タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
(紫藤みなり視点、樋木崎山中の御前様の山荘、土曜日夜)
ふぁー!やりきったよ!
午後8時すぎ。
下屋敷にも、簡単に案内してもらったり。
(下屋敷は、小さな集落をまるごと御前様が買い取ってるんだ。普通の奨学生の寮があって、提携先の私立学校へ通いやすいように通学用マイクロバスまである。来学期からは、わたしも通学するために、これに乗っていくことになるのかな?)
御前様たちへの晩餐の給仕も、無事に終え。
(今回はなぜか男前のテドさんはいなかった。)
お掃除の手順なども、教えてもらい。
(ある程度は外注してるみたいだ。そこまで負担は大きくない。)
いろんな手順をつめこまれて。
(まいらさんの方もまだ把握してなかったりして、側用人様に注意されてた。)
ともかくも見習い実習の初日を、わたしはほぼ終えた。
側用人様に先導されて、とある一室に移動する。
廊下で側用人様の背中を追いながら、優雅さを失わないように、わたしはかるく腕をまわしてみる。
やっぱり緊張してたのかな、すこし肩がこってるよ。
部屋に入る。おつかれさまでした、と側用人様が言ってくれたので、わたしは側用人様に、教えられたように礼をする。
「さて、今日はよくがんばりましたね。
給与は、先にご案内のとおりすべて現金、手渡しです。毎月〆めで翌月10日にお渡しします。今月だけはまだ研修期間ですので、1日あたり5000円で日割り計算します。
それ以外に、御前様からのチップがあります。これも支払い方法は同じで、領収書なども不要です。
今日の分のチップは、これですね。お渡しします」
側用人様から、現金入り封筒を押し戴く。
うれしい!ついに自分のお金で自分のものが買えるようになるんだ、志野くんにも、お金を返せるようになる!
ありがとうございます、と勢いこんでとお礼を言う。
みていいか確認したうえで、なかみを確認する。
「武士道」の人の、眼鏡ごしのどこかかわいいつぶらな目。
研修1日だけなのに、大金だよ!
わたしの笑顔に、側用人様も笑ったように口の端を引きあげて頷いた。
わたしは、実は側用人様のことがすこし苦手に感じることがある。
側用人様は、何も考えずにみていると、すごく温厚で丁寧で仕事の教え方とかも上手だ。
ただ、何を考えているか分からないんだ。こういうときも、側用人様は笑ってるようにみえる。でも、本当に笑ってるわけじゃない。目が笑ってない。
口の端を引きあげ、目をすこし細めているだけなんだ。
いや、それが笑顔ってものだよね。そう、なんだけど。
つくり笑いでも、もう少し笑顔っぽいと思う。どうしてだろう、前も一度同じことを思ったけど、わたしにはどこか側用人様をみていて、ロボットが人間の表情の作り方をまねてるだけをみているような、ひどく無機質な感じを受けるんだ──。
でも、それはわたしがまだ側用人様に慣れないだけなんだろうな。
まいら先輩も側用人様のことはすごく尊敬してる。ちゃんと教えてくれて、間違ったら罰して直してくれる、って。──あれ、罰って?
「さて、侍女と侍女見習いの受ける罰についても教えておきたいと思います。」
「罰、ですか」
側用人様が、ちょうどわたしの考えていたことをしゃべり始めたので、わたしは姿勢を正した。
「はい。間違ったことをしたとき、罰を与えることがあります。
まいらがもうすぐ来ます。まいらが来たら、ちょっと実演しましょう」
側用人様が、感情の読み取れない笑みを浮かべ。
わたしは、すこしぞくっとした。罰を?まいらさんに?
「とはいっても、そこまでこわがることはありませんよ。
侍女は責任が重いので、罰を受けることも頻繁にありますが。
紫藤みなりさんは侍女見習い。小さい罰はありますが、大きなものはありません。
今日のようにやっていただけたら、大丈夫でしょう」
罰。でも、罰。罰金とかだろうか。
年取った先生の社会科の授業で、昔の工場は何かと難癖をつけて労務者から罰金を取り上げたので、お金がほとんどもらえなかったと聞いたことがある。
嫌だ。せっかく稼いだお金を取り上げられるなんて!
「まいらも、紫藤みなりさんに見られるのは困るかもしれません。
こちらから、隠れて見ていてかまいませんよ」
わたしたちがいたのは、おそらく側用人様の居室の近くの作業室めいたスペースだ。
部屋の片隅にカーテンつきのベッドがあったりして、なんとなく病室みたいな雰囲気もある。
その病院ベッドのことを、側用人様は言っているようだ。
「さて、今日はこれを使いましょうかね」
側用人様の言葉に従ってそちらをみる。雑多な家具いろいろと並んでいる。中には、体育の授業用か何かでおなじみの跳び箱もある。
側用人様は、部屋の隅から頑丈な黒光りしている木の枠のようなものにあゆみよった。
四角い、高い枠。いちばん上の枠は、2メートルを超える。
その枠の中央付近に、木の分厚い板が嵌っている。この木の板の高さは、調節できるみたいだ。
そしてその木の板に大小の穴が3つ(中央が大きい穴で両側が小さい穴になってる)がならんでいる。
この木の厚板は、ちょうど穴の開いているところを境に、上下に2つに分かれる構造。2つに分かれるように開いて、その穴に何かが挟めんで、そしてまた閉じる、という使い方なんじゃないかな、とわたしは思った。
穴の高さは、わたしのお腹から胸の高さくらいだろうか。
わたしはこの器具のことを、千里のコレクションの昔の小説のさし絵か何かでみた覚えがあるような気がするんだ。
たしか、罪人をさらす台じゃなかっただろうか。なんで、こんなものが──。
結構重たくみえるが、この器具を小柄な側用人様は軽々と引っ張り出してきた。
そのとき、廊下で足音が近づくのがきこえた。
「ちょうど来ましたか。ではみなりさんはそのベッドスペースに隠れて、カーテンのすきまから、まいらが罰を受けるのをみていてください」
わたしはなんかすごくまちがったことをしてる気がしたけれど、側用人様の言葉どおりにベッドのある、カーテンで仕切られた一角に隠れた。
ベッドはくらがりにあるし、カーテンは厚地で光をとおさないもの。床まで隠すようになっていて、しっかり隠れられるだろう。
ノックの音があり、側用人の許可を受け、まいらさんが入ってきた。
清楚なヘッドドレスに、青に白のエプロンドレス。わたしと同じデザイン。
だけどまいらさんのぱつぱつに大きく盛り上がった胸、コルセットが似合うくびれた細い腰と大きなおしり、そして肉感的なしっとりしたふくらはぎのせいか、なんだかとっても妖艶な感じがする。
同じ女なのに、みててどきどきする。男の人は、きっとこういうえっちな雰囲気のある女の人が好きなんだろうなー。
そう思って、わたしは心ひそかに敗北感を感じる。
ちびのわたしは、あんな感じをかもしだすのは不可能なんだよ。
もしわたしがあんなに大きな胸をしてたら、志野くんをしっかりがっちりわたしの魅力でつかまえられるだろうに。神様は意地悪だ。
そんなことを考えているうちにも、まいらさんは入ってきて、丁寧に側用人様に一礼する(腰を折って頭を下げるというより、膝を折って身を沈める感じ)。
「今週分、こちらですね」
封筒をまいらさんは再度、受け取っている。だが、まいらさんは笑みを浮かべてるけど、なんだかこわがってる感じで。
ちらっ、と側用人様の出したギロチンめいた木枠に目をやった。
「さて、まいらは今週、いくつかの過ちがありましたね」
「──はい」
「まず、あの来賓のみなさまがきたとき、──」
いくつか、おそらくわたしが知らないところでまいらさんが失敗してしまったことを数え上げる。まいらさんは「はい」「はい」と消え入りそうな声でその一つ一つに答える。
うわあ。まいらさん、結構失敗多い──。
気の毒には思ったけど、結構粗忽なミスもあるのがわたしには印象的だった。
「それでは、12回ですね。今日は、それを使いましょう」
「──はい」
まいらさんは側用人様に促されて、その木枠に歩み寄り。
側用人様が3つの穴があいてる厚板の上部を、ぱか、と開けると、その3つの穴のうち中央の穴に首を、両側の穴に両手首をあてがった。
「閉めますよ。頭を上げないように」
側用人様が木枠の上部を戻し、まいらさんの両手首と首が、木枠に固定された。
わたしの胸くらいの高さは、まいらさんには低い。
まいらさんは、ちょっと不自然に、腰を大きく曲げた姿勢になってる。
「さて。まいら、目隠しをしますね」
まいらさんは、黒革の目隠しを嵌められた。
「口は、どうしますか。
「──そのままが、いいです」
ばしっ。側用人様が、平手でまいらさんの突き出されたおしりを叩いた。
「『そのままでお願いします』ですよ、まいら。
──はい、言ってみてください」
「そのままでお願いします」
「よくできました」
目隠しをされたまいらさんだが、笑みが口元に浮かぶのをわたしはみとがめた。
こういうところでも、まいらさんは向上心があるなー、とわたしは感心する。
「それでは、はい、背中をもっと反らして、腰をもっと突き出す。そうです」
側用人様の指示に従い、まいらさんが姿勢を変える。
結構、不自然な姿勢なので疲れるのかもしれない。まいらさんの頬に、赤みが濃くなる。
「まくりますよ。ほら、腰を引かない」
まいらさんが、固定されてあまり動かせないけれど頭を下げ、後ろで一つ結びにした髪がゆれた。顔を伏せたいって思ったんだな、あれは。
側用人様は、まいらさんのエプロンドレスのスカートをまくってしまう。
不思議の国のアリスのような、紺のワンピースのエプロンドレス。突き出したおしりを出し、腰のあたりまでまくる。
まいらさんは、白いひざ上のちょっと古風なストッキングを着けている(光沢から、シルクか少なくともシルク混だと思う)。ストッキングは、ガーターベルトで吊る形式。
まいらさんのむちっとした美脚に、ストッキングはわずかに食い込んでいる。
下着は対照的に黒。カットが深いというか、紐式の、大人っぽいデザインだ。
ガーターベルトは、下着の下につけるんだ、ってわたしは知った。
「外しますよ」
ストッキングを外すのかと思ったけど、側用人様はまいらさんの大人な下着のをためらいもなく解いて外す。
白くぬめっとしたなめらかな大きなおしりが露出して。わたしは思わず息をのんだ。
ありうるとすれば、さとみんより大きい。
さとみんは健康的だったけど、まいらさんの方はより脂が乗った感じで色気がすごい。
「12回ですね。数えなさい。1回」
「1回」
ばしっ、といつのまにか側用人様が持っていた鞭が振られた。
一本鞭ではなく、
「2回」「っ、2回」
まいらさんが打たれるたびにびく、びくっと反応する。
それをみて、わたしはいつのまにかちょっと変な気持ちになっていた。
──わたしも、あれをしてもらいたい。志野くんに、してもらいたい。
「4回」「4回」
「はい、もっと高く。そう」
まいらさんの白い、百合みたいな印象の鼻筋の通った派手めの顔が、はっきり紅潮してきてる。
側用人の命令に従い。まいらさんの、おしりをつきだす角度はさらに高くなった。
「5回」「ご、かい」
ぴちっ、と側用人様がまいらさんの白いおしりを鞭でなく手でたたいた。
まいらさんが、びくっとして、体をくねらせた。たぶん顔を側用人様の方に向けようとしたのだけれど、板枷と目隠しのせいでどうせ見れない。無駄なことなのに。
まいらさんのむきだしにされた下腹、腰、そしてふとももの肌は、ぬめぬめとぬれた質感をおびてきている。
「ちゃんと言いなさい。やり直しですね。
──5回」「5回」
側用人様は、満足そうに頷いた。ふしぎに、この時は側用人様に少し感情がみえた。
わたしは、なにか大事なことに気づけそうな気がした。側用人様は、わたしと同じ──?
なんでそう思ったか、まだ考えがまとまらない。
「まいら。ちゃんと、練習はしていますか。6回」
「6回。はい、側用人様。お風呂の後、やってまっす」
ばちっ、と今度は側用人様が、むっちりした脂肪が乗った白い太腿を叩いた。
まいらさんの肌の音がたてる音が、少し湿ったものになってきている。まちがいない。
「『入浴後、やっています』ですね。はい」
「にゅうよくご、やっています」
まいらさんは、決して頭がわるいわけじゃないけど、すこし注意が逸れがちなんだ。
まいらさんの家庭学習(?)にちょっとつきあったわたしは、それを知ってる。
たぶん、まいらさんの注意は側用人様の言葉に向かってない。別のことに向かってる。
いま、まいらさんが発した言葉も、側用人様の言葉をただ機械的にくりかえしただけだ。意味をちゃんと理解してない。
ご褒美をねだるように、まいらさんの腰が左右に振られた。側用人様がそのおしりを撫でると、ぞくぞくっ、と喜びの震えがまいらさんの体に走るのが、わたしには手にとるようにわかった。
だけど、側用人様にはそれがわからない。
側用人様は、ただ教え子の教育に満足しているだけなんだな。
──志野くんだったら、だね。
わたしの志野くんだったら、そうじゃない。
志野くんはきっと、もっともっとわたしを厳しく責めて、そしてごほうびをくれる。
わたしの手が、知らないうちに胸を押さえた。どきどきしてる。
指が胸の先端、ちょっと尖ったそこを押さえて、わずかにあまい感覚が走ってわれにかえった。
いま、わたしは何を考えてた?
「今度は、何回目ですか?」
「──わからないです」
ばちっ。側用人様は、さっきとは違う方の足のふとももを叩いた。
「『存じません』です。まいら」
「ぞんじません」
「よろしい」
また、なでなで。
ふるふる、とまいらさんのおしりが揺れ、目隠しをしたまいらさんの鋭角的な美貌がのけぞった。
「次で7回目です。はい、7回目」「ななかいめ」
機械的なカウント、そして復唱。
側用人様の鞭で打たれるまいらさんは、体をねじるように動かす。
しかし板枷は、まいらさんの動きをゆるさない。まいらさんの口が開いて、激しく息をついた。
「10回目」「じゅっかいめ」
「後、何回ですか」「──わからな、わかりません」
「全部で、12回です。今、10回です。残りは何回ですか」「に、2かいです」
「ちゃんと覚えて。脚を広げなさい」
まいらさんが、長い脚を広げた。
側用人様は、その間を打ち上げるように鞭で打った。
「11回」「あひゃん!じゅういっかい」
「やり直しですね」
まいらさんは、もう口を閉じていられない。激しく、犬のように口で息をしている。
「11回」「っ、じゅう、いっかい」
「12回」「じゅう、にかい」
「──まあ、いいでしょう」
側用人様はそう言うと、ごそごそ、とまいらさんのガーターベルトをいじり、はずしてしまった。
ピンクにそまったなめらかな曲線があらわになって、わたしはおもわずごくん、とつばを飲んだ。その音がきこえてしまうんじゃないか、って思った。
(じっさいにはまいらさんが夏の犬みたいにはぁはぁと息をついてたから、そんなことはない。)
側用人様は、傍の台に置かれたおしゃれな小さな容器を手に取った。
「動かずに。すぐ塗り終わります」
側用人様は、その容器からクリームをとり、丁寧にまいらさんの露出した下腹、腰、おしり、そしてふともも、つまり露出した部分に丁寧に塗り伸ばした。
まいらさんの開いたままの脚に力が入るのがみえた。側用人様の指が、まいらさんの脚と脚の間にはいりこんだときに。
ぬりおわると、側用人様はもとどおりにガーターベルトを着け、紐式のショーツをまいらさんに嵌めた。
「はい、今日は終わりです。来週は気をつけなさい」
「気をつけます、側用人様」
まいらさんの首と両手首を拘束していた、板枷がはずされ、まいらさんは上半身を起こした。ばさっ、とスカートが腰から落ちた。
ちょっと背伸びして側用人様がまいらさんの目隠しをはずす。まいらさんは自分でもはずせるはずなのに、恍惚としたように側用人様の手がはずしおわるのを待っていた。
「それでは。あと、今日も御前様の寝所に上がりなさい」
「はい」
まいらさんはどこかうるんだ目で、軽く腰を沈めるお辞儀をして、部屋を出ていった。
側用人様は、丁寧に雑巾で使い終わったばかりのギロチン風の板枷を拭い。
そしてまた不相応なほどの力で、元にあった場所に戻し、そしてわたしに顔を向けた。
「みなりさん。もういいですよ」
「はい」
答える声が、喉にからんで、我ながらすこしうわずっていた。
「まいらは見習いではなく、もう、奉仕してお給金を支払われている、一人前の侍女です。
だから、いろいろな責任もとらせています」
「──責任」
「はい。仕事の責任、その失敗の責任、お仕えする責任、──いろいろな責任です」
──わたしも責任を負って、失敗したらああいう風に鞭うたれるのだろうか。とわたしは思った。
もしセクハラみたいなのをされるのなら、イヤだと思ってた。
(いまでも、イヤだよ?だってわたしは、志野くんのものなんだし。)
でも、さっきのまいらさんは、決して嫌悪とか恐怖とかだけじゃない感情を持ってたように、わたしにはみえた。
わたしには、それがわかった。まいらさんは、たしかに側用人様を恐れてた。こわがってた。
でも同時に、まいらさんは待望してた。
もしかするとまいらさんは、側用人様のことが──?
そう思うのは、自分におきかえてみたらわかるからだ。
ちょっと立場を変えたら。つまり、側用人様を志野くんに置き換えたら、じつによくわかる。
だってさ、わたしはもし志野くんが命令したら、よろこんで──
わたしは、板枷をみつめた。
今は、丈の高い鏡台やぶらさがり健康器とかと並んで、まるでまいらさんを淫靡に拘束してたのがうそのように、高級家具のような静謐なたたずまいをみせている。
「安心していいです。しばらくは、今のまいらのようなぬ責任まではとらせません。仕事の責任も、最小限です。
ただ、大きな失敗をしたら、多少叩くことはあるでしょう」
「叩く、というのは、鞭でですか?」
「いえ、手ですね。あのような道具もつかいません。
あそこにつかまってもらって、」
側用人様は、わたしが少し不思議に思っていた、跳び箱を指さした。
「──お尻を叩かれることになりますね」
「はい。気をつけます」
しかし頭の中で、志野くんがわたしを罰するさまを思い浮かべてみて。
わたしはすこし、心がときめくのをおぼえた。
もちろん、わたしはそれ以上に、その、すごく痛くてはずかしいことをされている。いろいろと。
でも、こうしてあらためて罰を宣告されて受ける、ということに、また違う種類のどきどき感をわたしはおぼえていた。
「それでは、部屋に下がってかまいません」
ありがとうございます、とわたしはさっきのまいらさんをまねて膝をわずかに曲げるお辞儀をして、側用人様のもとを辞した。
──────
部屋にもどっても、わたしの心の中の微熱(笑)は、いっこうにさめてくれなかった。
お風呂にはいるとき(きょうはまいらさんとはお風呂でいっしょにならなかった)、わたしはお風呂の水面すれすれ、あるいは少し沈んだ位置にある、わたしのひどくひかえめなふくらみをみつめた。
左右に意味もなく視線を走らせたあと、わずかに赤面したわたしは。
おずおずと自分の胸の先端をつまみ。力を込めた。
「ふわんっ」
なんとなく情けない声が、おもわず口からもれてしまい。
わたしは赤面し。また、わたし以外は無人の浴槽の左右に視線をはしらせた。
はずかしい。誰もみてるわけじゃないってわかってるけど、はずかしいよ。
そして若干の試行錯誤のあと、わたしはわかりきった結論に達した。
──わずかに甘やかな、気持ちよさの感覚は得られたけれど。
これは、たりない。志野くんに、責めてもらったときみたいじゃない。
その後、まいらさんをまねて高級化粧水で肌をお手入れして、はみがきをして、鏡の中の自分におやすみのあいさつをした後。
快適な涼しさの部屋で、タオル地の肌掛けにつつまれながら、わたしは思索をめぐらせた。
──側用人様は、まいらさんを責めてるときにだけすこし人間的だった。
なんだか、似てる気がする。わたしと。わたしが、志野くんにいろいろしてもらってるときと。なにが同じなのか、よくわからないけれど。
しょうがないな、また月曜日だ。さとみんとも志野くんともハルカちゃんとも、いろいろはなしたいことがある。
でもとりあえずは、明日だ。まだ明日がある。
明日もがんばって、志野くんのためにとっておかなきゃ、──何を?
何をとっておくんだろう。
もうすごくねむかったわたしは、そこまで考えをつめきれずに、ふわふわとそのまま眠りの国にいざなわれていったのだった。