タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
(志野視点、葉良邸、土曜日の深夜~日曜日早朝)
僕は有明りなの自尊心を傷つけないように気を使いながら、怪我を白状させ。
彼女の打撲傷(砂袋で打たれたからね、あるだろう)の治療用に、湿布や氷水を用意する。
自分が筋肉痛だ、というのを主な口実にはしたけれど。
彼女の歩き方の不自然さとか、肌掛けのすきまから見えた
打ち身がある、スタントの稽古でついた、って有明が白状したから、それを信じるふりして治療を申し出た。
まあ、スタントだっていう彼女の主張は完全に嘘とも言えないのかな。
確かにあのラピエスタの予選の舞台でみた彼女、スタントマン顔負けのパフォーマンスだった。
あれでついた打ち身もあったんだろう、下は固い板張りだったし。
それにしても女優って、あんなのもできるんだなー、と僕はあらためて思い返して驚嘆する。
あんな殺伐とした場であったにもかかわらず、あのとき演技していた彼女の肢体の輝きは、僕の目に焼きついている。
観衆の多くも、身を乗り出し、目を彼女に釘付け状態でみていた。
いや、もちろんその後に彼女に加えられた胸糞プレイには、もっと目を輝かせてたクソ野郎たちなんだけどさ。
──でもあの序盤の寸劇での彼女の熱演に、会場はのまれていた。
彼女、やっぱり「元」とはいえ、天才子役なんだ。
まあ、それはともかく。
打ち身の治療に良かったら使ってくれ、と有明に言い。湿布の類を部屋に残し。
僕がいると太腿とかお腹とかをさらせないだろうから、一時、階下に撤退した。
また、ついでに。
彼女のお腹が鳴ってるのを、解除する直前の超感覚さんで聞いた僕は。
ちょっとやりすぎかと思ったが、開き直ってごく簡単な食事を作ることにする。
おそらく彼女、夜ごはんロクにたべられてないんじゃないか。お腹にやさしいものでも作ろうと思ったんだ。
(臆病な僕としては、相当に悩んだんだけど。
ほらさっきの謎の園丁さんも、僕に好意的だったし。
有明りなに聞くところによれば、夜にこの母屋に来る人はいない、という話だったし。大丈夫大丈夫)
──────
「(ありがとう、しーくん!)」
十分後、常夜灯に照らされた台所で。
冷蔵庫に冷凍してあったごはんとタマゴで作ったおかゆを有明りなに摂らせながら、僕は思い悩む。
目の前では、この高飛車粘着鬼電女が、幸せそうに笑みを浮かべてるわけなんだが。
はたして彼女は、あの「ラピエスタ」の実態を承知のうえで参加して、カマキリ男どもに自分の意志で自分の体を嬲らせているのか。
それとも、全く知らないで、騙されて、あるいは強制的にあんなことやられてるのか。
前者だったら、──まあどうしようもない。薄情なようだが、それは自己責任だ。
でも、後者だったら?
しかしこのことを直接彼女に聞いても、答えは帰ってこない気がした。
そもそも今日(昨日)、予選に参加してるってことすら認めないだろう。僕も彼女を見たとは言えない。
それにだいたい、彼女だって口止めされてるはずだ、僕と同様。
あの怪しげな長髪山伏みたいな男との「誓約」を、彼女も結ばされたはず。
ただの言葉での口約束でしかないが、気にする人は気にするだろうし。
有明、妙なところで律儀で義理堅いところがあるもんな。僕にお礼と称してしつこく金を渡そうとしたり。
遠回しに、彼女にここから逃げたくないか聞いてみる。
しかし彼女、あまりその気はなさそうだ。女優としてのキャリアに資する、と思ってるみたいだ。
頼れそうな縁者についても再度確認したけれど、彼女、悲惨な境遇らしい。
頼れる親戚、一人もいないってのがすごい。何やらかしたんだ。
ただ嫌われるのは覚悟で、今日、最後にもう一度だけ確認してみるか、と僕は思う。
とりあえず彼女には休息を取らせるべきだろう。もう夜も遅い。
僕は彼女をおんぶして、二階に上がる。
そのとき、足の下の階段の段が、ぴきっ、と大きな音を立てた。
もう超感覚さんを解除してしまってた僕は、背筋につららを刺しこまれたような恐怖を感じる。
──やば。僕、この階段っていうかはしご、壊しちゃった?
有明は小柄で華奢だけど、40kgくらいは体重があるだろう。
僕もひょろっとしてた1回目より肉を付けてて、70kgほど。
二人合わせて110kg!
そしてこの「はしご」みたいな階段、そこまで耐荷重があるように思えない。
有明に割り当てられてる2階の女中部屋(?)と、そこにあがるこの階段のことを説明しておこう。
昔の女中部屋のつくりなのかもしれないが、台所から階段を上がった部屋、屋根裏部屋みたいなところに、有明りなの荷物が置かれ、寝具が敷いてある四畳半がある。
ここに上がる階段、あまり頑丈なつくりじゃない。
なんか「はしご」に近いものなんだ。
ふたつの側板の間に、踏み板が並んでるだけの構造。傾斜も、相当に急。
そしてもちろん、このはしご状の階段は、屋根裏部屋の扉の前の短い廊下に引っかけてあるだけ。とりはずし可能。
この階段、要は手すりすらないんだ。
一方は壁面近くに寄せてあるけど、もう一方はそのまま台所空間。
はしごを動かして上げる(あるいは下げる)ことを想定してるから、そこまで頑丈で重いつくりでもない。
そして僕が有明を背負って上り下りしたせいで、どっか折れたりひびが入ってたりしてるかもしれない、──どうしよう?
そこまで重大なことじゃなくて、単なる木のきしみだったとは思うんだけど。超感覚さん、発動しとけばよかった。
そのときの僕は、有明が上り下りしてるときにパキッとはしごが折れて、落下した有明が首の骨を折る映像で頭がいっぱいになってしまってて。
2階に有明を背負って上げたはいいが、すごくそわそわと挙動不審だったことだろう。
正直、彼女のことも上の空。はやく階段にダメージないか、調べたい。はしごのある背後を、それとなく振り向いてみたり。
そんな落ちつきのない僕の様子を、見かねたのか。
彼女は、僕があさっての方向を向いているときに、潜めた声をかけてきた。
「(──、──。渡しの──ラダー、興味ある?)」
注意力が彼女に向いてなかったせいで、最初は何を言われたかわからなくて。
振り向いて彼女の顔をまじまじ見て、数秒遅れで頭に残ってた音声を再生し、やっとわかった。
「
女優業あきらめてない、英語もやってる、って謎のアピールしてたからな。そうだよ、はしごはしご。
「(興味、あるんでしょ?はじめて?)」
無駄に意味深な雰囲気。サスペンスドラマのはじまりみたいな雰囲気を醸し出して、彼女が続ける。
「(ああ、興味ある。はじめてだ。
これまで、見たことなんてなくて)」
こういう引き上げ式階段っていうかはしご、話には聞いたことがある。
でもこの葉良邸以外では、見たことがない。
「(そうよね!見たことないんでしょう?
──『渡し』でも、いい?)」
「(?ああ。見てもいいのか?)」
なるほど、こう、引きあげるんだな。部屋の入口の対面の壁にも、ひきあげたはしごの端を掛ける棚みたいな構造物がある。だから「渡しラダー」なのかな。
あれ、よく見るとその対面側、こことちょうど対称になった。短い廊下と部屋がある?忍者屋敷みたいだ。このはしご階段、その向こう側の方に掛けることもできるんだな。
まあそれはいい。それより、こっそりとはしごの損傷の有無を調べたい。
何も異常なければいいけど、下手すりゃ弁償。
ていうか、有明が男を引き入れてたってことがバレちまう。まずい。
「(もちろんよ。見るのも、──もちろんしーくんになら、いい。
それと。触ってみたい、いろいろしたいって思わない?)」
あー、明るくできないから、ひび割れの検知は触覚検査で、ってことか。なるほど。
「(あー、ペンライトで照らしてみても、いいかな?)」
割れ目とか、確認したいんだ、と思いきって言ってみる。
紫藤とお揃いで買ったボールペンつきペンライトのキーホルダー。
優れものだ、まだLEDじゃないから光量弱いけど。
「(え?照らすの!?触るだけじゃなくて!?
えー、あー、うー、もー、いいわよ!女は度胸!
でもね、しーくんならいいけど、でもさすがに。うーん、あまりきれいじゃないしさ、──)」
なんだか動揺して目を泳がせてる有明は、最終的にはOKしてくれたが。
なんかものすごい恥じらいぶり。なんでだ?
「(悪かった、有明。そこまでは、いいよ)」
まあ、──たしかに、第三者に見つけられたら、さ?
台所の暗がりでペンライトの光が動いてる様子、あからさまに泥棒チックだよな。
しかもそれが、こっそり女中が引き込んだ男だったら。もう心証最悪。
きれいじゃない、ってのはホコリだらけでクモの巣なんて張ってるから嫌ってことかな。──でも、触るのはいいのに?
わずかな疑問を、感じもしたが。
とりあえずはもう一回通ってみて音がしたりするか、触ってみてひび割れあるかチェックしよう、と僕は思った。
「(しーくん。ちょっとだけ、下に行っててくれる?)」
「(ああ、もちろん)」
僕は事情をのみこんだらしい有明を残し、まず階段を降りる。
まずは一段、一段に体重をかけ、復活させた超感覚さんでチェック。
軋むけど強度には問題なし、と超感覚さんは言う。
下につくと、念のためはしごの段を触ってみてチェック。大丈夫、これも問題なさそう。
別によごれてもいないし、クモの巣も張ってない。なんで恥ずかしがるんだ?
まあいい、安心した。
「(しーくん。いいよ)」
2階から、ひそやかな声。
2階にのぼると、有明りなはふとんに入り、夏なのに少し厚手の毛布を掛けて首だけを出している。
「(ありがとう。大丈夫だった。音もしないし)」
「(?大丈夫よ。音なんて立てない)」
僕のはしごにまつわる不安を読み取ったらしい彼女も、すこし固い笑みで請け合った。
はしごのきしみ音、僕はびっくりしたけどあんまり大したことなさそうだ、と僕は安心した。
「(ねえ来て、しーくん。お願い。
しーくんに、来て欲しいの)」
あの子が欲しい、相談しましょ、などと場違いな童謡をおもいうかべながら。
僕はふとんから手を出してきてすごい力で引き込んできた有明に従い、毛布に入らされる。
彼女が横抱きに抱きついてきて、僕は固まった。
有明りなの柔らかく熱い体は、全裸だった。
──────
「(しーくん。どう?嫌?)」
「(い、嫌じゃない、けど)」
「(よかった!しーくんに嫌われたら、私死んじゃう。もう駄目)」
有明が、僕の耳にささやく。
距離を離そうとした僕に彼女の足がからみつき、僕をその場に縫い留め。
そしていつのまにか寝技の得意な柔道選手のように巧みに、彼女は僕を下に組み敷いているというか、あおむけになった僕の上に乗って抱き着いている状態に移行する。
だがほとんど僕の頭は
「(ただ、有明。その、──服は?)」
「(脱いだの。だって触りたいんでしょう?
見てもいいよ、約束だから。
でもね、今日はあちこち打ち身があったり汚いかも。ごめんね?)」
んあっ?
有明の中では、僕が彼女を触ったり見たりしたいっていうことになってるらしいが、──何を言っている?
しかしそこで、ようやく僕の馬鹿頭は。
先ほどからの違和感のあるやり取りを、再解釈しはじめた。
最初の、よく聞き取れなかった呼びかけ。「
あれ、よく考えたら「渡しの
本当は、「私の体、興味ある?」って言ったんだ!
それに気づいたとき、体中からばっ、と汗がいっせいに噴き出るような気がした。
それだったら、その後のやり取りは?
──僕は、彼女が僕に抱きついてるせいで僕の胸のあたりにぎゅむっと圧しつけられてる、彼女の大きめの乳房のことをできるだけ意識しないようにしながら。
悪い汗にまみれて、回想を続ける。
〉 有「興味、あるんでしょ?はじめて?」
〉 僕「ああ、興味ある。はじめてだ。これまで見たことなんてなくて」
〉 有「そうよね!見たことないんでしょう。──私でも、いい?」
〉 僕「ああ。見てもいいのか?」
うわあっ。僕、ギルティ。有明に体見せろ、って言ってる!
恐慌を深めながら、その先のやりとりを僕は思い出そうとする。
この間彼女は、しーくん嗅ぎたい、とか言いながら宙に目を据えたままの僕の首筋に顔を埋めている。
〉有「もちろんよ。見るのも、──もちろんしーくんになら、いい。
それと、触ってみたい、いろいろしたいって思わない?」
〉僕「あー、ペンライトで照らしてみても、いいかな? 割れ目とか、確認したくて」
駄目だ。僕、女の子のあそこをペンライトで照らして喜ぶ変態野郎じゃないか!
真っ白になった僕に、ようやく不審の念を覚えはじめたのか。
彼女が顔をあげて、心配そうに僕の顔を覗き込む。
白い首筋、そしてそのまま胸元に続く柔らかな曲線が視野に入り、僕は思わず上に目を逸らした。
「(しーくん、大丈夫?疲れちゃった?)」
「(いや、大丈夫なんだ。たださ、その。有明、──服は着てないのか?)」
頭のまわらない僕は、馬鹿みたいにまた同じことを尋ねる。
「(ふふっ、脱がせてみたかった?
それなら、着てこよっか?はじめて会ったときの服にする?)」
「(いや、いいんだ。でもさ、えーと。
ほら有明も、その、あー、好きな人とかうわっ)」
有明が再び、僕の首あたりに顔をおしあてて抱き着いてきて。
その細い体なのにすごい力でからみつく腕に、僕は生命の危機を感じる。
「(私、馬鹿だったの。本当に馬鹿!
でも、今日わかったの。私が、好きな人はしーくん。しーくんだけ。
ほかの男の人なんか、絶対に好きにならない!)」
有明がわずかに首を上げ。僕の顔の至近距離で紅くて大きな目を見開き、そう言いつのる。
下敷きになってる僕はほとんど、パニックだった。
僕が何をしたっていうんだ?
多賀島駅から迷子案内して、あー、それとさっきのおかゆとか?それだけで?
「(ねえ、だからいいの!
そんな顔しないでよ、しーくん。
しーくんが、本当はほかの女の子のことが好きでも別にいいよ、私?)」
──私は都会の女だし。芸能人だしさ。
いろいろ男の人との、ほら、──そういうのにも慣れてるし!
それに口は固いの。大丈夫大丈夫。ふたりだけの秘密にしよ?
なんかそういうことを、ささやきかけてくる。
僕は魅入られたように、彼女の逆らいがたく輝く紅い目を見上げながら。
ここを切り抜ける選択肢を、頭に思い浮かべてみる。
①僕が聞き間違えてて変なことを言った、と白状する。
──ダメだ。これやると、有明にすごい恥をかかせる、精神的打撃を与える。
有明って、メンタル不安定なんだよ。
いやまあ、ね?この選択肢を取れば、彼女はその場では恥ずかしがって、僕を家に帰してくれるかも。
でもその後で、──手首切るのは確実。彼女に手首にはリストカットの痕があるのを、僕は知ってる。
舌噛んだり薬飲んだりも、──可能性はある。
この選択肢は、取るわけにいかない。絶対。勘違いの存在を気取られてもダメだ!
②有明を大事にしたいから、今はいいよ、って説得する。
──きれいにまとめるなら、これが一見いいように思える。一見、ね。
「僕、有明のことを大事にしたいし。だからそんなに簡単に自分の体を安売りするなよ。また、ね?」とか。そんなところか。
たださ、なんか不吉な気がするんだ、この選択肢。
だってさ。紫藤や調布に、バレたりとかしたら?
(可能性はある、僕は有明りなをラピエスタにはいかせたくないから、調布に協力を求めるつもりだし。
そしたら有明と調布たちって、接触するだろう。そしたら隠しきれない)
絶対殺されるよ僕。調布に袋叩きされて、血まみれの肉塊になる。紫藤だって、きっと悲しむ。僕の心臓が止まる。
だから、ダメだ。
それにさ、そんな無責任なことを言って有明がますます変に拗らせたりしないか?って懸念もある。
今回だけ切り抜けても、その後、もっとハードモードになる。予後がわるい。
この選択肢も、取れない。
③わざとクズ男を演じて幻滅させる。
──これかなあ。真の本命は。
ほら、本で僕、読んだんだけど(○井康隆だったか、中島○もだったかな)。
すごい女癖が悪いけれど、女の人ときれいに別れることができる名人がいて。
たしか一緒に寝るときに、ねしょんべんするかウ○コもらすかするんだ。
最初は笑って許してくれてた女の人でも、2回、3回で愛想つかすらしい。
これは、アリだよ。
たださ。今、本当にガチギレされて、不可逆的に関係破壊するとまずい。出入り禁止とか。
ほら、有明をラピエスタへ行くコースからはずさないといけないからね、まだ軽い接触は保つべき。
屋敷の人に有明が怒られるようなことも、避けたい。
ちょっと懸念を覚えて、今回はやめとこう、くらいのクズぶりでどうかな?
はっきり言って僕には向いてない役柄。ほら僕、紳士だしさ。でも、やるしかない。
よしっ。
僕は心を固め、有明を見返す。
心配そうにあおむけの僕の上にまたがってかがみこみ、15cmの距離で覗き込んでた彼女が。
僕の目に輝きが戻ったのに気づき、「?」みたいな、けげんそうな表情を浮かべる。
あざとくかわいい。さすが芸能人っていうのかな、有明は顔はいいんだ。
なんか本当にすっきりしてて余計なものがない、甘めのロリ顔。
あー、でも、僕は紫藤が好きなんだからな。紫藤紫藤紫藤紫藤。
これ終わったら、明後日は紫藤に頭をひざ枕してもらおう。あのナマ腿に、頬をすりつけるんだ!
ふー、落ち着いた。
「有明、聞いてくれ。僕ってクズなんだ」
まずは、先制ジャブ。
悪そうな笑みも忘れず、頬に浮かべる。
「ほら、僕さ。えーと、──女の子、二股掛けてるんだよ。いや、三股」
ふと国領の顔が頭に浮かんで、言い直す。
あれ、ナギさんも──
「それって、──私を別にして?」
「うんうん」
よしっ。さすがにどん引きだろう。
しかし有明は、安心したように笑った。
「ふふっ、じゃあ私が四人目だね?
隅におけないね、しーくん。真ん中に置いちゃうぞ?」
うわっ。あっさりスルーされた。
芸能人の貞操観念おそるべし。ていうかそのギャグの感覚、おっさんやがな。
絶句する僕の胸に頭をこすりつけながら、彼女は続ける。
「もっとましな嘘つきなよ。だってしーくん、言ってたよね!
女の子の体、みたことないんでしょう?ふふ、可愛い!」
マジかよ、効いてない?嘘って思われてる?
いやいや、語る内容で引かせよう。
「だとしても僕、クズだからさ。
ほら有明の体だけが、好きなのかもよ?」
彼女の肩を両側からつかみ、僕の胸から少し、ごくわずか上半身を反らさせ。
彼女のバラ色に染まりつつある、白い首すじをみつめる。
そのまま、僕に押し当てられて変形してる胸にも視線を走らせる。
あえて顔をみないのが、キモさを漂わせるポイントだね。
ただな、胸の上(そして下にも?)縄目の痕みたいなのをみつけてしまって、僕のアレがぴくっと反応した。
「いいじゃない!私の体、好きなら試して?」
彼女は両手を僕の両側について、柔らかく上半身をいっそう弓なりにそらせて。
ほらほらこのお姉さんがいろいろ教えてあげるからさ、とか言ってる。
あー、クソッ。余裕ありげなあの笑み。完全、押し負けてる。
ちょっと僕は、むかっ腹が立ってきた。
夜も更けてて、なんていうか睡眠不足のバ○マラの鬱血を感じる。
少しは彼女に怖い、いや恥ずかしい思いをさせてみよう、と僕は決心する。
「ほら、僕って。有明にひどいことするかも。──それも、無理やりね?」
今度は彼女の肩から、手を離し。
僕の両側に突いてた彼女の両手首を、捕まえてぎゅっと固定して見せる。
もちろん、キモい笑みも忘れない。視線は顔に戻す。いやだって、胸とか見えてて、アレが勃ってきちゃって。
「あー、しーくん素敵!
そう、そんな風に強引なのもいい!」
彼女は一瞬、やはり怖かったのか身を固くしたが。
上半身をまたおろし、僕の胸に小さく形のよい頭を寄せてきて、シャツ越しに唇を圧しつけた。
駄目だ、話がまるで狙う方向にいかない!
僕は腕から力が抜けるのを感じた。
「大丈夫。そんな悪ぶってみせなくていいの。
ほら、まず、みてみる?それともさわってみたい?」
有明は、力が抜けた僕の腕から、手首を抜き。
姿勢を変え、服を着たままあおむけに寝てる僕の上にまたがり直した。
(いわゆる『騎乗位』の姿勢だと思ってくれていい。)
彼女は、肌掛けを掛けてただけで裸だったので。
一気に彼女の白い肌が、常夜灯の下にあらわになる。
小さめの顔と同様、どちらかというと小柄で華奢な有明りなの体格。
だけど水泳選手みたいに、柔らかで滑らかな手足は適度にしなやかに、しかしぷりっと張っている。
胸も、意外に大きい。すっきり引き締まったお腹、くびれた腰。
他方で、その彼女の肢体にはあちこちに打撲傷や擦過傷がある。
胸の上下や首に残った、縄の痕。みぞおちのあたりに貼ってある湿布。
それ以外にも手足には、ところどころに湿布が貼られ包帯が巻かれてある。
さっき僕がつかんだ手首にも、リストカットの痕、そして縄で縛った後。
その痛々しさに、どういうわけか僕のアレがますます反応して。
上に乗った彼女のお尻を、押している。
「いろいろ、包帯があったりしてごめんね。痛くないから、気にしなくていいよ。
──ところでさ、しーくん。これって?」
僕の分身の興奮ぶりに気づいた彼女は、腰をずらし。
小悪魔的な笑みを浮かべながら片手を後ろに回して、僕のソレをつかんだ。
ますます、固くなる僕の節操のないアレ。
「しーくんが興奮してくれてる!
私も、嬉しい」
なんか妙なことを口にしている彼女は、騎乗位の姿勢を崩し、僕の上にのっかるようにまた抱き着きなおし。
胸のあたりに顔をうずめ、すーはーとして、あー、しーくんの匂いだ、などと口走っている。
熱い、僕にまたがった彼女の股の感触。
「ん、んんっ。私、幸せ」
僕は腹を固める。
芸能人らしく口も達者な彼女に、レスバでは勝てない。
物理的に、適度なクズプレイでわからせるしかない。彼女が引くような内容の。しかし引きすぎない程度の。
その微妙な加減に思い悩みつつ、僕は口を開いた。