タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
志野視点です。
後で少し修正・改稿するかもしれません。
マコトさんとナギさんの在宅ワーク計画。
今候補に上がってるのは、チラシとカタログの封入作業だ。似たような作業について複数の会社から求人広告が出ているが、どれも単価ははっきり言って安い。
ただ、在宅で仕事ができる。
受け取りや納品で会社に行く必要があるが、これは僕が代わりに行けばいい。
ただ、自転車だとあまり量が運べない。だからサンプル品封入とか箱詰めの方が少し単価は高いけど諦めざるを得なかった。
二人分を請け負うのでなく、最初は1人分、――多分、マコトさんかな、――がやってみて、そしてよさげならナギさんもすればいいか。
他に仕事があって、これ専任ではないという建前にするかな。
でないと、足元を見られてすごい大量の仕事を振られてしまうかもしれない。
「名前や住んでる場所とか、飯場の人たちにはバレないよね?大丈夫だよね?」
紫藤が少し眉をひそめて、僕に聞く。
言葉とは裏腹に、心配そうだ。
「そこなんだよな。」
まあ、まず大丈夫だと思う。
この求人雑誌の掲載広告をみる限り、候補になってる会社はどれもつながりなどありそうにない。業種も違うし、所在地も離れてる。
ただ、多賀島市は政令市ではあるが、東京みたいな大都市とは違う。意外なところで世間の狭さを知ることがあるんだ。
親戚つながりとか、取引先つながりとかね。
やっぱり最初だけは僕の名前で請け負って、実際の作業を二人にやってもらおうかな。
納品や仕事の材料の受け取りは会社もやってくれるらしいが、「受取・納品に来れる方優先」と募集広告に書いてある。
そっちの方が僕たちにも都合がいい。この場所を知られるのも嫌だ。
ただな、高校生に発注してくれるかどうか。
受注できたとしても、自転車じゃちょっと不安だな。バイクが欲しい。まあこれは取らぬ狸の皮算用だが。
「あと、どのくらい飯場やナギさんの元の勤め先が、お父さんたちを探してるか、だよね。」
「それなんだが、――」
例の国領を探しに行ったときの話をする。ほら、途中で飯場関係者の話を立ち聞きしたよね。あれ。
ナギさんを働かせてた組織がナギさんの死に確信を持ってる、って点が気になった。
だからナギさんには再度、なんか薬とか飲まされたり注射されたりしてなかったか確認した。
考え込むナギさんには、心当たりはなさそうなのだが。
「やはり追跡装置の関係くらいしか、思いつきません。」
たしかに、追跡装置らしい妙な装置を飯場に残してきた。
だが、追跡装置らしい妙な装置を置いていくのは、当たり前のこと。
なぜ、それで死んだと確信できるのだろうか。だから、やっぱりそれではないんだと思うが、わからない。
首をひねってるナギさんには、何か隠している気配はない。
「ただ、――失神したりしてた間に何かをされたかもしれません。」
ナギさんは、言葉を濁していたが。
ナギさんが売られることが決まり、孤立させられた状態の間。
特に紫藤父友人らによる連れ出しOKになった後の責めは苛烈で、何度か失神してしまったようだ。
ただ、そのような苛烈な責めを受けたのは、ほとんどが客の手によってのこと。それ以前にも、店での拷問で気を失ったことがあったようだが――。
竜神側に売り飛ばすと決めた段階より前に、何か妙な薬を仕掛けたりした?
今もナギさんは存命だから、その薬(かその禁断症状)はナギさんに害を及ぼしていないことになるのかな。
ん?
ふと今思い出したことが、妙に気にかかりはじめた。
たしか紫藤は、ナギさんは竜神教に売り飛ばす、と紫藤継父とその友人が話しているのを聞いたという。
国領の話によれば、竜神の娘は侵入者に対し拷問や殺人を行ったと彼女に語っていたそうだ。
おそらく真実だろう。彼女には、冷酷な一面があるのは確かだ。
僕もあっさりコロコロされるところだったし。うん、忘れてないよ。
他方で竜神への敬愛は嘘に見えなかったし、僕たちに対しても世話好きだったり、温かい人柄が垣間見えた。
だからちょっと、そぐわない気がするんだ。人身売買するってことが。
だけどな。世間一般の観念とは違う善悪観を持ってたりとか、一筋縄ではいかないやつなのかもしれない。
だから非情にも、生贄用あるいは種付け用の女を買い集めたりしていた可能性もあるな。
もし、たとえば。
ちょっと昔の人みたいに、竜神の娘が身内には優しくてもよそ者には冷酷な奴だとしたら。
調布の言うように、骨の貸し出しをめぐって僕らが裏切られて骨や命を奪われたりする可能性もある。
竜神の娘自体は、これまでのところは、イカレてはいても、仁義には厚い感じがしたが、――。
僕はこういう判断が苦手だからな。自分で自分の「人を見る目」なんて信用してない。
ただ、この事実は頭の隅においておこう。
一度、竜神の娘にカマをかけてみる必要があるかもしれない。
このことは口に出さずに。
ナギさんとマコトさんの社会復帰計画について、思考を戻す。
本格的な復帰はともかく、外出制限をどうにかできないかな。
一日中、いつまでかも分からず閉じ込められてたら気が詰まるだろう。
あまり奇異に感じない程度に変装すれば、ナギさんも外出行けるんじゃないだろうか。
ナギさんはそこまで特徴的なところはない。中肉中背、歩き方とかも別に特徴はない。
夏だから麦わら帽子とかかぶって、日よけのほっかむりでもしていれば、組織の人もいなさそうな、郊外の住宅街のスーパーくらいは行ってもいいんじゃないかな。
紫藤も、ハコヤさんはそれで大丈夫じゃないかな?と思ってるみたいだ。
あまり特徴のない容姿だし。
そして。
「あとは、お父さんだよね。」
「うーん、大丈夫じゃないかな?」
マコトさんがどのくらい飯場に捜索されてるのか、分からない。
死亡したと思われてるナギさんと比べると、リスク高いだろうか?
でもこれも麦わら帽子でもかぶせてちょっぴりイメージ変えて、飯場の人が寄らないようなところなら。
大丈夫じゃないかな。
わからん。調布と要相談かな。
もう一回、飯場の人の話を盗み聞きたい。どんな状況なのか。
あと、脱出組は人間ドックに入ってもらう。
過酷な生活で体壊してないか、病気もらってないか、ってのをチェックする。
これは、たっくんも受けてもらう。
脱出組にはすでに日程だけ予告してある。もっとも脱出組はまだバイトも始めてないし、なにも予定がないから心構えしててね、ってだけだけどね。
インターネットがまだ普及していない時代、情報収集は苦労した。
電話帳とかを見たり、親に評判のいい病院や健診センターを聞いたりして情報を集め、電話をかけて調整した。
婦人科健診まであるところはなかった、これは別に産婦人科の病院で受けてもらうことになる。
本当は、そっちを早く受診すべきなのかもしれないんだけどな。ナギさんは語りたがらないし、僕も気が引けて聞けてないが、不特定多数の客にヤられてたんだし。
ちょっと奮発して一泊二日の泊まり込みコースにしたが、かえって気分転換にいいかもしれない。
顔が割れたりするのが心配だが、飯場や売春組織が人間ドックに人を入れたりはしないだろうからこれはもうリスク覚悟でやることにした。
街をフラフラ歩くよりは、安全だろうし。
ナギさんに、ご心配をおかけして申し訳ありません、と謝られる。
でも高校生なんかにそんなに腰低くしなくていいっすよ。こっちまで申し訳なくなるっす。
もちろんバイトは人間ドックが終わった後だな。
その話が流れて、バイトの話にちょっと戻ったところで。
「それでさ。わたしもアルバイトしてみようと思うんだけど。」
紫藤がそう言ってくる。
いや、それあまり必要性はないんじゃないかな?と反射的に思う。
ほら、前のバイトで悪い虫がつきそうになったし。
ただ、紫藤も言い分があるらしい。
一方的に僕がいろいろ背負い過ぎだし、お金のこともある(ここらへんのことは、紫藤はひどく頑固だ)。
少しでも働いて返したいんだと。
まあ、そういう生真面目さが紫藤のいいところでもある。
「ボクもバイトする予定だよ。みなりんも、ボクと一緒にやるんなら、いいでしょ?」
さっきまで純情少年をからかってた国領が、横から声を掛けてきた。
まあ、国領ならな。しっかりしてそうだし、見た目より気も強い。
国領が一緒にいてくれるなら、悪い虫が紫藤につくのを防げるだろう。
ただ、バイトするなら事前に情報教えてね、と言っておいた。
―――――
国領が今度は紫藤姉弟と何やら文学的談義をはじめてる。
ナギさんとマコトさんはどこか遠慮しいしい、家の修繕の話とかアルバイトのこととか話してるみたいだ。新婚夫婦みたいに初々しい印象があるな。
調布が僕の横にやってきた。
さっきも一瞬見せた、どこか拗ねてるような、恨んでるような瞳。
怖い。
「悪かっ「聞いてないわよ。」」
ぐい、と腕を掴まれる。
「すまない、悪いと思ってる。ただ、あの時は、――」
まあ、今にして思えば。
国領をヤったのが、搔爬的な役割を果たしたのか、それとも○液が効いたのかよくわからない。
前者は悉く失敗したと国領が言ってたから、後者だろうな。
それだったら、ペットボトルか何かに僕が精○を出して注ぐというのもありだったかもしれない。
そうすれば、国領にあんな恥ずかしい思いをさせたりしなくてもよかったかもしれないのに。
冷静になった今は、そう思うのだが、――。
「繰り返し実験が効かないときには仕方ない。あなたの悩みは無益なのよ。
その、――あなたのソレが掻きまわしたこと。そしてそこから分泌されたものがあったこと。
その両方が、必要だったかもしれないじゃない。
あなたは決断して実行した。そして結果としてハルカは助かった。
それが『そのときの正解』だったんだから、文句はもう言わない。
あとは、あたしたちの傷心を癒してほしいだけ。」
そうそう、わかってるでしょうね?
あたし、期末試験でもらった、あなたへの命令権もあるのよ?
そう言って、調布が思わせぶりに、他の人たちに聞こえないようにささやく。
淫靡だ。気づくと、そっと調布の手が、僕の太腿に乗せられてる。
「いや、それを言えば僕だって。」
さっきの勝負で、命令権を獲得したぞ。
「あら、楽しみね?」
ええ、二言はない。
あたしに、どんな命令をしてくれるのかしら。
変に気遣ってぬるい命令なんかしたら、軽蔑するわよ?
どうしてか軽く上目遣いになって、そう言う調布。
その横に軽く崩した脚に、ジャージごしに透ける腰つきに、Tシャツを押し上げる胸に。
目が吸い寄せられ、軽く勃ってしまう。
我ながら品性下劣だ。
―――――
ちなみに、外出の話や人間ドックの話も調布に相談しておく。
今回の件で、ちゃんと報・連・相をしておかないと、と痛感した。
ナギさんとマコトさんの外出の件も、人間ドックの受診の話も、調布は特に問題ないと考えている模様だった。
どちらかといえば危険なのはみなりのお父様かしら。ナギさんは、捜されてないんでしょう?
でも多分、お父様も大丈夫じゃない?
もちろん、その飯場が現場持ってる周辺とかはさすがにヤバいけど。
そんな反応。
「ナギさんたち、外出させるんなら。あたしは大丈夫と思うけど。
この近所で安全に散歩できそうな道、探してみない?」
ここの裏山。たしか、この工場の持ち主が所有してるんでしょう?
どうせこの近所の人には、挨拶しちゃったんだそうだし。
気晴らしだけなら、誰がいるかわからない街中を歩くより、山道とかでもいいかもしれないわよ?
そう、ひじを反対側の膝にあてて腰をひねりながら調布が言う。
そうだな。そのくらいはいいかもしれない。
僕たちで、今、調べに行ってみる?
「それいいわね。――みなり!ハルカ!ちょっと外に出ない?」
あ、紫藤弟も行きたそうな顔してるな。
連れて行ってあげようか。
―――――
この家と工場の北側は、一度はきれいに整地した形跡があり、家が数軒立つくらいのスペースがあり、山側の斜面に擁壁が作られている。分譲するか工場を拡張するつもりもあったのかもしれないが、結局は一部を菜園として利用した以外には、放置されていて雑草や灌木が茂っている。
菜園もおそらくここ2、3年は使ってないんじゃないかな。畝が残っているもののなにも栽培されてなくて、雑草が侵入し始めてる。
ここらへんの草取りするだけで、相当労力を使うだろう。
僕たちは工場の東側(僕らが借りてる家の反対側)の私道のつきあたりから、山に入った。
踏み分け道があるのは、人が通ることがあるからなのか、あるいはけもの道か。
「先輩、意外と草、生えてないんすね。」
「森の中はね。日光が高い木で遮られちゃうから、草が成長できないんじゃないかな。」
僕と紫藤弟が先頭、そして紫藤、国領、調布の順だ。
谷沿いに道があるが、一度、数段ずつの階段ピラミッドみたいになってる擁壁のところを上がってみる。
かなりの急斜面、ありていにいえば崖なのだが、擁壁上に柵はない、
見晴らしは良いが、高所恐怖症的な感覚を味わえる。
「あっちの方が、家なんだね。」
ちょっと眩し気に紫藤が指差す。確かに、ざくろが丘団地が黒々と見える。
「こっちの方、遊びに来たことあるの?」
「あの駄菓子屋さん。ほら、ざくろが丘からの坂道の下りきった、あそこのあたりは、よく来てたよ。」
その近くに、別のもう少し大きな公園もあるそうだ。
たっくんを、そっちにも連れて行って遊ばせようか。
そういえばたっくんも捜されてたりしないかな。大丈夫かな。
ある意味、誘拐状態になってるわけだが。
また山歩きを再開。
山を一つ越え、さらに踏み分け道は続く。
あまり管理状態はよくない杉林を縫って続いている。倒木が道に倒れ込んでるところもあった。
だがこの獣道レベルの道をしばらく歩いていると、少しましな、人間の手が少し入っているであろう道に合流する。
もちろん、遊歩道みたいな整備は一切なされていない。
ただ、ところどころに杭が打ってあったり、最低限の土留めがなされてたりする。
誰かがこの道を定期的に使っているようだ。
そのうち、小さな水流に出くわす。
水量はそれほど多くない。ただ、雨が降ればもっと増えるんだろうな。
すごくいい加減に倒木が2本渡してあり、そこを超えて、さらに道は続いている。
少し、この流れの傍で休憩をとることにした。適当に(増水のためか)草木がなく展けてるし。
出がけにナギさんが詰めて渡してくれた、麦茶の水筒を回し飲みする。
男子はコップから口を離して水を流し込め、と圧力をかけられた。気持ちはわかるがひどい。
麦茶は少しぬるくなってるけど元気が出る。
「なんかいるよ!」
すこし淵になってるあたりに、ついついと泳ぐ小魚、そして蜥蜴のような姿。
「アカハライモリだな。――あ、触ったりするなよ。」
国領が手を浸して捕まえようとしているのを見て、あわてて警告する。
「え?ペットショップにも置いてあるよ?」
かわいいのに、と国領は不満そうだが。
確か皮膚から毒を分泌するんじゃなかったかな。
それで目を触ると、失明するぞ。
そういうと、ぞぞっと国領は水に浸してた手を引いた。
紫藤弟と紫藤が頭を寄せ合って大きなかたつむりを観察してる。仲いいな。
あのジャンボタニシ(リンゴガイ)とかいうやつじゃない、普通のかたつむりだ。
川沿いの道は、どうも人が歩いた形跡がある。
ところどころに送電線の鉄塔があるところから判断すると、おそらくはこの山道、送電線の保守路ではないかと思う。
山を1つ登って小川を渡り、再度山頂近くにつくと、大き目の鉄塔があり、あたりは木や枝が刈り払ってあり、開けてる。
ここまで小一時間。ちょうどピクニックにはいい感じだな。
みんなで鉄塔の基礎部分あたりに腰かけて、休憩した。
「どこにつながってるんだろうね。」
紫藤が僕の横に並んだ。
かすかに汗ばんでるようで、ハンカチを出して拭き、僕を見上げてにこっと笑った。
僕も笑い返す。まだ少し国領のことで僕の側には罪悪感があるが、紫藤には不自然なところはない。
でもきっと傷つけてしまっただろうな。悪いことをした。
二人きりの時に、もう一度謝ろう。うん、膝にすがって、できれば腿に頭を押し当てて、――。
「近いうち、わたし、引っ越しになるかも。まだ先だとは思うけどね。」
「!」
そうか、引っ越しか。
突然だったので、心臓に悪かったが、ありうることだ。前も聞かされたし。
聞くと、紫藤継父から荷物の整理と荷造りを命じられたとか。
例の住み込みの奨学生の話、ほぼ本決まりのようだ。
ただ、正式の案内はまだ来ていない。だから、家を売って一時的にアパートに移り住むのかもしれない、とのこと。
奨学生の話は、紫藤にとっては良いことだと思うのだが、――
「心配しないでね。まだ補習中は、通えるみたいだから。」
そこから先は、たぶん、転校になっちゃうね。
でも大丈夫。わたし、しつこく会いに来るよ!
そう、小さいが最近は少しあるな、と分かりはじめた胸を張る。
「正式の案内が来てないって、まだ先なんじゃない?」
調布も聞きつけてやってきた。
「なんていうのかな、ごく少人数で、公式の募集とかないみたいなんだよ。」
だからパンフレットみたいなのも渡されてない。
正直、条件も明確じゃなくて、紫藤継父経由で口頭で伝えられただけ。
「大丈夫かな、それ。」
僕だったら、紙とか印刷物がないと信じられないかも。
逆にいえば、紙とか印刷物があればあっさり騙されそうだ。
「わたしもだよ。でも、」
結構有名なところだし、大丈夫だよ。
特別奨学生じゃないけど、文芸部の人でそこの奨学金もらってる人がいる。
そう紫藤は言う。
「お引っ越しの手伝い、もちろんいるよね?重いもの動かすのなら呼んでよ。」
1回目の頃よりは、多少体力もついてると思うんだ。
それに、紫藤が育った家だしね。なんか見てみたい。
「あたしも。――ただ、あなたのお父様とは、あたしは顔をあわせない方がいいかも。」
「わかってるよさとみん、大丈夫、大丈夫。志野くんも、千里もいるし、たぶん大丈夫だよ。でもどうしても必要になったときは頼むね。」
紫藤弟は国領となにかイラストのお絵描きか何かのことで話をしてるみたいだったが、自分の名前が出てこっちをみた。確かに気になるよね。
まあ、千里少年も男の子だ。ちょっとまだひょろっとしてるけどな。
だいたいあのガタイのいい紫藤継父がいるから、僕はお呼びでないかもな。
紫藤継父には、僕は覚えられてるか怪しいけど。
まあ奨学生のことは、本決まりになってからでいいか。
とりあえずお盆までの間は、竜神関係をどうにかしなきゃ。
転校が来学期からだとすれば、まだ時間ありそうだし。
調布と同様、僕もこのときはそう思っていた。
紫藤と調布は鉄塔の下、そこら一面に生えてるスギナを引っこ抜いて、草相撲を始めている。紫藤は真剣だし、調布も数回やって敗北を喫してからかなりマジモードに。
結構負けず嫌いだよね、調布。
まだ日は高いけど、そろそろ戻るかな。
このルート、それらしく蚊よけの網とかをかぶってもらって、マコトさんに散歩道にしてもらおうかな。蚊は意外なほどに少ないけど。
そう、僕はおやつで配給されたココナ○ツサブレをかじりながら考えていた。