽挙妄動した、こんな感じ悪い、馬鹿なヒステリー女のしりぬぐいに駆り出されて。

 しかも、不浄の穴でつながらせられたんだ。

 

 ああ。その前のボクの言動も、いろいろ痛い。

 こんな抱きがいのない、大平原みたいな体が報酬になるって考えるなんて。

 ボク、あのとき頭おかしかった。

 ああ、いたたまれないよ。穴があったら入りたい。

 

 まあ、しのりんは紳士だ。

 いや、ケダモノだ。ケダモノでもある。

 だから恋人なんて、ないなー、って思ったけど。いまもそうだけど。

 でも、――一瞬。

 あのときのしのりんは、カッコよかったな。

 ボクを救いにきてくれたんだ。そして言ったんだ、最後までそばにいてくれるって。

 まあ一緒に言ってたことは「ヤらせろ、尻で。ダメでも責任取れねーけど」って。

 やっぱり、どう考えても。

 紳士は紳士でも、変態紳士だ。

 

 でも、あの一瞬だけは、しのりんが輝いてみえて。

 いや、今も少し、そうなんだ。

 しのりんのことを考えると。

 胸がぽかぽか、暖かい。

 単に背中に沿って僕を包んでるしのりんの胸やお腹や。

 ボクに、その、まだ、接続されてるしのりんのホースのせいだけじゃなくて。

 胸が、じんわりするんだ。

 これって、――。

 

 いやいや、国領ハルカ。こんな感情、信じちゃいけない。

 あれだ、勘違いってやつだ。

 ヤられた女の子があっさりダマされちゃうっていう、錯覚なんだ。

 きっとそうだ。

 

 ああ、それにしても。

 なんて言って謝ればいいかな。

 なりゆきとはいえ、こんなマズいものを味あわせてしまってごめんなさい、って?

 うーん。

 

 あれ?

 まてよ。

 だけど、さ。

 しのりん、治療(?)というには、やけにノリノリだったよね。

 ボクの中で、3回も熱いのが噴き出るのを感じたよ?

 3回。3回だよ。

 3回もする必要、あったのかな?

 

 しかも、さ。

 たしかに、痛くはなかったんだけど。

 最初はぞわわってして、鳥肌が少し立って。

 なんだか怖くなって、タンマってボクが言って。

 いや、本当はイヤじゃなかったんだけど、なんか果てしなく堕ちていく感じがして怖くて。

 そう、ちょっとだけ立ち止まりたかったのに。

 しのりん、やめなかったよね。

 それどころか、ゆさゆさ、ぴくぴくやったよね?

 これ、――。

 そしてボク、ゾクゾクして、でもふわふわしてきて、なんだかじわあぁぁ、ってあそこが熱くなってきて。

 もうどうにかなりそうなくらいに。

 いや、違う。

 そう、突き抜けた。もう変に、なっちゃった。

 その、──気持ちいいって思わされたんだ、無理矢理に!

 もやもやとした、甘い快感。

 気持ちよく、せつなくなって、はしたなく声も出ちゃった。いや、出させられた!

 あれ、コレ、ボクが怒ってもいいパターンじゃないか!

 

 そうだ。

 しのりんが、起きたら。

 これで責めよう。

 最初は少し強めに当たって、あとは流れで。

 うん。

 

 ――――――

 ――――――

(志野視点)

 

 何か温かい泥に浸かるワニの昼寝のような、眠り。

 ぐっすりと夢のない、安楽なたゆたい。

 腕と体で包んでる、大事な、ほのかな温かみ。

 しかし、わずかに空気が揺れ、僕の意識は浮上する。

 

 気がつくと、僕の腕の中にいた国領が身じろぎしてる。

 腕枕から形のいい頭をはずし。

 肘をついて体をひねり、何かをみようとしてる。

 あ。

 急激に意識が覚醒する。

 

 僕のアレが、まだ国領のお尻に入ってる。深く、刺さってる。

 信じられないことに、まだ固く怒張して。

 国領は、それをみてるんだ。

 かあっと全身が熱くなって、汗が噴き出る。

 

 ああ。

 どうしよう。

 やっちゃった。

 土下座して謝れば、許してもらえるかな?

 これが紫藤だったらな。膝にすがりついて情けない顔すれば、たぶんなんとか。

 

 国領は、――怒ってるよな?

 だってさ。

 まあ、命を救うためという口実があったとはいえ。

 いきなり、純潔な乙女のお尻をやっちゃったわけだ。

 3回も。

 国領にしたら、舌を噛みたいくらいの屈辱だろう。

 僕を消すことを考えてもおかしくないくらいの。

 

 考えろ、考えるんだ。

 何か国領へのおわびを。

 カプチーノじゃ、だめかな?

 

 脳内の国領が、黒国領モードで言い放つ。

 口の端を引き上げた、アルカイックな笑みを浮かべて。

 

 ”乙女の純潔に対して、さ。

  コーヒー一杯で足りるって思うなんて。

  キミ、ほんとにアタマ、大丈夫?

  賠償。謝罪と莫大な賠償だよ、しのりん。

  ――かわいそうに。あと一生、キミはボクの奴隷だね。”

 

 うわあっ!

 脳内シミュレーションは、かなり悲観的だ。

 

 まてよ。冷静に冷静に。

 僕は国領を強姦してない。うん、してない。

 だって、はじまりは和姦だったし。

 たしかに途中で国領の懇願に耳を貸さず、ゆさゆさこねこね思い存分楽しんだけれど。

 僕が挿れたのは、あそこじゃない。お尻の方だ。

 ほら、ヘルスがソープと違うのは、あそこには入れないからだよ。お尻もヘルス扱いじゃなかったっけ。

 強姦罪(強制性交罪)も、たしか妊娠のおそれがないお尻には不成立で、そのかわり強制わいせつ罪成立だったっけ。*1

 うーん。

 少しは罪が軽くなるって程度か?

 

 まてまて。

 もっと根源的に考えよう。

 そうだ。僕は、無罪だ。

 これは、やむを得ない事情があったんだ。

 命を救うためだったんだ。そのために、やむなく、したんだ。

 あれだ。国領の命を守るための、緊急避難的な行為だったんだ。

 たとえ多少行き過ぎた行為があっても、許されるのではないだろうか!

 

 そう、脳内法廷の被告人席で弁明してみる。

 暗やみに閉ざされた法廷の傍聴席からは、まばらな拍手。

 あれ、でも。

 頭の中の法廷に、三人の裁判官が出てきてる。

 真ん中の、ローブのフードで顔が見えない死神みたいな裁判官の両側に。

 黒い法服を着て、博士みたいな角帽をかぶった大小二つの影。

 背の小さい影。紫藤のかわいい顔が、頬をぷくっとまんまるにふくらませて、かぶりを振る。

 背の高い影。調布の端正な顔が、目が笑ってない、冷たい笑みを浮かべて、かぶりを振る。

 ふたりが、いっせいに親指をにぎりこぶしから出して、そして下に向けて振り下ろす。

 ごーん、と顔の見えない中央の死神裁判官によって、法廷用の槌がうち鳴らされる。

 

 ”””ギルティ”””

 

 うわああああっ。

 

 手際よく絞首台がその場にセットアップされてゆく脳内映像から目をそらしながら、僕は必死に思いをめぐらす。

 

 そうだ。国領も、もしかするとすごく怒ってるかもしれないし。

 もちろん対応しないといけないけどさ。

 

 でも、もっとマズいのは、あの二人だ。

 知られたら。絶対に怒るよ。超、怒るよ。

 確実に、僕。

 死ぬより恐ろしい目にあわされる。

 

 国領の口をふさがなきゃ。

 石川達三の小説に*2、なんか似たシチュエーションあった気がする。

 名家のお嬢さんと結婚できることになった、司法試験受験生が。

 先に付き合ってて、妊娠させちゃった女を、いてもらっては困るって殺すんだよね。

 

 よし。

 

 いやいや。違う、違うよ。

 シチュエーション、全然違うし。

 国領を殺すなんてことはしないよ。絶対にだ。

 でもな。あの軽い口を塞がなきゃ。

 でも、どうすればいいんだ。

 

 怒ってるだろう国領と顔をあわせるのが、怖い。

 どんな顔をすればいいのか、わからないよ。

 

 ん?

 でもな、結果として国領は生きてる。

 ヤり始めのときは、同意もある。

 救いに行ったときは、国領だって感謝してたじゃん。

 そこらの貸しを強調して、僕への怒りをやわらげてもらい。

 あわよくば、お口チャックまで持ち込もう。

 うん。

 

 国領が、起きようとする気配。

 うん、まずは強く当たって功績アピール。後は流れで。

 

 ―――――

 

 とりあえず。

 今、起きたふりをする。

 

「国領、――無事か?大丈夫か?」

 

 声を掛ける。向こうも、びくっとする気配。

 

「あ、しのりん。おはよう。――その、」

 

 もじもじしてる。

 うん、わかるよ。僕もそうなんだ。

 正直、きまりがわるい。

 でも、なんでもないように、当然のように。

 日本社会は空気、空気で決まるんだ。

 スマートに機をみて棒を外して、示談&口止め交渉しないとな。

 

「その、もう時間は過ぎて、――でも大丈夫なんだよな?」

 

「うん、どのくらい過ぎたかわからないけど。――しのりん、わかる?」

 

 まずは恩着せがましく、自分の功績をさりげなく強調、強調。

 最長5時間の致死ライン(?)は、生き延びたと思うんだ。

 そうだ、国領は時計をなくしてたんだったな。

 僕は外して荷物の上に置いてた自分の時計をみる。もう夜も3時すぎ。

 

 縦穴に入ったのが、午後11時くらいだったか?

 それから1時間くらいで、国領をみつけて、その、シた。午前0時くらいか。

 だから、午前0時半くらいに眠り込んだのかな。

 平均的な致死ラインである4時間を前提とすると、国領の残り時間は、もうほとんどなかったはず。

 最長の致死ラインである5時間を前提としても、国領はそれを超えて生きてる。

 勝った、――んだよな?

 

「3時間くらい寝た計算だ。多分、最長でも1時間くらいしか残り時間はなかったとすると、――」

 

 最長ラインを超えて2時間以上も長く、生きてる。

 そう伝える。

 

「そうなんだ!じゃあ、ボクは、」

 

 もしかすると、生きのびられたのかな?

 たしかに、さ。

 あの、何かの異物が、お腹の中にいて。

 ボクを侵食していってるっていう、あの感じ。

 あの感じが、もう、なくなってるよ。

 それに、前はすごく寒かったんだけど、いまは寒くない。

 ありがとう、しのりん。

 

 そう言って、国領がみじろぎして、こちらを向きたそうに体をひねった。

 

「国領、大丈夫そうだね。じゃあいったん、抜くよ。」

 

 恩着せがましく、国領のことを思って今まで挿れてました!みたいなことを言外ににおわせて。

 そうっと僕の棒を抜く。

 国領が、息を飲んで。

 そして、ふうっと息を吐いた気配。

 

 こっちに向き直る、国領の顔。

 あの能面みたいな顔でもなく、焦燥もなく。いつもの、生き生きした、ちょっと生意気そうな国領の顔。

 

 思わず、なんの計算もなく。

 ただ愛おしさが胸にこみ上げてきて、僕はこちら向きになった国領を、またぎゅっと抱き寄せた。

 温かい、ほっそりした体。あのときみたいな病的な熱さを、もう感じない。

 国領も、細いけど力のこもった手で抱き返してくる。

 

 よかった。

 本当によかった。

 ここを出てからの僕の生命は危ないけど。

 でも、国領が生きのびられたんなら、十分だよ。

 

「ねえ、しのりん。」

 

 恋人同士のように熱烈に国領と抱き合う僕の耳に、国領がささやく。

 

「ありがとう。でもさ、」

 

 3回もする必要、あったのかな。

 それにさ。

 ボクがタンマっていったのに。

 キミ、ずいぶん楽しんでたみたいじゃないか。

 ねえ。

 わかってるかな?責任って言葉。――

 

 そう、糾弾する。

 今はちょっと顔を離して、上気した赤い顔で僕をにらんでる。

 でも、本当に怒ってるというより、なんだか楽しそうなんだ。

 朧なペンライトの中でも、白目と黒目がはっきり分かれた目がきらきらとくるめいてて。

 口の端が、ちょっと吊り上がってるんだ。

 そんな国領が、いとおしい。

 息もできないくらいに、強く強く抱きしめたい。

 

 でも。

 こんどは僕の命を救うことも、ちょっとは考えてもらわないと。

 だから、片手で肩を抱き寄せ。

 もう片手で、ショートカットの髪をなでながら説得する。

 

 ごめん、国領。そのとおりだ。

 途中から、快楽を貪ることしか頭になかったよ。

 だって、すごく、すごく気持ちよくて。うん、国領の体が。もう、理性が飛んじゃってた。

 え?そんなことないよ。国領の体、すごくきれいだった。妖精みたいに。

 足も、すごくきれいだった。ちょっとしか舐められなかったから、もっと舐めたかったな。

 

 うん、そんなに怒って大声あげなくても、わかってるよ。僕、ろくでなしの変態ダメ人間だよ。

 どんなに罵ってくれても、蹴っ飛ばしてくれても構わないさ。

 あれ、痛たたっ。つまむなんて。

 

 でもさ。

 ただ、このことなんだけどさ。

 このことは、この今だけのこと。二人きりの秘密にしないか?

 だってさ、――

 

 僕の話を聞いているうちに。

 国領も顔が、青ざめてきた。

 

 ―――――

 

 そうなんだ。

 よく考えたら、国領と僕は、――ふたりともヤバい。

 物理的な死は免れたんだけどさ。

 僕たち、一蓮托生じゃん。共犯じゃん。

 まあ、調布は女の子には甘いけど。

 でも、さすがに今回、国領もただで済むとは思えない。

 紫藤の場合も。

 自分の親友と恋人(僕、紫藤の恋人でいいんだよね?)が、なりゆきとはいえそういうことになっちゃった、って知ったら。

 すごく怒るんじゃないかな。

 

 そう伝えると。

 国領も、つばを飲み込み。コクコクと頷く。

 目がぐるぐる、恐慌状態だ。

 

 そういうわけで、僕と国領は協定を結んだ。

 

 ひとつ、絶対にあのことは、他の人の前ではいわない。秘密にする。 

 ふたつ、ひとりがバレそうになったら、もうひとりは隠蔽(フォロー)に全力を尽くす。

 みっつ、もし露見してしまったら、僕がぜんぶ悪いことにする。だけど、国領も僕の命乞いに協力する。

 

 僕の悪い頭で作った即席の協定。

 国領は頭がいいけど、まだ恐慌(ぐるぐる)状態であまり文句も言わなかった。

 

 僕と国領は、目と目を見交わす。

 僕の、命がつながりそうだという安心からこぼれる笑み。

 国領の、少しひきつってこわばってる笑み。

 誓約が、成立した。

 

*1:
この当時、というより2017年の刑法改正の施行前は、強姦罪(強制性交罪)は、妊娠のおそれがない肛門性交等は対象外であり、抗拒不能時の肛門性交や口腔性交については強制わいせつ罪が成立するとされていたようです。ただ、2017年改正後は、いわゆる強姦に加え、肛門性交や口腔性交もあわせて強制性交等罪とされることになったとされているようです。

*2:
石川達三「青春の蹉跌」

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