タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
微妙に不適切(暴力的)な表現があります。
(第三者(有明りな)視点、8/3木曜日夜、葉良邸の別棟)
「そら、早く入れ。」
彼は有明りなに対しては、どこか上から目線というか高圧的に振るまう。
もちろん、彼女としてはあまり気分は良くない。
でも彼女は、これは仕事だと割り切って、期待されるとおりに接する。少しおどおどしたように、怯えたように。
乱暴に小突かれながらも、またあのスタジオに彼女は招じ入れられる。
スタジオは有明りなに与えられた居室がある古い母屋と違い、快適な涼しさに調節されているのだが。
そのドアをくぐったとき、彼女はどこかずーんと重力が増したような心の重さを感じた。
そこで待ち構えていた別の人物を認めたせいだ。
「りなちゃんだね、相変わらずかわいいんだね!」
──蛙に似た顔。ガマガさんだ。
スタジオの机に、彼の丸い姿を見て彼女は意気消沈するのを覚えた。
彼はとろけるような笑みを浮かべているのだが、その小さな目にはどこか狂気に近い粘り気のある盲執が湛えられており。
その視線を受ける彼女は、背筋に寒気を覚える。
「今日は、スコルピアをやってもらうか。──ほら、着替えろ。」
「ふひ、りなちゃんの生着替えが見られるんだねえ。楽しみだねえ」
彼らの見る前で、彼女は着替えることを強要される。
ガマカ゚の余計な一言に、彼女はいっそう羞恥の念を深める。
今日の彼女は、風呂上がり。寝間着代わりのショートパンツに白のTシャツという軽快な服装だったが。
それを脱ぎ、「セ○ラーナイテス」のキャラクターの一人である「スコルピア」の変身後のモチーフであるコスチュームに着替える。
この前着たものとは違う。変身後の
着替える彼女の可憐な手足に、男たちの視線が無遠慮に注がれる。
薄く光沢のある生地のぴっちりした衣装は、あつらえたように彼女にフィットした。
「──なかなかだな」
「りなちゃんは、かわいいんだねえ。食べたく、なっちゃうんだねえ。」
「ありがとう、ございます?
──でも、食べないでくださいね!」
ちょっと大人志向の作品だけあって、彼女のまとう服装はなかなかに煽情的だ。
ショーではレギンスを着るのだが、彼らはその準備をしてくれていない。
彼女はやむなく生足のまま。お尻をかろうじて隠すか隠さないかという短いスカートのついた、セーラー服めいた襟をあしらったレオタード姿。
衣装は上質な素材で作られており、妙なペラい安っぽさはない。
生まれつき赤みがかった瞳と髪で、小柄で幼げながら小顔で頭身比*1の高い彼女が着ると、妙な違和感もなくしっくりとなじんている。
ただ、──露出度は高い。体にぴったりと貼りつき、その起伏を忠実に浮き立たせている。
彼女は、もちろん屈辱を舐める汚れ仕事も経験させられてきたものの。
やはり、こんな痴女めいた衣装を着ることには羞恥心を感じ、それとなくスカートの裾を押える。
「ほら、恥ずかしがらずにちょっとみせてほしいんだねえ」
蛙に似たガマガさんがやってきて、しゃがみこみ。
彼女が手で抑ええているスカートの中を無遠慮にのぞき上げる。
「そら、ポーズをとってみろ。
そうだな、
「はい。『あはは、そんなんで私に勝てるつもりっ?──ざこが、粋がるなっ!』」
彼女は左半身にかまえて、腰を軽く落とし、背を軽くそらすようにそらして左手をまっすぐ突き出し、右手の指は2本出して肩のあたりに構え、台詞を発した。数年前のことだが、我ながらよく覚えている。
「おおっ、おおっ、りなちゃん、りなちゃんっ!
スコルピアだよ、スコルピア!」
「俺の言ったとおりだろう?」
2人が彼女の演技に、喜んでいる気配。
正直、この2人は好きじゃないっていうか大嫌いだが、なんか気持ちはいい。
それに、台詞回しとか体の動きとかが、なんか自然に浮かんでくる。
「『それがどうした?関係ない。蠍は忘れない、許さない、常に平等に死を運ぶ。』」
そのまま自然に、演じ続けてみる。体も軽く動くし、台詞もすらすらと感情を乗せて流れていく。
──あー、あのころより多分、ずっとうまく演じられてる!
私も、役者として成長してるのかな?
彼女のすこし沈んでいた気分が、にわかに浮揚する。
「『ほらほら、どうした!?』」
主人公との戦いのシーン。胴回し回転蹴りを決めてみる。──完璧に、決まった!
数年前、演技で練習してたときはうまくできず、インストラクターさんに何度もやり直しさせられてキレてしまって彼女自身の悪評を高めてしまったのだが。
でも今、我ながらうまく決められた。会心の出来。続くコンボも、きれいに決めてポーズをとる。
リトルウィッチに囲われてからやらされた護身術やらなにやらの修行で、体力や柔軟性が上がったからかもしれない。
「『──2人でも3人でも同じだっ!』」
そのまま、続ける。こんどは、敗北のシーンだ。
主人公の仲間たちがかけつけ、多数に無勢になる。苦しい展開なのだが、──。
「うふ、うふふっ、おふぅっ」
無心に演じていたが、──気が付くとガマガさんの反応がやばい。目が逝ってる。
──あ。この痴女衣装でとんだりはねたり、足を上げてハイキックしたりしちゃったからだ!
「なあ、ガマガよ。見るだけでなく、触ってもいいのだ。
そう、──プラエルパタモス戦のように押し潰しても、クルクシオス戦のように磔にしても。」
「うぶ、おうふ、おうほっ。
はぁ、はぁ、──りなちゃん、ちょっとそこで止めてほしいんだね。」
あ、まずい。
サジタリアに仲間たちが助勢にきて、逆襲されてるシーンだった。
吹き飛ばされて、両腕を上げて手のひらをかさねるような形で、その手のひらを貫通するように壁に射止められてしまった場面。
ガマガさんが、ふごふごと荒い息をつきながら。
その、両腕を上げて動きをとめさせられた状態の有明りなに近づく。
「りなちゃんの胸は、意外と大きいんだねえ」
幼げにみえる有明りなだが、意外に胸はある。
この衣装はぴったりとその彼女の胸を浮き立たせる。胸の下に切返しの線があり、そこで絞りが入っていて、胸はいっそうはっきりと突き出してみえるだろう。
その胸を、太くて短い指がなでる。ニプレスがない頂点を、執拗に指が行き来する。
くすぐったい、そわそわするような感覚。思わず腕を下げそうになって、役者魂で押しとどめた。
なんだか麻痺したようにぼんやりした快感を彼女は乳首に覚えはじめ、気が付くと無意識に足をぴったりと閉じるようにして姿勢を崩そうとしてしまっていた。
「そして、りなちゃんの足!おふうっ、ふほほっ」
もう片手が、遠慮がちにスカートを引く。引き上げる。
それなりにトレーニングをさせられて締まった脚だと思っているが、恥ずかしくて彼女は顔をそむけた。
「何をしている。姿勢を崩すな。」
反対側から若社長さんがやってきて、あごをつかんで伏しがちになってしまった顔を上げさせる。彼女はやむなくその赤い瞳をあげて、彼の視線を見返す。
若社長はガマガがいじっているのと反対側の胸を、無遠慮につかんだ。親指と人差し指とでつかんではさみ、しごくように先端に向かって動かし始める。
お風呂場でも葉良先生に嬲られ、刺激されていたからだろうか。彼女は彼に対する嫌悪感だけでなく、せつないような妙な感覚を乳房に覚えた。
若社長のもう片手が、めくりあげられてさらけ出された彼女の腿の付け根付近にくっついてくる。細い指がレオタードのへりから潜り込んできて、へりをずずずっとなぞって降りてくる。そう、足と足の間へと。やわらかく、敏感な部分へ。
「なあ、ガマガ。逸材だろう?」
「うふ、うふふ、うふふふ!
スコルピアちゃんに、あんなことや、こんなことも、──」
「しっかりしろ、ガマガ。
まだまだ、試してみたい場面がある。」
手を離したキリオは、ガマガを促して一度有明りなから離れさせた。
ガマガはいかにも不満そうだったが、若社長が耳打ちすると納得したようだ。
肌の敏感な部分を触られ、混乱していた有明りなは、彼らが離れてくれてほっとする。
そう、私は混乱しているんだ、と彼女は思う。
彼らが好きなわけでは全くない。いや、どちらかというと嫌悪感が強い。軽蔑している。
なのに、こうして自分が注目されて、そして性的関心の対象とされていること。
そのことは、不快ではない。いや、触られること自体は不快なのかもしれないが、それを上回って、あーもう仕方ないわね、みたいな、妙な満足感。ちくちくと、自尊心と全能感のみたされていく、くすぐったい感覚。
その余韻に浸っていた彼女の耳に、カラカラカラ、と音がした。
「お、おお、おおおっ?
キリオ、しゅごいんだね。これで、りなちゃんを、──」
「そうだ。なかなかの出来だろう?特注だ。
これに固定すれば、いろいろできる。ほら、今日はあの場面だ。
ヴィオレンティウスが、スコルピアを──」
若社長が運んできたのは、何かの木の枠組みのようなもの。組み立て式のようだ。
高さ2メートル半ほどの、「冂」字のような構造物。天井が高いこのスタジオでなければ入らないかもしれない。
よく見ると、ポストの部分にはいろいろな仕掛けがほどこされ。さまざまなことができるようになっているようだ。
「ヴィオレンティウスの場面、なんだね?」
「ああ。」
そうにまにまと笑みを交わす彼らの姿に、有明りなは不吉な予感を覚える。
ヴィオレンティウスというのは、人型の知性ある異界獣という設定なのだ。
身長3メートル弱の体は純粋な獣型の異界獣としては標準的だが、人間型なのでその威容はかなり印象的だ。巨大な、たくましい巌のような体つき。悪魔を思わせる3つの獣頭。中ボス格で戦闘力では作中2、3位。
そして数人の
その救援に現れたのが、スコルピア。
改心して、主人公と協力関係にある第三勢力になっている彼女は、ダメージを受けた彼女たちを逃がし、一人でこの暴威を足止めに残る。
善戦する彼女だが、地力の差はいかんともしがたく、結局は打ちのめされ。
そして、ヴィオレンティウスの触手できりきりと拘束され、嬲られる。それがリョナ好きの大きいお友達たちの評価の高い一場面となっているのだ。
「そら、ヴィオレンティウスの場面を演るんだ。
アクアリアたちの、敗北のシーンからだ。」
「──はい。」
こうなったら、ノリノリで演じてやる。調子はいい。これまでにないほど。
「『あきれたわね、あなたたち4人で雁首揃えてもそんなザマ?
このくらい、あたし1人で十分よ。
さっさと役立たずは退場して、ママによしよしされてることね。』」
たしかこうだったな、と彼女は思い出しながら、その場面の台詞を発する。
目の前に、4人の仲間たちが打ち破られて、横たわっている想定。
強気な言葉にもかかわらず。
それなりに実力のある4人をあっさり打ち破った、てごわい相手。
その発するただごとでない瘴気、オーラを感じ取り、額には汗を浮かべている。
4人の仲間たちは、気息奄々だが、まだ浅手で立てるアクアリアとカプリコルニアが他の2人に肩を貸し、よろめきながら去っていく。
その間邪魔をするわけでもなく牙をむきだすような笑みを浮かべて、ヴィオレンティウスは動かない。腕組みしたスコルピアが阻むように、間にたっているから。
しかし、二人の間では緊張感が高まっていく。
彼女らの姿が視界からきえた次の瞬間、暴力的なこぶしがスコルピアを襲い。
スコルピアも、拳を打ち払うと同時に、蠍の尾を思わせる曲芸的な動きで逆立ちするように蹴りを放ち、ヴィオレンティウスの顎に一撃を入れる。
それをスタジオで一人で熱演する有明りなは、すでに観客の姿も含めてすべての雑念を頭から消しつつあった。
実際に、本物の怪物と闘っているのだ。怪物のくすんだ肌、目を転じたときに視界に入った青い空、敵の顎を蹴りぬいた感覚、──。
──────
──────
(
「──凄いな。」
「すごいんだね!りなちゃんはね、──」
演じるのは、有明りな一人。
しかし、観客たち。「若社長」と呼ばれるキリオと、ガマガはその演技に呑まれていた。
目の前に、4人の戦いに敗れた女騎士たち。
それを、背中で見守りながらも。
前の敵のプレッシャーを、ぐっと気迫で押し返す黒と赤の衣装をまとう、
敵の動きに、はっと開く瞳孔。かろうじて打ち込まれた暴風のような拳をいなす軽快な動き。
それで生じたスキに乗じ、腕立て側転のような動きでのダイナミックな蹴り、
(なお、身を乗り出すガマガの期待に反して、翻る短いスカートは奇跡的に彼の視線から主を守った。)
それを演じる、彼女だけでなく。
撤退していく仲間の姿、おそるべき敵の造作、周囲の光景までもが、まざまざと彼らも見える気がした。
いや、──「視えた」。
はっきりと彼らは、焦げ茶色の逞しい異界獣が拳を振り上げるところを見た。血を吸う生態の獣の、なまぐさい血臭をたしかに嗅いだ。美少女騎士の息づかいを、砂を踏みしめる靴の音を聞いた。
幾度となく、ひらりと華麗にヴィオレンティウスの拳や触手をかわして反撃し、一時は膝を着かせるほどの痛撃を与えつつも。
スコルピアは、ついに力尽き。避け損ねた触手の一撃を受けてのけぞり、続く蹴りをまともに受けて岩壁にたたきつけられる。その衝撃を、彼らは感じる。
べったりと、背中の血がにじむ壁(※現実には、にじんでいない)。ずるずると、ひざを折りしゃがみ込む満身創痍の
愉悦の笑みを浮かべ、必要以上に悠々と近づく人型異界獣。スコルピアにかかる、その影。
怒りに燃える目を開き、気合をいれて立ち上がろうとする彼女。口の端からは、血が滴る。
しかし髪を細い触手でつかまれ、振り回され、引きずり回されて。そして、──。
──────
「ガマガ。やるぞ。」
「うん、興奮するんだね。
作中で、スコルピアの両腕を拘束する触手。その代わりに彼らは革紐を持ち。
二人で協力して、その革紐を
役に入り込んでトランス状態の有明りなは、抵抗しない。
まだ心は折れていない。屈服を認めない赤い目が、彼らを射貫くように見上げる。──その迫力に、覚えずぶるっと戦慄が彼らの背を走る。
しかし、現実は非情である。彼女は打ちのめされ、抵抗する力はない。
その力の抜けた体を、触手(革紐)はずるずると引きずり。
宙にその姿をつるし上げる。異界獣、ヴィオレンティウスの前に、無防備に。
両足にやはり革紐を巻き、背中側に曲げてかかとをお尻につけるような格好で、手首を吊るす革紐に連結する。
(物語の中では彼女は手首も足首も1本の触手でまとめて拘束されていたが、いまは便宜的に2つの革紐に分けて拘束されている。)
なすすべもなくお腹を少し突き出す感じに吊り上げられた有明りなは、敵を見返す。その打ちのめされながらも屈しない姿は、まさにスコルピアだ。
「──すごいんだね、さすが、りなちゃんなんだね。
映像で、みたかったんだね。」
「ああ。実写化を中止しやがった奴らは、厳罰に値するな。」
そして、これから。
4人の獲物を逃がした
そう、苦痛をその華奢な体にじっくりと刻み込み、逃げた4人分の負債をも彼女に支払わせるのだ。
「ぼくはね、りなちゃんを殴ったりはしないんだね、でも、スコルピアを殴りたいんだね、──」
「どっちだ、錯乱するな。しっかりしろ。」
ガマガの目がうつろで、口の端から涎が垂れんばかりだ。
このド変態野郎が!だが俺も大概だけどな、──と、キリオは苦笑する。
さて、処刑シーン序盤では。
この吊り上げられた
無防備な腹を、そして顔を。
もちろん、その後には、さらにさまざまな拷問シーンが続く。
しかし、今日はそこまではできない。完全に彼女を壊してしまうことになる。それは、あまりに惜しい。
「ガマガ、見ておけ。」
キリオは、
役に入り込んだ有明りなは、迫真の演技(もはや演技とすら意識していないかもしれない)で、台詞を吐く。
「『ハッ、何をするつもり?あんた人間っぽいし、熱烈なハグでもしてくれようっていうのかしら?
でもずいぶんとまあ、ブサイクね。私のこぶしと足と針とで、ずいぶん整形してあげたつもりだけれど。
そうそう、こっちの世界に来たあんたたちの仲間。
私が、少なくとも100匹はぶち殺したわよ。だいたい、こっちに来た数の半分くらいかしらぁ?
ねえ、悔しい?仲間がぷちぷち殺されて、くやし、ぐふっ!?』」
腹に、拳を当てて。
そして引いて、──正面からめり込ませた。へそのあたり。
意外にしっかりした腹筋。役者として、体も絞り込んで鍛えているのかもしれないが。
それでも、かなりの衝撃が徹ったはずだ。
「──ご、ごふっ。はぁ、はぁ。
『なに、やだ、怒ったの?サービスしてあげるわよ、この汚らしい触手、外してくれたら。
そう、たっぷりと蠍の毒でね、──ぐむっ、ごっ、ぐぐっ!』」
再度、今度は回転するように腕を回して、左腕でフック。いわゆるレバー打ちだ。
おそらく彼女は、腹筋でも肋骨でも保護されないこの急所にまともに入った一撃に、息を押し出され。
息を吸おうとしても吸えないような、激烈な地獄の苦しみを味わっている。
こらえるために唇を噛み。破れた彼女の唇から、血が滴る。
わななく華奢な体、蒼白な顔。凄惨な美しさに、彼はその唇を奪いたい衝動を感じる。
「もう、やめるんだね!
でも、ぼ、ぼくもしたいんだね、りなちゃんに腹パンするんだね!」
顔をてかてかにほてらせた、ガマガがうっとおしく彼の腕にまとわりつく。
ガマガは彼の変態仲間、盟友だ。だから、酔ったような快感をもっと味わいたいとおもいつつも、一歩下がって場所を譲る。仲間にもこの極上の美味を味合わせねば。
──────
それから数十分。
スタジオには、肉を打つ音と苦痛の呻き声が、響く。
最初は素手で。途中から、用意しておいたブラックジャック(砂を詰めた革製の棍棒)で。疲れたら適宜、打ち手を交替して。
有明りなは、最初は口の中で叫びを噛み殺して耐えていたが、やがて台本のとおり(その役者魂に彼らは畏怖すら覚えた)、声が漏れ。そして苦痛の悲鳴にかわる。
しかしその声も、防音のきいたスタジオから外にはごくわずかしか漏れない。
やがて。
殴打された彼女が演技でなくぐったりとしてきて、また縛られた手首が紫色に鬱血しているのに気づき。
彼らは有明りなを降ろし、ひとまず今夜のショーを終える。
その後、彼らは力を失った彼女の体をデスクの上にあおむけに乗せ。のけぞらせるようにデスクのふちに頭を出させ。
頬を叩いてほとんど失神しかけていた彼女の意識を、容赦なく呼び戻し。
その小さい口に彼らのそれを押し込み、そして喉にも達するほどに深く彼らの棒を突き込んで欲望を放ったのだった。
──────
彼らから2回ずつ汚らしい液を抜き終わり(だがガマガの目には、なお欲望がたぎっていた)、お勤めを果たした有明りなは、もう体力の限界にあった。
許しを得て口をゆすぎ、胸元にぶっかけられた白濁を拭い。
もとの服に着替える元気もなく、へなへなとうずくまってしまう。地面が回っているように感じられる。
その頭上で、興奮冷めやらぬ会話が交わされているのを彼女は人ごとのように聞いた。
「ねえキリオ、次はいつ、いつなんだね?
ぼく、まだまだいろんなことをしてみたいんだね!」
「ああ。
ティラニウスに、手足を一本ずつへし折られるあのシーンも。
オルキウスの触手で吊り下げられ、少しずつ貫かれるシーンもやるぞ。」
「カメラ、用意するんだね。これは、撮っておかないともったいないんだね!」
なんだか、不穏な内容が交わされているようだったが。
有明りなは、疲労でほとんどそれを理解できていなかった。
──────
解放された彼女は、一度母屋に戻った。縛られ続けて鬱血した手は思うように力が入らず、ドアノブを回すのにも、引き戸を開けるのにもひと苦労した。
もう結構遅くなっているが、彼女を心配してくれていたのだろうか。
まだ起きて詰めていたチヤキさんが声をかけてくれて、熱くしたおしぼりをくれる。
自室に戻るというチヤキさんにおやすみなさいを言い、ふらつきながらも自分も自室から着替えを取り。
がらんとした風呂に入り直して(浴槽にはいったままうとうとして2回ほど寝落ちしかけた)、さっぱりさせ。
有明りなはようやく自室に戻り、大の字に横たわった。階段は一度では上りきれず、途中で壁にもたれかかるようにして休みながら上った。
気を失いそうなくらいの疲労感。今日は、もう駄目だ。寝よう。
しかし広げた手に、枕元に出ていた紛失防止のチェーンを付けたポケベルが当たり。その液晶画面を確認し、彼女はそれに気づく。
──メッセージがある!
こんは”んはけ”んき?しの
あの、気になる
わずか一言。わずか一言だけど、彼女を気づかう言葉。彼女は、胸が温かくなるのを感じた。
やっぱり、あれだ。彼は約束を守ってくれる。そして私、ううん、私の体のことが好きみたいだ。
まあ疲れてるけど、仕方ないなー。声がききたいんだ。電話かけてもいいかな。かけよう、一瞬だけ。
田舎は寝るのが早いんだよね。まだ大丈夫かな?非常識な女の子って思われたらイヤだな。
そうだ、3コールだけ。3コールだけして、出なかったら諦めよう。
彼女は、疲れた体に鞭打ち、階下の台所に下り。
常夜灯の弱くぼんやりとしたオレンジ色の光の中で、黒電話に手を伸ばした。