タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
苦手な方も多いと思うので、この回全部または★以下をスキップしても話の流れはがわかるように、そのうち修正します。
その夜、投宿していたホテルに戻った僕はーー帰省中だが、僕は今日は遅くなる可能性もあって、実家には泊まらないことにしていたーー、スマートフォンで高木から来ていたメールを読んだ。
メールはいくつかのURLを含んでいて、それなりの長さのあるものだった。
高木のメールには、簡単なあいさつに続けて、紫藤とその弟と思われる者が殺される動画、いわゆるスナッフビデオの動画があること、その動画の中には、紫藤が殺されるまでの間、過酷な拷問を受け、凌辱されている場面が含まれていること、この動画について警察への通報は行ったが、オンラインの動画が消されるだけで、これらに関与した者が現在に至るまで法の裁きを受けたという情報は得られていないこと、関与者のうち一名は最近死亡した実業家ではないかと思われること、が述べられていた。そして、視聴自体が日本の法に触れる可能性もあるという注意書き付きで、オンライン上の動画サイトへのリンクと思われるものへのURLが3つ載せられ、違法なアングラサイトであるのでアクセスの際には必ず匿名化できるプロクシを用いるべきこと、情報を他言しないことが書かれ、自分も死亡場面以外の部分は飛ばし飛ばしに確認したのみだが、非常に残酷な場面が含まれており、確認する際には注意すること、が書かれていた。最後に、「こんなことが許されていいとは思わないが、どうしようもなく今に至っている。」と書かれていた。
僕は簡単に返信で謝意を伝え、高木の付記していた匿名化サイトを経由して、一つ目の動画にアクセスした。
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(1つ目の動画)
1つ目の動画の画質はかなり荒いものだ。そして動画に音は入っておらず、完全に無音だった。
紫藤が、虚脱したように後ろ手に縛められた状態で、筋肉質の、目以外の顔の部分を隠すマスクをつけた巨大な男によって、突き飛ばされるようにしながら画面右手から画面中央に連れ出される場面から始まった。体格差は大人と子供のようだ。
紫藤は作務衣のような、粗末な和風の衣装をまとわされている。男は紫藤の髪を掴み、乱暴に地面に引き下ろした。紫藤は倒れ、そして髪を掴み上げられて、床に正座で座らされた。
床はコンクリートで地下ガレージか駐車場ないし工場跡を思わせる構造だが、紫藤の座った部分には、薄い水色のマットのようなものが引かれている。背後に、太い厚い板か柱で作られた、所々が鉄板で補強された十字架のような架台があり、おそらくは人体を固定するための鎖と革の輪状のベルトが両手に当たる部分、首と足首に当たる部分に着いて垂れ下がっていた。十字架は可動式なのだろう、堅固な鉄の台座に嵌め込まれていた。
カメラが紫藤の顔にクローズアップする。乾いているが、涙の跡が頬を伝っている。片頬に殴られた痕であろう痣がある。伏せた目に、少し痩せてしまった頬。荒れた唇は、半ば開いていた。
画面外から手が伸び、男に鞭を手渡した。男は鞭を持ち直し、紫藤に振り下ろした。
数十回にわたり男は紫藤を打ち据えた。打たれる度に身をよじらせていた紫藤は、20回目を過ぎる頃から身を投げ出し、背中を打たれたときに身を震わせるだけになった。しかしそれ以降も、男は執拗に紫藤をうち据え続けた。作務衣のすそが乱れた。作務衣の下半身部分は、厚手のキナリの木綿か麻のようだったが、ひざ上くらいまでの布を二枚、つまり正面側の布と背面側の布を紐でつなげた単純な構造にすぎないことが見てとれた。帯にあたる紐部分をのぞき、両足の側面は付け根まで布はなく、意外に肉付きのいい、しかし痣と血に汚れた大腿が大きく露出していた。
画面外、撮影しているカメラのすぐ横からなにか声が掛かったようだ。もう一人、先に筋肉男に鞭を渡したのとおそらくは同じ男、がそれを受けて筋肉男に何か伝言した。すると男はまた紫藤の髪をつかみ、乱暴に引き起こした。後ろ手に縛めている革の手錠がはずされ、身体の前でまたつなげられた。足首に革の拘束ベルトがつけられた。両手首の手錠は十字架台の横のバーの向かって左側に固定され、片足は高く上げられて横のバーのもう片方に付けられ、紫藤は片足だけで立ち、両手首と片足を吊り上げられて、体を大きく反らした姿になった。
そして画面手前から、一人のかつては肥満していたであろう老人が現れた。顔の上半分にモザイクが掛かっているが、奇妙に大きな頭をしているか、頭に王冠のようなものを被っているようにもみえる。首筋に特徴的な老人斑が見える。しかし、動きは矍鑠としている、というより若者のように力強かった。
老人は紫藤の腰布をめくりあげて、カメラに向けて股間を拡げてみせた。クローズアップされた足の付け根は無毛で、おそらくは除毛されていた。太く短い指が裂け目に突きこまれた。何か話しかけながら、指がこねくり回された。老人はズボンを下ろし、自らの性器ーー別の生き物であるかのような赤黒い、活力に満ちた巨大なものだったーーをしごきながら、下僕男に何かを呼び掛けた。
下僕男は、カメラに対し、20センチ強の、木の取っ手のついた金属の「やすり」のようなものを示しながら老人に手渡した。クローズアップされたやすりには、1cmほどの刺がびっしりと植えられていた。老人はそのやすりを、紫藤の性器に当てた。
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この時点に至る以前に、僕は悪い夢をみているように、あるいは高い熱にうかされているように感じていた。これは知るべきでなかったことだ。市民的な秩序と平穏は、ちょうど殺人鬼に襲われた美しい被害者の頭蓋骨を覆う顔の皮膚のように平然と剥がされていた。
このつぎに来ること、それを怖れながらも僕は既に確信していた。再生画面の一時停止を押した僕は、ねばついて視線を放してくれない画面から視線を引きはがし、部屋の中を見渡した。部屋の調度の何もない平穏さが嘘くさく非現実的に思えた。
知らぬ間におそらく平時の2割増しくらいになっている動悸が少し収まると、僕はシークバーを覚束ない手で押し、数分程度の映像を飛ばし、そして一時停止を解除した。
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(1つ目の動画・再生続行)
老人は紫藤に突き込んでいたやすりをねじりながら、なにかを唱えるか、話しかけているようだった。やすりが動くごとに、貧相な身体のなけなしの筋肉が浮いてみえるほど、逃れようとする絶望的な努力に、紫藤が身を捩っている。やすりが引き抜かれると、血が最初はぽたぽたと、次いでたらたらと流れ落ち始めた。すると老人は口を寄せ、その血を啜りこんでいるようだった。
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僕は胸が悪くなり、血の気の引いたせいか顔がひんやりとしてくるのを感じつつ、映像に違和感を持った。老人の頭部にはモザイクがかけられているが、先ほどは王冠のようにみえた何かがぼんやりと見てとれる。角度を変えると、それは王冠というにはやや大きく、破れて骨だけになってしまった菅笠のようにみえた。カメラは位置を変え、斜めから老人の口許を写した。
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老人は立ち上がると、自分の屹立した、年不相応に赤黒く若々しくグロテスクな性器を紫藤の足の間に押し当てた。巨大なそれが入らないとみるや、やすりがまたねじり入れられ、裂け目を拡げるように、ねじりの角度を拡げて、ーー
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もう我慢できない。込み上げるものに僕はスマートフォンをベッドに放り出して浴室に走った。既に酸っぱいものが口に溢れており、押さえた手を外すとユニットバスの便器に落ちていった。二次会で食べたもの、飲んだものが出ていった。ぼんやりと僕は「罪と罰」という言葉を思い浮かべていた。
十数分か数十分か。口を漱いだ僕は部屋に戻った。もう動画は見ない、調べたりしない、備品の冷蔵庫の酒を一杯だけ呷って何もかも忘れよう、そう思っていた。しかし強い引力で僕の目は画面に吸い寄せられた。
動画は一時停止されておらず、スリープにもならずに再生され続けていたようだ。画面から老人は消え、巨漢の筋肉男と伝令男とが何か言い争っている。紫藤は先ほどとは違う形で十字架に拘束されていた。普通に両腕を広げて十字架に掛けられているのではなく、両脚と両腕を十字架の後ろに折り曲げられ、おそらくは後ろ手に両手首と両足首が繋がれているのだろう。下腹部を突きだし、身を反らす形にされていた。服はすべて剥ぎ取られ、体のあちこちに金属の串か杭のようなものが突き刺されていた。両方の腿、二の腕。2つの乳房(これは横から刺し貫かれていた)、そして右の肋、腹にも2本。肋の一本は斜めに刺され、先端が右脇に突き抜けている。おそらくは大事な臓器をも傷つけて。そして股間の裂け目には、金属棒が突き立っているのがみえる。黒い、灼いた後を思わせるーー多分、苦痛を与えると同時に、傷口を焼き固める目的だったのだろうーーその棒が裂け目に突き立てられている(出血は少ない)。紫藤はぐったりとして、血の気のひいた顔は斜め上に力なく反らされ、目を閉じている。
十字架の根本には、木炭と思われるものが途中まで積みかけられていた。火刑。そういう単語が思い浮かぶ。
伝令男が木炭を積もうとしていたらしい。それが気に入らなかったのだろうか、筋肉男は乱暴に足で木炭を蹴りのけた。
手に掴んだ杭を伝令男に突きだして、何か熱弁している。伝令男がカメラの横、おそらくは菅笠老人の方を示す。筋肉男はペッと唾を吐き捨て、杭を掴んだままの拳で紫藤の腹を殴った。紫藤の口と腹に刺さった杭から血が溢れ、滴った。紫藤は、殴られた瞬間には身を捩って顔にも苦痛を浮かべたが、すぐに力なく首を前に垂れた。筋肉男は、そのまま持っていた杭を、紫藤の左胸に突き立て、捻った。痙攣、おそらくは心臓に達する致命傷。カメラが突然つきのけられたようにぶれる。老人が筋肉男に歩み寄るように画面手前から出てきた。体格は骨太ではあったことが伺われるが、筋肉男と比べるべくもないのに、肉食獸を思わせる危険な動き。振り向いた筋肉男は身構える。腰を落とし、腕を伸ばし組み付くような姿勢。しかし老人はやすやすと筋肉男の腕を掴む、すると、突然筋肉男はマスク越しにもわかる驚愕の表情で老人のまえにひざまずいた、いや、無理矢理
僕はサイトを閉じ、スマートフォンを消した。あまりに血なまぐさい、衝撃的な映像に接してひどく気分が悪かったが、同時に胸を衝かれるような、ひどく下劣で背徳的なものをみたときの変態的な興奮と、そして二徹、三徹のあとのような、眠ろうとしても眠れない異常な疲労をも感じていた。頭も心もぐちゃぐちゃのままだが、歯磨きをしてシャワーを浴びて無理やり寝てしまおう。そう思いながらも、僕が寝付けたのはかなり遅くなってからだった。