タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
(第三者(国領ハルカの従兄、
「おう、モラちゃんやないか。あー、リハやんな?」
肩幅の広い、いい体格のボディガード風の男。剃り上げた頭と首には、刺青が見える。
御子須リハンの根城の一つである、怪しげなクラブの受付。
ごく変哲もなさそうな、有体にいえばすこししょぼい外見のビルの地下にある。
エレベータにあるコマンドを打ち込むか、磁気カードリーダーにカードを読み込ませないと、この階には行けない。
階段等もあるらしいが、逃走用に秘匿しているようだ。
「リハやんな、たしかなー、ちょっと
30分くらい前に行ったから、まだまだかかる思うよ。
──見にいく?待っとく?」
「え?
「あー、モラちゃんならかまへんかまへん。
もともと、今日来るいうんは、聞いとったよ、リハやんに。」
国領ハルカの従兄である、茂良男は。
今日は、
アポを取り、ここを訪れていた。
アポを取ったといっても、「嵌めてほしい女がいます。火曜の夜、ちょっと行っていいっすか」「いいですよ」レベル。
だから、もちろんそれまでの間はこのクラブのバー部分で時間を潰そうと考えていた。
「今日も繁盛やで。まだ火曜日なんになー」
日本も終わりやな、とのんきに言っている。
「きれいな子、いる?」
「うん、普通にお客で来はったりしとるよ?」
茂良男とも顔見知りである、ボディガードの
強面に見えて、なかなかフレンドリーである。
(ただし、戦闘能力は高く、いざというときには笑いながら非常に残酷に敵を痛めつけることを、茂良男は知っていた。)
「ほら、リハやんとこ案内するわ。──ケン、ちょっと頼むわ。」
「押忍。」
弟分らしい小柄ながらがっしりした男に受付を引き継いで、自分で案内してくれるようだ。
破格の厚遇だが、外見はいいが性格が悪い、バイトで使い物にならなかったクソ女をこの店に堕とすのに協力したことがあったから、きっと仲間意識を持ってくれてるのだろう。
この地下クラブは、登記上はオーナーを異にする、複数のビルの地下にまたがっており。
表からは、信じがたいほどの広さを持つ。
(警察の手入れがあったときの逃走用に、複数のビルから逃げられるようにしているようだ。)
そして地下ショーのステージやハプバーなど、複数の業態の複合とを持っている。
今日使ったあのショボいビルからこれる窓口も、あくまでその一つに繋がっているにすぎない。
補強された厚く重い扉を、さらに2つくぐる。
高めに設定された気温は、露出度の高い服装だったり、服を脱いだりしても寒くないようにだろう。
暗い空間、熱気。壁際のソファに座ったり、立ち見してたりする客たちの多くは、目元を隠す仮面を付けている。
ポールダンス用のスポットでは、刺激的な服装の外国人ダンサーが妖艶に踊っている。
うち一人は、シールで乳首と局部を隠し、ボディペインティングを施しているだけの状態だ。
首輪を付けて目印にしている女給たちは、あくまで本人任意という建前だが、オプションに応じてくれる。
──別の小部屋でも、この衆人環視のもとでも。
今しも、ヴィクトリアンメイド姿の清楚そうな女性店員が、客の男の横に座らされ、その胸に手を入れられてまさぐられて、顔を赤らめて目を閉じている。
「──あんな子も来とるんや。世も末やろ。」
ささやかれて、指差された方向に目をやる。
確かに、あきらかに目を惹く容姿の、まだあどけなくみえる小柄な子が、ソファに座った客の一人にひざまずき、スラックスの股間からまろび出たものを口に含んでいる。
客はでっぷり太った下品な男で、ガマガエルに似ている。この美少女を同伴し、見せびらかしているようだ。
お金はあるのだろう、脂肪でぱんぱんの太い指には金らしい指輪が嵌っている。ひざまずいた少女のワンピースの裾を持ち上げて、その白い下半身をあらわにしてみせている。
まわりには、──おこぼれにあずかりたいのだろうか。
何人かの男がたむろして、物欲しげにそのようすを見守っている。
「あれ、ガマガさんいう人や。
先祖伝来の土地売って、あんなに金ばらまいとるんやと。
まあ、うちはまだ仁義あるからなにもせんけど。
そのうち、悪い奴に骨までしゃぶりつくされるやろね。
──こっちや。」
フロアから、広めの廊下に出る。
いっそう暗い廊下では、やはり何組かのカップルがからみ合っている。
ごく普通に、抱き合って口を貪りあいながら交接している男女もいれば。
声を殺しながら、壁に手を付く女給の腰を持って、自分のモノを突き込んでいる、小柄な老人もいる。
廊下の角では、バドガールの衣装をまとった、首輪付きの女を。
対面姿勢で両膝から抱えて持ち上げた逞しい男が、女を壁に押し付けて腰を突き上げている。付き上げるたびに、眉間に谷を刻んだ女がうっ、うっと声を上げる。
あぶれた男たちが、それを目を皿のようにして見守っている。
──ちゃんとヤリ部屋もあるんよ?
だけど、見られるんが気持ちいいんやろな。
ボディガードの男がささやく。
廊下を抜けて、別の、やや小さめなショー用の部屋に入る。
まるでスタジオのように照明機材もそろった、ステージのある部屋だ。
暗い(今は無人の)客席と違い、明るくスポット照明が当たっているステージの上に、女が固定されている。その横に、男が一人。御子須リハンだ。
女が固定されている台は、ごく普通の、学校の教室机。机を2つ連結して固定し、使っている。
女は日焼けした、健康そうな体つき。肩口には、ハートに矢が突き刺さったマークの刺青がある。
おそらく純粋な日本人ではない、外国人かハーフだろう。
女は机の上に、仰向けに寝かされていて。
ちょうどブリッジするような姿勢で、机の四隅の足に、その手足を固定されている。
腕は頭上に上げてから、背中側に曲げられ。
肘から先に、先が指のないミトン状になった、奇妙な黒革の拘束具を付けられていて。
そのミトンは、机の足の上部に固定されている。
ミトンは、ただ机の足に縛って固定してあるのではなく。
机の上部から、革ベルトか何かで吊られるように固定されている。
そのため、固定された女はその腕を突っ張ることで。
まさしくブリッジのように、不安定ながらも机の上面からその背を浮かすことができるようになっているようだ。
脚も同様で。
きれいに処理された、小麦色の日焼けした脚の膝から下に、やはり厚い長靴下状の拘束具が付けられて、机に固定されている。
これまた、足を突っ張って、体を浮かすことが可能。
そして実際、女はなぜか、机の上面から背を浮かせるように手足を突っ張り、体をねじり、持ち上げようとしていて。
その、魅力的でのびやかな手足に筋肉が浮く。
受付に戻る安に礼を言い、茂良男が彼らに近づくと、その理由がわかった。
机の、女の背中にあたるところに、何か突起のある板が置かれている。
この板自体は、おそらくラバーか何かで表面処理されているが。
突起部分には、電極めいた金属が露出している。
おそらくは、この突起に背中がつくと、電流が流れるようになっていて、──
「モラちゃん、お待たせ。ちょっと待っててね。」
そう、彼に笑いかける、王子様のような衣装をまとった、精悍な若者。
身長は少し高め、ただ普通の範囲だろう。。
少し汗の浮いた顔は甘い感じで、ホストとしても人気出るのは分かるが、まあ普通の範囲だ。
何より、彼の特徴は。
その体から噴き出る、ぎらぎらとした精力にあった。
「リハンさん、すみませんプレイ中にお邪魔して。
その子が終わるまで、──」
「いいよいいよ。ちょっと早めに仕上げたくてさ。
まず、『鼻折り』から始めてたんだ。」
むぐむぐと声を上げる女の口には、赤いボール状の口枷が嵌められている。
腹には、赤い筋が数条。
「さっさと素直になりゃあいいのにさ。
これで何時間か、頑張ってみる?」
女に、語り掛けるリハン。
女は、反抗的な目で見返している。
「んまっ、しばらくこうしとこうか。
あー、それともモラちゃん。責めてみる?」
「いいんですか?」
「いいよいいよ。俺も腕が疲れなくていいしさ。
この子は、クスリを使っちゃいけないからね。手間がかかるんだ。」
どれ使う?と聞かれて、茂良男はそばに出されたワゴンを見てみる。
さまざまな形状の鞭やパドル、ワックス(蝋燭)、張り型。
使い方のわからない器具も、多い。
そして、その中にはなかなか凶悪なものもある。
「リハンさん、これって、──」
「ああこれね、汚くなるけど使うことあるよ?」
昔話の鬼の持つ金棒を小さくしたような、刺の植わった棒。
男性器より一回り大きく長いが、その用途は、──。
「これ、突っ込んで掻きまわすとね、まあ耐えられた女はいないね。
でも、この子にはまだ使えないんだ。
ほら、これ使っちゃうと、後はスナッフに流すしかないし。
この子の出番これからで。今度、大舞台に出すからさ。」
片目をつぶって、いたずらっぽく言うリハン。
彼はいつも茂良男には親切なのだが。
茂良男は、どこか格の違いに気圧されるものを感じる。
この男、御子須リハンは。
甘いマスクの凄腕若手ホストであり、女を嵌める技に精通している。
手段には、いろいろのものが含まれる。
普通に口説いて、自分に依存させ、泡に沈める、というのももちろんするし。
金や暴力を使って、逃げられなくしたり。
どこからか入手した薬を使ったり。
ともかく、この男が嵌められなかった女を、茂良男は見たことがない。
本人にそれを言うと、本人は、「嵌められる子しか、嵌めないからね。」と謙遜するが。
頼まれると、普通に難攻不落に思える良家の子女でもやすやすと攻略し、売り飛ばしてみせることを茂良男は知っていた。
「じゃあ、ちょっとだけ。」
茂良男は結局、鞭を選び。
リハンに助言を受けながら、女の胸や内股に鞭を振るう。
鞭うつたびに女が苦痛の反応を示すのが、茂良男に快感を与える。
「ほら、これも。」
敏感なスポットにバイブレータを当てて刺激させながら、同時に苦痛を与える。
汗の浮いた体を捩らせ、荒い息遣いで涙と鼻水を垂らしながら悶える女の姿は、彼を大いに満足させる。
いつか、あのいけすかない従妹にも同じことをしよう。絶対にだ、と彼は思った。
──────
「それで、リハンさん。嵌めてもらいたい女がいるんです。」
ひとしきり女を嬲った後、話があるんだよね、とリハンは女を放置して、茂良男を別室に誘った。
(女は絶望的な視線を彼らに送っていた。鼻っ柱ももうすぐ折れるよ、とリハンは耳打ちした)。
やはり照明は暗めだが、落ち着いた小部屋。黒革のソファも、柔らかく心地よい。
この部屋でも、いろいろやったりするんだよねー。
ほら、この前なんか、×××が来てさ。さんざん、ねちっこく女をいたぶってて。
テレビとかで見せてる善人でございっていう顔とは、ぜんぜん違うよねー。
あの爺さん、○○○プレイが好きなんだよ。
女の子に嵌めながら、蝋燭たらしてみたり、パドルで叩いてみたり、髪を掴んで首をこう、へし折るみたいな感じに曲げたりさ。
なんでも、そうすると締まりが良くなるんだって。
たぶん粗チ○だからさ、そうでもしないと摩擦できないんだよね。きっと。
さんざん楽しんどいて、金払いはけっこうケチいんだよ。
え?うん、俺も同席したけどね。あんまり好きじゃないなー。
そう、リハンは楽しそうに言い、そしてなんだっけ、と茂良男に促し。
女性スタッフが運んできた紅茶を、前にして。
ふむふむ、と頷きつつ茂良男の話に聞き入る。
従妹を、嵌めたい。自分でも、心ゆくまで辱めたい。そう伝えて、国領ハルカの写真も見せる。
「ちょうど、今度さ。でかい祭りがあるんだ。」
リハンは、そう言いだす。
数年に1度、世界の各地で行われる興行。
拷問。凌辱。人体破壊。カニバリズム。剣闘。野獣による人間狩り。公開処刑。ありとあらゆる冒涜的、倒錯的なショーが実施される。
普通は、警察権の及ばない、いわゆる失敗国家の場所を借りて行われたり。
あるいは、公海上でひそかに実施されたりするようだが。
「今年の夏は、ね。ここで行われるんだわ。」
場所については、今は言えない、と口を濁したリハンだったが。
何人か、そのショーに女を出品しようとしていること。
さきほどまで、リハンが調教していた女もその一人であるということを打ち明ける。
「高く売れるよう、集めてるんだけどさ。」
難しいのは、彼女らの痕跡を抹消すること。
適当に誘拐して調教する、というのはできなくはないが。
たいていは捜査依頼が出されてしまう。
警察に影響力のある政治家を通じて、押さえ込むのは最後の手段。できれば避けたい。
だからあとくされないように、借金で首の回らなくなった家族から娘を買ったりするわけだが。
「なかなか、いいタマが集まらないんだよねー。
その点、その子は有望そうだね。」
写真みたけどさ。うん、すごいいいよ!
その子。上手く痕跡を消したり、家出に見せかけたり、できるかな。
そうそう、東京の文通相手の家に家出します、探さないでください、みたいな手紙とか。
「事件」と「家出」じゃ、さ。ぜんぜん、警察の捜査の意気込みが違うんだよ。
警察も、忙しいからねー。
リハンの言葉を聞いて、茂良男も決心する。
あの従妹を、手に入れるためには、そのくらいはやらなきゃいけない。
「わかりました。リハンさん。
オレ、やります。」
「頼むよー。それじゃ、さ。」
まずは、その子に成功体験積ませたい、って言ってたよね。
お店としても、願ってもない話さ。
ただ、この店は、ちょっとディープすぎるからね。
最初は、一般受けのいいショークラブあたりからどうかな。
二ツ木通の、裏手のショーパブ。そう、「アッサンブレ」ね。
午後10時までは本ステージでも、ソフトな演しもの中心。ダンスとかマジックとか。女の子受けしてるんだ、料理も美味しいし。
そこでは午後6時から8時までは訓練生を中心に、小プログラム組んで、小さめの箱でもやっててね。
まだ技術はそこまででなくても、かぶりつきでみれるからね、人気あるんだよ。本ステージまでの暇つぶし勢だけじゃなくて、そこ目当ててくる人もいるくらい。
ダンサーの方も、さ。お客さんが投票するシステムになってて。うん、スターシステム。
評価がいいと、プロ契約してもらえたり、そこまでいかなくても手当が上がったりするし。
何より、訓練生には励みになるからね。ファンも付くし評価もわかるし。タダでもいいからやりたい、って子もいたりする。
訓練、きびしいからね。
あ、そうそう。訓練生の何人かは、ちょっと理由があって、お触り厳禁。後で、そのとき、教えるね。
あそこの所属のダンサー、訓練生でもちゃんとレッスンしてるからね。なかなかだよ?
モラちゃんの妹だっけ。そんな中に入って大丈夫かな?
なに?大丈夫?まあ、それじゃ早速入れてみようか。
平日だから客の入りは少ないかもだけど、明日、ねじ込んでみよう。
せいぜい、10分くらいでしょ、それくらいなら大丈夫大丈夫。
俺、あそこの支配人とはツーカーだからね。
え?いや、あの店は、正確にいえばうち系列の店じゃないんだ。うちと違って、100%健全だし。
俺も、あそこから釣ったりはしないよ。足が着いちゃうしさ。
もちろん、借金とかで、自分から身を売ってきたりしたら別だし。
店に迷惑かけたりした奴とかは、ね。頼まれて嵌めることもあるけどさ?
そんな風に、リハンは茂良男に情報を提供し。
国領ハルカを嵌めていく道筋を、ふたりは具体化し始めるのだった。