タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
長いわりに進んでないです。後で少し削って減量します。
目が覚める。
夢も見ない、濃度の濃い眠りだったな。夢で志野くんに会えなかったけど。
もう少しだけ寝ていたいかな。ううん、と寝返りをうつと、体の節々が痛んだ。
いっぱい跳んだり走ったりして、遊び倒したあとのような筋肉痛。
そして疲労後にぐっすりと寝た後に特有の、体にみなぎる充実感。
充実感?
ばっと起き上がる。しまった!寝過ごしてしまった?
今日は頑張って探してみつけた、バイトの日じゃないか!
遅れるわけにはいかない。
焦りながら、枕もとの時計を見る。思ったより早い時刻を指している。
そうだ、昨日はすごく早く寝たんだ。思い出したよ。
あいつらに痛めつけられて、疲れ果てて、起きていられなかったんだ。
お母さんが帰ってくる前に寝てしまった。
今、午前6時半。昨日帰ったのが午後5時すぎくらい、あいつらにいろいろされてたのが2時間弱くらい?多分、昨日は午後8時すぎ、遅くても9時前には寝てる。
10時間近く寝たわけだ。そりゃあ元気になるよ。
アルバイトは午前9時だったかな。余裕で間に合う、大丈夫だ。
カーテンをばさりと開ける。向かいの千里のベッドには見慣れた千里の茶色の頭。まだ寝てる。
そっと傍に寄り、顔を覗き込む。憔悴した、隈の目立つ顔。心が痛む。
そっと頭を撫でてみる。わたしと似て少し色の薄い、サラサラの髪。
千里の気持ちは、分からないふりをしていた。
わたしも、嫌悪感は感じなかったし。
心ならずも、少しだけ、惹かれてすらいた気もする。
千里は、まあ、かっこいいからね。外見はね。
有名な私立中高一貫校に入学して、頭もいい。
ときどき一緒に外出して並んで歩いているときなど、同性の羨望と嫉妬交じりの視線を感じて、晴れがましいような気がしていた。
実の姉弟なのに。愚かな虚栄心だ。
もちろん、恋人代わりにしたつもりはないし、線を引いてはいた。
でも、志野くんの熱い手、キス、身を焦がすような熱情を知った今。
禁断の関係だからダメだとかとは関係なく、千里へのそうした気持ちは全くなくなっている。
千里の側は、どうなのか知らない。ーーいや、ごまかしちゃだめだ。今もある、というより強まっているんだろうな、そういう気持ちが。
最近は半分、開きなおって暴走してるみたいになってたし。
いつか破綻する、曖昧な関係だ。間違いになる前に、清算しないといけなかった。
昨日伝えられて、よかったんだ。まだ少し、あの千里の表情を思い出して心が痛むけど。
でもね。
そんなに思う必要ないかも。
こいつがいいのは外見だけだ。中身は性格悪くて粘着質で諦め悪いから。まだ、なんかあるよ。
それに。
周りに漂う、それと知らなければわからないごくかすかな臭い。
ゴミ箱にたまっているティッシュ。
ああ。こいつ。
やりやがったな。
急速に、千里に抱いてた透明な罪悪感と悲しみのようなものが薄れていくのを感じる。
こいつそうなんだ。サルなんだよ。
中1の夏くらいから、自家発電を覚えて。
いくどか最中と思われるときに踏み込んでしまったことがあるよ。慌ててドアを閉めて白々しい言葉、ーー忘れ物思い出した!とかーーを発して逃げたけど。
また、目についてしまうんだけど、千里がその、致すときに見てる(らしい)ものも変だ。
何度かわたしの写真が移動して千里のベッドわきにあったことがある。
姉ちゃんをそんなものに使うな。
普通の中学生(がどうなのか、そこまで知らないけど)と違って、グラビアつきの少年誌なんかは全然見ないし持ち込まないくせして、きわどい内容の本を集めてる。
高尚な(?)趣味にみえるけど、実質、自家発電用なんだと思うよ。中身はよくわかってないだろう。
まあ、そういう背伸びやひねくれも含めてかわいい弟ではあるんだけどさ。
だけどさあ、ここは、異性のきょうだいの部屋でもあるんだよ。
せめて、痕跡を隠す努力を!
姉を対象から外す努力を!
せめて、こっそり見えないようにやってよ!
ネタにしてる相手の前に、いかにもな写真を残すな!
ふう。
そっと着替えて、台所に降りる。お父さんは飲んだくれてたし、あのケバい女の人としけこんでたなら、午前中は起きて来ないだろう。というか、まだ帰宅してないかもしれない。後で靴を見よう。
お母さんも寝てるかな。疲れきってるし、ぐっすり休んでてほしい。
昨日のごはんの残りが少しあったので、片付ける。大好きな卵焼きも作ろう。
「みなり、おはよう。」
あれ、お母さんが起き出してきちゃった。
台所のテーブルに座った。母の分も足して作ろう。いや、千里の分もつくっとこう、置いとけば食べるだろう。
母は体はやや小柄だけど、ちゃんと起伏がある体型。忍耐強そうな、色白で目鼻立ちのくっきりした顔。日本海側の美人が多いと言われたりする某県出身だ。
なんでここで前のお父さんと結婚して暮らすようになったのか、ちゃんと聞いてみた方がいいかもね。
仲が悪いんだろうな。年賀状もこないし、ごく一部の人を除いて、母方の一族とは会った記憶がない。
母曰く、子供の頃は顔を見せに行ってたけど、何かと嫌味を言われるし、冷遇されるしで、もう十年くらい帰郷してないとか。
頼れないかな。頼れないんだろうな。
少しやつれているお母さん。今日はゆっくり休んでほしい。
もう少しゆっくり寝て、散歩でもして。
でも、お母さんのストレスを増すことになってしまうけど、お父さんの愛人だろう、昨日の女のことは言っておかないとな。
お母さんの分までごはんをよそって、おかずを置く。
みそ汁はないけど、お茶を置こう。
いただきます、と言って食べ始める。
意を決して口を開こうとしたとき、お母さんの方から切り出した。
「みなり。お母さんね、」
何か決心がある口ぶり。
「もう少ししたら、お父さんと別居しようと思ってるんよ。」
「別居?離婚じゃなくて?」
「離婚だと、何かとみなりも千里も大変じゃない。だからね。」
「お母さん、ーー、」
「ただ、お金がないんよねーー。千里の学費もあるし。」
俯いて額を抑えてる。
白髪が少し増えた気がする。胸が痛い。
「お母さん、わたしね。」
何も言わずにこちらを見た。
「お父さんが、女の人と一緒にいるのをみた。」
昨日のことは言わない、言えない。
言っても信じてもらえないだろうから。
このことも、言っても信じてもらえないかもしれないけど。
「お母さんさあ、わたしたちのことなら大丈夫だから、離婚していいよ。」
続ける。
「わたしも千里も、学校で別にとやかく言うような人いないよ。千里の学校も、わたしの友達も、みんなちゃんとした人たちだし、そんなこと気にしないよ。わたしは高卒で就職するかもしれないけど、片親だとか、そんなこと気にする会社なら、もともとやってけないから、そんなところ、やめとくよ。」
「世の中のこともわからんで、何言ってんの。」
ぴしゃりとお母さんが言う。わたしは勢いを止められて黙ってしまう。
「ひとり親はね、身持ちが悪いって思われるんよ。子供もどっかおかしいて。就職もみつかりゃせんわ。」
だからだ、離婚しない、できないのは、わたしたちのせいだという。
お母さんは、こうなったら頑固だ。
でもさあ、お母さん。
わたしたちのために離婚できないっていうけど、わたしたちはそれで苦しんでるんだよ。
わたしたちのことを思うんだったら、離婚してほしい。
「どうしても、ダメ?」
「ーーー」
今はまだダメ、ってことなんだろうか。お母さんはぐいっと口元を引き締めた。あ、だめだな。
でも言わなきゃいけない。わたしのためだけでなく、千里のためにも。
「お母さんが心配してるのは、本当にそれだけ?」
声を潜める。家にいるかもしれないから。
「それとも、お父さんが何かするかもしれないから?」
ばちっと音がして、片頬が熱くなり。
一瞬遅れて頬が叩かれたと分かった。でも、それほど痛くない。
昔は、もっと顔が回るくらいの勢いで叩いてたのに。
わたしが大きくなったのか。いや、お母さんに力がなくなっちゃったんだ。
こんなところでも、お母さんが昔のお母さんでないのがわかって悲しい。
涙が出てしまったけど。
叩かれたのが痛いんじゃないよ。
お母さんが弱ってるのが悲しいんだ。
「ごめんみなり、そんなつもりじゃなかったの!」
お母さんが慌ててる。いいんだよ、わかってる。
手で、もういいから、と制する。お母さんはさっきの一瞬がうそのように、しゅんとしている。
お母さんは認めたくないんだ、取り返しがつかないことをしてしまったことを。
あの怪物を、それとわからずこの家に入れてしまったことを。
本当は離婚したいんだって、わたしにはわかる。
「お母さん、もし離婚したいんだったら、我慢しないでよ。よその人の目なんか、どうでもいいから。」
声が揺れてしまうけど、言わなきゃ。
「わたしも千里も、覚悟はできてるよ。あの人が何しようとしてもいい、わたしたちは、全部置いて逃げるよ。もう、持っていきたいものなんてない、家もお金もアルバムも、何もいらないよ。だから、気にしないで、離婚して。お金のことなんか、心配しなくていい。わたしも働く。何だってするよ。」
お母さんは、背中を丸めて俯いてる。
軽々とわたしを抱き上げてたお母さんが、こんなに小さく見えるなんて。
「今日はお休みでしょ?お洗濯も皿洗いも、しなくていいよ。わたしやっとくよ。今日だけでも、ゆっくり休んでね。」
席を立つ。
お母さんは食卓に突っ伏してる。泣いてるのかな。
どうすればよかったんだろう。どう言えばよかったんだろう。
わたしは、お母さんと千里に、もっと幸せになってほしい。
でも、強がりを言ってはいても、まだ、道筋が描けないでいる。
ーーーーー
頬のぶたれた跡は、別に目立ってない。軽くぺちっとあたったようなもんだ。
顔をもう一回洗って、志野くんに買ってもらった乳液をなじませ、唇にリップクリームを塗る。
なんかべたべたしてる気もして慣れないけど、つやつやはしてる。
啓発で、服装は気にしなくていいって言われた。ユニフォームに着替えるから、と。
もしもだけど、すごいミニとか、恥ずかしい衣装だったらいやだな。そんなんじゃないよね?高校生に着せるんだし。
志野くんに買ってもらった白いシャツと黒いキュロットスカートを着てみる。
なんだか、守ってもらってる気分。
鏡を見る。うん、悪くない、と思う。
シンプルだけど、志野くんは絶賛してたし。これでいこう。
ちょっとだけ自信が湧いてきた。
さて、洗濯と食器洗いだ。
すませたら、バスに乗って、多賀島県庁。ちょうどいい時間だ。
ーーーーー
家事を済ませ、家を出る。ちなみにお父さんのいつもの靴はなかった。外泊だな。
お母さんは、わかってるんだろうか。わかってるけど見えないふりをしてるんだと思う。
バス停は、さすがに今日は大丈夫だろうとざくろが丘中央に行く。
中学校のときの同級生、高校も一緒、の人がいる。
「紫藤さん、おはよう!」
元気だな。わたしみたいな目立たない人もちゃんと覚えてくれてる。いい人だ。
「おはよう、町田くん。」
「どっか行くの?」
「アルバイトなんだ。町田くんは?」
「おれ、部活の朝練。」
町田くんはバレーボール部だったっけ。
さわやかなスポーツ少年という感じだ。
「紫藤さん、何かあった?」
まぶしそうに、わたしの顔とか腕とかを見てる。なんだろう?
「何か、って、何も?」
言おうとしてることが、良くわからない。
「いや、なんかね、その、」
ちょっと目をさまよわせて、頭をぼりぼりかいてる。
「なんか、すごく目立つっていうかーー。」
「え!目立つ!?」
変な着こなしだっただろうか。
「いや、いい意味で。そう、すごく美人っぽい。」
「えー、何言ってんの。そんなことないよ。」
なんだ。ほっとした。
服のせいかなと思ったけど、男の子にありがちだけど、そんなものにはさっぱり意識が行っていないようだし。
たぶん、リップクリームのせいだろうな。
わたしはちょっと安心して、町田くんの部活の話とかクラスの気になる子の話とかに移ったのだった。
ただ、途中で何度か志野くんの話になった。
なぜか、町田くんが聞きたがってた。恥ずかしくて、適当にごまかした。
町田くんの顔に、赤みがさしていたが、そのときはあまり気にも留めていなかった。
ーーーーー
県庁の建物は、古い風格のある建物だ。近いうちに建て替える予定があったらしいが、バブル崩壊で足踏み状態だとか。
県庁前の広場に集合。あたりを見回す。「○○啓発事業」の看板を持って、腕章を腕に巻いた職員さんがいた。
何人か人が集まっている。多分だけど、高校生と大学生が半々?
男の子もいるが、ごく数人。なんかかっこいい感じの人たち。
わたしには関係ないけどね。
女の子は、ぱっとみてもきれい系だったりかわいい系だったりする子が多い。
地味なわたしは、ちょっと浮くだろうな。
心配だ。
集合時刻になった。すでに女の子たちは、なんとなく、グループが形成されつつある気配。
焦る!
そばにいる、わたしと同じくらいの年齢の、わたしと同じように少し地味な感じの子に話しかけてみる。
「ごめんなさい、何か出席確認とか、点呼とかありました?」
「いえ、まだですー-。」
「まにあってよかった。わたし、紫藤、紫藤みなりっていいます。ムラサキのフジで、ひらがなで『みなり』です。」
「島原モモカです。島原の乱の島原に、モモカは百の花。」
「高校生ですか?」
「北高(※多賀島北高)2年です。」
「あ、わたしとおんなじだ。わたしも2年、中央(※多賀島中央高)です。」
「すごいんですねー。中央なんて。」
「北、最近すごいじゃないですか。運動部も強いし。というか、同い年なんだから、敬語やめよ?わたしは、『みなり』でいいよ。」
「うん、そうするね。「モモカ」でお願い。」
やっと顔がほころんだ。モモカちゃん、かわいいじゃないか。
まわりのすこしわたしたちと似た感じの人たちが集まってグループができる。
ほっとする。
この感覚、たぶん志野くんとかには説明しても、絶対わかってもらえない気がする。
彼は男子どもとつるんで遊んでるけど、基本的には一匹狼っぽい。
「はーい、集まってー。」
係の職員さんがぱんぱんと手を叩いて人を集めている。
県庁の会議室に案内され、説明を受ける。
内容は、啓発事業。県内の人出の多いところに行って、○○事業の啓発と協力を求めるチラシと啓発物品(ティッシュ、うちわ、ボールペンなどがあった)を配る。
その事業自体を良く知らないので、質問とかあったらどうしよう、と思ったが、配るだけでいいそうだ。別に事業に反対でも構わない、ただの仕事として取り組んでくれればいいと。
基本、職員が2名くらい同行して、一緒に配る。何かトラブルがあったり、質問があったりしたら、職員が受け付けるそうだ。
10時から、12時から、14時から、16時からの4回を予定。県内のいろいろなスポットをカバーしたいので、1グループ6人で5グループに分けて、20スポットにいく。繁華街のスポットが多いが、観光スポットでも行うらしい。ショッピングセンターとかも。遠いスポットを割り当てられたグループは、かなり自動車での移動時間が長くなる。それはしょうがない。
最初の10時の回は、どのグループも基本は市内の繁華街。それ以降は長距離移動もありうる。
おおまかにいえば、県の中央と東西南北ということになる。
グループ分けのところで、早速ちょっと派手めな女の子たちのグループが職員さんに交渉して、自分たちのグループを認めさせようとしている。まあそれがいいよ、仲良しさんどうしになれたらいいね。
でも。
派手めのギャル系のグループ、ちょっとヤンキーっぽい雰囲気でやんちゃな高校生が中心かな。もっとも、その取り巻きみたいな感じの子も含まれてるから、構成人員が多い。友達同士で誘い合わせて応募したんだな。1グループにはとても収まらない。だから2つに分かれて、まだ余る。
ちょっと綺麗めのグループ、多分女子大生が主力だと思う。落ち着いた感じだ。これも同様だけど、少し少ない。1グループ+α。
わたしたち、地味め(?)のグループ、おそらくおとなしめの高校生が中心のグループは、わずかに人員オーバー。というか、各グループに男の子は最低1人以上配置したい、ということで、6名ちょうどのわたしのグループから1人がはみ出ることに。
うん、しかたないよ。わたしが出よう。せっかくいい感じだったのに!
せっかく仲良くなったモモカちゃんも、恨めし気だ。
ギャル系2グループ+あまり。
清楚お姉さん計1グループ+あまり。
地味系1グループ+あまり。
あまり集団で1グループ。
わたしはあまりグループになる。お友達と一緒になれず、ふてくされた感じの茶髪の、ミニにルーズソックス履いてる子と、清楚系だけど目元のきつい女子大生っぽい子、きれい系だけど、少しおどおどした、線が細い感じの、多分大学生の女の子、そしてわたし。2グループの狭間で、わたしはちょっと居心地が悪い。このグループだけ、女の子は4人。
男の子は、大学生2人かな。大柄で茶髪のスポーツマンタイプの男の子と、細身でしゃれたフチなし眼鏡をかけてる、クールな感じの男の子。どちらも、客観的にはかなりかっこいい感じだと思う。なぜかこのあまりグループがいいと言ってこっちに来た。ちなみにギャル系グループは狙ってたみたいで、悔しがってたな。それって自分のところに来た男の子に失礼なんじゃないかと思うんだ。
割り当ては?ああ、東部か。ちょっと遠方なんですね。でも仕方ないよ、配る時間は少なくなることだし、ドライブできるし、いいことも多いじゃないか。
県庁のロッカールームを借りて交替で着替える。胸元に、県のイメージカラーの青を入れたグレーのワンピースに、グレーで青の線の入ったベレー帽。結構かわいい、周りの女の子もテンションが上がってる。歴代(?)使ってるものらしいけど、ちゃんとクリーニングしてある。大きさもちゃんとわたしに合うのがあったよ。よかったよかった。
男の子は用意された衣装がなく、男女共通の青いたすきをかけるだけ。ただ、服については、ホワイトかブルーのシャツとグレーか紺のスラックスを着てくるようにと指示があったようだ。男子の服が似ているなと思ったよ。
ーーーーー
自己紹介の時間もなく、わたしのグループは白い公用車のハイエースに乗車。ドライバーさん兼務の職員さん2名。のこりの6人が後ろの席に。2-3-3の3列シート。男の子たちは分かれることにして、茶髪の男の子と茶髪のギャル子が最後列に。クールなメガネの男の子ときつめ清楚系女子、おどおど女子が真ん中列。じゃあ。
わたしは最後部にのシートに乗り込むことにした。なんか茶髪の子がこっちみて嫌な顔をしてる。
「わたし、紫藤といいます。よろしくお願いします。」
一応言っておかないとな。この前の脂肪女たちのことが頭をよぎる。まああれは、たとえ挨拶してもどっかで難癖つけられたんだろうけど。
「かっわいいねー、君。俺、マケンロウ。諫早
かっこいいんだろうけど、ちょっと軽い。いや、わたしにはあまり構わないでくださいよ?隣の茶髪ギャルが、なんか剣呑な感じだし。
おふたりでどうぞ。
「あたし、佐世保ナナ。」
言って、ぷいっと向こうを向く。
佐世保さんが中央の席。茶髪男くんが先に入ったので、それを狙って入ったんじゃないかな。わたしが後から入ったので、座り心地の悪いまんなかの席になったのも嫌だったのかな。でも、わたしここに入らないと、啓発物品と一緒に後ろに荷物扱いで押し込まれることになるんですよ。ごめんね。
どこにいってもあまりものだな。わたしは。
ーーーーー
車中で簡単に業務説明を補足。また、自己紹介をしようということになった。
さっきの茶髪二人に加えて、きつめの美人女子が大村さん、たぶん大学生だから大村先輩かな。弱気な感じのきれい系女子、たぶん大学生、が西海先輩。眼鏡のクール冷徹系眼鏡男子が松浦さん、たぶんこれも大学生。
最初に立ち寄るのは多賀崎市内。
その後、比企頃市で2か所のスポット。その後、対楽市のスポット1か所。
多賀崎市内では、ショッピングセンターだった。
啓発物品、チラシだとだめなんだけどティッシュは売れ行きがいい。
チラシもにっこり笑って男の人にわたすと受け取ってくれることを発見した。
女の人、特に主婦層は、結構ドライだ。チラシだと受け取ってくれない。
男女を問わず年配の人は「かわいーねー」とかなんとかいって、どこから来たの、これはどういう行事なの、とか聞いてきてくれる。わたしはきっとおじいちゃんやおばあちゃんには愛玩動物みたいにみえるのかもな、そういうパターン多し。でも啓発物品が捌けないとこまるので、にこにこ応対しながらもさばいていく。
手に持たされたカゴの物品がなくなったので、補充をしに行く。2かご捌けば目安としてノルマ達成。でも、人口の少ないスポットではあまりはけないから、ここで少し多めに撒いてていいらしい。早かったよ、一番乗りだねぇ、と運転手兼務の職員さんがいう。
わたしは多分警戒心を起こさせないのだろう、意外にも早くさばきおわった。途中で子供にまとわりつかれたり、大学生にナンパされかけるという椿事も起こったが、無事ノルマをさばき、ほかの人の分もお手伝いする。ギャルの佐世保さんは負けん気が強く、運動量でカバーしてる感じ。でも逃げられててしゅんとしていることがある。結構かわいい。
きつめ美人さんの大村先輩と、おどおどなきれい女子、西海先輩はいい勝負。大村先輩はいかにも美人で売れ行きがいいのかと思ったんだけど、結構避けられてしまうらしい。あのオーラのせいか。心外なのか、口を尖らせてる。
西海先輩はやや消極的だ、だから職員さんが人通りの多いところに配置して売り込み(?)を図ってた。佐世保さんと足して二で割ればちょうどいい感じかもしれない。ペアにしてみたらどうだろう。
スポーツ青年の男子大学生、諫早先輩は、おばさんとおばあちゃん中心にさわやかな笑顔で手堅く稼いでた。さすがだ。これに対して眼鏡系男子の男子大学生、松浦先輩は、こういうところではあまり実力を発揮できてないらしい。もてそうだけど、系統が違うんだろうな。手伝ってあげると、すごくうれしそうに笑ってくれた。ちょっとわたしをみるときの目が狼みたいで怖いけど、本当はいい人なんだろうな。
このスポットは終了。かなり暑くなってきた。
バンの中に戻る。ここも暑いけど、クーラーをかけてくれる。涼しい!
皆ほっとして、少し冗談や笑い声も出てきた。
さて次は、比企頃市だな。