タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
・「裏」の視点の話、筆者も書きたかったところで書けていない状態でしたが、今回書けてほっとしました。
・公衆電話の情報、ありがとうございました!やっぱり、間違い電話か何かで公衆電話にかかるということもあったのでしょうね。夜、そんな場面に遭遇したら怪談みたいですごく怖そうです(昼でも)。
・美鷹さんは後発でまだそこまで出てきていませんが、これからいろいろ出てくる機会があると思います(もしかすると、本編外のサイドストーリーか続編での活躍が多いかもしれません)。
――――――
いろいろ重なって遅くなってしまいました。
三人称(第三者視点)です。
「結局さ、その。
さとみんは、さ。――ほんとにヤんの?」
下校途中の道。国領ハルカは、足元の石を蹴飛ばしながら、調布智美に聞いてみる。
志野が
ささやかな意趣返しに、志野をハブることにして。
カフェテリアで見つけた数人の仲の良い女子たちを加えて、賑やかにさざめきながら楽しく昼食をとった。
昼食後、その一味は部活や塾やアルバイト(親の仕事の手伝いとか)などのそれぞれの予定があるため、バイバイ、またねーとか言い交して、散り散りになったけれど。
この2人は、部活が終わったあと、美術室で待ち合わせして。
二人で帰り道につきかけたけれど、蒸し暑い中で、アスファルトの道を歩くのがどうにもダルくて。
まっすぐ帰るでもなく、学校の裏手の丘陵に接する、神社のあたりを歩いていた。
いつか志野が国領ハルカを呼び出した、あの神社の近くだ。
午後になって雲も出てきて、わずかながら日射しはやわらいできているが、まだまだ空気が蒸し暑い。
でもこのあたりは、緑も多いし小川(用水路)も流れてるせいか、まだしも涼しいのだ。
つややかな長い黒髪、白皙の冷たい端麗な容姿の調布智美と。
サラサラしたショートカットの明るい髪、輝く瞳の国領ハルカ。
タイプは全く違うが、ふたりとも人目を惹くことには変わりなく。
並んで歩いているだけで、ここまでにすれちがった生徒や通行人などが思わず目を向けてしまう、どこかキラキラした華やかさがあった。
「あら、ハルカったら大胆ね?」
調布智美も、額を軽く拭いながら、さっき国領ハルカが蹴った石を軽く蹴り転がす。
「――そうね。
そこまでいければ、とは思うけど。」
調布智美のすました白い横顔に、気をつけなければわからないくらい。
わずかに朱がさしているのを、
「わー、なんだかドキドキするなー。
ボクの周りには、あんまりいなくてさ。
そんなに、進んでる子。
っていうか、男の子と付き合ってる子自体、さ。」
調布智美が蹴った石もコロコロところがり、ちょうど蹴りやすい位置に来る。
国領ハルカは、あたりに人も車もないのを見定めて、ええい、と蹴ってみる。
国領ハルカは、正直、サッカーはそこまで得意じゃない。
足は、特に長距離は速い方だと自負してるけど。
サッカーって、ボールが重くて怖いし、さ。
顔にあたったら、ただじゃすまないよ。
「貴女。進んでるもなにも。
ほぼ間違いなく、今はハルカが最先端よ?」
――そんなことを思って油断してたせいで、友人からの当然といえば当然のツッコミに、国領ハルカは狼狽する。
「いやっ、あれはっ。
その、ノーカンっていうか、さ。
ノーカンじゃないんだけど。ええっと!」
恐慌をきたす、国領ハルカの顔。
あの志野とすごした、洞窟の一夜を思い出して。
顔がじんわり、赤らんでくるのを感じる。
そういう彼女に、思わず笑みを浮かべながら、調布智美は。
「まあ、あなたたちの間に事情があった、ってのは分かってる。
それでもあたし、ハルカのことがうらやましい。」
――ただ、今は急がなくてもいいか、って気もしてるの。
そんなことを言って、また、小石を蹴り返す。
この小石、思ったところじゃなくて斜めにずれた方向に行くところがあいつに似てるわね、と思いながら。
そして
調布智美は、言葉を足す。
「あいつ、最近何かにピリピリしてるみたいなのね。
ハルカも、あの志野の夢の話、聞いたでしょう?
どうも夢とおんなじに、あたしたちが悪い奴らに捕まって、なんかされたりするんじゃないかって思ってるみたい。
だいたい夢なんだし、被害妄想だと思うんだけど。
でも、あいつの勘は当たるから。
だから、しばらくは、そこまで重い女にならないように、軽く遊ぶだけにして。
本番は、あいつの心配がなくなって、落ち着いてからでもいいかな、って。」
きっと今、最後まで進んで、ヤらせてしまったら。
志野の、一つのことに気を取られると回りが見えなくなる極度に偏った高い集中力は、かきみだされ。
くだらないことにもグズグズと自責する、めんどくさい責任感でもって。
今集中してることが手につかなくなるくらい、わちゃわちゃと、彼は悩んでしまうのではないか。
そう、調布智美は思う。
自分のことでそんな風に振り回される彼のことを想像すると、妙な快感がある。
自分が彼にとっても重要な存在だ、と確認できて安心するだろう。
でも今、あいつの邪魔はしたくない。
だいたい今週のみなりも、そこまでいくかわからないし。
「でももちろん、あいつからは搾り取るわよ。
腎虚にする勢いで、ね?」
それは確定。今日の分の落とし前も、つけなきゃいけないし、と重々しく告げる。
どうも志野は、この才女の虎の尾を踏んでしまったようだ。
「あ、あはは、――」
ちょっと引いた風の、国領ハルカの顔。
調布智美による志野搾○計画上は、
もちろん彼女も、やる気ではあるのだが。
少々、
――――――
「それはそれとして。
――ねえ、ハルカ、この後、まっすぐ帰る?」
「うーん。そーだね。」
ぽりぽりと困ったように頭を掻く姿に、勘の鋭い調布智美はなにかを感じ取った。
「用事があったのかしら?
もしあたしがいても邪魔じゃなかったら、付き合うけど。」
あたし、一応あなたの護衛役だしね、と、そう申し出る。
この子、国領ハルカは物怖じせず、人当たりもいい。
だけど芯のところでは、彼女が結構やせ我慢する
もう一人の、ここにはいない
「いやそれなんだけど、さ。
せっかく休みに入るし、バイトでもしようか、って思っててね。」
国領ハルカは、理不尽にも兄から家にいたければ金を出せと言われている。
もちろん、最初の1、2回を払うくらいの貯金は、ある。
ただ、それで済まないとすれば、――たぶんあの蛇のようにねちっこい義兄は、それで済ませるなんてことはしないだろう。
国領ハルカとしては、稼ぐ方法を確立しておく必要があるのだ。それなりの額を。
ただ、その辺の事情はまるっと伏せて。
いろいろ買いたいし、社会勉強とかにもなるしさ、とこの姉御肌の親友には伝える。
「みんな受験勉強にきゅうきゅうとしてるのに、余裕ね?
でもまあ、ハルカなら大丈夫でしょうけど。
ただ確かにバイトなんて、やるとしたら高2までしかできないでしょうし。
――当てが、あるのかしら?マックのスタッフとかの飲食店とか、イベント系とか?」
志野は過保護にこの友人をガードしたがってるけど。
調布智美の読みでは、もうあまり危険はないように思う。
ただ、バイトとかはまた別だ。
この美貌の友人が、どんなやつに目をつけられるかわからないし。
「ううん、ファーストフードとかだと、さ。
時間が長いのに時給が安いから、たいした額にならないし。
イベント系とか、考えてるんだけど。ほら、――」
国領ハルカは、イベントの受付補助とか案内スタッフとかを主候補に考えてる。
日雇い、即金で報酬が出るのが魅力的だ。
単価も比較的高いし、日程を選べば学業を妨げることもない。
「それと。その、モデルとか――」
「モデル?
それ、大丈夫なの?」
二の矢でモデルとかを考えてる、と聞いて、調布智美の眉が曇る。
確かに国領ハルカは、容姿は優れてる。
容貌も華やかだし、体操で鍛えたすらりとした体も魅力的(ペチ○パイだけど)。
真面目な校風の進学校生にしては珍しく、いかにも今風の流行も取り入れていてお洒落だ。
だから。
雑誌のモデルとかファッションモデルでもいける、とは思うけれど。
ただその辺、あまりいい印象がないな、とこの慎重な友人は考える。
かつての苦い思い出からくる警戒心もあって、思わずこの友人へ向ける視線も鋭くなる。
「いや、そのっ!
そういう、すごい雑誌とかのモデルじゃなくて、絵画教室のデッサンとかのモデルだよ?
拘束時間が短いわりに、バイト代すごく高いんだ。
それに、ボクだって子供じゃない。
ちょっとでも変だと思ったら、逃げるさ、もちろん。」
身元確認とかも緩くて。
お手伝い感覚で、1時間ちょっとくらいで済んで。
しかもそれで、最低で夏目漱石2人。
交通費は出ないけれど、歩いていける場所なら破格の報酬なんだ、と力説する。
「ちょっと、貴女。それって。」
調布智美の眉間が、さらに曇る。
――もしかすると、それって。
ヌードモデルとかじゃないでしょうね。
そうだとしたら、絶対反対。正気にかえりなさい。
そう、いわれて。
「違う、違うよ!
そんなの、ボクだって絶対ヤだよ!
そうじゃなくて!
むきになって、国領ハルカは否定する。
耳まで赤くなった顔、ぶんぶん振り回される手が、かわいい。
彼女の言によると。
一応、ちゃんとしたモデルらしい。
公民館でやってる合気道の道場に、国領ハルカは週一(火曜日)、通っていて。
その同じ公民館を借りてやってる絵画クラブらしいので、問題はないだろう、とのこと。
それなら大丈夫かもね、と事情を聴取した調布智美も考える。
「まだ、これから?
今日は、面接か何かあるの?」
「うん。そのクラブは不定期だけど、上半期は土曜日夕方にあるらしくて。
面接ってわけじゃなくて、もうそのまま、体験的に1度やってみないか?って言われたんだ。」
「そう。――まあ、着衣でちゃんとしたのなら、いいのかもね。
ハルカ、いったん家に帰る?制服だとダメなんじゃない?」
「いや、大丈夫だってさ。
だから、帰らずにどっか時間つぶそうかなー、って。」
どうも中途半端に時間が空いているらしい。
家に帰りたくないのには、何か理由があるのかもしれない。
まだそれを打ち明けてもらえるほどではないが、まあそれはそのうちだ。
制服でもいいと言われてるらしいし、それなら。
「いいわよ、どうせ暇だし。
あたしはハルカの護衛だし。
それに、絵を描くのならあたしも興味ある。付き合わせてよ。」
「えー、さとみん。いいの?」
「まかせなさい。」
悪いなー、と思ってるけど。
国領ハルカとしては、調布智美の申し出は願ったりだ。
国領ハルカは、外交的で初対面の人にも物怖じしない、陽性の人物。
――と見せているし、実際、そういう一面もあるのだが。
ただ、芯までそうだ、というわけじゃない。
それなりに努力してそう見せてるところも、ある。
普通に、こういう場面では心細かったりもする。
ふたりは何となく参道の奥まで入ってしまった神社で、鳥居まで来て手を合わせた後。
踵を返し、その公民館のあたりに向かい、そこらで時間をつぶすことにしたのだった。
――――――
木々に囲まれた公民館には、テニスコートと小さな公園が併設されてる。
白いテニスウェアと対照的にこんがりと肌が焼けた、おそらく大学生の集団とすれ違う。
男子も女子もいる。ちょっとチャラ目の茶髪やドレッドヘアの男子大学生の視線が、目立つ二人に注がれるが、二人は気にも留めない。
午後5時ちょい前、まだまだ明るいが、西の方の空は雲に覆われてきてる。夜には雨になるかもしれない。
「とりあえず、水のもうよ水。」
摂氏30度を超える熱気の中を歩き、ふらふらになった二人は。
窓口の小母さんに声をかけて公民館に入り、設置されてるウォータークーラーで冷たい水を飲む。
飲むと、ぶわっ、と汗が噴き出てくる。
少し落ち着いた国領ハルカは、公民館やその周囲をこの友人に案内する。
(いい感じじゃない。)
公民館には、小さな図書室が併設されている。教室1つ分くらいしかない感じの大きさだ。
背の高いスチールの書棚が狭い間隔でぎっしり並び、閲覧机は4人掛けのテーブル席が2つしかない。
背の低い本棚で囲まれた子供用の絵本コーナーもあって、親切そうな小母さんが司書としてその近くの
ひそひそと彼女らはささやきかわす。
(おすすめだよ。学校にはない、読み物が多くてさ。
面白い本もあるんだ。)
後でまた来ようよ、とささやき返し、国領ハルカは友人をさらに案内する。
ちょっとした運動に使える多目的室があり、そこで合気道をやってるらしい。
今は、太極拳か何かの教室みたいだ。
ゆったりとした動きでも、慣れた人とぎこちない人とがわかるのが面白い。
奥の方に整った容貌の、表演服を着た白面の青年がいるのが目を惹いた。
熟練者っぽくみえる。
指導者の高弟か何かなのだろうか、体の運びによどみがない。
「あれも面白そうなんだけどね。
部活の後に続けてやるのは、やっぱり体力的に無理だと思ってさ。」
ちょっと残念そうな口調で、国領ハルカはいい。
さらに、廊下を進む。
華道教室とかをやってる和室、そして読み書き計算の教室をやってる会議室もある。
一とおり見た後で、二人はいったん外に出て、公園とテニスコートの境のあたりの、木立の下のベンチに腰掛けた。
あと3、40分くらいかな、と国領ハルカは言った。6時開始なのだ。
「その、絵画教室のモデルって。
何か、募集広告をみて応募したのかしら?」
調布智美は、気になってたことを聞く。
かなり危険性は低そうだ、と彼女は思っている。
団体としても、そんな変なものじゃなさそうだし。
この公民館という場所も、国領ハルカの家から近い。
ここから家へのガードは大丈夫、必要ないよ、と国領ハルカは言っているが、一応今週来週くらいはガードしてもいい。
「いや、同じ合気道でやってる仲間で、それやってた短大生の先輩がいてさ。
バイトを探してるって言ったら、紹介してくれたんだ。」
そういう伝手なら、まあ大丈夫だろう。
その短大生の先輩も、まあごく普通の人。
今年就職してバイトはやめたらしいが、短大に在学中にやってたらしい。
絵画教室はほのぼのした感じで、モデルの容貌などにはあまりこだわってないみたいだ。
――まあハルカなら、顔セレがあっても大丈夫でしょうけど。
ちょっと暑いのか、少し紅潮気味の国領ハルカの横顔を見ながら、調布智美はそう思う。
まだ日は高いが、雲で翳ってきてて、涼しい風が吹き抜ける。
「だったら大丈夫そうね。
話変わるけど、ハルカの夏の予定は?
帰省したり、旅行したりする?」
彼女たちの学校は、地元では有名な公立の進学校。
もちろん、紫藤みなりの弟が通ってる超一流進学校ほどではないけど、勉強は厳しい。
補習も、来週いっぱいまで入ってる。
この補習、建前上は任意だけど、実態としてはほぼ全員が受けてる(少数ながら受けてない子もいるが)。
ただそれでも、正規の授業日数には入らないので、8月に入ると親の帰省や語学留学とか旅行(クラスに1~2名くらいは、ディズニーランドに行ってたりする)だとかの事情で、多少人数が減ってくるのだ。
「今のところは、そうだね。
少し、アルバイトで抜けるかもしれないけど。
基本的には、多賀島にいると思うよ。」
家族の実家も多賀島で、特にわざわざ帰省するような先はない。
(彼女が口走った「家族の実家」という表現に、調布智美は違和感を覚えたが、口にせず黙って聞いていた。)
竜神プロジェクトがあるけれど、それ以外は部活と勉強とアルバイト。
あ、部誌も作らなきゃ!とのんきに言っている。
お盆期間限定で、ショッピングセンターのスタッフが募集されてたり。
プール監視員とかで、高校生で短期でも入れる仕事があったりするとか。
生徒会の仕事もかなり落ち着いてきてるから、多少補習を休んでやってみるかも、とも。
――学校への届け出が必要だけど、まああの先生なら大丈夫でしょうね。
単発のアルバイトなら、無届でやってもよほど運が悪くなけりゃバレることはないみたいだし。
生徒の自主性に任せるのが信念だという、あの似非英国紳士の担任の顔を思い浮かべながら調布智美も頷いた。
公園に設置してある時計が正しければ、もうそろそろ5時40分すぎだ。
まだ十分に時間があるけど、開始時間より前に行って、待ってたほうがいいだろうか。
そう提案しようとして、調布智美の目は。
公民館付設の公園から出て行く、中学生くらいの男の子の姿を捉えた。
成長期なのだろう、ひょろっとして軽く猫背に見えるが、まあ普通の少年。
年恰好としては、千里君(紫藤みなりの弟)くらいだろうか?
少しだけ、志野に似てなくもない。
そのポケットから、何かがぽとっと落ちるのが見えたのだ。
白っぽく見える。丸めたハンカチか何か。
「あなた、落としたわよ!」
通る声で呼びかけるが、男の子は振り向きもしない。
むしろ足を速めるようにして、去っていく。
調布智美と同じものに気付いた国領ハルカが、立ち上がり。
俊足で走り寄ったが、距離と少年の早足のため、間に合わなかったようだ。
公園から少し出て、少年が入ったと思しき路地のあたりを見渡していた国領ハルカは。
調布智美の方に向き直って、首を振った。
ただ。
「ただのラクガキみたいだよ。
だから、もういいんじゃないかな。」
ハンカチに見えたものは、B5版のノートのページを切り破って書かれた、何かのメモ書きみたいだった。
国領ハルカはそれを見た後、戻って来ながら、ひらひらふってみせる。
調布智美も国領ハルカに示された面をちらっと見たが、「竜」「軍勢」という単語と何か不気味めかした稚拙な手書きのマークが見えた段階で、半ば以上、興味を失った。
いわゆる、中二病ポエムだろう。
「それ、あのお兄ちゃんの落としたやつー?」
「あの人、目がこわーい。」「じろじろ、みてたんだよー。」
調布智美が呼びかけて、国領ハルカが走ったのをみていた、小4、5くらいの女の子のグループが二人に寄ってきて、そう言い募る。
女の子相手には包容力のある調布智美は、ふんふんとお姉さんモードで聞いてあげてる。
――目が怖い、って。
しのりんもそうクラスメイトに言われてたよね。
「強姦魔の目」だったっけ?
そう国領ハルカは思い出して、少しおかしくなった。
あの少年も、しのりんみたいになるのかな?
「そうね、そういう人に気付いたら、近寄ったらダメよ?
あと、人がいないようにみえても、外から見えにくいところ。植え込みの陰とかはダメ。いい?
じゃあね、気をつけて早めに帰ってね。
――ねえ、ハルカ。そろそろ行きましょうよ。」
「うん、そうだね。
――じゃあね!」
集まってた、子供たちに手を振り。
二人は、絵画教室がもうすぐ始まるという、公民館に戻って行く。
入り口で、二人は今しも出てきたらしい色白の美青年とすれ違う。
あの太極拳教室で、目に留まった青年だ。
青年も、印象の強い二人を覚えていたのだろうか、いっとき視線が彼女らに止まる。
ちょっと彼が気になった国領ハルカだったが、早めに絵画教室側と顔合わせをすませたい調布智美にも促され。
二人は絵画教室の開かれる部屋へと向かった。
その背中に、美青年の視線がじっと注がれていた。
――――――
調布智美・国領ハルカの二人が、公民館へと去った後。
公園の隅。植え込みが茂って、外からの視線を遮る場所で。
鬼ごっこをして遊んでいた、男の子たちがそれを発見する。
頭部の切り離された、猫の死体。
みつけた男の子が叫び、一緒に遊んでたその仲間がわらわら寄ってきて。
そのうち、騒ぎに気付いてやってきた別のグループの年長の子が、公民館の受付に通報する。
呼ばれてきた男性の事務員が駆けつけてきて、顔をしかめながら処理する。
警察に通報するか?
この当時の彼らの常識的には、こんなの通報するまでもない案件だ。
簡単にあたりのごみも回収して、持ち去られ、小学生以下の子供たちは、そろそろ帰るように促され。
野次馬たちの人影が、消えていく。
その間。
絵画教室の指導者と会ってあいさつし、話し込んでいた二人は。
外の軽い騒ぎには、気がついたものの。
その経緯を、その時は知る由もなかった。