タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
国領ハルカがバイトを終え、帰宅後の話です。
第三者(国領ハルカ)視点です。
(国領ハルカ視点)
「おい、忘れてねぇだろうな、約束?」
「うん、茂良兄。覚えてるよ。」
ニヤニヤしながらこっちを見てる。気持ちわるいなあ。
そう、同居する伯父伯母の息子である、従兄の茂良男に呼び出された国領ハルカは。
表面上はおとなしく、言われる言葉を聞きながらも。
心の中では、思い切りこのいけすかない従兄を面罵していた。
――土曜日。調布智美にも付き添ってもらったバイトの初回をやってみた日。
なんとか雨の本降りになる前に、家に帰ってこれた。
食事をして、伯父さん伯母さんと学校の話とかした。そこまでは、平和な夜だったのだ。
そして今、12時過ぎ。
伯父さん伯母さんはもう、寝てしまってる。
学校の勉強を一通り終えて、部誌にのせるファンタジー小説を書いてたら。
ちょっと話がある、と言われて、居間に呼び出されたのだ。
イヤだけど、部屋に居座られるよりはるかにマシだ。
原稿を見られるのは論外だし、だいたいボクの部屋は防音性が高いからね。
何かあっても気づかれず、助けてもらえない。
「払う算段、つけてるんだろうな。」
「そのことだけどさ。」
――バイトも始めるけど、勉強もあるし。
お金を払い始めるの、卒業後だとダメかな?
ちゃんと、利子も乗せるから。
そう、言ってみる。
「駄目に決まってるだろ。馬鹿かお前。」
激昂しないでニヤついてるあたり、想定内だったんだな。
茂良男は頭は悪くないんだ、性格は悪いけど。
「そういうことなら、今までの分も払えって話になるぞ。」
「うん、それでもい「だが、駄目だ。」」
国領ハルカとしては、別にいままでの分を払ってもいい。
大学に入ったら、バイト漬けでもいい。奨学金も、自分で獲る。
だがそれまでは、勉強もしたいし部活もしたい。
だけど、茂良男はそれに応じるつもりはないようだった。
当たり前だが、彼は別にお金自体が欲しいわけじゃない。
国領ハルカに、嫌がらせしたいのだ。
「お前、部活もやってんやろ?辞めれ辞めれ。
そしたら、バイトも勉強もできようが。」
「――っ、」
それはイヤだ。
せっかく、部活でもいろいろ技ができるようになってきたのに。
勉強も、部活も調子がいい。バイトも楽しそう。
本当に信頼できる友人たちとの、輝く日々。
なんだか気になる男の子(?)もできた。これは見通し、暗いけど。
なんだか、その。
毎日が、――もちろん楽しいことばかりじゃないけれど。
なんだか充実して、キラキラしてきて。
毎日が密度が高く、「生きてる」実感がしてきていたのに。
「じゃあ、よ。
どうしても、っつうんならよ。」
いつのまにかうつむいてた顔を上げて、茂良男の顔を見上げる。
イヤらしい笑みが、茂良男の顔に浮かんでる。
「ちょっと
「――ねえ、茂良兄。
その、ボク、前も言ったけど。
茂良兄とか、茂良兄の友達のをヌいたりとか、できないよ。」
前、この気の合わない従兄は。
家に居たかったら、自分のを口に含め、と言ってきたことがある。
それだけは嫌だといって、そのときは拒否した。
今でも、やっぱり。
「誰がやれっつったよ。馬鹿。
そうだな。部活続けるってんなら。
部活をやってる意味、ちゃんと示してくれねぇとな。」
「?」
「おーよ。ちょっといろいろ兄ちゃんたちに、部活でやってる技、演技でも見せてくれよ。
そうだな。1回につき、1万円負けてやろう。」
「――1回、1万円。」
破格のディスカウントだ。
毎週やれば、かなり割り引ける。
ただ、悪い予感もする。
この茂良男が、ただ観るだけですませるとは思えないのだ。
「ねえ、それ本当に演技するだけ?
変なこと、しない?」
「変なことってなんだよ。
お前みたいなガリブ○がいっちょ前に心配すんのかよ。
自意識過剰ってやつだ。」
「―――。」
安心できない。
茂良男は、ヤらないとは言い切らない。
それに、たしかにガリだけどさ。◯スじゃないつもりだし。
ガリなのも、小学生、中学生のときよりはずっとマシになってるよ。
「まあ、ただ演技だけなのもな。
別のこともやってもらうかもだが。相談の上、な。
で、乗るのかよ。」
本当のことを言えば、彼女が彼の
払え、って言われたことを伯父さんたちにバラせば、たぶん茂良男がこっぴどく叱られるだろう。
でも、そうしたら、そのことを茂良男はしつこく覚えて報復してくるだろうし。
親子の仲を裂くことにも、なるだろう。
それは、望むところじゃないのだ。
国領ハルカとしては、高校卒業までこの家にいさせてもらえばいい。
それ以後は、基本、茂良男との関係が決裂してもいいのだ。
伯母さんたちとは仲良く関係が続くことを願ってるけど、どうせ実子の茂良男には勝てない。
「うん。――最初、試しで1回。それをもとに考える。それじゃダメ?」
「まあ、いいだろう。」
茂良男は機嫌がいいのか、含み笑いをしている。
「それじゃ、明日「今だ。」」
「――」
「試しに、今やってみ。」
「うん。じゃあ、」
伯母がきれいに片づけている居間は、結構広い。
居間の端の4畳くらいのスペースでも、逆立ちくらいはできるし。
ソファを少し動かすだけで、8畳から10畳くらいのスペースもすぐできる。
そう思って、少しだけ居間の隅で演技して見せようと思ったのだが。
「馬鹿か、お前?」
「え?」
「部活でも、パジャマで演技すんのかよ。」
「あー、違うけど。」
体育服で、それにときどきはレオタードでやるけれども。
でも。
「それによ。
『違うけど』って先生にも言うのか?ああ?」
「――違います。」
「オラ、ちゃんとやらねえと認めてやらねえぞ。」
「はい。」
心の底からこの嫌味な男が嫌いになった、国領ハルカだった。
――――――
とりあえずは体育服に着替えて、許してもらえた。
真夜中だし、寝た伯父伯母を起こすわけにもいかないので、跳んだりはねたりはできない。
今日は試しでごく少しだけ、ということで、茂良男も了解する。
まずゆっくりと、腕立て側転をしてみせる。
(手足を伸ばしても天井とかにひっかからないのは、確認ずみだ。)
顧問の先生からも、長い手足をきれいに伸ばしてやるとすごく見栄えがいい、と褒められてる。
一瞬でくるっとやるのと違って、倒立自体がちゃんとできないとやれない。
「ほう。」
まるで舞妓の演技を鑑賞するお大尽のように、茂良男は頷きながらみている。
ちらっ、と目に何かの色が走り、彼女の背筋に寒気が走った。
なんだろう、今の。
「すげえじゃねえか。――もう一度。」
嫌いな男でも、認めてくれるのはうれしい。
もう一度、今度は向きを変えて(背中を茂良男に向けて)やって見せる。こんどはちょっと変えて、脚を揃えてみせる。
そしてさらに、もう一度。
こんどは、ちょうど倒立姿勢になったときに長いほっそりした脚を広く拡げてバランスを取り。
最近できるようになった片手倒立を取り入れて、片手でその状態を数秒、支えてみせる。
片手倒立できるようになったのは、竜神の力だろうと国領ハルカは思ってる。
その後、今度はバレエみたいに、立った姿勢から。
片足を後ろに上げ、えいっと背中をそらして、頭の後ろでその足を抱えてみせた。
いわゆる、「後ろ持ちバランス」だ。
肢をきれいに伸ばしてやるのは、2年生では彼女ともう一人しかできない。
優美なカーブを描く国領ハルカの体の線を、舐めるように茂良男の視線が這う。
「ふうん。――悪くねぇな。
今からは、あのヤらしい、水着みたいなの着てやってみせろよ?」
ヤらしいのは
そう思って、反発もしたけれど。
それほど妙なことは、されなかったし言われなかった。
国領ハルカとしても、このくらいならまあいいか、と思った。
今日はほんの軽い程度だが、もう少し広い場所なら演技の練習にもなるかもしれない。
まあ、そのうち何かやってくるかもしれないけれど。
その後、今回の試行も1万円分として割り引いてもらい、その日の茂良男との協議は終わった。
部屋に戻る。
今日は29日。今月は、明後日までしかない。
今月分は貯金で払ってもいいけれど、できればお金は節約したい。できれば明日明後日のどちらかあるいは両方、この演技の鑑賞会を入れて割り引きしてもらいたい。
それ以後も、週1、できれば週2くらいで。
割引きしても残る分は、バイトで頑張るしかない。こっちも週1回くらいイベントバイトとか入れれば、なんとかなるかも。
そう思い、心がぐっと軽くなったのを覚えた国領ハルカだった。
――――――
従妹が去った後。
茂良男は、一人居間に残っていた。
自分の居場所を脅かすあの従妹には、もちろん憎しみも抱いていたが。
それより最近は、性欲が抑えきれない。
初めて家に迎えたとき、国領ハルカはやせっぽちのがりがり小学生だった。
その従妹のことを、彼は疎ましく思っていた。
そもそも、「従妹の母(茂良男の母の妹)が身持ちが悪い」「放置されてる娘がかわいそうだ」みたいな話を、聞いていて。
伯母たちが従妹に同情的だったのも、気に食わなかった。
まだ彼が反抗期だったのもあって、彼女にきつく当たったのは確かだ。
その後、最初は薄汚れてみすぼらしかった彼女も、洗われて普通の服をまとわせてみると、顔立ちはなかなかで。
中学校になって女らしさも備えてきた彼女に、ちょっかいを出してみたけれど。
変人キャラになって、一時期は関心も薄れていた。
大学に入学し、彼自身も忙しかったのもある。
ただ、このボーイッシュな従妹が、花が開いていくように年々美しくなり。
高校に入学してから、強い魅力を感じるようにもなっていた。
そしてなぜかつい先週あたりからは。
彼女の肢体が狂おしいほどの引力で、彼を惹いていた。
しかしそのことが、二人の関係にプラスに働くことはなく。
彼はむしろこの従妹を支配し、隷属させることを決心するに至っていた。
彼より彼女を愛しているようにも思える両親への、ささやかな意趣返しも兼ねて。
歪んだ笑みが、彼の頬に浮かぶ。
確かにまだ、胸はないけれど。
しかし、今確認できた彼女の体は、いっそう魅力的に成長しており。
彼に、計画を一歩進めることをあらためて決心させるに十分だった。
「初めは、多少紳士的に、だな。」
従妹を見ること自体、それが自分のものでないと感じさせられることを除けば、悪いものではない。
今日は、従妹は気づかなかったようだが。
あのぴっちりと小ぶりだが丸いお尻を包んでいた体操着の裾から伸びた、白い肢。
逆立ちしたときに、背中側で少しめくれて覗いてしまった、汗ばむ背中。
そして、技を終えてこちらを振り向いたときに揺れた、演技のときだけ結ぶらしいポニーテール、軽い運動でも上気するなめらかな頬。
そうしたものが、彼の劣情をそそってやまない。
それを鑑賞する口実を得ることだけでも、意義がある。
「そして、少しレートを釣り上げて。
そうだな、ショーに出演してもらうか。」
基本、彼の従妹は温和で彼と争いたいわけではない。
少し甘い顔をみせてやって、少しだけ地下ショーに出てもらおう。
稼げる金も、段違いだし。
観客からの賞賛は、自己承認欲求の高い彼女には甘い毒となって働くだろう。
「そして
彼は、おそらくある種のビジネスや人脈づくりの才覚があるのだろう。
バイトを続けているうちに、いろいろと交友関係も広がり。
芳しからぬ方面との付き合いも、できてきていた。
その中には、どんな高潔な人間でも堕とせると豪語していた知り合いもいて。
その精緻な蜘蛛の巣のような罠に嵌ってもがく女たちを、彼も見たことがあった。
――俺の奴隷に堕としてやって。
あの体を、思うがままに嬲りつくしてやる。
そう思って。
彼は、ほのかに歪んだ笑みを浮かべたのだった。
――――――
自室に戻り、体操服からまたパジャマに着替え。
部誌の原稿書きにも一段落を付けた、国領ハルカは。
歯磨きを終えて、ベッドに入る。
体操競技も新体操も、実のところは女の子の世界だ。
男の視線というより、同性の女の子たちの間の競争。
エロいとか言われる衣装も、別に男の視線を惹くためのものじゃない。
女子高生たちの短いスカート丈と、同じなのだ。
男どもは誤解しているけど、世の中のファッションの大勢はそうだと思う。
女の子同士の受けがメインなのだ。
ただ。
日課の睡眠前の柔軟体操を終えて、ベッドに横たわり目を閉じた彼女は。
今日の体験を反芻して、奇妙な充実感、高揚感を覚えていた。
モデルで窓際によりかかるポーズを取っていた彼女に向かっていた、幾多の視線。
小母様たちの好意的な声だけでなく、おじさんや青年たちの無言の賞賛のまなざし。
それらは、とても心地よいものだった。
胸はほとんどないけど、彼女も自分のすらっとした優美な体には自負がある。
それに対して評価してくれたのが、すごく快感だった。
あと。
まったくその気はないけれど、トンボ君の熱い視線にもどきっとした。
どうしてもにじみ出てきてしまう優越感が、甘美だった。
その後、帰宅後、つい先程の従兄とのやりとり。
いけすかない、大嫌いな男だけれども。
でも、その視線には、揶揄や見下しの色合いだけではなく。
性欲まじりではあるが、美しいものへの賛嘆があったことを、彼女は確認していた。
そしてそのときに、かっと体の中心が熱くなるくらいの、勝利感を覚えた。
嫌いな男だけど、──いや、嫌いな男だからこそ。
その評価に偽りがない、とわかってしまったから。
それらを思い返しながら、彼女の意識はだんだん溶けていき。
睡眠前の放縦な思考は、とりとめもなく拡散していく。
もし、だけどさ。
こうした体操の演技するのって、何かバイトにできたりするかな。
もちろん、プロになるって意味じゃなくて。
でも、部の大会以外でも、あんなふうに演技したりするのを見つめられるって、いいかも。
思いつくのは、野球やサッカーのチアとかかなあ。
ホ○クスだとハ○ーズだったっけ。ブル○クスもあるに違いない。
ただ、あれはもうプロだし、高校生が片手間でできるものじゃないだろう。
あと、戦隊ものとかの、幼児向けのショーとか?
うーん、ちょっぴり「それじゃない」感がするんだけど、部活の休みにはめられるとしたら、そっちかな。
ボクならバク転もバク中も、なんなら2回転宙返りもできるからね!
ちょっと探してみよう。
あ。わき道にそれちゃった。
バイトもだけど。それじゃなくて。
ほら、茂良男なんかじゃなくて、さ。
ボクが演技してるのを、しのりんに観てもらう。
それって、いいかも?
しのりんなら、きっと食いつきそうな目でみてくるだろうな。
ふふ。
しのりんはスケベ野郎だからな。
きっときわどいところばっかり最初は見てくるだろうけど。
ボクの大技とか、優美な演技とかで、さ。
こんどこそ、キミの心に、ボクの存在を焼きつけたいんだ。
茂良男のときみたいに、しのりん一人に対してだけ踊って、演技するのもいい。
だけどたくさんの観客に向けて演技して、その中にキミがいるってのもいいな。
そしたらきっとキミ、そわそわして。
ボクへの観客たちの視線に、やきもきして。
ボクに対する独占欲みたいなのを、刺激されたりするんだ。
終わったら、楽屋に乗り込んできて。
まだ着替えすら終わってないボクを壁際に追いつめて、――ふふ。
さしあたり。
今週はしのりんは、みなりんとのデートだったっけ。
だから早くて来週かな、来週。
そうだ、さとみんとも相談して、搾○計画に入れてもらって。
なにか、仕掛けてみよっか。
学校じゃ、さすがに相談できないし。
明日、さとみんと話せるかな。
あ、部活があるってこと、言ってなかったな。まあ、大丈夫。誰もたかが一女子校生を狙ったりなんかしてないって。しのりんは、ほんと心配症なんだから。
そんなことを思いながら、なんだかふわふわと気持ちよくなり。
彼女は穏やかな眠りに誘われていった。