タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
(志野視点、昼すぎ、
「それで。
あなたはその「トライアル」だか何だかの参加者だ、って思われてるわけね。」
ちょっといまいましげに、噴き出た汗をぬぐい、日焼け止めを塗り直し、水筒の水をごくごくと飲んだ後、調布は僕に目を据えてそう問いかけてきた。
お昼ごはん難民の身から、なんとか食事と飲み物を得ることができた僕たちは。
軽く酔いざましに公園で水を飲んだ後、灼けつくような陽光の中、当初の予定どおり縊死裂川をさかのぼるルートをとることにして、数分ほど自転車で走り。
今は、道路のカーブの内側の広い部分の木陰に自転車を停め、休憩時間をとっている。
そしてその際に、調布、国領と僕とで考えを交換して、さっきのお店でのことを解釈してみよう、ということになったんだ。
「そうだ。『トライアル』が何なのかは、結局わからない。──それでウェイターに言われて、さ。
ほら、この前調布と行ったときもらった『あのカード』を見せたら、──」
「しのりん、『あのカード』ってなに?さとみんとどこ行ったの?」
「ハルカ、後で教える。志野、続けて」
国領はむう、と頬を膨らませたが黙り。
促すように視線を僕に向けてきた。
「──エントリーする場所を教えてくれた。あと、今日夜7時からそのトライアルがあるらしい、ってことも。」
「それで書いてくれたのが、その地図なのね。
ねえ、ハルカ。気づいたでしょう?この地図の場所。坂を登って、左折。」
「うん、ボクとさとみんが行ったことある場所じゃないかと思う。それも、つい最近。」
国領は、白い額に浮いた汗をハンカチで拭った。
もちろん僕たちみんな暑くて顔が赤いんだけど、特に国領の目元がほんのりとピンク色になってる。これ、酔いのためじゃないだろうか。
(僕と懸念を同じくした調布の指示で、ここに来るまでかなりゆっくり、無理しないペースになってる。
でも炎天下を自転車ひいたりすごくゆっくりで乗ったりで、暑い。)
「それ、閉鎖した遊園地なんだよ。『ウリーンランド』っていう」
「ウリーンランド?」
それは、──僕にも覚えのある場所だ。
あの謎の小さな頭蓋骨から出ていた光が、収束していた場所。*1
学校の旧校舎の階段の踊り場の鏡、竜神教の本拠地の近くの神社、そして残る一つが、おそらくそこなんだ。
ただそれを伝えるべきかどうか考えがまとまらないうちに、彼女は言葉を継ぐ。
「ええ。そして、ね。
売られた女の子たちの、消息がはっきりつかめてなかった最後の一人。
その一人、グレースがそこにいる、とあたしたちは考えてる。」
調布によると。
彼女は、彼女の元カレである、あのイケメン鬼畜眼鏡先輩に売られた女の子たちの保護と救出を行っているのだが(ちなみに、僕も一枚かむことになってる)。
その最後の1人である女の子が目撃された、裏町の怪しい地下クラブ。
その所在地を、調布と国領とで見にいったそうなのだが。
彼女たちは、たまたまその子(「グレース」と調布は呼ぶ)と酷似した外見の子がそこに連行されているのを目撃し。
その子、グレースではなく、グレースを連れてきた車両を追跡し。
途中で見失ったものの、その車両がこの旧ウリーンランドの事務所の駐車場に停められていることを突き止めたのだという。
──結構危ないことをするな、というのが僕の感想だった。
「あの遊園地施設。営業は停止したけれど、まだ設備は使えるはず。
施設を持っているのは、トラコ・グループの関連会社。
トラコってのは、あまりいい噂を聞かない新興の企業グループらしいの。」
「そこが人身売買組織とつながりがあるんじゃないか、ってさとみんは思ってるんだよね」
国領は僕と同じで、ごく最近そのことを教えてもらったらしい。国領よりは前だと思うけど、僕も最近知った。
調布は被害者たちを組織して、どっぷり活動してきたらしい。
昼間は授業で夜も勉強とかあるだろうにタフだよな。これで並行して自動二輪の免許までとってるんだよ?
「『トライアル』の方は、──中身はわからないけど、その地下クラブでのショーに出るためのオーディション、みたいな感じなんじゃないかしら?だって。
エントリー場所はウリーンランド。グレースのいるかもしれない場所。
そしてあの、さっきのお店の中。あたしとハルカがみた、あいつらの仲間の一人が客にいた」
ええっ、と国領が声を上げた。こいつは気づいていなかったみたいだ。
「──その捕まってる女の子を護送してた、頬に傷のある丸刈り男。ハルカからは柱の死角になってたかしら。
そしてその『トライアル』の参加条件の一つが、そのろくでもない地下クラブの会員証ってわけ。
状況証拠は、揃ってるでしょう?」
「そうだな、──」
「──ねえ、志野。いいでしょう?
あたしがそれにエントリーして、──」
「──待て」
警戒アラームみたいなのを心の中で感じて、僕は止めようとするが。
「わかってる。信用ないわよね。
でも今回は無理なことはしない。約束する!
だけど、単なる観客じゃなくて、出演者として入り込む方が近づけるはず。
お願い!捕まっても、絶対に口は割らない。いざとなれば舌を噛むから、──」
「ますますダメだ」
何考えてるんだ調布。そんなんだったら、ますます認められない。
──いや、そんな怖い目で見ないで聞いてよ。ダメってのは、ね?
僕は調布の目を覗き込んで、説きつける。
──調布が1人で潜入しよう、ってことだったら絶対に認められない。縛りつけてでも妨害する。
もしどうしても、調布がこれにエントリーしてみるっていうことなら。
僕も行く。それは譲れない。
口調が思わず険しくなったのは、悪夢の中で残酷なショーに調布が出させられてたことを思い出したから。
この「トライアル」も、どうもそれに関連してるように思えてしまうんだよな。
僕の勢いに調布は気圧されたように口を閉じたが、まだちょっと怒ったような強い口調で、なおも言いつなぐ。
「全然当てはずれかもしれないのよ。あたしが勝手にやりたいっていうだけ。
軽い偵察みたいなものよ。もし何かわかったら、すぐ、志野にも言う。」
「ああ、勝手にやるのならそれでいい。だったら僕も勝手にやる。
調布とは別口でエントリーする、ってだけの話だ。」
そう小学生男子みたいに返すと、珍しく調布が言葉に詰まり。
眉をしかめて唇を噛み、端正な顔に迷いを浮かべた。
調布はこれが単なる軽い偵察だ、って言ってるけど。
本当はすごく危険かもしれない、ってわかってるんだろうな。
だから自分がその危険そうなところを引き受けて、僕を遠ざけようとしてる。
おそらくは、代償もないのに僕に協力させることへの負い目があるから?
まあね、薄情に聞こえるとは思うけど。
正直、僕はそのグレースさんとやらには全く面識も興味もないので、助けないと、みたいな実感は薄い。
調布の安全の方が、ずっと大事。正直、あまり危険に踏み込んでほしくない。
それに本音を言えば、こういうことは司法機関に任せるべき話だと思う。
とはいえ、調布がここまで必死になるのもわかるんだ。
この一連の人身売買事件自体、とっくに何かで捕まってたりしてていいはずなのに、そうなっていない。
個別案件では法的にはきれいに整えてあったりして、なかなか警察が介入できないと調布から聞いた。それに。
──事件化していない、別の事情もありそうなの。
助けた女の子たちの話を聞いても、助けを求めたのに握りつぶされたんじゃないか?って思ってしまうような、不自然なケースがいくつかある。
それでこの件について司法機関を頼ることは、かえって本人の命を危険にさらしてしまうのではないか、と調布は考えてる。
その話を聞いたのはちょっと前、例の調布の元カレに話をしたときだったが、僕もその1つの話を聞いてそうかもしれないと思った。
ただし僕がこの件に関わる理由は、正直、調布が心配だからでしかない。
調布を止めようとまでは思わない。そしてどんな危険でも、調布となら踏み越えてやる、って思う。
(いや、そりゃ僕だってすごく怖いよ、いろいろ。ときどき責任のことを考えて眠れなくなるくらい。
──でも僕はもう既に1回生きて死んでるわけだし、最悪死んでもあきらめはつく。)
「──ねえ、さとみん、しのりん。
さっきから聞いてたら、キミたちだけで盛り上がっちゃって、さ?
ここにはボクもいるんだけど、なー?
ボクだけ除けものって、そりゃないよ。──さとみん、ボクも参加するよ。いいよね、しのりん?」
「ダメよ、だって貴女、──危険だし。
もし悪いやつらに捕まったら、殺されるより酷い目にあわされるかもしれないのよ?」
「そうだね。ボクたちまだ高校生だし、女の子だし。
もし捕まったら、すごいことされそうだよね!女に生まれたことを後悔しちゃうような、さ!
でも、さ? ──でも、だったら、さとみんだってダメじゃん!同じだよ。」
珍しくも調布がふたたびやりこめられて、黙り込む。
その、「ぐぬぬ」とキャプションをつけられそうな顔に僕は笑いたくなった。
「ねえ、しのりんも言ってよ!
しのりんだって、さ?殺される可能性があるのに、一枚噛むわけじゃん。
ボクだけ、そうですか、なんてみてられないよ。ボクだって──」
国領は、おそらく調布が単独で危険を冒すのを防ぎたいんだと思う。
だから自分も参加させろ、と言っている。自分が参加したら、危険性を下げられると思ってる。
羨ましいくらいの自信。まあ国領は、ちょっとリスクの感覚が僕なんかとは違うのもある。裏づけになるだけの実力もある。
ただ、国領は意外にポカが多かったりするよなー。調布の足、ひっぱったりしないか?
それに国領が懸念してる、調布と僕の直面する危険。
これについては、僕には確信があるんだ。ちょっと情報提供してあげよう、そうすれば国領も安心して思いとどまるよね。
「大丈夫だ。僕はまだ死なない。
そして僕が参加する以上、調布だって絶対に死なせない。」
僕が自身満々にそう宣言すると、彼女たちは瞬時、息をのんだ。
調布が白い頬を紅潮させて、なぜかほこらしそうな、うれしそうな顔をしている。
対照的に国領はなぜかちょっと焦った顔で、僕の顔をまじまじと見つめてる。
ふふふ。彼女たちの驚きの視線が、ちょっと気持ちがいい。
(僕ってこういう、自信ありげな断言はあまりしないからね。僕なりに正確を志してるからそうなっちゃうんだけど、いつも、もっと自信もちなさいよって調布に怒られる。)
でもさ、このことにははっきりした根拠がある!
ほら、僕が将来死ぬとしても、だね。
それはあのクソ野郎、筋肉男との戦いでのはずなんだ。
(そしてそれを回避するために有用な未来知識と思われるものを、僕は断片的ではあるが昨日の夢で未来の調布と紫藤から得ている。分析はまだしていないけれど、ね。)
だから、さ。
逆説的に言えば、筋肉男と戦う前に何があろうと、僕がそこで死ぬことはないんじゃないかな?
調布だってそうだ。予知夢や時間転移でかいまみた未来では(その予知夢とかが信頼できれば、の話なんだけどね)、調布が死んでいる未来は一つもなかった。
もちろん未来は変わることはあるけどさ、昨日みた最新の夢だし、──
──あれ?あれ、もしかすると夢でしかないのか?まずいな、もしかするとまずった?
いや、でもさ、あの夢は超リアルだったし、真実の世界線のはず。あきらかに僕が死んだより未来の出来事もあった。あんな超高性能の携帯端末なんて僕の死んだときにはまだなかったはず。
内心はともかく、虚勢をはって自信ありげに胸を張る僕に、国領の焦った声がかかった。
「──んー、よかったねー、さとみん!
さとみんは、いいよねー。さとみんはすごいし、しのりんが守ってくれるし?
でも、さ!じゃあ、ボクは?ボクはどうなのさ?」
あー、そこか。
国領としては、自分だって調布とタメ張るくらいのスペックがあるって言いたいんだろうな。
「ああ、国領は、──国領も、たぶん?」
僕は、言いよどんでしまう。
いや、まあ国領もハイスぺだと思うよ?度胸っていうかぶっ壊れのリスク感覚だけど、なんだかんだ優秀。
でもさ、僕が国領について大丈夫って言い切れないのは、国領がポカやりそうだから、ってだけじゃない。
僕の手持ちの未来情報で、国領のことがよくわからないからなんだ。
ええと、参考になるような未来情報、あったかな、──
「なんで『たぶん』?」
「いや、国領はよくドジったりとか、「しのりーんっ!」」
僕の言葉(自分でも口走って、マズッて思った)に対して。
地団太を踏んで、憤りを表現してみせる国領。
僕につかつか歩み寄って、ぐぐっと接近し、背伸びして顔を寄せてくる。距離が近い。
「そりゃ、ボクもいい加減、ヘマをすることだってあるけどさぁっ、──」
ひどいよひどいよ、と国領が騒ぐ。
国領は、まあ作り顔だと思うけど、傷ついた顔をしてみせていて。
怒りに頬が紅潮し、木漏れ日に目が光る。涙か?
調布が、何地雷踏んでるのよあんた、といわんばかりの責めるような目を僕に向けながら、口を開いた。
「ハルカ、もちろん貴女にも手伝ってもらいたいって思ってるの。あたしも志野も、ハルカのことは信頼してる。
でも、あなた今日、用事があるんでしょう?ちょうど6時から?」
まともに被ってるじゃない、と調布は指摘する。
国領もむむー、と頬を膨らませながら糾弾の言葉を止め、一歩下がる。
調布が目配せしてきた。あー、わかってる。少しフォローしろってことだな。
こほん、と咳ばらいをして僕も続ける。
「あー、悪かった、国領。
大丈夫だ。国領のことは、僕が守る。僕より先には、死なせない。」
そのくらいは言ってもいいだろう。と思ったのは、昨日の悪夢の中のことを思い出したから。
昨日の悪夢の中で紫藤が、『ハルカ』とカスオとが何かつながりがあるようなことを言っていたよな。だったら、国領もまあ大丈夫だろう。
(まあ国領の若死フラグはもうへし折ったし、と僕は安易に考えていたが。
昨日の悪夢が夢にすぎないかもしれない、とか、仮にありうる未来だとしても、あくまで悪夢を見た昨日までの事情をもとにした未来で、僕の選択でもう未来が変わり始めてしまっているかもしれない、なんてことを。
国領をとにかくなだめなきゃ、と思って無責任にそんな言葉を吐いた僕は、よく考えてもいなかった。)
それはともかく、効果はあったらしい。
僕の言葉を聞いた国領が機嫌がよくなってる、気がする。目が輝き始めてる。
反比例して、調布の僕をみる目がちょっとあきれたような半目になってる。怒ってはいないみたいだけど。
「ねー、だったら、ボクさ!
バイトがもし早めに終わったら合流していい?ちょっと早く引き上げるから、さ。」
「バイト先、そんな短くていいのか?それに、それでも間に合わないんじゃないか?
それに街からウリーンランドまで、どう急いでも30分以上かかるだろう?」
「どうしてもってときは、タクシー使うよ。そのくらいは、持ってる!
それにさ、さっきの話では、さ?
エントリーはウリーンランドだって聞いたけど、トライアルの場所も同じかどうか、たしかめてないよね。」
だからと言って、国領のバイト先(教えてくれない。アステロイドプラザ近くってだけ聞いた)から近いかどうかも保障のかぎりではない。多賀島は中核市だ、かなり面積は広い。
(でもまあ、そこまで遠くはないんじゃないかと思う。
あのウェイター氏は今からでもエントリーと参加が可能だと思ってたし。だとしたらそのウリーンランドか、あるいはあの酒場の近くなんだろう。)
「じゃあ、──ボク、6時から8時まで可能性があるんだけど、6時から出してもらえるように頼んでみるよ!それでもし早めに終われば、合流していいかな?」
出してもらう、って、国領のバイトって何なんだろう?
シフトだとしても30分しか出ないってお店にとってはいい迷惑なんじゃないか、と僕は思ったが。
調布はそれでいいと思ったみたいだ。
「しょうがないわね」「ああ」
僕より頭が良い調布がそう思うのなら、まあ僕も異存はない。
ダメモトってなら、まあいいか。多分間に合わないだろうし、そしたら国領は安全だ。
連絡はどうしたらいいかな。僕たちの誰も、PHSやポケベルを持ってない。
空振りになるかもしれないけど、一応6時30分までにアステロイドプラザの裏口で待ち合わせ、と約束する。場所までしっかり。この時代は場所を決めないとすれ違ってしまうから。
「本当に、6時半までしか待たないわよ?タクシーでもウリーンランドまではそのくらいかかるし。
それに『トライアル』とやらがウリーンランドじゃない場所で、しかも遠かったら、この約束は無効。
場所が近くても、時間に1分1秒でも遅れたら置いていく。いい?」
「それでいいよ。」
話がまとまっていく。
それにしても、そのトライアル。やっぱり危ないんじゃないか?とか。
だいたい、そういうよくわからないものに3人で行くべきなのだろうか?とか。
そういう疑問を持ちながらも、僕は場の勢いに押し流されてしまった。
「話はついたわね。じゃあ、ウリーンランド、行ってみましょうか。」
僕はわずかな眠気を振り払い、元気いっぱいで進もうとしている調布たちの背中を追ったのだった。
──────
十数分が経過し。僕たちは、ウリーンランドという閉鎖された遊園地の裏手に到着した。
坂道は自転車を押してのぼり、平らな林の中の道は自転車で走った。
結構、距離がある。アステロイドプラザから30分で来れるだろうか?本当にギリギリ。
さて、問題のウリーンランド。
裏手から来たせいだろう、まず事務所的な建物と駐車場が見える。
「なんか、人がいるみたいじゃない。自動車も増えてるし。
この前は、こんなになかったわよね?」
「さとみん、この前みたときは、人は見当たらなかったけど、施設はまあまあ掃除がしてあるなーって思ったよ。
これ、正面から入るのかな?」
もちろん遊園地はもう閉鎖されてて、ジェットコースターや観覧車などが営業しているわけではないのだが。
敷地内に人の動きがあり、話し声がごくわずかに聞こえたりする。なぜか、遊んでるようなちょっとはしゃいだ声も。
「正面、回ってみようか」
本来の入り口、ゲート側に向かってみる。ただ、こちらはしっかり閉鎖されてる。
そのまま、自転車で行けるところまでは外周をまわってみる。
高低差のある立地なのだが、中が覗き込める場所については、ブルーシートで目隠しがつけてある。
「一時的に使ってる感じ?この前は、こんなのはなかった。」
「そうだな。──さっきの事務所に、トライアルのことを聞いてみるか。」
そうして、僕たちはさっきの事務所近くに戻り。ちょっと相談して。
もし、悪い奴(っていういい方がいいか分からないけどね)がいるのなら。
この2人は、その目にさらしたくない、ということになり。
調布たちには、事務所側からは見えない木陰にいてもらって、一人で鉄の扉に
インターホンを押す。つながったので「トライアルのことで」というとインターホンが切れ、しばらくして扉が開いた。
──あー、緊張するな。なんか圧迫面接とかあったら、どうしよう。
僕は息を吸い込み、要求されてカードを示し。
そして体格のいい男にドア内に招じ入れられ、ひんやりとして薄暗い建物の廊下に入っていったのだった。