タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
(第三者(有明りな)視点、木曜日午前、葉良益三邸)
「りなちゃんは、偉かねえ!働きもんじゃがー。」
「ありがとうございます!
でも、そんなことないですよー。」
気になる「彼」との深夜の逢引きを終え、ぐっすりと眠った有明りなは。
翌朝はちょっぴり寝坊したものの、十分に許容範囲の時間に間に合うように起き、朝の葉良先生たちへの給仕を務め、お見送りをした後。
(ちなみにお見送りとして、葉良先生への頬へのキスを今日は求められてしまい。
うへえっ、と思った彼女だったが、処女的な恥じらいを演出しながらプロとしてそれをこなした。)
台所のお手伝いや洗濯物干しなどで、おさんどんの小母さん(実年齢からいけば老女)のお手伝いをして、褒められていた。
ひとりぐらしで、話し相手に飢えているようであった。
──息子は東京で勤め人になって結婚している。裕福とまではいえないが生活に不安はない。
夫は亡くなってしまったが、市内に嫁いだ娘も時々様子を見にきてくれるので大丈夫。
斜面にはみかんの木もあるし、鶏も数羽いて卵がとれる。畑の大根で漬物を作ってときどき駅前に行商に行き、売っている。あまりお金にならないが、米はあまり食べないので大丈夫。
でも現金収入は貴重。葉良先生は近所だから、頼まれて朝早くからの勤務を入れている。ボケ防止にもなるし。
そんなよしなしごとを、孫に対するように。
歳のわりにはつやがあり若くみえるが、しわも相応に刻まれた顔に笑顔を浮かべながら、ぽつりぽつりと語ってくれる。
クソ生意気だった昔の彼女だったら、繰り返しになりがちな老婆の言葉を「それ聞いたわよ」とさえぎっていたかもしれないが。
苦労を重ねて多少は成長した今の彼女は、この善良だが夫に先立たれて寂しいらしい老婆の繰り言に耳を傾ける。
老女はまた、彼女の話も聞きたがった。
まだ彼女が、超有名な元子役だとは気づかれていないようだ。
だから彼女は、芸歴を伏せ、少しマイルドにぼかしながら自分の事情を話す。親が借金で逃げ、しかたなく自分は親戚を頼って、こうして奉公に出ている、といった程度のことを。
彼女は、ありていに言えば葉良先生の下半身の世話係。建前上は本番禁止といいながら、妾に近い。
それを知っている老女は、しかしずいぶん彼女の境遇に同情してくれたようだ。きっと老女の若いころにはよくあった話だったからだろう。
老女が彼女を軽蔑せず受け入れてくれたようだったので、有明りなも気がゆるみ。
ついつい甘えて、いろいろなことを教えてもらったりする。
多賀島の美味しいものとか、ここは行くべきという名所とか。
この家は古い家で、隠し部屋とかがあったりするらしい、とか。
葉良先生が有名な女好きで、妾や愛人をとっかえひっかえしてるけど、長続きしない、とか。
息子は秀才だけどひねくれてて、未成年の女の子をどうこうして示談してた、とか。
砂土原は人を殴り殺してのム○ョ帰りだから、気を付けろ、とか。
そんな流れの中で。
「このあたりに、頭に角みたいなのがある猿、っているんですか?」
そう、彼女は昨日見た奇妙な角ないし硬そうな冠毛のある猿のことを老女に聞いてみてしまった。気になるし。
「頭に角のある猿ち言うたら、──
「いえ、私が見たわけじゃ、ないんです。
多賀島にはそういうのがいる、って聞いたことがあって。」
しかし角のある猿って、いるんですか?と聞いた時の老婆の反応は、有明りなの予想と違っていて。
非常に不吉なことを耳にした、といわんばかりに、しわに埋もれた目を恐怖に見開いてそう言ったので。
その鬼気迫る様子にあわてた彼女は、ごまかすことにした。昨日の夜間徘徊がバレるのも、マズいし。
「角猿は、悪賢か、おそろしか人喰い猿やち、言われとったい。
もしみたらば、竜神さんに参った方がよかとよ。」
──昔話やけ。大人が、こどもを脅すために昔からいうとったじゃ。
そがん
そう言いながらも、老婆は夏なのに寒いかのように手をこすり合わせて、体を震わせてみせた。
この話はちょっと不味そうだ。少なくともこのおばあさんには、──と思った有明りなは、話題転換を図り。
そのまま、その話は立ち消えになった。
その後も老女はそれまでどおり、有明りなに気安く、愛情深げに接してくれたが。
老女の目の奥に奇妙な、どこか有明りなを観察するような色が混じり始めたことに。
そのときの有明りなは、気がつくことはなかった。
──────
「りなちゃんは、長くいてくれるんかねー。
この家は、じょうもんの*1
老婆は、朝ごはんと簡単な掃除を済ませ(有明りなもこれを手伝い、喜ばれた)、お茶を一服すると。
そんな、ちょっと気になる一言を言い残して自宅に帰っていってしまったので。
彼女は、広大な邸宅に一人取り残された。
もちろん庭師というか雑用係ののタスケさんはいるが、タスケさんは彼女とは積極的にかかわろうとはしない。彼女にとってはいないのも同然だ。
チヤキさんは午後担当だが、比較的自由に出勤時間を決められるようで、昨日のように自分の用事があると夕方まで家をあけているときもある。
チヤキさんもタスケさんも、電話取りなど葉良先生の対外的仕事には関与しない。かつては書生がそうした仕事をしていたらしいが、葉良先生がスキャンダルで一線を退き、人を減らさざるを得なかったので、今は仕事用の電話回線は留守番電話に設定し、まだ残してある街の事務所の番号を案内しているようだ。
これからお昼過ぎまでは、事実上の自由時間。
彼女は、まず東京のマネージャー(彼女は知らないが、彼女を嵌めたリトルウィッチの手先でもある)にポケベルで送信してみるが。
投げやりな労いの言葉が一言、返ってきただけで後は黙殺され、しょげた顔になる。
──でもまあ、いいや。次は、あの山道探索だ。
彼女は、しばらく大検の勉強をした後、そう気分を切り替え。
ちょっと汚れてもよさそうなカジュアルな服に、華奢なその身を包み。
まだ泥のついているスニーカーを履き(幸いにも誰にも見咎められなかったが、こんどはちゃんと泥を落としとこう、と彼女は思った)、野球帽子をかぶり、あまり容量のないナップザックを背負い、チノは洗ったのでしかたなくひざ丈のキュロットを履き、虫よけをつけて。
小生意気な、かわいらしく整った顔をひきしめて。
昨日は暗やみのなか、怯えながら辿った葉良邸の斜面を、行くことにした。
昨日、「彼」と遭遇した絶壁までは、昼間行くとはるかに楽に通れた。
初めてみたときや、昨日の夜のくらがりではあんなに怖かったお墓も洞穴も、きょうはそこまで恐怖を感じない。
(一方で、顔の摩耗したお地蔵さまにはまだ恐怖を感じる。)
やがてたどり着いた、のり面をブロックで覆いつくした10メートルほどの崖。1つだけでなく、数段も重なっている。
猿が出てこないかびくびくしながらも端から端までを歩いてみると、でっぱりの陰にホチキスの針みたいな形のはしごがつけてあった。
鉄のはしごだが、風化して少し錆びも出てる。正直、怖い。
でも、このルートを通れるようにならなきゃ、下に行けない。
そう自分を叱咤し、下を見ないようにしながら彼女は慎重にそのはしご段を降りる。
数段にわたる他の絶壁にも、似たようなはしごがあり。
彼女はびくつきながらも、そのすべてを通り抜け、下についたときには大きな感動と満足感を得た。
そこから、ヤブのすき間を獣道が走っている。
方向感覚のあまりない有明りなには、なかなかの試練だったが。
迷いながらも、持参したビニールテープで目印をつけ、なんとかクリア。
神社の裏庭みたいなところに、出ることができた。
やったー。文明社会だ!
彼女は、びゅんびゅんと車が通る国道に出る。
昔ながらのお店もまだ多いが、(東京の都心部に住む彼女には、ちょっと物珍しい)ロードサイド型の大型店舗も進出してる。コンビニもある。
なんでも揃いそうね、と彼女は思う。
お昼ごはんは、おばあさんがせっかく用意してくれてる。
じゃあ、──
彼女はちょっと気持ちが浮ついているのを自覚しながらも、大型の衣料量販店を見てみたりもする。
彼女自身、山道なんて行くことになるとは思わなかったので、その装備は不足気味。足首までのチノは、1枚しかない。足しげくこの山道を通るのなら、もう1枚替えが必要。長袖のシャツも。ウィンドブレーカーも、あったほうがいいかな?安いし。
買い物好きの彼女は、しかしこの数年で辛酸(あるいはそれ以外の苦い液体)も舐めて、経済感覚と自制心を高めている。
いろいろと買い込みたい誘惑に耐え、最小限必要、と思ったものを彼女は買い込んだ。
──────
買った戦利品を背中のザックに収め、ポケベルで時間をたしかめ、彼女はいったん家に帰った。
マネージャーへ送信したメッセージは、また無視された。
気になる
んもう、連絡くれるって言ったのに、──と彼女は不満を覚える。
ただ、彼は誠実な人間だ。それにまだ授業があるとか言ってたな、しかたない。
田舎だからかな、都会ならもう夏休みのはずなのに、と彼女は思う。
また女間諜のように葉良先生の書斎に忍び込んで書類をチェックするが、前回と変化はない。
若社長の離れに忍び込むことも考えたが、ガードが固そうな印象がある。
どうせ呼ばれるのだから、そのときを下見として活用し、ある程度見当をつけてからの方がいいかもしれない。
家で老女が用意してくれていた素朴なおにぎりと煮物と漬物のお昼ごはんを食べ、すこし昼寝をして。
チヤキさんが出勤してくるまでの間、彼女は台所のテーブルで参考書を広げ、勉強してみる。どこかで、風鈴の音。平和だ。
今日は2時すぎにチヤキさんが出勤してきたので、彼女もチヤキさんを手伝って夕食や家の掃除、消耗品の補充などをする。
チヤキさんも初見ではあたりが強かったが、今は仲良くしてくれている。
ただ、おしゃべりな彼女も、どこか口が重いことがある。
「若い子がいつかない、って?ああ、それはそうかもしれないわね。」
朝、老女に言われたことを聞いてみると、チヤキさんはそう返した。
チヤキさん自身は、ここに30代から勤めている(勤務歴は10年は行っていない。7,8年ほどだろう、と有明りなは推測した)。
その間、スポット的に数週間だけ、あるいは数日だけ、(チヤキさんは言葉を濁したが)性的奉仕を担当させられる若い女が来たこともあった。
「たださ、あんまり聞かない方がいいような気がして。
りなちゃんも気になると思うけどね。」
ただ、彼女たちのことはどこから来たのか、その後どうなったかもよく知らない、とチヤキさんは言う。
ある程度親しく話をした子もいる一方、顔も見ずに終わった子もいる。泣いている声や、夜の伽のときの声だけ聞いたことがあったり。
筋が悪い人が絡んでるかもしれないし、あまりかかわりあいにならないほうがいい、と。
(リトルウィッチから送り込まれた子たちだけじゃ、なさそうだな。)
そう、彼女は思った。
──────
少し遅い時間に、葉良先生と砂土原さんが帰ってきた。
今日は、葉良先生は誰かと軽く飲んできたようだ。
不機嫌ではなさそうなのだが、どこか高揚したというか、圧の高い態度。
りなが迎えて頭を下げて玄関先で葉良先生を迎えるが、彼はそれに頷いただけで。
無視されているわけではないが、彼の少し赤い目は、有明りなを「人」というより「物」のように見ているように彼女は感じた。
食事中、有明りなは彼らに給仕するが、彼らはあまり積極的に彼女を相手にしない。
なんの話だろうか、彼女が台所に赴いたときに、彼女をみながらひそひそ話をしている。
あまりいい感じがしない。
「おら、来い。」
食事が終わると、有明りなはまた葉良先生に風呂に来いと命令を受ける。
風呂場に入ると、彼女はいきなり桶でお湯を浴びせかけられ、そのまま体に巻いたタオルをむしり取られ、裸で湯船の近くに立たされた。
ぽたぽたと髪から水滴を滴らせて立ち尽くす彼女の、幼げだが起伏のある濡れた体を、湯船に浸かった先生の無遠慮な視線が舐める。
「──おい、お前さんよ。話は、分かってるか。」
今日は、いつもより葉良先生の口調が荒っぽい。
「お前はな、買われたんだ。分かってるな?
その分の働きは、当然してもらう。当然だろうが。」
「──はい。」
だから先生のものを抜いたり、若社長に嬲られるのは仕方ない。
そう、有明りなは思うが。
「だったらヤらせろ。いいな?」
「それは、話しが「うるせえっ、俺が話してるだろっ!」」
怒鳴られ、思わずびくっとしてしまう。
「最初は、若だ。だがその後は、──いいな?
お前の上か。あのフタマタとかいう若造とも話したぞ。話のわかる奴だ。」
「?」
彼は、何を話してくれたのだろうか。
「当初の契約やと、本番なし。
だが、別に本人がいいと言やあ、本番アリでOK。
本人に説得するのは構わん。
狡猾な、そして残酷そうな笑みが、先生の顔に浮かぶ。
横からの視線を感じてそちらを見ると、砂土原さんも彼女を見ていた。頬に嗜虐的な笑みが浮かんでいる。
「砂土原。軽く、水を飲んでもらえ。」
「はい。──頭だけで?体ごとで?」
「ああ、せっかくの風呂だ、ずっぱり体を浸らせてやれ。
──持ってきてるんだろ?」
「はい。」
砂土原が、脱衣所に出ていき、カチャカチャと音をさせて何かを持ってきた。
振り向こうとすると、首ねっこを強くつかまれて、彼女は体を硬直させる。
「おら、そこの床に伏せろ。手を後ろに回せ。そうだ。」
彼女は洗い場にうつぶせに寝ることを強要され。
両手首を、背中側で拘束される。
何かの拘束具だ。この感触は、革だろうか。
「足もだ。そう。」
両足首、そして膝上の腿のあたりも拘束される。ぎゅっと肌に食い入るように締められる、黒革のベルト。
彼女は、恐怖心を感じて背後の砂土原を見ようと体をねじろうとする。
だが委細かまわず、砂土原は彼女の背中を踏みつけ、身動きを封じようとする。
濡れたスノコに頬をつけ、彼女は自分が何をされようとしているか横目で確認しようとする。
彼はうつぶせになった彼女に膝をまげさせ、後ろに回して拘束した彼女の両手首の革ベルトと、膝をまげてお尻に付けさせた足首の革ベルトを連結させた。
背中側で、両手首と足首を固定された彼女は、芋虫のように身をよじる。
「ぬほほほっ、久しぶりだなあっ、砂土原!」
「ええ、それではやりますので。先生、失礼。」
葉良先生が、湯船から出た。
湯に浸かって血色の良い顔には、期待するような表情。
まさか、水を飲んでもらう、って、──!?
砂土原は、彼女の両手首・両足首をひとまとめに拘束した革ベルトを両手で持ち、彼女を空中に引き上げた。
「えっ!?」
「おら、覚悟せいっ!」
その窮屈な姿勢で湯船に運ばれる有明りなは、最悪のことを予見し、空気を吸いこんだ。
次の瞬間、広い湯船に放り込まれ。盛大に、お湯が飛び散る。
(!?)
いきなり水に奪われた視界、全身を包む熱、思わず叫びかけて開けた口に入り込むお湯。
手足を拘束されたままお湯に放り込まれた有明りなは、かろうじてお湯を気管に吸い込まず、口を閉じて飲み込むことができた。
いきなりとはいえ、抱きかかえられて砂土原に警告されたときに、予期が持てたからだ。
だからといって、窒息の恐怖が小さくなるわけではない。
狂気のようにかろうじて動かせる膝を動かし、身をよじるが、周囲はすべてお湯。
投げ込まれた勢いで、うつ伏せの状態で浴槽の底近くに沈み込んでいるんだ、と。
彼女は目の前十数センチにある、お湯で大きくぼやけたように見える浴槽の底のタイルをみて気づいた。
背後に、お風呂場の光。浮き上がるまで、息を持たせなければならない。
(─!)
人体、特に男より脂肪がある女の体は、水に浮くようになっているはずだ。
しかし、浮き上がりかけた彼女の腰の部分を、何かが押さえつける。
男の、そう、砂土原の足だ。
いつのまにか浴槽に入ってきていた彼は、有明りなのウエストのあたりを上から踏みつける。
彼女の体は、浴槽の底に押しつけられた。
(助けて、助けて!)
体をよじらせる有明りなだが、砂土原の足は、単に彼女を浴槽の底に押さえつけるだけでなく。
ぐりぐり、と力を込めて踏みにじる。
圧力を受けて横隔膜がつぶされ、肺から空気が押し出され。
貴重な空気が、口から水泡となって出て行ってしまう。
(飲んだら、死ぬ!)
パニックで、彼女は身もだえする。なすすべもなく。
しかし両手足首を束ねられた彼女には、ほとんど何もできない。
別の足が、水面を見ようと反らしてねじった彼女の頭を無惨にも踏みつけ、タイルに頬を押しつけさせた。
──────
「ぬほほほっ、いいざまじゃの、なあ、砂土原よ。
海老の踊り食いもいいものだが、やはりこれよな!」
浴槽の底に有明りなの頭を押し付けるように踏みにじっているのは、葉良だった。
砂土原は、腰のあたりを踏みつけ。ときどき、両足で上に立ったりしている。
「はい、若い女はやっぱり活きがいいですな。
──ただ、そろそろ一度水揚げしませんと。」
「そうだな。もちろん、やるんじゃろ?
焼き入れと、焼きもどし。」
「はい。」
数十秒、しかしいつ終わるかがわからない生贄の恐怖は甚大だ。
うまくいけば、一度で心が折れる。
「ぷはっ、」
砂土原は有明りなの、背中で結わえた両手首・両足首を連結する革ベルトを持って引き上げる。
ざぱあっ、と水上に上げて、有明かなは荒く息を吐いた。
そのとき、すかさず砂土原は有明かなをまた湯に沈める。
「!」
「おうおう、元気よのう、いい色に染まるのう!」
引き上げてもらえると思い、息を吐ききり。
空気を吸う前に沈められた有明りなは、もはや死を感じて暴れた。
その体は、お湯の熱と息をこらえている結果で、桜色に色づいてきていた。
「静かにしねえと、引き上げるのを遅らすぞ。──頃合いか。」
また、引き上げる。
今度は、息を吸わせてやる。正確には、息を吸いかけたところで沈める。
「ぐぶっ、──!」
「そら、もう一丁」
有明かなをいたぶる砂土原の股間の異形の蛇は、大きく隆起しはじめていた。
──────
半死半生、ぐったりした状態の有明りなを、砂土原はまた洗い場のスノコに転がす。
荒い息、ぎゅっとつぶった目からは、涙が流れている。
その髪をつかんで、砂土原は問いかける。
「おら。サインするか?それとももう少し、水を飲むか?」
「──考え、させて、ください、お願い、」
「馬鹿だな。また、水を飲むかぁ?
水を飲むと、いままでの娘はすぐ賢うなったぞぉ。」
「砂土原よ。これはこれで面白かろう。
手間をかけてこそ、釣りあげた魚は美味いんじゃ。」
「はい。
──それでは、今日は抜かせて終わりにしますか。」
「もちろん。金を払っとるでな、しっかり元をとらんとなあ」
葉良先生はまた、息の荒い、目に恐怖を浮かべた彼女の胸をしつこくいじくり、口で抜かせ。
砂土原も、先生に続いて彼女の髪を掴み、喉奥近くまで無理矢理に石を嵌めたモノを突き込み咳こませながら、抜かせた。
そして白濁液にまみれた彼女を、洗い場に残し。
上機嫌で語り合いながら、主従は風呂場を後にした。
──────
十数分後、ようやくくしゃみをして起き上がった彼女は、のろのろと体を洗い直す。
自分の窮地を、もともと頭の悪くない彼女は認識していた。
彼女は、リトルウィッチに切り捨てられたのだ。
リトルウィッチは、彼女を守らない。少なくとも、葉良先生たちの暴力から、守る意志がない。
彼女は芸達者だし、元有名子役というネームバリューがあるが、ただの小娘にすぎない。
引退したとはいえ復帰の意欲も満々な有力政治家である葉良先生と天秤にかけたら、葉良先生の方が重かった、ということなのだろう。
彼女の処女云々は、彼らにとってそこまで重要ではない。ただのゲームではないだろうか。そのつもりなら、彼らはいつでも無理やりに彼女を犯せる。
きっとそれは、彼女をいたぶり、味わいつくすための一つの口実。
むしろあの苦痛に軽々しく処女を手放すと言ってしまうと、おそらくは破滅が早まるのではないか、──と、彼女はそんな気がしている。
飽きられた人形は、すぐにゴミ箱に捨てられるのだ。飽きられた彼女が、芸能界から捨てられたように。
愛人も妾も居つかない、その後どこへ行ったかもわからない、という老婆やチヤキさんの言葉を、彼女は思い出す。
ともかくも体を洗い、放心状態でお湯に浸かり直し。
お風呂を上がって母屋に戻ると、チヤキさんがちょっと気づかわしげに、彼女に目を向ける。
「大丈夫?でもね、今度は若社長が。来い、って。」
「はい、大丈夫です。行きます。」
彼女はプロだ。このくらいのこと、何度もあった。
しかし彼女が廊下を踏みしめる足は、少しふらついていた。
それを見るチヤキの口元には、どこか隠微な笑みが浮かんでいた。