タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
第三者(国領ハルカ)視点です。
ちょっと迷いがあり、後で加筆あるいは改稿するかもしれません。
国領ハルカは、扉の前に立っていた。
目を転じると、ほとんど何もない殺風景な壁にかこまれた正方形の部屋。
どの壁面にも、扉がある。
天井にある蛍光灯のパネル。蛍光管のうち一本が寿命が近いのか、くらくなって端が橙色になって、ちらちらして、ときおり小さなピカンという音を立てている。
床はリノリウム。古びて、灰色がかった白と紺のパネルの一部は劣化して剥がれてるところもある。何か段ボールのゴミみたいなものが転がってる。それくらいだ。
あ、これは夢だな。
そう、彼女は気づく。
確か、昨日は。
小冒険をしようと、神社に詣でて。
竜神教の集落を訪れて。
竜神の娘に捕らえられて。
竜神の花嫁にされて、竜神に種を埋められて。
すごい怠さと寒さに襲われながら、彷徨して。
しのりんが助けに来てくれて。
試させてほしいと言い出したしのりんが獣みたいに盛って、ああいうことになって。
二人で眠りこんで、しのりんのアレが温かくて気持ちよくて。
起きて洞窟を探索して、崖を飛び越えて。
そして洞窟を出て、竜神の娘と話して。
明け方にこのハコヤさんたちの家に帰ってきて、ふとんに潜り込んだんだ。
だからこれは、きっとあの日蔭谷の家の下座の座敷に敷かれたふとんで眠りながらみている夢なんだ。
ただ、こんな夢は初めてだな。
扉を観察する。
不愛想な灰白色の扉。病院のそれみたいだが、ちょっと汚れている。
夢の中だというのに、不必要なまでにリアルだ。
ドア、あけてみるかな。
このままここにいても、仕方ないし。
そして彼女は、悲鳴をかみ殺す。
―――――
国領ハルカは、変わった夢をみることがある。
自分の夢もあるが、ときには。
人の夢を共体験しているのではないか、と思うことがある。
まだ母と暮らしていた頃。
おばあちゃんの家に、よく預けられてた。
そしておばあちゃんの出てくる夢で、おばあちゃんを脅かす悪者をやっつけた。
そんなことが、数回あって。
やがて、おばあちゃんのみている夢に
夢をみた、翌朝。
おばあちゃんが話す
それだけじゃない。
ごく時たまだが、親しい友人と寝ているときも、その友人と同じ夢をみたこともあった。
たとえば小6の、林間学校の夜。
好きでもない男の子が、
華麗な技で
翌朝、その友人はうれしそうに
あまり検証はできていないが、おそらくは。
一定程度の
そう、
もともと、彼女は不思議な夢をみることがある。
彼女のみる夢の多くは、たわいのないものなのだが。
ときどき、不思議にリアルな夢をみる。
自分の背中に羽根が生えて、高い高い空を、冷たい冷たい空気を切り裂いて飛んでいる夢。
バッタのような跳躍力を得て、迫りくる小鬼の軍勢を、びよよんと大きな崖に飛び乗って軽々と撒いていく夢。
スパイのようにちょっとかっこいいサングラスをかけて、アクション俳優みたいに華麗な身のこなしで銃撃戦をしかけてくる敵を制圧する夢。
すごくリアルなのだ。
そして、夢の中でこれは夢だと気づいている。
だけど、こんな陰惨な夢は、――今までみた覚えがない。
彼女の夢の傾向としては、とても異質だ。
しかし、この夢もとてもリアルだ。
彼女が悲鳴を噛み殺した、その理由。
彼女が開けたその部屋は、地面に血痕の跡がなまなましく。
ちぎりとられた臓器のようなものが、残されていた。
壁には、手首から先の部分だけが、磔刑のように釘を打たれた状態で、残っていて。
折れた骨が突き出てる手首の断面をみせていた。
なに、これ!?
何かのホラー映画の一場面のようだ。
もっとも国領ハルカは、まだその手のゲームなどしたことがないが。
近い将来発売される、洋館から脱出する場面で始まるホラーゲームみたいなぶきみな雰囲気。
どこか遠くでくぐもった唸り声が聞こえて、びくっと彼女は肌を竦ませた。
逃げなきゃ。
夢の中ではあるけれど、――怖い!
そうだ。
――これ、ボクの夢じゃないな?
誰の夢かって、いうと、――?
そう考えて、彼女は少し落ち着いた。
そう、これは、自分の夢ではない。
自分の夢にありがちな、あの怖ろしいことはあっても、どこか親しみのあるあの感じがしない。
たぶんこれは、――しのりんの夢だよ。
なんて恐ろしい世界なんだろう。
しのりん、なんて世界を心の中に隠してるんだ。
でもまあ夢に入れたってことは、しのりんとも
こわごわと、音のしない扉を開くと。
ホルマリン漬けにされた、無数の人体標本のアクリル水槽が出迎える。
いや、人体だけじゃ、ない。
それどころか、地球上の動物ですら、ない。
一つ目の巨人がいたり、美しくみえる長い耳の種族もいたりする。
怖っ!
それ以上、その部屋の中に入っていきたくなくて、引き返し。
こんどはかすかに機械音のする別の扉をすこしだけ。
そう、すこしだけ開けて隙間から中を伺う。
ええっ?
垣間見たものが信じられず、少し大きく開けて。
首を突き出して、見いる。
ドアの向こうには、床は1メートル四方くらいしかついてなかった。
その床、宙に突き出てる。
広い空間だ。
1辺、3、40メートルくらいか。
縦も、20メートル以上はあるだろう。上はさほどないが、下をみるとビルの4階くらいの高さに感じる。
蒸気が、はるか下から立ちのぼっている。
下には、何かの液体。おそらくは熱湯が沸騰している。
気のせいか、白骨やぐちゃぐちゃになった死体らしいものが散らばっているようにみえる。
そして、ギリギリギリギリと音を立てる、巨大な歯車が複数、部屋の中に設置されている。
巨大な機械の一部なのだろう。
この歯車を上手く伝って行けば、向かいの扉にたどり着けるな。あ、右側の扉も。左側も。
でも、これってあの竜神の洞窟の崖と同じだ。数か所、飛び越えたり歯車の上を走ったりしないといけない難所がある。
足をすべらせたり、服の裾を歯車に挟まれて引き込まれたりしたら。
多分、グチャグチャにされて。
あの下の死体みたいになるんだろう。
普通だったら、絶対できない。しない。
だけどこれは、夢の中だと分かってる。
なら、やりようはあるさ。
国領ハルカは、一度扉を閉める。
その場で、深く息を吸って吐き。
最初は軽くトントンと小さくジャンプ、そして大きくジャンプ。
大丈夫だ。
現実世界にはありえない力で、彼女は跳び。
器用に体を回転させて、4メートル近く高さのある天井を蹴って、また体をひねって着地する。
勢いをつけて、軽く壁を走ってみる。
もし見るものがいたら、驚愕しただろう。
物理法則を無視するように、
フィクションの中の、女忍者のように。
よし!
これなら、いけるよ。
また唸り声。そして、別の誰かの断末魔の叫び声。
近付いてる!
逃げなきゃ。
国領ハルカはさっきのドアを、こんどは大きく開け放つ。
足元から、熱気がふわあっと昇ってきて体を包む。
落ちてしまったら。
まあ落ちた時点でかなりの重傷だけど、息があったとしても茹であげられて死んでしまうだろう。
ぞっとしない。
最初の歯車までは、2メートルくらい、跳ばなきゃいけない。
夢の中の力を持つ
歯車は横むきに、つまり軸が上下方向になって回転している。
その直径10メートルくらいある、ゆっくりと回る大きな歯車の円盤の上に降り立ち、動きにあわせて。
次の円盤(歯車)には、飛び移らず優雅に足を進める。
しかしこんどの歯車、小さくて回転が速いな。直径5メートルくらい、回転も逆方向になる。
しかもこの歯車と噛み合ってるその次の歯車の回転軸に、鋭くとがった熊手のようなものが、ちょうど国領ハルカの胸から首のあたりの高さになるように設置されていて。
あやうくしゃがみこんで難を逃れたが、胸元を引き裂かれるところだった。
しかもすぐ次の歯車の軸には、足元付近に鋭い刃が回ってくるよう仕掛けられてる!
これもジャンプして躱した。
ようやくこの難所を通り抜け。
今度の歯車は、軸が水平方向、巨大な水車のように回転している。
その歯の上を、とっとっとっと駆け足で上っていく。
エスカレータを逆向きに走るような感覚。
目まぐるしく足を動かして、階段より少し小さい歯車の歯の上を走っていく。
ゆっくりと、廻る歯車の頂点付近に近づく。
頂点付近で、走りながら見回す。
横向きに回転する歯車を複数かいくぐったせいで、方向感覚がずれてきてる。入ってきた扉は開け放ってある、その向かいの扉か、右手の扉か。
左手の扉は、ちょっとここから行くのは難しそうだな。
今、乗って走ってる巨大水車歯車。
ときどき不規則に、歯車の歯がギザギザに尖らせてある。
靴があればまあ、大丈夫な範囲ではある。でも気付かずにそんな歯に乗ると、不安定で転びそうになる。
それだけでも、十分に致命的。
さっきの罠といい、なにか人をいたぶるような悪意を感じる。
一筋縄ではいかないかもしれないな。
とりあえずは、正面の扉を試そう。
水車歯車を降りて。
定期的に裏返る板の上を走り(彼女は、板の半ばで裏返る直前に高く宙にジャンプしてやりすごした)。
突然横殴りに空中に弾き飛ばすかのように、回転してくる横木をかいくぐって。
向かいの壁の扉を開け、飛び込む。
ふう。
何もない部屋だ。
だが、どこかで今度は女の人の叫び声。
助けに行かなきゃ。
―――――
いくつかの部屋を通り抜ける。
悪夢と呼ぶにふさわしい、悪意に満ちた罠。
あるドアの向こうの部屋。
5センチ角くらいのサイコロ状に、きれいに切断されまくった男の人の死体をみた。
夢の中でなければ、吐いてたところだ。
もちろんその部屋には入らず、別の扉にした。
別の大きな部屋では、巨大な蜘蛛の巣のようなものに囚われた複数の男女。
息はすでにないようだったが、体液を吸いつくされた顔にはおぞましい恐怖の表情が浮かんでいた。
隅の方にまとめてすててあるしなびた古い死体は、うつろな目を
この巣の主は、留守のようにみえたのだが。
物音を立てないように、そっと潜り抜けて。
次のドア近くの最後のところで、足元付近に張られた細い感知糸を踏み抜いてしまい。
わさわさわさと何かが奥の穴から出てくる気配に、
あわてて次のドアに走り込む。
背後で、ドアにぶつかる巨大な生き物の気配がした。
さらに数個の部屋をかいくぐり。
彼女は、見知った顔をみつける。
「しのりん、大丈夫!?」
「っ!国領!?来るな、逃げろっ!」
まあ、複雑な思いがあるとはいえ。
目の前には、
その顔には、疲労と汗が浮いて。
対峙してる。
相手は、大きな男の人だ。
逞しい筋肉、血管がうすく浮き出た太い腕と脚。
しかし いわゆるボディビルダーとは違う、適度に筋肉を包む柔らかい脂肪。
昔のローマ人のような、貫頭衣みたいな服装。
頭には毛はない。剃り上げられているのか。
落ちくぼんだ、どこか残酷さを感じさせる目が。
対峙していた
大男の手には、――曲がりくねった、奇妙な剣。
フランベルジュみたいな、波打つ直剣ではない。
何かの儀式用なのだろうか、悪夢の中みたいな邪悪な印象の刃。
ショーテルって、言ったっけ?あれに近いけど、もっと複雑な。クピンガを大きくしたような感じで、でももっと機能的で、――。
「国領!」
ぼうっとみとれてた。隙きがあった。
一瞬で接近してきていた男の人と
そしてはじめて、
志野の手の武器を避け、大きな男の人は間合いを取って。
ぺろり、と舌を出して枝分かれした剣の刃を舐めてみせた。
「国領、逃げるんだ!」
「そんなわけに、いかない、よっ!」
筋肉質の大男は、しのりんをその剣で追いつめ、嬲ってたみたいだ。
志野は大型のモンキレンチを手に持って相手の剣を払ってたみたいだけど。
剣と打ち合わせるには、モンキレンチは重すぎるだろう。
鍔もないし、一つ間違えれば指が飛んじゃうよ。
体のあちこちに小さな傷があり、血が流れてる。
まあしのりんには、感謝もあるし恨みというかなんかもにょもにょするところもあるんだけど。
でも、ボクの命を救いにきてくれて、あんなことまでシた仲だ。
逃げろだなんて、水くさいこと言うなよ。
夢の中だけどさ。やりかえしてやらなきゃ!
そう、
背中をくるりと向け、背後の壁に向かって走り出し。
壁を走って駆けあがり、重力に逆らうように天井を奔り、――
天井から跳んで、大男の頭を蹴り飛ばす。
夢の中に特有の理不尽な力が、
夢の力で強化された脚力に、大男が大きく吹き飛ばされ。
その目の明らかな驚愕の色を、
「しのりん、今だ。行こう!」
「あ、ああ。これでもくらえ!」
あ、なにそれ?
手作り手榴弾?瓶が栓をしてあって、火縄が付けてある。
大男が吹き飛ばされたときに、素早く取り出したんだね。
その冷静さはすごいと思うけど、――
でも、まずいよしのりん。
夢の中とはいえ。
夢の中だって、人は死んだら、──
それを志野が男に投げたあと、ふたりは別の壁の扉から飛び出し。
背後の扉の背後で起きた爆発の、余波を感じたところで。
―――――
背後の志野も、ちょうど同じころに目覚めたらしい。
もぞもぞとして、そして起き上がって。
――覗き込んできたよ、ボクを!
寝たふり、寝たふりだ。すうすうと、知らない感じに息を自然に吸って、吐いて。
顔、赤くなってないかな。大丈夫だよね?
野犬の凝視は、去り。
志野は台所に向かい、ハコヤさんにあいさつしてるようだった。
いや、ボクも最初から起きて挨拶すればよかったな。なんで寝たふりなんて、しちゃったんだろう。
乱れた鼓動が整うのを待って。
そしていかにも今起きましたというふりを装って、志野とハコヤさんに挨拶をするのだった。
―――――
朝食の間は、完璧に演技できていたと思う。
同居する親戚一家にすら、ボロを出さないよう日常的に演技してたんだし。
体操とダンスに嵌ってからは、演技に興味もあって。
そして、もともと天稟もあったんだろう。
自然な演技は、彼女の得意とするところ。
ちょっと変わってるけど、それなりな女子高生をハコヤさんと志野の前で演じる。
朝食を食べる彼の目に、安心7割寂しさ3割みたいな色が浮かぶ。
――わかるよ?
ボクも同じなんだ。
でも、割合は逆だね。安心3割、寂しさ7割かな。
なんかボクのほうが損してる。だから見栄をはって。
何事もなかったように振る舞うんだ。
でないと、キミに負けた気がして、悔しいし。
ボクたちの間には、未来はなかったはずなんだ。
最初っから、終わってしまってた物語。
あの夜の
そしてボクが死ぬことで、贖罪がなされて美しく終わるはずだった、小さな物語。
しのりんの心にキズを刻んで、でもいつかは忘れ去られ。
そう、たとえば。
引退した後で、しのりんが日の当たる縁側でロッキングチェアにでも腰かけて。
熱いお茶でも飲みながら、広げた新聞の日付にふと思い出してくれる程度でいい。
あ、あの子が死んでもう**年なのか、みたいな。
少なくとも、死者はいつまでも若い。
彼の心の片隅にしまいこまれた、歳を取らないままのセピアの写真。
それで、いいんだ。
あの洞窟の夜。たしかにそうボクは覚悟していた。
それなのに。
運命は変わった。
変えられてしまった。
わかってるのかな、美味しそうにお味噌汁なんか啜ってるけど。
キミが変えちゃったんだよ?
ねえ、しのりん。
どうして、ボクを救ってくれたのかな。
もちろん救ってくれて、すごく感謝してる。
でも、それでボクはたぶん普通の女の子としては死ねなくなった。
肉体に閉じ込められた堕天使は、もしかするとこんな風に感じるんだろうか?
生きることの、歓びと哀しみを知って、――
心の、心臓の底に、なんか正視できない、熱い何かがあるんだ。
それを、見てしまったら。
正面から見てしまったら、噴きあがってすべてを焼き焦がしてしまいそうな、熱い熱い何か。
だからダメなんだ。みちゃダメ、考えちゃダメ。
見てないふりをして、やりすごすんだ。
今までだって、そうしてきたじゃないか。演技をして、仮面をつけてやり過ごす。
でも、今。
――それがどうしてこんなに、苦しいんだろう。
どうして、ボクたちの運命は交差してしまったのかな。
ボクは、キミを知らなければ。
きっと普通に、終われてた。
平凡な、恋を知らない女の子として。
誰にも知られず、ひっそりと、いつのまにか死んで。
あの竜神の娘は、義理堅いからボクの亡骸を届けてくれたかな?
そしたら、学校では数日間くらいは机に花が飾ってもらえたかな?
あ、みなりんもさとみんも、きっと悲しんでくれただろう。
でもしのりんは約束どおり、何も言わないでいてくれたはず。ほんとすごい不器用だもんね、キミ。
伯母さんは、――伯母さんは悲しんでくれただろう。伯父さんも。
でも、それだけ。
20年後とはいわない、10年後にはもう誰の心にも残っちゃいない。
でも、なんの運命の悪戯か。
ボクとキミの
ボクはこれを、知ってしまった。名づけちゃいけない、この心の熱いものを。
でも、ボクは知ってる。キミも知ってるよね。
ユークリッド平面では、交差した直線は、二度と交わることはないって。
――考えないようにしてる。考えちゃいけないから。
想っちゃいけない、キミのことを。
よく使ってる仮面の一つを呼び出して、顔に被って。
脳の表層1センチくらいだけで、考えて、見て、聞いて、しゃべって、笑って。
生きてるふりをしよう。
得意なんだ。演じることって、ね。
高まった鼓動がなにさ。心の熱がなんだっていうのかな。無視してしまえばいい。
心臓なんて、ただの血液のポンプなんだよ。
なのに。
――なのに、油断すると。
ボクの心臓は、不規則にリズムを乱す。熱い何かがにじむ。
そう、キミをみてるときにね。
裏切り者。
キミもキミだよ。
そんな勝手に、一人で寂しそうな目をしないでよ。
ボクがどんな思いを感じてるか、知らないくせに。
ぶちまけてやろうか?
言葉のナイフで、キミの無防備な心臓を、ひと突きしてやりたい。
全部をぶち壊して、親友を裏切って、そして全ての世界を敵に回して、――
――ダメ、ダメだ。
別のことを考えよう。
ちょうど熊よけに鍋をかんかん叩きながら帰る田舎の小学生のように。*1
――午前中は、たっくんと遊ぼうかな。
いっぱい遊ばせてあげなきゃ、ね?
午後は、みなりんも来る、さとみんも来る。
きっと忘れられる。一夜の幻想なんて。
しょせんは熱い溶岩だって、やがて冷えて固まって、このどっしりした大地の一部になるんだ。
心づくしの朝食を食べ、当たり障りもなくおしゃべりをしながら。
そのときは。