タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
人によっては苦手な百合気味展開かもしれないので、悪い予感がしたら次々話くらいまで飛ばしてください。
(紫藤みなり視点)
ぎゅっと抱き合って、そうしてしばらくおだやかな時を過ごして。
だんだん涙も引っ込んで、元気も出てくる。
そして思う。
恥ずかしい。
親友のさとみんとはいえ、やっぱり、ね。
伏せてた顔を上げて、親友の顔をみる。
慈愛の表情なんだけど。なんだけど。
すこしだけいじわるそうな、茶化すような表情。
口角がすこし、上がってるんだ。
これは、うん、わざとなんだと思う。
わたしが落ち込みから脱したな、ってわかって。
わたしの気分をアップに切り替えるためにやってるんだな。
だから、本当に「人の気もしらないでっ!」みたいなことは思わない。
でも、やっぱり恥ずかしいし。
なんか、このほのかにあたたかい、はげましの目でみられたことへの不満があるんだ。
自分でも頬がふくらむのを感じる。唇が尖るのを感じる。
「ごめん、みなり。でもね、」
みなりが、とっても可愛くて、微笑ましくて。
だから、思わず頬が緩んじゃったの。
そう、今はもう公然と、にまにましてるさとみんが、いう。
うん、わかってる。わかってるんだけどさ。
こういう場合は、ちゃんと小さな不満を表明しておくべきなんだ。
さとみんも、それを期待してこの挙に及んだんだよ。
男の子どうしもそうなのかもしれないけど、女の子どうしでは、こういう「わかっててやる、お約束のやりとり」みたいなのが、だいじなんだ。
帰結がわかってる、一種のプロレスっていうのかな?
うん、だからわたしもそれに乗る。とうぜんだよ。
「ねー、さとみんっ!怒るよ?」
「もう怒ってるじゃない、みなり。――でも、ごめんなさい。」
ちょっと真面目な顔になったさとみんが、わたしをまたぎゅっとする。
気持ちいい。それに、この胸の弾力!
男の人だったら、きっと「うひょー」とか言って飛びつくんだろうな、ルパ○Ⅲ世の映画みたいに。
うーん。なんだかちょっとだけ文句を言っても許される気がしてきた。
「さとみん、悪いんだと思ってたら。
ちゃんと、償わないといけないんだよ。罪と罰なんだ。」
わたしはそんな言葉を口走る。
罪と罰、わたしはソーニャに感情移入してしまうからかな、ラスコーリニコフが好きだ。
それはそうとして、これもお約束だね。お約束。
わたしがちょっとしたわがままを言う。
それをえーっ、とか言いながらさとみんが受け入れて甘やかしてくれたり。
あるいは、それはムリ、でも~ならいいよ?みたいなことを言い合って。
そして、どうでもいいような折り合い点を見つける。
あれだ、お猿さんの毛づくろいと一緒なんだ。
ノミをとることなんて、本当の目的じゃないんだ。
相手のためになにかしてますよー、って示すことや。
それまでのやりとりでのじゃれ合いこそが、目的なんだ。
「そうね。あたしが悪かった。
だから、みなりも。
みなりも、なにかわたしに仕返しして、いい。
みなりになら、どんなことをされてもいいわよ?」
ほらほら、と言って、さとみんがなんか流し目をこっちにくれた。
うん、さとみん的に男に対しては絶対しないような、妖艶なやつ。
それをみて、わたしは頭の中にぴこーん☆とアイデアが浮かんだんだ。
最近、そして特にきのうから、頭を悩ませてた問題のひとつだ。
「ねえ、さとみん。まだ、その。
志野くんとは、してないよね?」
「んぐっ!」
乙女にあるまじき声だよ。さとみん。
わたしは少し余裕を取り戻して、いきなりなによ、と目を白黒してるさとみんにぐいっとせまる。
「さとみん、わかってるんだよ。さとみんがまだ、志野くんとはしてないってことは。」
さとみんは、想像だけど。
たぶん、あの経験。そう、男女のあの関係(そうじゃないパターンもあるだろうけどさ)の経験があったのかもしれない。って思ってる。
そう思ったのは、前、おなじクラスの派手な子たちとのやりとりとかをみたことがあるからだ。
もうヤってて、鼻にかけてる(?)クラスの派手な子たちに対しても、さとみんは余裕がある。
そんなことでは全く引け目を感じてない、ぐらつかない様子。
まあ、さとみんはそもそもどんなことでも、人にマウントなんかそうそう取らせないけどさ。
ただ、そんなさとみんをみて、思った。
今でこそ潔癖にふるまってるし、つい最近まで、そもそも男を寄せ付けなかったけれど。
あれは、たぶん過去のその交際経験からの反動なんじゃないか、って思うんだ。
余裕をもって派手な子たちをいなしつつも、ただそのことを口に出すことは絶対になかったから。
まるで何かの、トラウマをもってるみたいに。
志野くんと接近してから、そして志野くんに救われてから、男の子たちへの態度もまるくなった。
そして今だったら志野くんに最後の一線を許すかもしれない、って思えるし、本人もそれを望んでいるように感じるんだけど。
でも、さとみんが志野くんに救い出されて、今みたいに志野くんに絆されるまでは、そもそも結婚とか交際とかしないイメージだったんだ。
ましてや、かりに結婚することになったとしても。
さとみんが婚前に肌を許すなんて、そんなの絶対ありえない!って誰もが思ってたと思う。
わたしの想像が正しければ。
さとみんの中では、過去の交際のことは、思い出したくない苦い思い出なんだろう。
おそらく、何かうわべだけはいい男に騙されて処女をあげちゃったけど、じつは二股かけられてた、とかそんなことじゃないかな。
志野くんに会って変わるまで、すごい男嫌いだったのも、そのせいなんだと想像してる。
わたしも今にいたるまで、実はちゃんと聞いてみたことはないけど。
話を戻そう。
今では、さとみんは志野くんが好きになって。
うん、外面は取りつくろってるけど、内面はメロメログズグズなんじゃないか、って思うことすらあるんだ。
だからわたしはさとみんが先にゴールインしちゃうかも、と思って、最近焦ってた。
いや、ゴールインしたらそれはそれで祝福すると思うよ。さとみんは、親友だし。
でも、ちょっと悲しい。
わたしが将来志野くんに去られるとしても、せめて志野くんの記憶に残りたいんだ。
それが、わたしのささやかな野望なんだ。
わたしの希望的観測では、志野くんとさとみんとは、まだなんだ。
この推測。かなり自信があった。
さとみんにそれとなくさぐりをいれると、はぐらかされる。
あの耳の赤さからすれば、たぶん何かの進展はあるんだ。
でも、本番はまだだと思う。
もししてたら、もっと態度は違ってると思うんだ。わたしと気まずい感じになったり。
たぶん。
たぶんだけど、さとみんは、わたしに気兼ねしてるんじゃないかな。
ほら、交際しはじめたのは、わたしが先ってことになってるし。
ほんとうはその前から、さとみんも志野くんのことが好きだったにちがいない、って推測してるけどね。
それはそうと、わたしも、いろいろあって志野くんとは、まだなんだ。
そんなふうに、さとみんは。
わたしとは一種の膠着状態というか、紳士協定(淑女協定?)状態になってる。
おたがいに、口に出しては言わないけれど。
志野くんと際どいことはしてもいい、でも志野くんから強く求められないかぎりは本番まではしない、っていう、暗黙の取り決めがあるような状態。
もちろんはっきりは言ってないから、さとみんがどう認識してるか正確にはわからないんだけどね。そんなに外れてないと思う。
女の子たちは、何気ない言葉で探査ソナーをおたがいに打ち合ってるんだよ。親友との間であっても。
そんな状況下に、この事件。
舞い降りてきたハルカちゃんに、あやうく志野くんという油揚げをさらわれそうになったんだ。
あぶなかったんだ。本当に!
もちろんハルカちゃんもわたしの親友だ、大好きだ。
でも、このままじゃハルカちゃんの一人勝ちになっちゃうかもしれない。
この状況の打開策が、必要なんだ。
だからわたしはしっかりとさとみんの目をのぞきこんで、本気モードで言った。
「ねえ、さとみん。さとみんは、わたしの親友だよ。」
「そ、そうね、みなり。あたしにとっても、当然みなりは親友よ。」
なんか引かれてる気がしたし。
さとみんにとってもわたしが親友だっていう、言うまでもないこと。
それをわざわざ言わなきゃわからないのかな、と思われたかもしれないのは、心外だけど。
でもわたしは、わたしが信じる道を追い求めるんだ。
多少の向こう傷、気にしない!
わたしは、そう誓ったんだ。落ちる夕陽を、追いかけるんだ。
追いつけるかどうかなんて、問題じゃない。
勝ち戦だけが戦じゃないんだよ。
「だからさ。わたしたちは、協力できるよ。ううん、協力しないといけないんだよ。」
「――みなり。あたしに分かるように言ってくれないかしら。」
ちょっと、何を言われてるかまだよくわからないわ。
もちろん、みなりのことに協力するのは当然よ。
だけど、何をいつどこでどんなふうに?
さとみんがとまどいを目に浮かべ、途方にくれたように、そう返す。
じれったいな。わかってるくせに。
乙女の口にすべきことではないけど、かまうもんか。
ことは一大事なんだ。
「わたしたちは、漁夫の利をとられないようにしないといけないってこと。」
「ああ、わかったわ。ハルカね?」
だけど、まだちょっとわかっていないような感じだ。
こんなわかりきったことだけど、でも口にしないといけないかな。
うん、でもそうかもね。現代文や小論文の試験と同じだ。ちゃんとわかるように説明しよう。
「ハルカちゃんは、――入れてもらったんだよ?」
志野くんのことだ。
きっと深々と、差しこんだんだ。
そう、あの肉の凶器で刺しこんだに違いないんだよ。あの細く白い体に。
電源プラグは、コンセントに挿し込まれて。
電流がビビッと流れたんだ、ふたりの間に。
それにくらべて、わたしたちは。
体の表面が触れ合ったにすぎないんだ。
この状況の違い。状況の深刻さを、認識しなきゃいけない。
このままだと、――。
「ええ、そうね。だけど、ハルカは。
志野のことは好きだっていったけど、あまり積極的じゃなさそうよ?
だから、これ以上は――」
「甘い、甘いよさとみん!」
やったやった!さっき「甘い」って言われた江戸の仇を長崎で討ったよ!
こころなしか、さとみんも「ぐう」って感じの顔をしてる。
「まず、ハルカちゃんの性格を考えてみてよ。」
そういうと、確かに、とさとみんも少し考え込むような表情になった。
警戒度が引き上げられたと考えていいだろう。でもまだ足りない。
説得の言葉をかさねる。
確かに、今はハルカちゃんは志野くんのことを好きと言いながら、恋人になどなる気はない、とも言ってた。
だけど、さ。
まずハルカちゃんは、すごく破天荒で自由気ままな子なんだ。
昨日はロシア文学で今日はフランス音楽、の人なんだ。
気がすぐ変わることが、ないとはいえないよ?
「でもね、みなり。
さすがに、こんなことについては、――」
「うん。そうだけどさ。
まだ気がかりなことがあるんだよ、さとみん。」
ほら、志野くんを尋問したとき。
志野くんは、ハルカちゃんのすべての穴に入れさせろ、みたいなことを言ったって証言があったよね。
そして、ハルカちゃんも了承したんだ。
「あっ!」
さとみんが、はっとした表情を見せた。
そうだ、そうなんだよ。
わたしはさらにさとみんにのしかかるような体勢から、顔を近づけて。
懸念していることを伝える。
「だってさ。考えてみようよ。
仮に、さ。
ハルカちゃんが、志野くんに本気になって。
『約束だったよね、ボクの全部の穴に入れてよ』みたいなことを言いだしたら。」
「まずいわね、――!」
そう、まずい。まずいんだよ。
志野くんは、基本、約束を守る誠実な人なんだ。
「わかった。約束だしな。」みたいに言って。
しかたないなー、約束だしなー、つれーわー、みたいな顔をしながら。
しっかりこっくり楽しんでしまう、なんてことが、ないとはいえないっ!
半ば目がぐるぐるしてるのを感じながら、わたしはそう言いつのる。
さとみんと、わたしの視線が交差する。いや、真正面から合わさる。
こんどこそ、さとみんの目に強い焦燥が浮かんでた。
「早急な対応が必要だわ。
近付くな、ってハルカに釘を刺せばいい?」
「ねえさとみん。
ハルカちゃんの性格で、そう言われて。
はいやめます、になると思う?」
「ごめんなさい、――逆効果ね。逆に燃え上がりかねない。」
さとみんも、わかったようだ。
そうなんだよ。あの奔放なハルカちゃんは、むしろ逆。
止めようとすると禁断の愛の甘い味に、目覚めてしまいかねない。
しかもさ。
「わたしとしては、ハルカちゃんのことは大好きだし、幸せになってほしい。
でも、ハルカちゃんは強敵なんだよ。」
一人勝ち、しかねないんだ。
そう、わたしとさとみんはある意味似たもの同士だけど、同時に身体的には対照的だ。
さとみんはすごいきれいな、もう男の人だったら誰だって目を奪われるような体をしてる。
流れる黒い髪、モデルさんみたいな高い身長、豊かな胸、筋肉がうっすらと浮く、なめらかな肌。
きゅっと細い腰に大きな、りっぱなお尻、細くないけど手足は肉感的だ。
すくなくとも、志野くんはさとみんの体を気に入ってる。休み時間ごとに視線がかならず一度はさとみんにべったり張り付く。浮気者め。
でも、さとみんはこんなにきれいで強くて頭もよくて、――そう、すべてに恵まれてるのに。
どこか不思議に、影をうかがわせる、寂しそうな表情をかいまみせるときがあるんだ。
ミステリアスな光と影。昼は強気な才媛、夜は嫋やかな娼婦。
男の人だったら放ってはおけないよね。志野くんも、きっと。
それに比べて。
わたしはどちらかというとマニア向けっていうか。そう、一部の男の人には強烈にアピールするのかもしれない(ちょっとイヤだけどさ)貧弱な体をしている。
少し伸ばしかけの生まれつき茶色い髪、成長が遅れて低い身長。
幼児体型は脱したと思うんだけど、まだまだボリューム不足のつつましい胸(少しだけ最近は大きくなってきたんだよ。牛乳も少しずつ飲むようにしたからかな?)、かといってとくに細いわけでもない脚。
志野くんはなぜか気に入ってくれてるみたいだけど、志野くんは同時に他の女の子のことも気に入ってるみたいだしな。浮気者め。
それはさておき、冗談なのかもしれないと最初は思ってたけど、志野くんはそんなわたしのことを好きだと言ってくれてる。
夢みたいな気がする。志野くんの勘違いな気もする。単なる保護本能を勘違いしてるのかも、って。
だけど今は、それを信じたいよ。
今だけでもいい。わたしは志野くんが好きなんだ。
たとえ志野くんがわたしを離れる日がきても。これから、ずっと。
あー、コホン。
脇道に逸れかけたけど、わたしとさとみんは対照的だから、あまり役割がかぶってない。共存共栄できるんだ。
だからほら、甘いものが食べたいときは甘いものを、辛いものがたべたいときは辛いものをたべてもらえばいいんだ。
趣向の違うものを並べて、食べ比べしてもらってもいい。
そこでハルカちゃんを分析するとだね。
ハルカちゃんは、強敵なんだ。
わたしとさとみんの中庸(?)の地の利を得つつ、さらに別の魅力まで備えてる。
同性のわたしからみても、あきらかだ。
短めの、サラサラした少女漫画の登場人物みたいな髪。
身長は高すぎず低すぎない。少しだけ高い方かな。
スレンダーな体型は、ため息が出てしまうくらい。さとみんとはまた別の方向性だけど、女の子たちの理想の一つだろう。
ほっそりした白い手足には、誰だって目を惹きつけられる。ハルカちゃんの体操の演技を1度みたことがあるけど、本格的にはじめたのは高校からだとは思えないくらい、繊細で優美だった。
男の子なら、演技してるハルカちゃんをみて。
あの白い肌に触れてみたい、とか思うんだろうか。
――そういえばハルカちゃん証言では、志野くんに脚を舐められた、って言ってたな。浮気者め。
太陽のように明るく朗らかな性格、優秀な頭脳、でも本当は月の光のような繊細な感性も持ち合わせてる。
きっと男の人は庇護欲も性欲もそそられるだろう。志野くんも、きっと。
そう、この3人をならべてみると。
いちばん埋没しそうなのが、わたしなんだけど。
でもさとみんも、うかうかできないよ?
「わかるよね。さとみんもわたしも持っていない魅力を、ハルカちゃんが持ってること。」
「――。」
衝撃的だったらしい。絶句してる。
「娼婦って」って言葉が漏れてたけど、まあそれはものの例えだよ。
要は、優秀で志野くんの良き相棒となり、性的にパートナーとなる魅力があり、しかも庇護欲までそそられるような立場。
わたしとさとみんが、部分的にしか持ってないそういった要素。
そのすべてを、ハルカちゃんは満たすポテンシャルがあるんだよ。
そう、さとみんに告げる。
「どうしよう。
どうしたら、いいのかしら。」
さとみんが、長い髪の先をくるくると指に巻き、そしてすべらせて放す。
さとみんが、考え込んでるとき、思い悩んでるときの癖だ。
「わたしとしては、ハルカちゃんが加わってくれてもいいと思ってた。」
それはそれで、しあわせになれそう。
だけどハルカちゃんは、閣外協力(?)を宣言したんだ。
つまり、志野くんの恋人になんかならない、でも好きだ、って。
一見、「近づかないからどうぞ」って言ってるようにみえるけど、ちがうんだ。
わたしとさとみんみたいな、本番まではお互い思いとどまろう、っていう相互の抑制。
いわば、最終武器の使用を差し控える核抑止の関係には、加わらないって言ってるようなものなんだ。
つまり。
「つまり、ハルカは。
核拡散防止条約に加盟してない、隠れた核保有国、ってことね――?」
そうだよ。不安定化の一因だって、政経で習った。
ここでも、歴史は参考になる。
米ソの冷戦を終結に導いたのは、アメリカの経済力。
だとすれば。
「わたしたちに必要なのは、志野くんをひきつけてやまない圧倒的な魅力なんだよ。
国でいえば、国力、経済力にあたるような。」
「魅力、――経済力にあたるような、って、――もしかして?」
「そうだよ。
さとみん、わたしと一緒に高みをめざそうよ。」
髪を巻く指が止まり、真剣なさとみんの大きな目が、わたしをこわごわと見返す。
まるで魔法使いに見込まれた、イチゴ摘みの少女のようだと思いながら。
わたしは魔女の笑みを浮かべ、美しい親友の瞳孔の開きかけた目に笑いかけた。
「うん、高めあうんだ。」
セッサタクマだよ。あれ、字を忘れたな。
疑うべくもなくさとみんには、才がある。わたしには、保護欲をそそるような要素(?)がある。
そしてふたりとも、性的な魅力を支える素質も一応ある、と考えよう。――わたしはあまりないかもしれないけど、さ。
あとは。
「わかったわ。――その、性的な魅力を高めないといけない、ってことね?」
「そうなんだよ。」
だいたい、わたしは、その、まだだし。
さとみんも、――?
「ええ、そうね。
わたしは処女じゃないけど、本当に好きな人、想いあえた人と体を重ねたわけでは、ない。
だから、その、――パートナーをちゃんと満足させるような技術なんて、ない。
だから。
だから今は、処女でありながら志野を満足させたハルカには、二重に負けてる状態、ってことね?」
さとみんの目が、据わりかけてる。
わかってくれたんだ。よし、ここでダメ押し。
だからさ、わたしたちは研究しないといけないんだ。
はるかなる高みをめざして。
そう、志野くんをめくるめく高みに押し上げるんだ。
たたみかけるように、そうおごそかに告げると。
さとみんは、コクコクと頷いた。
わたしたちは、真剣な目を見交わした。
わたしたちの盟約が、ここに成った。
どちらからともなく、お互いを抱く腕に力が入った。
―――――
「それで、最初は確認をしたいんだ。」
わたしは、体を起こして、そう宣言する。
さとみんは、ぼうっと思いに耽ってたけど。
私の言葉をきいて、はっとこちらに注意を向けてくれた。
「わたしたちの、魅力の確認。
足りてるところ、足りてないところ。」
長所をのばし、弱点を克服する。
そのために、現状認識が必要なんだ。
自分の目ではなく、客観的な目での。
「具体的には?」
「お互いに、まず見せ合おうよ。ありのままのすがたを。」
そして、そういうことになったんだ。