タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
1212 誤字のご指摘、ありがとうございました!
調布が来たのは、もう昼前になってからだった。
僕は朝ごはんを食べた後、マコトさん、ナギさん、国領と交代でローテーションを組んで、一人がたっくんの相手をして、後の人が草刈りや掃除などをするということをしていた。
田舎の家で、まあトトロの出る家を少し陳腐に、純和風にした感じだと思ってもらえればいい。結構広い。
家の庭はそのまま柵もなく隣の(今は操業停止している)靴工場につながっているので、刈るべき範囲は広い。
でもうまくいけば相当に広い、運動できる場所が手に入る。靴工場がコの字型になってて、中庭みたいなところが広いからだ。
そしたらしばらくは外に出歩けないナギさんマコトさんも、外から見られずにたっくんとボール遊びとかできるし。
もっとも、いつまでも外に出られないのは困る。
だからいろいろ調べて、身分を取り戻せないものかと考えてる。
たとえばマコトさんは飯場に借金があるわけではなく、単に半強制的に収容されて働かされてただけだ。
だから、折をみて住民登録や健康保険とかを復活させてもいいのかもしれない。そこまで追及が厳しくなければ、一度他の県に住民票を移してでも。。
ナギさんも、子どもを育てる上ではやっぱり公共サービスは必要だろう(義務教育はともかく、その後を考えると今の状態を続けるのは、デメリットが多い)。いつまでも夜逃げ状態というわけにはいかないだろう。
僕は法律には詳しくないが、僕が死んだ(多分)ときには、利息制限法の上限を超えて出資法の罰則のかかる利率以内の、いわゆるグレーゾーン金利について過払い金として返還請求する、というのが流行ってた。たしか2000年代に最高裁判決が出たんじゃなかったかな。
そこまで待つわけにはいかないので、どこかの時点で債務整理して自己破産してしまった方がいいのかもしれない。
ここらへん、僕には手続きが全くわからない。良い弁護士に相談した方がよさそうだ。元さんの顧客の弁護士事務所とかかな。
ただ「法律なんて知ったことか」みたいな連中はいるかもしれない。
そこは、場合によってはアキさんとかと相談しよう。
調布が来たとき、僕とマコトさんが草刈り、ナギさんが家の掃除、国領がたっくん当番だった。
国領は、二人で木から木へと追いかけっこをしているようだ。
あいつこういう子供あしらいが上手いよな。
「こんにちは、マコトさん!ついでに、志野も。」
「ああ、こんにちは」「おうっす」
「あー、とーふ!とーふ!」
「やっほー、さとみん!」
「あら、ハルカ、元気そうじゃない、心配したのよ?
たっくんも、覚えててくれてありがとう。」
調布は運動公園でひと汗流してきたと言っている。いかにも爽やかな風情。
別になんということもない白Tシャツにジャージ、後ろで括ったポニーテールと野球帽の姿なのだが、決まってる。
服のデザインってもちろん良し悪しあるが、着る人がいいとどんなダサ服でもよく見えるよな。
「さとみん、昨日はごめんねー!」
「あら、いいのよ。でも、大丈夫だったの?」
「あはは、そこは乙女の秘密なんだけどね、――」
仲良さげにさえずり交わしながら、どうも調布に何かを見せたいらしいたっくんに腕を引っ張られて、向こうに3人で歩いていく。
後でどんなストーリーにしたのか聞いて、矛盾のない話にしとかないとな。
まあ下手に嘘はつかないつもりだ。
国領を探しに行った、見つけた、一緒に帰った、くらいのことは言うことになるかな。
まてよ?
今朝、国領は僕に電話を掛けるよ!と電話で調布に言っていたな。
だったら、僕が国領を見つけた、っていうのはNG。
ヤバい、もう破綻し始めてるじゃないか!どうしよう。
そうだ、あの時点では僕と国領はまだ落ち合ってなかった、ってことにしなきゃ。
国領が日蔭谷の家に帰る途中に、心配して一晩山を駆けずり回った僕と遭遇した、ってことにするか?
でも、国領が今、調布になんて話したか、わからない。
ボロを出さないよう、あいまいにごまかすしかないか。
調布はしばらく、母屋の方で国領と二人でたっくんをあやしていたようだったが。
しばらくしてナギさんと国領が交代したらしいタイミングで、こっち(靴工場中庭の草刈り場)に来た。
「ねえ、志野。――早く来てたのね。」
「ああ。」
ダメだ、きっと尋問だ。
徹底的に僕は向いてない。目がさまよう。
さまよって、――調布の組んでる腕に行く。
正確には、その腕組みで押し上げられてる胸に。
うん、心拍数が上がる。
それを感づいたらしい調布の顔には、少し呆れたような気配が漂った。
「もう、あんたったら。
――ねえ、聞きたいことがあるの。マコトさん、ごめんなさい、ちょっと志野君、借りますね?」
「ああ、どうぞどうぞ。僕も少し休みます。」
ああっ、マコトさんが逃げた!
母屋に歩み去っていく後ろ姿を、心細く見送る。
まあ、でも逃げるよな。
抑えてるつもりらしいが、ちょっと不穏な気が調布から漏れ出してる。
ナギさんたっくんも、不穏な気配を察したのか、こっちには来ない。
そのまま靴工場の裏、崖側に連れ込まれる。
ここも畑みたいに使われてたみたいで、ビワの木や夏ミカンのような実のある柑橘類の木の間には畑の畝を作っていたと思しきところがある。
ちょっと葛が侵略しかけてるな。後でこっちも草刈りしないと。
草のない、工場の少し深めの屋根庇の下の土間部分で調布と対峙する。
「志野、――ハルカが無事見つかって、よかったわね?」
「ああ、そうだな。」
調布自身は、ここに来た時はすごく機嫌がよさそうだったんだけどな。
今は少しご機嫌斜めなのだろうか。顔が無表情だ。
少し汗ばんでるのか、Tシャツを引っ張って風を通すしぐさ。
「あなたが、見つけたのかしら?」
「ん?僕が?そんなこと言ってたか?」
しまった、さっきのところだ。まったく口裏あわせできてない。
僕と国領、ガバガバだったな、ここのところは。
すぐ疑問を持たれることなんてないって、たかをくくってた。
というよりいろいろありすぎて、いっぱいいっぱいだったんだ。
「いえ、あたしがそう思ったんだけど。」
それはともかく。
こんなときなのに。
白Tシャツを押し上げる胸に目が吸い寄せられ。
かすかに、多分調布のつけてる制汗スプレーか体臭か何かの、とにかく爽やかで甘い香りが流れて。
僕はくらっとしそうになった。
「まあ、それはいい。
それで、あたし、あなたに聞きたいことがあるんだけど。」
「なんだ?」
ダメだ、調布の鋭く僕の顔を見つめている視線を見返せない。
罪悪感。
でも無理矢理、目線を上げる。
国領すまん。早くバラして楽になりたい。
「あたしに何か、言うことはないの?」
「悪かった。今回は、僕の軽挙妄動だった。」
結局、国領は大丈夫だったみたいだし。
調布も紫藤も、僕の勝手な思いつきで振り回してしまって、悪かった。
でも、心配だったんだ。僕の勘違いだったよ。
そう、謝る。
「あら、そんなこと言うのかしら?」
わかってるでしょ、そんなことじゃないの。
悲しいわね、あたしとあなたの仲なのに。
そんなことを言いながら、調布がぐぐっと踏み込んできた。
思わず半歩下がると、背中に壁の気配を感じる。
工場の建物の壁だ。
「本当は、そうじゃないでしょう?」
調布の汗ばんだ肢体から香ってくる。
ほんとうにわずかな、甘いシトラスの香り。
脳の芯が軽くしびれたようになる。
思わず頷いてしまいそうになって、耐える、調布を見返す。
「あたしって、そんなに頼りないのかしら、信じられないのかしら。」
うわっ、壁に追い詰められた。僕の肩越しに、壁に手を突く調布。
いわゆる、壁ドン体勢だ!
畜生、僕が調布にしてやりたいのに!
野球帽の鍔がつきそうなくらい、調布が僕に顔を近づけけてくる。
僕の方が背が高いけど、すごい迫力。
くっきりした睫毛の下の黒い瞳が、僕の目を覗き込む。
口角は上がってるけど、全く目は笑ってない。
怖い。
「あたしだって、あたしが足手まといだってこと、分かってる。
だから、そんなに根掘り葉掘り聞くつもりはない。」
「そんなことないさ。もちろん調布のことは、頼りにしてるし、相談にも乗ってもらってる、ただ、――」
「でも、あなたは何か隠してる。」
「そんな、ことは、――」
ダメだ。蛇ににらまれたカエルの気持ちが分かる!
「だから、教えてくれないかしら。
そうね、答えやすいところから行きましょうか。
――あなた、ハルカと寝たの?」
どうしよう。ほんの30分も経ってないうちに、全部バレかけてる。
僕はほとんど調布とはしゃべってない。だとしたら、戦犯は国領だ。
きっと国領が、どこかでほころびを出したんだ。
どうすればいい?
「うーん。寝た、って定義を教えてくれ。」
ほら、あの前夜祭の夜。
文芸部の部室で、みんなで同じ部屋で寝たよな?
いや、紫藤とは同じ布団だけど、みんなで。
あれをカウントしたら、確かに寝たってことになる。
あるいは。
この前、その、この家でも調布と紫藤、3人、同じ布団で寝たよな。
ああいう、同じ布団で寝た場合なのか?
そう言ってみる。
「そうね。素直に答えてくれるなんて思ったあたしが、馬鹿だった。
じゃあ、聞き方を変えましょうか。
――志野さんは、国領ハルカさんと。
セ〇クス、したのでしょうか?」
うぎゃ。
怖い、怖いよ。敬語に変わって、敬称まで。
あの夜。未来の調布に電話を掛けた夜の冒頭みたいに、怖い口調だ。
それにしても調布さん、直截的っすね。
女の子が軽々に口走っていい言葉じゃないぞ。
「悪いが、その、『セ〇クス』の定義は?」
僕は悪あがきを試みる。
磁石の同じ極どうしみたいに、すぐ外したくなる目を、敢えて調布の鋭い目に合わせて。
たとえば、その、僕は調布に口で抜いてもらったよな。
あれてオーラル・セ〇クスってことだよな?ああいうのも?
ほら、ビル・クリ〇トンがモニカ・ルイ〇スキーとやったやつ。
言ってしまってから、まだクリントンのスキャンダルが表ざたになってないことに気付いた。あれ、たしか僕の大学在学中だったか。
だが調布は、ちょっと首をかしげたがそこには突っ込んでこなかった。
「そうね。男性器を、女性器に入れる行為、と定義しましょう。そこはどうなんでしょうか、志野さん?」
弄ばれてる。
でも、これは自信がある。
「いや、入れてない!」
「そう?じゃあ、それ未満の行為には、心当たりはあるってことかしら。」
たとえば。
あの子の口とか、手とか、お腹とかに出した。
ええ、唾液や涙やお小水でなく、あなたの○液を、ね。
ダメだ、もうバレてるとみて、間違いないだろう。
どこがまずかったのだろうか。
でも、もうこうなっては仕方がない。僕は肚を固めた。
「何かあったかは、僕からは言えない。
でもあったとすれば、全部、僕が悪い。」
その言葉を聞き。
調布は息を吐いて、ぎらぎらとこちらをにらみ据えてた目を閉じた。
再び目を開けたとき、その目にはとても冷たい怒りが渦巻いていた。
「ごめんなさい、あなたは別にあたしのものでもなんでも、なかったんでしたね。
あなたの個人的な、立ち入ったことを聞いてしまいました。謝ります。
それじゃ、ちょっと今日は、あたしは先に、――」
そう聞いた時に、体が動いてた。
ふっと体の向きを変えて帰りかけようとした調布を、後ろから腕で拘束してた。
その、持ち上がってる胸のあたりを。
「何!?志野、いえ志野さん、怒りますよ?」
いや、もう怒ってるだろう。
一瞬、敬語のお嬢さんムーブが剥がれかけた。
「放してください!」
抗う調布の力は強い。ただ、声は語気が鋭いけど潜めてる。母屋を気にしているのか?
「ああ、話す、だが調布のことは、放さない。」
正直に話したうえで、それでも見放されるのは仕方ないだろう。
でも、なにも話をしないまま、この大事な
調布は言葉を返さず、少し力を抜いたので。
僕が説得を続けられるかと、腕をゆるめたとき。
爆発的に調布の腕に力が込められ、僕が調布を拘束してた腕の
体を反らし、調布の頭突き、肘打ちをあやうくかわしたが。
次に身をひるがえして、僕に襲いかかった調布のタックルは、はずせなかった。
「志野、あんた、ーーあっ、ンンッ!?」
だがその一瞬でいきなりマックスに発動した、僕の超感覚さんは。
背後の地形と距離を計算し、体勢と採るべき行動を計算し、余計なことまで計算した。
柔らかく受け身をとり、地面に横たわりながら。
調布がけがをしないようにタックルの腕を巧みにはずし、と同時に背中に片手を回して引きよせ。
相手を僕の上に乗せながら、もう片腕で頭を誘導し、でもぶつかりすぎないように微妙に力を加減して。
びっくりして開きかけた調布の口に、僕は唇を寄せ。
キスしながら、そっと舌を差し入れた。
成功した。
多分、調布は僕をテイクダウンしたあと、馬乗りになってボコボコにするつもりだったんだと思う。うん、一瞬横目でみた右拳がグーを作ってたし。
でも一瞬にしてタックルして倒れた相手に抱き寄せられ、キスされあろうことか舌を入れられ。
驚きに、調布の体が一瞬だけ固まる。
そのまま僕は横に体を倒し、上に乗った調布の体を横にそっと置き、地面に抱き合ったまま横向きに寝た体勢になる。
もちろんこの間、キスは続いてる。頭の位置を調整して、舌を噛んだり噛ませたりなんてことはしない、激しい動きにも関わらず絶妙に同じ距離をキープ。
超感覚さんは今、無駄に冴えてる。
キスの口を離して、落ち着かせようと微笑みかけた。
調布は、呆然自失。
僕を見る視線には、明らかに畏怖の色があった。
「何、今の、あなた、いったい、――!?」
「怪我はないよな?よかった。」
あらためて、誠実に(と僕が思う態度で)謝罪する。
調布に心配をかけてしまったこと、謝る。
もしかすると、調布の気に障るような行動をとってしまったかもしれない。
でも、今、調布と交わしたようなキスなんて、もちろんしてない。
もちろん僕は、国領とセ〇クスもしてない。うん、たぶん国領は処女だよ、知らないけど。この前そう言ってたし。
僕は調布が好きなんだ。愛してる。
いろいろなことがあって、今は説明できないんだ。でも、必ず説明する。
調布は、僕の大事な人だ。
大事な人を傷つけちゃったんだ、それは僕の罪だ。
いくらでも殴って蹴ってボコボコにしてくれて、いいよ。
最後の一言を言うのは勇気が要った。
だって、いくら超感覚さんがあると言っても調布は相当強い。僕はボコボコになりたくない。
本当に避けたいけど、どうしてもってんなら、ボコボコにされるのもやむなしだ。悪いのは僕だし。
そう思って、言った。
でも、どうもこの一連の流れで、調布は毒気を抜かれたようだ。
許してくれとは言わない、でも僕を離れないでくれ。
そう、調布の目を覗き込んでいうと。
ごくっと唾を飲みこみ。
調布は、コクコクと頷いた。よしっ。
そして、しばらく沸騰した鼓動が静まるくらいまで、抱き合って。
「ごめんなさい。志野、あたしも悪かった。」
ハルカの態度が、なんか変で。
もしかするとあなたたちが、その、デキちゃったのかと思って。
え?
いや、いいのよ。でも何かは、あったんでしょう?
それに、デキちゃったのなら、――それはそれでしかたないじゃない?
あなたはあたしのモノじゃ、ないし。
だいたい、あたしはそんな、――あなたにとやかく言えるようなキレイな女じゃない。
あなただって、知ってるでしょう?あたしのこと。あはは。
でもなんか、さっきはとにかく頭に来ちゃったの。ごめんなさい。
もう、いいの。あなたの心も、なんだか分かったし。
何があったにせよ、あたしはあなたのことが好き。
見放されると思った、ですって?
あら、見放されるかと思うのは、あたしの方。
とんだ暴力女だって、思ったかしら?
調布はそう言って、僕の体に回した腕に力を込めて。
仔犬のように頭をぐいぐい擦り付けてきた。
「」
野球帽が外れ、ポニテの髪ゴムから少し外れて乱れた髪が、僕の頬や首とかに当たってこそばゆい。
そう調布に言うと、むしろ擦りつけは激化した。
明らかに意図的。調布さん、性格悪いっす。
「ねえ、志野。」
落ち着いた調布が、さっきみたいな恐ろしい笑みじゃなくて。
すごく柔らかい、幸せそうな笑みを向けてきた。
「ねえ、あなたこそ。
放したりしないでね。あたしのこと。」
絶対に離れないよ。少なくとも僕の方からは。
そう、言うのだが。
「そんなんじゃダメなの。離れる!ってあたしが言っても、許さないで、縛りつけて。」
ん?
「いいの。いいから。」
調布が、また活力を体にみなぎらせて、
僕の上にのしかかってきた。
ぎらぎらした目を据えて、切れるような笑みを口元に浮かべて、僕に言い聞かせる。
ねえ、あなた。
あなたがどうしようもなく浮気性だってことくらい、みんな知ってるのよ?
ハルカもだし、クラスのほかの女の子たちにも、すぐ目が行くし。
つるちゃんの胸とか、見てたでしょう?
まあ、あれは仕方ないかもね。すごいのよ!?
でも、約束して。
あたしとみなりのところに、戻ってきて。
あたし、あなたが好き。あなたなしでは、たぶんダメになる。
あたしはあなたに、決めたの。
だから。
いつとは、言わない。
あなたと、――
そう言い募る、調布。
もちろん女の子にそんな直截的な言葉をたくさん言わせる僕じゃない。
もちろん、妨害して言わせないようにする。
まずは、脇に手をいれてくいくいっ、って。
びくっとして、もちろん言葉が止まるよね。
そこで、こっちがその言葉を言う。
「調布、僕とセ〇、!?」
直截的な言葉を言おうとしたら。
こんどは調布の唇が僕の唇を覆ってきた。
「ねえ、志野。そんなにその言葉、あたしに言わせたくないの?」
いや、そうじゃないけどさ。なんとなくさ。
ほら、言うのが恥ずかしいだろ?
そんな思い、女の子にさせるのは、――
「あら、男女同権の時代よ。日本国憲法にも書いてあった!
志野先生は、古いんだと思います!
だから、やっぱりあたしに言わせなさい。いつか、あたしはあなたと、セッ」
えいっ。
こんどはぐるんと、僕の上に乗ってた調布の体を腕で固定し足を絡めて半回転、いや1/4回転。
僕の左腕側にぐるんと90°移動。もちろん、地面に叩きつけないように注意するけど、びっくりした調布の言葉が止まる。
「いや、だからそれは僕に言わせてくれ。
こんど、そうだな、目標を達成したら!
調布、約束だ。僕は調布と、うぐっ」
こんどは調布に、軽く股間をひざ蹴りされた!反則だろ!
でもなんだか、さっきからのこのやり取りがすごくばかばかしくて、笑えてきて。
僕は調布と抱き合ったまま、笑いだしてしまった。すごく。調布も。
二人で顔を見合わせて、その言葉を言いかけて、吹き出す。
腹筋が痛いほど、笑った。色気づいたばかりで下ネタに興じる馬鹿な中学生みたいに。
こんなこと、前もあったな。でも、おかしくて、腹筋の痙攣が止まらない。
「はぁ、はぁ、はぁ。――ねえ、あたしはいいの。いいんだけど。」
調布は、息をようやく整え。
ちょっと汚れてしまった僕の服の肩あたりの砂を弾きながら、言う。
「あたしは、あなたが好き。
あなたが誰を好きになっても、あたしを振り向かせてみせる!
でも、みなりには。
みなりには、ちゃんと言い方を工夫して、伝えないといけないかも。
あの子、勘が鋭いし、繊細だし。
変に自責的っていうのかしら、背負いこんじゃうかもしれないから。」
「そうだ、そうだな。
ありがとう。みなりには、よく考えて伝えるよ。」
そのとおりだ。
調布は、正しい。
こうなったら、もう一回国領とも話をして。
紫藤とはちゃんと話ができるように、しないとな。
最大限の注意をして、紫藤に話をしよう。
そう、僕と調布は認識をすり合わせて、そして注意すべきポイントを把握したつもりだった。
しかし、紫藤は。
僕の、いや僕たちの予想を超えて勘が鋭くて、繊細で、思い込み強い子だということを。
僕たちがその後に思い知ることになるとは、そのときの僕たちは知る由もなかったのだった。