タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
・ホテルに戻って、メールで送られた動画を見た。
・紫藤が殺される経緯があった。
・吐いて寝た。
20220507
調布智美の、紫藤みなりへの呼び方を変更しました。
20231104
谷津崎老人の年齢、調布智美の家庭の状況を修正しました。
その夜に悪夢を見た。
恐怖に震える彼女に、思うままに苦痛を与え凌辱の限りを尽くしている夢。
夢の中では彼女には目隠しがされていたが、その体は紛れもなく粒子の粗い映像で見たあの彼女だった。
そして夢の中では、僕はあの筋肉男になっていた。
あの映像の中とは違うが、夢の中で僕は彼女の汗と埃に塗れた体を鞭打ち、痩せた肩に焼き鏝を押し当て、爪に針を刺し、抗おうとする体を押さえつけて行為に及んでいた。
本当に恐ろしかったのは、夢の中でその作業に従事し、一人の人を破壊していることについて背筋の冷たくなるような取り返しのつかなさを感じながら、同時にしびれるような精神的・性的快感を感じていたことだ。
目が醒めたとき、下着にたゆたう生あたたかさに、いい歳をしての失敗を悟り、その原因とあいまって限りない自己嫌悪を覚える。
ふて腐れてしばらくは寝具にくるまっていたが、諦めてそろそろと滴り落ちないようにバスルームに急ぐ。
結果としてろくな睡眠もとれないまま、食事も取れないままに、チェックアウトの期限ぎりぎりになってしまっていた。
ホテルを出ると、実家に一度寄る。
僕と両親の関係は特に悪くない。
結婚が遅れているのは気になっているらしいが、一人で問題ない、結婚はしないかもしれないと伝えても、残念そうな色は見えたが特に反対はしなかった。こんな田舎には珍しい。
もっとも、父母がともに分家筋でしかも次男三女という、家の存続などに関わりない立場だったのと、姉に子供ができて、初孫に心を奪われていることもあるのだろう。
昨日は東京から長距離バスで帰郷し、そのまま創立記念式典に参加していたので、しばらく父母に近況報告した後で、自室に入る。
実家の自分の部屋には、不要な家具や布団が押し込まれ、畳は日に焼け、壁の世界地図のポスターは色褪せているけれども、基本的には僕がこの街を出て行った15年前と同じだ。
僕は本棚から自分の卒業高校のアルバムを手に取った。
結局、彼女がこのアルバムに卒業生として記録されることはなかった。
しかし、各年度の最初に撮られる1年生・2年生のクラスの集合写真には、はにかんだ笑みを浮かべてこちらを向く彼女の写真があった。
思ったより幼く見える顔。
覚悟はしていたのだが、心の底でなにかがーーたとえていえば、トカゲのような小動物のようなものがーー蠢くような感覚があったものの、なぜか思ったほどには感情は動かなかった。
あまり人間関係が得意でない僕でも、何人かはやり取りのできる相手がいる。
僕が調べたかったのは、彼女と親しかった、話の聞けそうなクラスメイトなどについてだ。
親しくなくても、同じ中学出身者とかでもいい。親が亡くなり、そして子供たちが亡くなった家がどうなったか。
しばらくアルバムを眺めまわしたが、あまり良い参照先はみつからなかった。
彼女の性格から、僕が話を聞きやすい、僕と同性の友人は少ないものと思われた。
そして思う。
さしあたり一番可能性があるとすれば、それは同クラス、同部活で、しかもこの情報を握っていた高木だ。
一周して同じ場所にきてしまって芸もないが、やはりそこから始めるべきだろう。
直接電話すればいいのだが、ご丁寧に一度メールで電話していいか聞いてみる。
高木はシステムエンジニアとして日系のIT企業に勤務していると一度聞いたことがある。
普通は知らない情報を握っていたことからすれば、その情報網は広い可能性がある。
高木からはすぐに返信があった。すぐに電話をかける。
「昨日はどうも」
「ああ、こちらこそ。それでさ、」
相手も連絡を求められたことからわかっていたのだろうし、と早速、水を向ける。
1つ目の動画しか見られなかったこと、死亡したと思われることは確認したこと。
ほかの動画から得られる情報は何か、動画に出ていた人物(筋肉男や老人)について、紫藤のことが聞けそうな相手について。
高木の口は重かった。
「俺の知っていることはごくわずかしかない。それでも、ほかの奴よりは良く知っている方だと思う。少なくとも同学年、同学校にあの動画を知っている奴はいないと思う。
なぜ拡散していないか?それはあの内容でわかるだろう?
残り2つも胸が悪くなるような内容で、しかもあれがリアルなら完全に違法だ。
動画は全部見た?1つしか見てない、そうだよな。
ちなみに残りの動画のうち1つでは、弟が殺されてる。しかも、無理やり番わせたあとで、目の前で殺して見せたんだ。ーー聞くだけで気分悪くなるだろ?
法執行機関がなぜ動かなかったのか、動いていないのか?目の前の事件だけでいっぱいなのかもしれないな。
あの手のもの、捜査も立証も難しいからなのかもな。
多分日本人、というだけだからな、場所すらわからない。ああ、人は、ってことなら弟もいるから特定可能かもしれないが。
あと、あれが現実のものなのか、特撮じゃないのか、ってことだよな。
俺はそっちは素人なんだが、画質が荒くて、本物でないって考えたのかもしれない。
現在、俺が知る動画ファイルはあれだけだ。サーバは外国のものだ。あのファイルでは無音だ、俺もそれしか知らない。
あの老人が誰か?これ、実は自信がないんだが、一応名前を伝えとく。
谷津崎勇三という名前を聞いたことはあるかな。
そう、ヤツザキグループの元会長だ。
あの首の痣。同じ痣の写真が、偶々仕事の関係で見てた古雑誌にあった。都市開発関係の専門誌だったかな。
ただ、これはもしかすると全然違うかもしれない。年齢が合わないんだ。
動画があの年だとすると、当時すでに80歳を過ぎているはずなんだ。あの動画の男、せいぜい60歳くらいだろう?
しかも少なくとも引退前の人柄は温厚で、よき父・よき祖父であり夫だと書かれていて、どうも一致しない感じがする。
他人の空似かもしれないが、あの首の痣が遺伝か病気の症状とかだとしたら、手掛かりにはなると思うんだがな。
聞けそうな人物か。うーん、調べたりするのは、志野に教えた俺が言うのもなんだが、やめた方がいいかもしれないぜ?
俺はネットとか同業の仲間とかに聞いて調査しただけだ。2回ほど匿名通報したが、それだけだ。
だけどな、こんなことをする奴らだ、ほじくり返されて、何もしないはずがないだろう?
紫藤の話だったら、訊けそうな、同じ中学で知ってるやつが一人いる。
市役所勤めで良いやつだから、多分電話しても大丈夫じゃないかな。連絡先分かるから、メールも送っとくよ。
あと、紫藤の友達といえば、同じクラスなら調布サトミで、部活なら国領ハルカって子じゃないかな。
両方とも、中学校は違ったと思うが。
俺?いや、俺も部活は一緒だったよ、話もちょっとはしたけど、そこまで知ってるわけじゃない。だいたい、俺はイラスト部門で、紫藤は文芸部門だったんだ。
そりゃ話はしたよ、その縁があって調べようと思ったんだしな。でも、それ以上知ってるかっていうとなあーー。
ただ、そのとき住んでた家はわかる。もう別の家族が住んでると思うが、2年の学級名簿に載っていると思うぜ?なかったら写しを送るよ」
何かわかったら教えあう約束をした後、謝意を伝えて電話を切り、教えてもらった連絡先にいくつか電話をかけメールを送ってみる。
もう、自分でも深入りは賢くないと分かり始めている。
躊躇なく人を(おそらくは)攫ったりなぶり殺したりするような奴らだ、何をするかわかったもんじゃない。
ただ、もはや守る相手もいない約束と惰性的な義務感とが、僕の手と口を動かしていた。
創立記念式典もあったせいか、教えてもらった連絡先は一人を除き好意的な反応だった。
実際に喫茶店でお茶しようという話にまでなった人もいた。
ーーーーーー
(同じ中学校出身、元・生徒会書記、町田 万智男の話。電話で)
うん、中学同じだったよ。柘榴ヶ丘中学。小学校も、ザク小。
柘榴が丘団地、ちょっと離れてるけど電車があるから。通学は意外と便利だぜ?地価は下がっちゃって親は最高値で買っちまったって今でも嘆いてるけどね。
でもそんな悪くないって。市内からは30分かかるけど、新興団地だったから、子どもも多かったし。
あ、でも志野も鳥兜団地だったの?近いじゃん。一回中坊のときトリ中のヤンキーが殴り込みに来てたっけ。
ごめんごめん、紫藤な。
言っちゃなんだけどあんまり目立たなかったよな。でもなんかほわんとしててかわいい感じだし、結構頭よかったってのはみんな知ってた。
作文コンクールで一回、賞獲ってて表彰されてたよ。優等生って感じじゃないけど、成績は良かったみたいだな。塾にも通わずうちに受かってるしね。でも、何かテスト悪かったときに父親に怒られるって言ってたかも。すごく厳しいとかなのかな、いやこれも俺、隣の席だったときに聞いただけだけど。
あと男は怖いみたいだったな。いや、男全部ってんじゃなくて、身体の大きいのが近づくとなんかビクってしてんのなーーってこれは理由があるんだけどな。
あと、たしか中二の一時期、僕っ娘になってたことがあったな。いわゆる一つの中二病ってやつ。たぶん本人的には黒歴史。もし会ったら言ってみて。
なんか友達と歴史関係の少女マンガのなりきりやってたこともあったな。
いじめられてたとかは、ーーああ、同じ女子どうしではなんか弄られてるってのはあったな。無視されたりとか深刻なのはない、ーーと思うけど。でも女子はわかんねえなーー。結構ドロドロしてんじゃん。
あとな、さっき言ったけどザク中、ちょっと変な奴がいてさあ、そいつにつきまとわれてたってのがあったな。そいつがそんな体型だったよ、いや、その、大柄で固太りっていうか。
なんか今で言えばストーカーして、一度紫藤を押し倒すかなんかして、ばれてさあ、親がよばれてたよ。親もそっくりな感じだったな。部活はしてなかったけどな、相撲取りっていうか柔道部みたいな、なんか良いガタイしてたな。
いや、だから志野やんみたいなのは違うって。志野やん細いっていうか、太ってないじゃん、うん。
志野やんって何よ、って志野やんじゃん。
それで志野やんさあ、今になってなんで調べてるの?
紫藤のこと好きだったり?まさか初恋?
うわ、それ聞いたら結構、ダウナー入る子いるかもよ?志野やんのことよさげって言ってた子知ってるよ?
いやそれは個人情報だからさあ。いや俺ほら公務員じゃん公務員。紫藤の情報は、まあ時効ってことでひとつよろしく。
志野やんもUターンとかしない?最近投資が増えてたりで、多賀島市も熱いんだって。会社も誘致してるし。ま、考えてみてよ。仕事だって紹介できると思うよ。ああ、それでーー、(以下、関係のない話が続く)
ーーーーーー
(2年生のころの同級生、調布
うん、あの頃は結構一緒にいることが多かったよ。なつかれてたって言っていいかも。
あたし、結構多いんだ。ちっちゃい子にくっつかれること。でもあたしもそういう子、結構好きでつるんでるよ。いちいちかわいいじゃん、あの不安そうな感じとか。チワワとかの愛玩動物に近いのかなあ。心の底から暖かい温泉のお湯が湧き出てくる感じね。
みなりはねぇ、ああ紫藤さんのことだけど、あたしになついてきたのは、あたしが守ってくれそうっていうのもあったと思うよ。
あたし結構、外見強そうでしょ?別にそんなこともないんだけどね。
あの子、なんていうのかなあ。
痴漢に遭いやすいタイプってあるじゃない、美人かどうかじゃなくて、文句言えなさそうな子を狙うじゃない、そういう人たちって。みなりは、多分そんな感じ。
本当の本当は結構、芯の強いところもあるんだけど、でもまあ基本そんなふうだし、そんなふうに見えちゃうんだよね。しかも地味によくみるとかわいいから、ねぇ?ハエがたかりやすいんだよ。
志野君も紫藤さんみたいな、そういう子が好き?従順で自分の色に染められそうな感じの。あたしも本当はそうなんだけどなー、って。ちらり。
ごめんごめん、みなりのことだったね。
いろいろ知ってるよ、スリーサイズは忘れちゃったけど、何カップだったかは覚えてる。
でも、家のこととか、伸びない身長とか以外で、本人が本当は何を悩んでたのかとか、何であんなふうにいなくなっちゃったのかとか、本当のところは分からない。忘れてることも多いかも。
あたしは1年から一緒で、2学期くらいから友達だったからねえ、仲は良かったよ。
ときどき試験前とか、うちに呼んで勉強会したり、みんなとカラオケ行ったり、夏休みにプールに行って遊んだりしたよ。
そうそう、そのときにみなりがびっくりしてたことがあった。
うちはお父さんが半単身赴任って言うのかな、本務先が関東で、週末だけ帰ってきて、家で仕事することが多かったんだけど、家でお父さんがいてふつうに勉強会とかしてることがびっくりすることだったみたい。家にいるなんて緊張しない?とか言ってたから。
うん、みなりもお父さんを尊敬してたみたいだけど、すごく厳しかったり、それとも週末は家に帰らなかったり、家では飲んだくれてたりとかだったのかなあ。
うちは週末の夕ごはん担当がお父さんだったりしてたし、お母さんの尻に敷かれてたから。
いまも敷かれ続けてぺっちゃんこだけどさ、ハハ。
それでさあ、なんで今ごろになって調べてるの?
好きだったとか?
なんかイメージ違うなあ。だって志野くん、立川さんとか鶴ちゃんーー鶴見さんねーーとかが好きだったんじゃないの?背が高くて、その、不二子ちゃん、って感じの。
なんか鶴ちゃんと席が隣だったとき、志野くんの視線が行ってた気がしたんだけど。
え!あたしのことを気になって見てた⁉
うわぁーそれってセクハラだからね。
ダメ、殺人並みの重大犯罪だから時効はないの。
責任とってこの日替わりケーキセットを一つお願いね。それでチャラにして進ぜよう。
ふむふむ、ちょっと志野容疑者の自白の聴取を続けたいんだけどさ、ーーー、(以下、無関係な話に移行)
ーーーーーー
(1年生の頃の紫藤みなりの担任、浦和みすずの話。休日出勤の高校の教職員室の応接スペースにて。)
ええ、これってプライベートなのかな。パブリックなのかな。ちょっと答えづらいし、守秘義務とかがあるでしょう?
連絡取りたいってことね。
でも、公式ルートでないし、悪いけど他で調べても出てくることだけ教えることになります。
ちなみに同窓会事務局に連絡してくれれば、もし事務局で連絡先が分かってれば、事務局から先方にあなたの連絡先を教えてくれるってやってるみたいですよ。
でもね、そっちじゃ退学者は把握してないかも。
それだけじゃなんだから、プライベートな私の過去の教え子たちの思い出話をしましょう。
まあ紫藤さんのことも混ざってるかもだけど、あくまでも一般的な思い出話です。
担任してると、家庭事情が複雑な子もクラスや顧問の部活にいました。
シングルマザーに男が同居、なんてのは典型例、虐待が多いとか世間じゃ言われてるでしょう?
でも、そのパターンでも、そんな問題が起きてない家庭が多いだろうし、偏見なのでしょうけど。
で、思い出話。
ある女の子と男の子の姉弟がいました。二人の両親と姉弟は、幸せに暮らしていました。
ところがどのようないきさつがあったのかわかりませんが、両親の間にすきま風が立ち、母親は離婚して子供を引き取りました。
母親はそれまで体も強くはなかったこともあって、専業主婦だったのですが、パートで働き始め、そしてパート先の同僚と再婚しました。
それが母親が望んでのことだったのかどうか、わかりません。
子供には父親や男手がないとかわいそう、ということだったのかもしれません。
新しい夫は最初は子供たちの親となろうとしていたのかもしれません、名前は母親の姓にしたようです。
しかし、時間がたつにつれ、子供たちと疎遠になり、辛く当たるようになります。
夫に問題があったのかもしれませんし、子供たちがある程度大きくなってしまっていて、なかなか新しく来た父親になじめなかったのかもしれません。
夫には多額の借金がある、母親の姓にしたのは借金逃れのためではないかという噂を聞いたこともありますが、真偽はわかりません。
母親も悩んだようですね、良かれと思ってした再婚がそんな結果になってしまったことに。
最初は夫を立てていたようですが、そのうち経済面を考えても、情操面を考えても、子供たちにマイナスが大きいと判断したのでしょうか、将来的な離婚をも視野に入れて、話し合いをすることにしたようです。
ここまでが私の直接知っている話。
これから先は、聞いた話から私が勝手に組み立てた推測の話。
姉が2年生に進級した後、夫は母親の決意を伝えられ、別居か離婚に向けて協議するようにしたようです。
ただその頃から夫からの経済的援助も打ち切られていたこともあり、再就職した仕事による過労で母親の体調は悪化していて、仕事中に意識を失って倒れたようです。
その後、昏睡状態のまま学期半ばから入院し、別居や離婚の話は結果として棚上げになっていたようです。
関係が悪化していたのでしょう、夫はほとんど見舞いにも来なかったとか。
その後で何があったかは、よくわかりません。
結果から言えば、母親の延命治療は止められて亡くなり、その死後まもなく、葬儀の前に父親が交通事故で死亡しました。飲酒のうえでの事故だった模様です。
父母の死後、夫の兄にあたる伯父が二人の世話をすることになったそうです。
夫の兄、つまり伯父さんは違う町に住んでいたので、姉はその高校の退学手続きを採り、引っ越し先の進学校で、編入試験を受けることにしたと聞きました。
弟の方はわかりませんが、私立中に通っていたので転居に乗り気ではなく、どのようにするか考えているとその伯父が面談で話していた、と聞いています。
その後のことはわかりません。引っ越し先の住所は、たしか羽立毛市だったのではないでしょうか。
引っ越し直後に、挨拶はがきが送られてきましたね。
ただ、返信しようとしたのですが、住所が書いてありませんでしたね。
あの子は礼儀とかはしっかりしていたと思っていたので、ちょっとどうかと思いました。
伯父と同居という話なので、遠慮したのかもしれませんね。
内容は自筆でしたが、ごく形式的なあいさつ文だったと思います。
発信地の消印は、羽立毛市で、その点は特に違和感は持ちませんでした。
当時の記録は、普通では調べがつかないかもしれません。
ただ、学事記録は、一度作成したら、証明書を発行したりする関係で永久保存なので、もし正当な理由と手続きがあればどうにかなるかもしれませんね。
伯父さんの名前や退学後の連絡先は、普通なら記載事項でないのですが、あのころの文書は、ワープロ打ちもあったけど、まだ手書き全盛時代だったので、もしかすると参考欄や余白に書いているかもしれませんね。
ただ、それが閲覧できるような伝手に心当たりはありませんが。
199X年修了生であれば、あそこにあるキャビネットがそれだと思います。
でも今日は事務の人もいないから、私には何もできませんが。
いえいえ、これらのことは全部、特定の人のことじゃなくて、一般的な、そんなエピソードもあったなということですよ。
なんだかみていて、とてもあなたには大事なことなんだろうなと思ったんです。何か参考になったらいいんですが。
ちょっと私はお手洗いにいきますが、電話も掛けてくるので10分だけ外しますね。
絶対、くれぐれも、そこらのものとかを触ったりしないように。あのキャビネットもカギがぶら下がりっぱなしですが、個人情報ですから。(宣言通り15分程度の中座の後、校内を簡単に案内され、返される。)
ーーーーーー
僕はその日の調べ物の合間に、有給休暇の残日を確かめ、勤務先に有給休暇取得による夏季休暇の延長を申請する。
こちらはもともとシーズンオフだったこともあり、簡単に受理された。
それから数日できた故郷での休暇に、姉の家庭の訪問や家の雑用や墓参などをすませながら、僕は空き時間に公立図書館などで若干の調べ物をした。
また、知人に紹介してもらった弁護士の伝手で教えてもらった調査会社に対し、浦和先生が(おそらくは意図的に)漏らしてくれた情報をもとに依頼をかけた。
これらのことが終わり、僕は東京に帰った。