タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
第三者(中河原桜ほか)視点→志野視点→第三者視点です。
(第三者(中河原桜)視点、自宅、日曜日朝)
「──起こしてくれても、よかったのに」
「そんな暇、あるわけないでしょ!」
すこし寝坊した彼女、中河原桜は。
もそもそとダサい中学時代の体育ジャージに寝癖とアホ毛満載の状態で起きだし。
ついさっき彼女宛にきたという電話のことを出勤前の母親の口から知った。
またも、すれちがってしまったらしい。
「ほらもうこんな時間!お母さんは行くから、朝は自分で食べてね。じゃあね」
あまり余裕のない家計の足しに、と。
母親は、土日もパートタイムで量販店での仕事を入れている。
出ていく母親を見送り。桜は、自分も働いた方がいいのかなー、などと考える。
進学校なので同級生でバイトしてる子はいないし、行動的な方でもない。
だから親のすねをかじっている身分のわけだが、──心細い。
──大学には行かせてくれる、って言ってくれたけど。
奨学金、とれるかな。それとも、バイトで学費稼ぐしかないのかな。
そんな思いを、彼女はぼんやりと抱く。
成績は悪くないが、あまり主体性のない彼女は、将来のビジョンなどまだ持っていない。
芸術系の大学なんて無理かな、──なんて考えも、もてあそんでいるが。
きっと彼女より才能のある子なんていくらでもいるだろうし、絵描きさんってお金を稼ぐのは難しそう。
──私だけにできる仕事で、高給。そんな仕事ないかな?
そんなうまい話、ないよね。
じゃあ、私を専業主婦にして養ってくれるお金持ち、とか?
高望みしすぎ?じゃあ、──愛人とか?
うーん、なんだかいまいち男の人と、──
まともに男の子と話したりしたことすら、あんまりないしなー。
やっぱりみーちゃんたちって、すごいよ。
だって、もう許婚者がいるなんて、さ?
だいたい私みたいなモサ子、好きになってくれる人なんていないかもしれないし。
私より美人で女としての性能のいい子なんて、たくさんいるしなー。
それに根取くんたちみたいに不潔で意地悪な男の子なら、一人のほうがましだよ。
まともな男の子って、でもよりどりみどりだよね。選ばれなかった女の子たちって、がまんできる範囲で妥協するのかな、──
私が、妥協するとしたら。あー、うー、まあ、志野氏レベルくらいなら?
彼女は一人でトーストにマーガリンを置いて焼きながら、電話の主について思いをめぐらせはじめた。
そう、逃した電話は隣のクラスの男の子、志野氏からのもの。
一昨日(金曜日)、彼女は自分の体験をこの志野氏と共有した。
志野氏は清潔感のある外見なのだが無口で視線が怖いし、一部では女癖が悪いという噂もある。
(事実、同じ部活にいる学年きっての才女、調布智美がこの志野氏に懸想していると彼女は知っている。)
でも話してみた体験からも、志野氏は穏やかだし、そんなに悪い人じゃないと彼女は判断している。ただ、彼の視線は彼女にも関心ありげにまとわりついてた。女好きなのは、たしかだ。
ただやはり彼は忙しいのだろう、すぐ電話すると言っていたが。
話した当日(金曜日)にはよふかしして待ってたのに電話がなく、その翌日(土曜日)には彼女の方から電話をかけたが、彼は不在。
今日(日曜日)には、彼がかけてきてくれたらしいが、桜が寝坊。といった状態だ。
土曜日の調査で、美鷹の失踪にかかわっているかもしれない巨大な猿、角猿についてしらべたことや、しかも最近知り合った天才子役とも接点があっておかしくないこと、を言おうと思っていたのに。
なかなか、意見交換ができない。
桜の考えでは、彼女自身を除けば、志野氏は美鷹と最後に
人さらいかもしれない変態を二人で出し抜いたり、占い師に一緒に占ってもらったり。
(そのほかの人、美鷹のクラスメイトや習い事の先生にも確認したが、それほどの印象的やりとりはない。)
美鷹がそんなに特定の男の子を近づけることは、とても珍しい。その後の破綻も。
ここに、失踪の鍵がある。
ありていに、桜の推測をいえば。
何かの危険に気づいた美鷹が、その危険から遠ざけるためにあえて彼に対して別れを宣告したのではないか*1。
彼女の親友である吉祥寺美鷹が失踪して、彼女は彼女なりにいろいろと捜査を進めてきたが。
彼女自身が目撃した、角のある巨大で好色な猿。それが一つのてがかり。
もう一つのてがかりが、あの占い師。
猿の捜索は、今の段階ではやや手詰まり気味。ただ、調査は続行する。
行き詰まり打開のため、彼女はその占い師の館をも訪れようと考えている。
(──心細いな)
知らない、って冷たく追い払われてしまいそうだ。
それに占い師の館は、非常に治安の悪い繁華街の裏手にあるという。怖い。
彼女の外見は図体こそ大きめだがちょっとポヤポヤした感じ。よく絡まれる。
(でも、みーちゃんのためだ。がんばらなきゃ)
でも誰か、ボディガードが欲しい。
こんな雲をつかむような話に、つきあってくれそうなお人好しって、──
(それこそ、志野氏だよ。
志野氏にも、責任の一端がある。客観的にみて、重要参考人の一人だよ。
たぶんそうじゃないけど、志野氏が変なことを言ったからみーちゃんが傷ついたのかもしれない、って言えば、責任を感じてくれるだろう。
その事情聴取を兼ねて、ってことで。こっちから、もう1回だけ電話してみよう)
彼は、見た目はなんかとっつきがたいところもあるが。
なんだかんだ言って、彼女は彼から冷たくあしらわれたことはないし。
昨日図書館で調べた、角猿についての情報も提供したい、って言えばそんなに無下にはされないだろう。
彼女は、電話に手を伸ばし。教えてもらった電話番号を、おそるおそるダイヤルで回してみたのだった。
──────
(志野視点、自宅、日曜日朝)
僕が1回目で死んだ(多分)頃には、もう電話はだんだん忌み嫌われる感じになってきてて。
すべてをメールですまそう、って風潮が強くなっていたのを覚えている。
(むりもないよね、電話、なんか圧迫感あるし。だいたい相手の事情なんてまったく考慮せず対応をせまるし。)
その時代のことを覚えてるうえに、電話先との苦い未来の記憶がある僕は。
僕が掛けた長距離電話に誰も出ないことに、どこか心残りもありつつ、他方で少しほっとして受話器を置いた。
母親が台所で朝食を用意してくれているからね、相手が電話出てもあまりしゃべれない。相手がでたとしても、大丈夫かだけ確認して切るつもりだった。
空腹の胃袋が、くう、と鳴った。匂いからすると、アジの開きとごはんと味噌汁くらいかな?
僕が電話を掛けた相手は、僕の「1回目」で、東京の大学にいた頃、交際した唯一の異性。
短いながら、思い入れがある。──思い出すと頭をかきむしって叫びたくなるような恥ずかしい失敗もしたし、頭にくるようなことを言われたりもした。
ただ、今はあまり考えない方がいいだろう。今、僕がなんとかしたいのは紫藤だ。
とりあえずの安否確認はできなかったけど、また時間をみはらかってやればいい。
でも紫藤は月曜日まで会えないんだ。調布とも、約束はしてない。
今日は、ぽっかりと開いたフリーの一日だ。
最近はぎっしり予定をつめこんでいたから、多少は休んでもいいかもな。近く姉も帰省してくるけど、──
ほうっ、と息を吐いたときに電話が鳴りだし。僕は心臓から口が飛び出そうになった。
「──はい」
1コールで取る。名前は名乗らない。だってもしこれが、東京の「1回目」の彼女だったら、──?
(『1回目』と違い、この『2回目』では彼女はまだ僕のことを知らない。
僕に電話なんてかけてくることはあまり考えられないのだが、僕はそれを一瞬失念していた。)
「もしもし。おはようございます。志野さんのお宅でしょうか。」
ちょっと低めの、名乗りすら上げず電話に慣れてないのがまるわかりの固い声。これは。
「もしかすると、中河原さん?志野です」
かちゃかちゃ、と台所で食器の音がする。父親が新聞を読みながらなにか世評じみたことを母親に向かって言っている。
僕は受話器の向こうの声に、集中しようとする。
「あ、志野さん。ちょっとお願いしたいことがあります」
社会標準というか常識から微妙にはずれた、独特のペース。さすが、スイカ○プの中河原さんだ。
ただ僕は、この彼女の変人ぶりが嫌いではない。自分がまきこまれて被害を受けてない場合は。外見もわりと好みだし。
なんとなく人さみしい思いをしていたこともあって、なんですか、と僕は応え、彼女の声に聞き入る。
彼女の要求は、要はあのESSの先輩を捜すのを手伝え、ってことだ。
正直、先輩が失踪して、先輩が何かに悩んでたこと、だから僕にあんな態度をとったことにも、なにかしらの事情がありそうなことは分かったけど。
やっぱり、ずしっと心臓に来るものがある。思い出すと胸が痛いんだ。
「ダメですか」
単調な声が、僕に確答をせまる。
「あー、ダメってわけじゃ。でも僕、適任ともいえないし。えーと、それに、──」
「志野さん、何か見返りが必要ですか。
ええと。──触るくらいなら、していいですよ」
ぶほっ、と僕はむせた。けほけほ、と喉に入った唾を出しながら。
僕はしみじみと、変人というのはこちらが被害を受けない限りで許容できるものなんだな、と感じ入っていた。
だいじょうぶー?と母親がこちらに近づいてくる気配がする。
かろうじて詰まった声をふりしぼり、電話中!大丈夫だからっ!と言って止めた。
「こほん。あー、中河原さん」
「はい」
電話の向こうからの声は基本、起伏に乏しく、僕は彼女の感情を測りかねた。
「まわりに、他の人はいる?」
「いません」
ほっ、と僕は息をついた。まったく、向こうの親に聞かれたらどうするんだ。こっちの親も。
僕は音漏れがしないように、受話器をぴったりと耳に押し当てた。
「あのさ、そうだね、──そのことについて、会ってから話そう。ね?」
「はい」
この際、僕のおっさん力(?)で彼女に常識なるものをこんこんと説教してやる。
僕は、そう決心した。
「午前か午後の一方なら、空けてもいいよ」
「ありがとうございます。じゃあ、──午後、いいですか」
「午後1時、学校正門。それとも、家の近くがいい?僕は鳥兜団地なんだけど、──」
「私は、
「じゃあ、たとえば、──」
「私、学校にも用事があります。学校でも、いいですよ」
──まあ、いいか。
脳内シアターで無人の教室の椅子に彼女を座らせ、しょんぼりとして軽く背を丸めた彼女を想像し。
さて、どう説教してやろうか、と思いをめぐらせる──なんか、楽しみになってきた!
「じゃあ、1時正門で」
「はい。それでは」
受話器の向こうで、電話が切れる。
そこで母が朝食の準備ができたと呼びかけたので、僕も受話器を置き、台所に向かうことにしたのだった。
──────
──────
(中河原 桜視点)
電話を置いた彼女は、ふかぶかとため息をついた。
やっぱり、怒らせてしまったのかな。人に頼みごとをするのは、苦手だ。
ただ、彼を午後、予約できたのはラッキーだった。
それなりの対価が必要となるとはいえ、やっぱり男手が欲しい。
(対価。『見返り』って言っちゃったけど、どのくらいのことされるんだろう)
桜は、自分でも奥手な方だと思う。
外見が地味なこともあるし、また意図せずただよう、男の人が苦手だという雰囲気から。
クラスの男子たちとは、ほとんど交流はない。
外だと、わかりやすく際立つ美少女である美鷹がいっしょにいると、ふたりに声をかけてくる男の子もいるが。
たいていは美鷹がうまく出てかわしてくれる。それで、どうにかなってきた。
ただ、その頼りがいのある美鷹が今回は失踪している。
親友である美鷹を救うためには、桜もそれなりの犠牲を払う覚悟はある。
だから、志野氏を釣るのに自分の体のことを言及したのだ。
桜は吉祥寺美鷹と違い、相手が悪人かそうでないかを見分けるセンサーなどは持っていない。
ただ、吉祥寺美鷹が彼に心を許していたことからすれば、彼が芯からの悪人である可能性は非常に低い。
他方で志野氏から自分を含む女の子たちへの、胸や脚へのねっとりとした目のすみからの視線や。
彼女のクラスにすら伝わってくる、二股いや三股野郎であるという彼にまつわる噂からすれば。
淡泊な外見ながら性的欲望が強いであろう彼が、なんらかの餌を出せば釣れるのではないかという桜の推論は、どうやら的を射ていたようだ。
(何、されるんだろう。胸、揉まれたり吸われたり?もっと?
──どうしよう、どきどきしてきちゃった)
下着くらいは、みーちゃんに先々月、誕生日プレゼントでもらったおしゃれなやつに履き替えよう。
さすがに今着てる、ほつれまくってるのを見られるわけにはいかない、──と、彼女はそう思った。
──────
気をとりなおした桜は、寝巻ジャージから、運動しやすく虫にも刺されにくい外出用ジャージに着替え。
(彼女はジャージが至高の服だと思っているが、美鷹とはこの点で見解が一致していない。
美鷹は彼女におしゃれな服を買い与え着飾らせたがり、失踪前には買い物に行く約束をしていた。)
志野氏と落ち合う前に、少しだけでも捜索を進めることにした。
桜が赴いたのは、あの有明りなという元天才子役と別れた神社。
彼女の家から近くだ。歩いても7、8分、自転車ならものの3分くらいで到達する。
彼女の高度な記憶力は、この神社にあの猿がいたのではないか、──と推論している。
その後に降り出した雨で、猿の形跡はかなり流れてしまってるだろう。
それでも、確認しない手はない。
買い物用の安価なママチャリを停め、境内に入る。
夏の強烈な陽射し。しゃーしゃーという蝉しぐれの下。
玉砂利を踏みながら、彼女は境内を検分する。
雨風でやはり、少しは状況が変わってしまっている。
だが目を軽く閉じ、頭の中で対比させると、──猿のいた形跡が、浮かび上がってくる。
(こっちだ)
彼女は境内から続く細い山道に、足を進める。
そして彼女は、別の足跡を認める。
(有明さん、本当にこっちに家があるんだ!
進んでいった足跡があるよ)
有明りなの足跡。そして、それを追うように巨大な猿の足跡が続いている。
途中でおそらく、樹木を飛び移ることにしたのだろうか。足跡はとぎれとぎれだが、木のないあたりはあたりまえだが地面に降りて歩いている。
小さい運動靴の有明りなの足跡と、大猿のナックルウォークの後を彼女は追う。
(こんなところまで。でも、行ってみよう)
土砂崩れ防止のためのり面をコンクリートブロック積み工事してある、巨大な擁壁も彼女は乗り越え。
そして、おそらくは大邸宅の一角であろう、と思われるところにはいったとき。
「Hooh? ZThomahr!」
彼女を、ゆらり、と小柄な人影がとどめた。
手には、おそらく落ち葉かき用の巨大な熊手。警戒するように、彼女に対して軽くさしつけられている。
竹製ではなく、堅牢な鋼鉄製。熊手の先のブレードは、よく磨かれ、とぎすまされている。
なまじ高スペックな分析力を持つ彼女は、それが武器としても使用できることをみてとった。
腰を軽く落とした、老人ではあるがよくきたえられた相手の体つきも。
「ごっ、ごめんなさいっ!まよいこんじゃって、──」
彼女は土下座せんばかりにとびすさり。頭を深くぺこぺことさげる。
「ほう、ほうか」
相手は意外にも熊手を立て、しわぶかい顔をほころばせて頷いた。
「ん。ここ、あぶなーる。いく」
「危ないんですか」
「ほう、ほうよ。マムシ、おじゃかたしぁーま」
「蝮!」
「ほうよ。ほいで、──しゃる」
「去る?」
出ていけ、ということか。彼女は身を固くする。
「ほう、さーりゅ」
そして男は熊手を腋にかいこみ、頭の横に両手の指を添えてみせた。
「ごんしょ、さりゅ」
「!」
もしかすると、この老人は「角猿」のことを言っている?
「さりゅ、ない。いま、ない」
腋から戻した熊手を、ぶんぶん、と残像がみえるくらいに振ってみせて。
そして力こぶを作ってみせるように腕をまげ、老人は微笑んだ。
気が付くと、老人の腕には不器用に布が巻かれている。
老人が、猿を追い払った?
たしかに有明りなの足跡はこの先に続いているが、猿の足跡は途中から途切れていた。
「おじいさん。猿を、殺した?」
「ころす、ない。さーりゅ、つよい。ころすない」
老人は真面目な、こわい顔に戻って首を振った。
「さーりゅ、みる、にげる!」
老人は、自分の頭を指さす。
今はすでに治って癒合しているが、奇妙な傷口が彼女の目に入った。額の左右、そして──
「はい、逃げます」
「まつ」
「?」
「ここ、まつ」
老人はその場に熊手を立て。ゆっくりと背中をみせてその場を去った。
ここで待て、と言われたのだろう。
「これ」
ものの数分もしないうちに、彼は戻ってきた。
親指くらいの大きさの、ボロ布で何かをくるんだものを彼女は押し付けられる。
バニラと正露丸をまぜたような、甘い匂い。何かのハーブを入れた匂い袋だ。
鼻に近づけて嗅いでみる。子供のころ通ってた歯医者さんの消毒薬が、こんな感じの臭いに近かったかも。
「──ありがとうございます。これ、猿に効くんですか」
「さーりゅ、きくない。ごんしょ、きく」
要領を得ないが、とにかく角猿に対してのなんらかのご利益があるようだ。
桜は、彼女にできるせいいっぱい、お礼を言う。
「それと。有明りなさん、ってここにいますか」
「──」
老人は、ゆっくりと首を振った。いない、と言っているのだろうか。
顔のしわが深くなる。彼女には、老人が悲しんでいるように思えた。
「思う、ない。もう、──蛙、いない」
そして優しく、背中を押され。傾斜の下を指さされた。
「ここ、よい、ない。わるい、ある。かえる」
「はい」
どこか不完全燃焼の思いを抱きながら、彼女は山につけられた踏み分け道を戻る。
途中にあった土の塚が、ふと気になった。
土の塚には、まだしおれきっていない野草の花が供えられている。
老人の足跡と思われるものに、まじっているが。
有明りなのものと思われる小さい運動靴の足跡が、それらの塚の前についている。
膝をついたと思われる、土のくぼみも。
すでに雑草に覆われた古いものから、まだ地肌がみえる新しいものもあるが。
端の一つは、まだ明らかに新しく、他の塚との間隔もおかしい。
塚があるべき場所には掘りかけの穴があり、この新しい塚はその穴から掘りだした土を積んだだけのようだ。未完成なのだろう。
有明りなのものと思われる小さな足跡は、その塚の前にはついていなかった。