※この作品はR-18です。

タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。   作:Marchhatter

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21 援助+交際だ、援助交際ではない(3)

 その後、僕は自転車を回収し、紫藤の家まで紫藤を送りとどけた。僕と紫藤は、まるで恋人のように手を振りあって別れた。家からの角を曲がるときに振り返る。紫藤はまだ家の前で僕を見送ってくれていた。

 僕はところどころで地図を広げ、帰路を覚えながら家路についた。勃ったあとの股間が、ひきつれるように痛んだ。

 

 帰路の出発は午後4時くらいだっただろうか。帰り道は下り坂が多いこと、また途中で寄り道をしなかったこと、もあって、40分くらいで帰着できた。

 行きは1時間くらいかかったように感じたが、途中の迷い道を減らせば、おそらく所要時間は行きも40分、帰りも30~35分くらいにできるように思う。

 

 足は軽く筋肉痛になった。まだ電動アシスト自転車が普及していない時代だ。バイクが欲しいけど、まあ紫藤の家に行くだけなら、自転車だけでもいいかな。往復一時間強、ちょっと時間がかかるが仕方ない。

 

 問題は、羽立毛市に行くことになった場合だ。

 距離は約40~50km。

 多賀島市内から私鉄の特急で45分、JR特急だと40分弱。鈍行だとその1.3〜1.5倍くらいだろうか。

 自転車だと、比較的起伏は少ない方なのだが、片道で2時間から2時間30分くらいはかかるだろう。

 歩くと急ぎ足で全路を行けたとしても、6~8時間くらいか。ちょっと山を越えることもあり、歩きは現実的でない。

 

 やっぱりバイクは必要だ。カエルなどに無駄金を使ってないで、ちゃんとした用途に資金を使わねば。

 あと目先の快楽追及のため景気よく紫藤とのJKお散歩活動に使ってたら、いざとなったときの資金まで溶かしてしまうかもしれないよな、節約して、できれば増やす方法も考えてみよう。

 

 帰宅後、衝動に耐えかねて、紫藤で抜こうかと思い実践しかけた。しかしあの上気した頬で、上目づかいに熱のこもった目で僕を見上げる紫藤を思い出すと、ひどく興奮するとともに、自分が汚らわしく思えて手がとまった。

 結局調布さんに妄想に出演してもらった。ゴミ虫を見るような目で見られて、踏まれて蹴られてのたうった後、調布さんの油断をみすまして下克上する妄想。うん、これはこれで捗った。明日顔を合わせたときのスリルも、何とも言えず良いんだ。

 

 ーーーーー

 

 夕食時に親に小冒険を報告して(もちろん紫藤と会ったこととか、カエル男を詰めたとかの話は一切しない。クラスメイトにあったよ、程度だ)、いつもどおり勉強して入浴して布団に入る。

 疲れていてすぐ眠れそうだ。目を閉じながら紫藤のこと、これからの計画のことを考える。

 

 紫藤は好きだ。幸せになってくれればいいと思うし、少し頼りない後ろ姿や、何気ない仕草、そして後ろの席から見る白い首筋、髪の生え際などをみるだけで、どういうわけか胸の鼓動が早まる、先生の授業の話に聞き入り、無防備に傾けられているその頭を撫でたくなる。

 

 だけど紫藤の気持ちは、実はまだ僕にはよくわからない。好意を持たれてると思う。だがそれは本(・)物(・)だろうか?

 

 紫藤の僕に対する好意には、あのカエル男事件の吊り橋効果みたいなのが大きい気もする。そして僕のことをかなり良い方向に誤解して、過大評価して捉えている気がする。スタンダールのいう、「ザルツブルクの小枝」だ、美しい塩の結晶が枯れ枝という実像を隠してしまうわけだ。

 

 僕は本当は空っぽな人間だから、今は目が眩んでいても、そのうち実像が分かったら紫藤は醒めてしまうんじゃんないかな。

 

 それに、自分が選んだものだとはいえ、僕が紫藤を援助する方法にも問題がある。内発的動機付けを外発的動機付けにすり替えてしまうという問題だ。

 

 あるユダヤ人の有名な逸話がある。

 自分の悪口をいう悪ガキに、悪口を言ってくれたお駄賃としてお小遣いをやる、そししばらくしてその小遣いを止めてしまう。すると、悪口を言っても小遣いがもらえないと分かった悪ガキは悪口を言うのをやめてしまう。

 悪口に金銭報酬を支払うことで、いつのまにか悪口をいう動機が、お金目当てという外発的なものにすり換わっちゃうんだね。だからお金が止まると悪口も止まるんだ。

 

 紫藤との援助つき交際アルバイトも同じだ。好意での付き合いが金銭を目的とした付き合いにすり替わってしまうとすると、お金の切れ目が縁の切れ目になる。だとしたら金銭での援助はやめとけばよかったか?

 ーーそんなことは僕は思わない。

 

 偏屈な僕には、むしろ無償の好意なんてものが信じられない、そんな淡雪みたいな頼りない不確かなもので左右されたくないんだ。金でも法律でもいいから縛り付けたい、確かなものが欲しい。

 

 むしろ金目当ての方がいい、金が尽きて離れていってしまうときにも自分を納得させられる。愛や好意なんていう、僕に理解できない理由で離れていってほしくない。僕は僕の目的が達成できればいい、紫藤が救われれば良いんだ、その後に紫藤が僕にがっかりして離れてしまったとしても、仕方ない。僕はそういう空っぽな男なのは確かだし、紫藤はその程度の女だったんだ、と思えばいい。

 

 ただ、頭ではそう思っていても。

 紫藤が離れていってしまう。そんな日が来ると思うと。

 独占欲といえばいいのか、所有欲といえばいいのか。何か紫藤に対する暗く濁った感情が、雨の日の下水のように水位を増すのを抑えきれない。

 紫藤が離れていくのを見る、他の男のものになって幸せになるのを見るくらいなら、この手で壊してしまいたい。そうすることで自分のものにしてしまいたい。憎悪に似た感情。

 どう考えても、美しいものではない。

 

 ーーおかしいな。

 僕はそこまで人間っぽいものじゃなかったはずなんだけどな。

 寝よう。まだこの体は成長途中だ、睡眠不足でいいことはない。

 空虚な魂を収める容器だけど、この世にある限りは大切にしなければ。

 

 ーーーーー

 

 さて、連休が水曜から始まるが、その直前の2日間、僕と紫藤は、お昼休みを使って連休についてのスケジュールを検討することにした。

 

 紫藤は、自分が僕の高木たちとの男同士の付き合いを妨げているのではーー?、と気にして懸念を示したので、僕は早速JK紫藤の雇用主としての権利を行使して金で紫藤の時間を奪った。暫定時給1000円。(1時間より短い場合も同額)。

 紫藤はちょっと恨めしそうに「志野くんは、いじわるだよ。」「わたしの気持ちを知ってるくせに」「わたしが先に言っとけばよかった。」とかなんとか言ってた。

 

 意外に僕がブラックな雇用主だということが分かってきたのかな。うん、ろくなやつじゃないんだよ。いつか離れていく君には、せめて今のうちだけでも、少し意趣返しをしてみたいんだ。そのうち、もっとあんな命令やこんな命令も。ふふふ。

 

 第一日目の月曜日に、その援助つき交際アルバイトについて、基本契約書みたいなのを2通作って、お互いに指印をしっかり押してそれぞれ保管することにした。僕の側の権限を強化する条項を加えておいたので、文面上は相当なことまで命じられなくはない。もちろん、これを使って紫藤をいじめる気は今のところない。ミイラ取りがミイラにならないように気を付けないとな。

 ああ、契約書といえば、カエルたちの人身売買契約書と証拠のグラスは、ちゃんと保存してもらうことにしてるよ。抜かりはない。

 

 電話連絡のときのルールも決めた。

 紫藤父が良く電話を使うらしい、そしてこいつにはあまり接触したくない。言葉を濁していたが、紫藤もそう考えている模様で、おそらく異性の同級生とかからの電話にもシビアなんだろう。あるいはしつこく紫藤を問いただしたり、くぎを刺そうとしたりするのかもしれない。

 

 ともかく、基本的には家の電話を使わない。どうしてもやむを得ず使うときは、公用を装う。いや政府機関を真似する振り込め詐欺みたいなアレじゃなくて、学校の部活動とか委員会活動の連絡とかを装う。

 紫藤の話から判断すると、紫藤父は、外面はいいらしいので、そういう建前をつけると話は一応通りやすいと思われる。ただしどうも紫藤本人としては、あまりその手は使わないでほしい、という感じ。

 

 携帯電話やPHS、ポケベルの取得も考えたが、進学校では持ち込みを認められていないし、僕たちの周りでもあまり一般的でない。紫藤側で許可を取るのは難しそうだし、学校などで見つかったときのリスクもある。でも将来的には即時連絡の必要性はありそうなんだよな。引き続き検討、といったところか。

 

 この時代、電話ボックスなどの公衆電話は多い。ただし、利用者も、そして長電話する奴も多い。だからいざというとき使えるかどうかわからないが、紫藤家のそばの公園の公衆電話の電話番号を控えて、備えることにした※。

 

 間違ったふりをして1回コールで切る、というのを合図に、フリーなら紫藤が家を出て、コールバックする。それか、ちょうど15分後と30分後を目安に僕が公衆電話の電話番号に掛ける仕組み。

 

 公園までは紫藤曰く走れば40秒もあれば行けるらしいのだが、間違い電話のすぐ後に家を出ていくパターンが続けばさすがにすぐバレてしまうだろう。

 だから、紫藤一人のときはすぐ公衆電話からコールバック、誰かいれば15分後か30分後。それ以上だったら紫藤が家にいないか、入浴とかトイレとかとにかく何らかの事情で出られない、ということになる。

 

 本人は認めたがらないのだが、財政難であろう紫藤側からコールバック電話を掛けさせるのは心苦しい。

 この当時はまだ存在した、度数の大きいテレホンカードも支給した。たかが数千円のこと、だけどこれに対しても紫藤は借りが増えると言って頬を膨らませて抗議していた。かわいい。

 

 さて、これから第二日目の、火曜日のお昼休みだ。紫藤と時間差で、第二体育館横にいく。

 

 ーーーーー

 

 「こんなにたくさん、払ってもらうのは間違ってるよ。この半分、いや、4分の1でいい。」

 

 「でもさ、これは時間がかかるよ?もっと高くていいんじゃないかな。」

 

 雇主と奉公人。雇主が額を引き上げたがり、奉公人が額を下げたがる異例の労使交渉だ。

 

 「もっとシンプルにしようか。してもいいことが1000円、したくないこと2000円、絶対したくないこと1万円。どう?」

 

 「志野くん、わたしもバイト探してみたからわかるよ。バイトの時給は600円くらいだよね。そんなに高いのはおかしいよ。」

 

 「でもそのかわり、絶対したくないこともメニューにあるんだよ。バランス取れてない?」

 

 「ピーマンを生で食べろ、とか?」

 

 「そんなことは命令しないよ。もっと、そう、すごくやりたくないこと。」

 

 「たとえば、何?」

 

 「うーん、耳かきとか。」

 

 「そんなのただでやってあげるよ。弟にはしてるし。こんどしようね。」

 

 マジかよ、弟さん羨ましすぎ。じゃあ頼もう。ジーンズとかじゃなくて、生足の出る短いスカートかショートパンツで。

 

 「同じことでも、その時の気分でやってもいいというときと、嫌なときがあるよね。それでいいと思うんだ。その時その時で違っても構わないってことにしよう。疲れてるときはやりたくないからレートが上がるというのでいい。ちょっとやってみない?」

 

 「それでいいけど、ーーでも、こんな簡単にお金が入るなんて、慣れたら駄目になりそうだよ。お金を返し終わったら、ちゃんとした仕事しないと。」

 

 紫藤が、この昼休みを僕が買い取って代価として渡した千円札を、まだ自分のものと認めたくなさそうに手で捧げ持ち、しげしげと眺めている。

 紫藤には説得して、さしあたり5万円はまだ返さなくていい、ということにしているので、紫藤の手に現金が渡っているのだ。いろいろあって、昨日今日で紫藤に3000円払ってる。

 まだまだ課金しないとな。これで不十分なら下着買い取り(ブルセラ)に進む所存。

 

 「夏休みくらいまではやってほしいな。紫藤さんと離れたくないし。」

 

 「志野くん!バイト期間が終わっても、わたしたち終わりじゃないよね?お金のことはなくなるけど、いっしょにいてもいいんだよね!?」

 

 いかん、紫藤が泣きそうだ。

 軽く背中をぽんぽんして宥める。

 

 「もちろんさ、紫藤さんが望まない限りは僕は紫藤さんを離れないし。いや、離れようと望んだとしても、放してあげないよ?」

 

 あれ、紫藤が固まった。でも、うん、再起動したな。人間のことはよくわからないが、Win95と同じだ、再起動すればだいたい大丈夫なはずだ。

 

 「わたしは、ずっと志野くんにいてほしい。」

 

 ちょっとうるんだ目で見上げている。勘違いなんだけどな。でもまあ、僕はゲスだから勘違いであってもそれを利用して目的を達するよ。誠意のかけらもない笑顔で、大丈夫だよ、と言って安心させ、僕は労使交渉を進めるのだった。

 

 ーーーーー

 

 労使交渉は一応の妥結に至った。これで一緒にいる口実ができる。

 

 「紫藤さん、連休はどんな予定?」

 

 「バイト、志野くんの以外だけど、が少しと、あとは家かな。お母さんがずっと仕事なんだ。わたしもバイト入れるつもりでさがしてたんだ。」

 

 「バイトいれるの?」

 

 危険そうなバイトとか、場合によっては雇主権限を発動してブロックするかな。

 

 「一応、一つは入ったんだけど。イベント。」

 

 話を聞く。啓発活動のビラ配布か。うーん、変な奴に絡まれたりしないかな。まあ大丈夫か。

 時給700円。交通費不支給だが、高校生バイトにしては決して悪くない。

 

 「お母さんは、少しは休まないの?」

 

 「わたしも心配なんだけど、ーー」

 

 自転車操業なんだろうな。うん、ちょっと無理してでも資金注入して休んでもらおう。

 

 「あのさ、提案があるんだ。」

 

 紫藤が今度は何かしら、というように、心配そうに、あるいは恐れるように眉をひそめた。心外だ、紫藤のための提案なんだけどな。

 

 ーーーーー

 

 僕の提案は、簡単に言えば今回限りの月給化ないし前払い制度だ。今、まとまったお金を渡す。50万くらいか。そして紫藤母に休んでもらう。50万は紫藤が働いて返すという建前。もちろん僕のブラックバイトで。こうなると紫藤は首まで借金漬けだな。ふふふ。

 

 紫藤の眉がますます情けなさそうに下がった。

 

 「お母さんに、なんて言えばいいの?そんな大金を貰える仕事があったって言っても、信じてもらえないよ。変なことをされるバイトじゃないかって心配されるかも。それに、ーー」

 

 話を聞くと、はっきりは言わないが、僕のお金でなく、僕が勝手に自分の家のお金を持ち出してるんじゃないか?と心配してるようだ。

 

 心配はいらないんだが、まあもっともだ。だから架空のストーリーで心配を消す。

 

 「買いたいものがあって貯金してたんだ。」

 

 架空の話の中の僕は、それを買おうと思ってコツコツ貯めてきた。かなりの額になった。だけど父の知り合いから格安で譲り受けることができそうなのだ。余ったぶんは、今のところ使い道がない。

 

 「だからさ、心配しなくていい。ちゃんと返してくれればいいし、返してくれるのは、ずっとずっと後で構わない。1年後でも10年後でも。」

 

 生きていてくれれば、ね。

 本当は、返してくれなくて全然かまわない。

 でも返さないっていうと、変だと思うだろう。

 だから返してもらうことにはこだわってる風に見せようか。

 

 難しいのは、確かに紫藤が心配するように、紫藤母の懸念の方だと思う。

 きっとこんな額を一度に見たら風俗系のバイトじゃないかって考えるよな。

 難しい。だが一応、僕には考えがあった。

 

 「給料の前借りだということにすればいい。」

 

 一応、給料の前借りは法律違反でなく可能だ。ただし、それを給料と相殺すると違法らしい。

 だが一度支払って返済してもらうのは大丈夫。だから、1か月10万円だけど、5か月分を前借りした、と説明すればいい。

 

 「でも、10万円って、すごい額だよ。アルバイトでそんな額、聞いたことない、せいぜい5万とか6万とか。」

 

 「時給1000円で週5日フルタイムで15、6万円って感じだもんな。実質土日しか働けないとすると、週12時間、時給1000円ですら5万くらいか。しかも時給1000円というのは、高校生バイトにはちょっとありえないか。」

 

 じゃあ、とりあえず融資額を20万円にして、時給700円の土日だけのアルバイト、4か月分くらい前借りってことにするか。連休があるから多少支給額が多いのはごまかせるかな。土日もバイトと称して時間を空けてもらおう。

 これでもまだちょっと不自然ではあるが。契約書も給与明細も出せないものな。

 必要があれば、契約書はつくるけど。この時代の高校生、ワープロもPCもない。

 学校のを使わせてもらうかな。まあ必要が出てくればだけど。

 

 紫藤母が倒れたのは多分、5月末か6月初頭。そこの前に一度休んでもらわないと。

 そして多少不自然でも、疲れ切っている人なら騙しきれるかな。

 

 紫藤はまだ浮かない顔だが、一応それで話を持って行ってもらうことにした。

 

 「そうなると、土日とバイトの入ってない連休だけど。」

 

 紫藤が顔を上げる。

 

 「うん、わたしは、その、志野くんにお仕えすることになるから、ーー。でも志野くんはいいの?」

 

 「いいの、って?」

 

 「わたし、志野くんと一緒にいることになるけど、その、わたしはうれしいけど、あの、志野君のおうちとかに行くの?邪魔じゃない?」

 

 「それもあったな。」

 

 バイトがあるということにするから、連休も土日も紫藤が自分の家にいては変だ。

 

 「そこは考えよう。でも紫藤さんは、自分の家にいなくて大丈夫?家事とか。」

 

 「そこは、何とかなると思う。土日も、帰る時間はいつもと同じくらいだし、それにお母さんに休みを入れて、その、毎日2つやってる仕事も片方を休んでもらえば、お母さんも早く家に帰れると思うしーー。」

 

 「じゃあ、そうしようか。僕の家ってのも、ちょっと嫌でしょ?僕の両親に勘違いされるかもしれないし。」

 

 「それはいいんだよ、だって、」

 

 「うん、でもずっとだとやっぱり変に思われる。だから、図書館に行ったり、それとときどきはどこかに一緒に遊びに行かない?いや、もちろん、遊びに行くことを僕が命令するんだけどさ。」

 

 「うん、うれしい!でも、ーーいいの?」

 

 「もちろんだよ。もちろん、遊ぶだけじゃなくて、勉強をしないといけないけどね。」

 

 「そうだね、だって、」

 

 「連休が開けたら、テスト週間だもんね。」

 

 顔を見合わせて、少し虚ろに笑う。

 中間考査は5月の中旬。連休明け、僕は卓球部の対外試合があるが、それが終わるとすぐに中間考査になる。紫藤はこつこつやってそうだけどな。僕も大丈夫とは思うんだが。

 

 紫藤は紫藤母にアルバイトのことを相談。うまく話が通ったら、父にも母経由で話を通してもらう。

 そして連休と土日は、紫藤は日中、家を空ける。母にはバイトを減らして、完全休養日も作ってもらう。

 そういうことで動いてみよう、ということになった。




※現在では(あるいは当時も?)普通の公衆電話にも電話番号は割り振られ、着信もできるけど鳴らないよう設定されている模様です。かつては公衆電話のラベルに電話番号が記入されて貼られていた気がしましたが、記憶違いかもしれません。
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