タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
(紫藤みなり視点)
「ふー、よく寝たよー。
悪かったね、何か変わったことはない?」
「あんた、5分も寝てないわよハルカ」
夢の中の、謎の屋敷を探検中。
ごきぶりおじさんと交戦したわたしたちは、とある安全そうな部屋でひとやすみしていた。
わたしにだけウザくメッセージをおくりつけてくる掛け軸があったりするけど。
この部屋は、一応は安全みたいということで、みんなで横になってた。
(ちなみに掛け軸は、”いーのかなー””しらないよしらないよ”とかみれんがましく表示してたけど。
さとみんがふりむくと、白地にもどってしまうし。
”よめまちぇんかー”"ばーかばーか"みたいに頭にくることを書いてくるから、もう無視してる。
いまは”ほんとだよー”とか、”ゴメン、ゴメーン( ノД`)”みたいな字がみえるけど、ぜったいゆるさない。)
そして、ハルカちゃんがちょっと転寝してしまったから、本格的にこちらの世界で寝る(と、あちらの世界で起きる?)ことをふせぐべく、ゆりおこしたところ。
ハルカちゃんは、目をこすりながら、でもすごくすっきりしたー、と言っている。
わたしとさとみんは、ひそかに視線をからめて苦笑をかわした。
「さて、ともかく。こんな感じよね」
さとみんは、気をとりなおしてちゃぶ台の上に1枚のノートリーフを置いた。
ノートリーフには、入口から今までのおおまかな略図がしるされている。
「方針は、変わらない。この方向に向かう」
「おっけー。それで、さ。
廊下、もう土足でいいんじゃないかな。怪物が出たときに靴下はまずいよ。
ほら、ボク、後ろにいるから跳んだりするし。靴下だと、すべるんだ」
「そうだね」「賛成」
廃墟じみたこの屋敷だけど、べつにほこりが積もってるわけじゃない。
廊下も誰かが行き来してる気配がある(ただ、他の住人の姿は、今回はまだみていない。人口密度は低い)。
この前、見た夢の中では結構住人がいた気がしたけれど。
あの怪物みたいなやつに、食べられてしまったのかもしれない。
「服、洗いたいね」
「シャワーかお風呂も」
あのやっつけた後、ひとだまになって逃げていったごきぶりおじさん。
その体液とかのしぶきや跳ね返りが、服に付着してしまってる。
「そうね。でも水場もないし。
代わりの服はないでしょう?あなたたちは」
「うん」「せめて下着の替え、持ってくりゃよかったなー」
わたしもハルカちゃんも、ため息。
まあ、仕方ないよね。
「そろそろ、行こうよ」「そうね」「うん」
気をとりなおし。出発することにする。
最後にちらっと目をやると、掛け軸はこんな顔文字→ヽ(`Д´#)ノ を表示していた。
──────
「おお、これはかわいらしいお嬢さまたちだ」
体感でまた小1時間ほども、歩いただろうか。
わたしたちは、謎のお店に到着した。
そのお店にたどりつくまでに、さまよった廊下で。
わたしたちは何匹かの、奇妙な怪物めいた虫たちと交戦した。
大柄な人間くらいもある、棍棒のような手足で殴りつけてくるナナフシ。
一抱えもありそうで、しゅうしゅうと有機素材を溶かす消化液(?)をとつぜん噴き出してくる巨大な巻貝。
すごく鋭利で多少の太さの柱ははさみで食いちぎってしまう、大型犬ほどもあるクワガタムシ。
ただ、どれも単に巨大だというだけで、あのごきぶりおじさんのような気持ちの悪い人間の顔がついていたりはしなかったのはラッキーだった。
段々慣れてきた、わたしたちは。
一刀のもとに、ナナフシの首を斬り落とし。
金砕棒でやすやすと巻貝をたたきつぶし。
ショベルでクワガタムシの頭をたたき割っていた。
(わたしも、われながら冴えてたと思う。猫耳効果で、だれよりも早く虫たちに気づいたよ。)
そしてところどころ、進行方向から少しずれたりとかいう場所では。
志野くんへの伝言用の付箋を貼っておく。
そんなことをしながら進むうちに、おそらくは広大な屋敷の角あたりに位置している、高い楼閣になっている一画。
その1階にある、「疣贅楼」という屋号をかかげたあやしげな雑貨屋さん。
ありとあらゆる雑多なものがごちゃごちゃと揃えられてる、小さな店にたどりついた。
そしてその店主さん(フードが影になっていて、顔がみえない、わりと年嵩だろう)が、わたしたちにそう呼びかけてきたというわけだ。
「ここは初めてなんだけど、何を売ってくれるのかしら」
さとみんが落ち着き払って、そう応える。
「ほっほっほっ、あるものなら何でも売りますよ、お嬢さん」
「もしかすると情報も、売ってくれる?」
「そんなものなど。品物のおまけに、お付けしましょう」
「ありがとう。お代は、お金でいいのかしら」
「はい、買い取れそうな物があれば、それでも構いませんよ。
お勧めはしませんが、どうしてもというときはあなたがた自身をお売りになることも」
「それはないかな。──仲間とちょっと相談させて。
買うものと考えがまとまったら、お願い」
「ごゆっくりどうぞ」
さとみんが、わたしたちのところにもどってきた。
(わたしたちはなんか気後れして、後ろの離れたところに待ってた。)
「何か、買う?日本円でいいのかわからないけれど。
──売れそうなもの、持ってくりゃよかったかしら」
さっき倒したクワガタのあごとか、売れそうね、と。
さとみんが、横目にそういった素材が吊るしてるのをみながらつぶやいた。
「買っていいなら、いろいろ買いたいな」
「ボクもさ。でも、なんでもってわけにいかない、かな?」
「そうね、行きは無理ね。最小限だけ」
わたしたちは、顔を見合わせて笑みをうかべる。
女の子の例にもれず、わたしは買い物が好きだ。たぶんハルカちゃんも。そして、さとみんも。
そう、さとみんもちょっとすました顔をしているが、このお店に浮き浮きしているのがわかる。
しかもこのお店の商品、元の現代日本ではみたことのないような珍品がたくさんあるんだ。
わたしなら、1日だって時間をつぶせそう。
ただ、荷物を増やしてしまうとこれから先の旅程に影響してしまう。
残念ながら最小限におさえるべきだ、ということでわたしたちは一致する。
「さとみん。現実世界と時間の流れる速さが違うってことは、さ。
この夢、結構長く続きそうってことかな?」
「そうね、あたしはそう思う」
「ボク、さ。──その、日用品が必要かもって」
手指の消毒用のウェットティッシュはあるが、数はない。
洗濯用の洗剤や、髪を洗う洗髪料や石けんとか、とハルカちゃんは主張する。
「さとみん、ティッシュペーパーとかも必要だよ」
「あー、ちり紙とかね?」
まだ今は大丈夫だけど、そろそろお腹もすいた(夢の中でも、お腹は空くんだ)。
食料品は微妙かな。干し肉や、よくわからない乾物があったりするけど、調理が前提のように思える。
もうすこししたらお昼にして、ごはんを食べよう。
そしたら、その、──トイレにもいったりするかもしれない。
そのことに、わたしは思い至ったんだ。
さとみんは用意周到にも多少は持ってきたらしいが、十分じゃない。
(さとみんは、わたしたちもさとみんと同程度に準備を整えてくると思ってらしい。準備不足でごめんよ。)
「武器のたぐいは?」
「それも、あってもいいかも」
今のままでも、対応はできてる。
ただ、長柄の武器が欲しいかもしれない。間合いがとれるのは、有利だ。
「店主さんに相談してみようかしら。いまはふさがってるけど」
店主さんのほうをみると、お客さんの相手をしているようだ。
わたしたちのほかにもお客さんがいるんだ、とあたりまえだけどおどろく。
お客さんは目つきの鋭い中年男性。くたびれて汚れた作務衣みたいな服装。どこか、物騒な感じがした。
こっちをじろっと眺めて、一言二言店主に何かいい、店主は笑った。
そのまま長居せず、客は去っていく。
さとみんが、また店主さんのもとに歩み寄る。今回は、わたしたちもさとみんの後ろに寄って一緒に話を聞く。
「店主さん。長柄の武器には、どんなものがありそう?」
「槍、長巻、なぎなた。そういったものになりますな。
お嬢さんのその脇差を、そのまま仕込み槍にできるしかけもありますぞ」
奥から店主が、さとみんの身長ほどある棒を持ってくる。
先端部に細工がしてあり、脇差を嵌めて使えるようになっている。
もちろん鍔などを外さないといけないが、これはありかもしれない。
「ただ、これから先、屋敷の中で狩りをされるのであれば。
場所によりますが、あまり長柄のものはかえって取り回しが悪いでしょう。もしここに来られるまでに虫など退治できているのであれば、そこまで必要ではないかと」
「そうね」
店主さんの助言は、もっともなように聞こえる。
商売としては売った方がいいのだろうが、外見は怪しいながら店主さんは誠実ってことかな。
「そうね、持ち合わせも限られてるし。
──それじゃ、日用品を。ちり紙や石けんなんか、あるかしら。あと、医薬品とか、燃料とか」
「はい、こちらに」
さとみんは店主と相談しながら、いくつかを選んでいく。
最後にさとみんが紙幣と硬貨を手のひらに乗せ、これで買えるかしら、と言うと。
十分すぎますな、ではこれとこれとこれで、と言いながら、店主はそこから硬貨数枚だけを取った。
思ったよりかなり安かったのだろう。それがさとみんには意外だったようだ。
「たったこれだけで聞くのも悪いんだけど。
そうね、ここから向かっちゃいけない方向は、どちらかしら。虫が多かったり、危険だったり。
クモヒメさまの方面には近づきたくないのだけど、ただ結局目的地はクモヒメさまの近くなの。
この方向に行けばいいのよね?」
「さよう、クモヒメさまの方向でしたら、──大回りしない限りは、崖をわたることになりますな。
坊主落としを降りるか、この先の大階段を上がってタケウマワタリを渡ることになりましょう」
「坊主落とタケウマワタリ、どちらがマシ?」
「さよう、坊主落としは時間がかかりますな──」
わたしたちはしばらく、店主さんとそんな風に話をしていた。
だが、また他の客が来たのを機に、さとみんは情報収集を切り上げた。
「ありがとう。また寄ることがあったら、お願い」
「毎度おおきに。あ、これとこれは、おまけです。──にご注意ください。これは──のときにでも」
「いいの?ありがとう」
店を出て、わたしたちはしばらく無言で歩いた。
「さとみん、信用できそう?」
しばらくして、もう話をしても店の人には聞こえないだろうな、というあたりになって。
わたしは、こわごわ聞いてみた。
あの性格のわるい掛け軸の伝えてきたことが、少し気になってたんだ。
「疣贅楼の主人を信用するな」みたいなことを、掛け軸は書いてた。
ただわたしの今の印象としては、疣贅楼っていうこのお店の主人の方が親切に思える。
「わからない。ただ、商品の値段は穏当でボッてるようには思えないし、言ってることもまったくの嘘には思えなかった。役に立つことも教えてくれた。ただ、全部を教えてくれたわけではない気がするわね。
まあ、志野へのメモと違うわけでもないし。あの店主の言った道を試してみましょうか。階段を登ったり、っていう要所では、これまでみたいに付箋を残しておくことにして。
それはともかく、そろそろお昼にしましょうか。現実世界で食べないと回復しないのかもしれないけど」
「がってん」「賛成」
わたしたちは、休めそうなところがあれば休息をとろう、ということにした。
──────
虫も出てこず、比較的平穏。あの店があるから、人口が多いせい?
ただ扉が破れてたりして、部屋や建物の保存状態はあまりよくない。そんなあたりだ。
廊下から分岐した小廊下の先にある無人の一室が良さげとみさだめて、さとみんが先行し扉をあけようとするが。
「さとみん!気をつけて!」
わたしは、わずかに開いた扉からの臭いに異常を感知する。
「!ハルカ、後ろを!」
さとみんがすらっと脇差を抜き、わたしをかばうように前に出た。
わたしの猫耳では、何も異常はないが。
鋭くなった嗅覚には、異常な量の血のにおいが感じ取れた。
「後ろOK」
「ありがとう。みなり、来ちゃ駄目。あなたたちは、見ない方がいい──廊下にでるわよ」
さとみんはそう言って、緊張をくずさないまま下がってくる。
「しばらく進みましょう。急ぎで」
十数分ほども無言で急ぎ足で進んでから、中庭に面した袋小路になっている廊下をみさだめ。
わたしたちは、休息をとることにした。
「さとみん、みなりん。ボクにも教えてよ。何があったのかな?」
「わたしは、見てない。血の臭いがしてた」
「死体があった」
さとみんはまだ緊張が抜けていない様子で、ゆだんなくあたりを確認しながら。
リュックサックをさぐり、さとみん手製のサンドイッチと病院の売店で買い足したおにぎり(ちなみに、竹皮で包んだみやびな感じになってしまってる)を取り出してくれた。
わたしとハルカちゃんは、供されたウェットティッシュで手指をきれいにふき、食べ始める。
「ただ死んでた、ってわけじゃなくて。
人為的に殺されたんだと思う。しかも、殺したて」
「血の臭いって、──ぶつ切り?」
「いいえ。天井の鉤から、さかさまに吊るされてた。
血抜きしてたのかしら、内臓がえぐられてて、下の大きな鍋で血を受けてた」
「うへっ──」
「あの店に来てたお客さんたちが、もしかすると?」
なんか盗賊風の風体(偏見)だったな、とわたしは思い返す。
まあ、髭剃りなんてないだろうからみんな盗賊風になってしまうのかもしれないけれど。
「さあね。被害者なのか、加害者なのか。そのときどきで、両方なのかも」
さとみんは、食欲がまだわかない、と言って。
最初に、わたしたちが食べてる間の見張りを買って出てくれた。
現金な話だけど、すきっ腹にサンドイッチとおにぎりは美味しかった。
「変な虫だけじゃなくて、人間にも注意しないと。
みなり、頼むわね」
「らじゃ」
わたしの髪の毛と、それに埋もれた猫耳をさとみんはわしゃわしゃと撫でてくれた。
不謹慎だが、この猫耳のおかげで役に立ててると思うと楽しい。わざわい転じて福となす、だよ。
ちなみにハルカちゃんには尻尾をいじられて、くぅーん、という声が出てしまった。まったく、ハルカちゃんはっ!
──────
体感1時間弱の休憩の後、延々と伸びる廊下を私たちは進んだ。
つきあたりに階段があって、私たちは上に昇る。
「おそらく、これが店主の言ってた『大階段』ね」
そう、さとみんが言う。
そしてまた廊下。しかし、そのあたりでわたしは異変を感じ始めていた。
「さとみん。行く手に、とてもよくないものがある、──臭い」
「あたしには、まだわからないけど。
心構えをしとくべきでしょうね」
これまでは木造だった建物だが、ここらあたりから、床がコンクリートだかセメントだかでできている。
片側におそらく山というか岸壁みたいなのがあり、そのへりに建物が作られているみたいだ。
数メートルごとに数段の段差があり、廊下は全体としてだんだん下がっている。
やがて床が、じくじくとした水にぬれはじめた。
「ボクもなんか、目がちくちくするよー」
「アンモニアの臭いかしら、これ。掃除してない公衆トイレみたい」
「たぶん、トイレがあるんだよ──ハルカちゃん、後ろから誰か走って来る。まだ階段のあたり」
後ろから階段を駆け上がる、数人の男の人の足音をわたしは感知した。
犬かもしれない、柔らかい足音も混ざってる。そういうと、ふたりとも渋面になった。
「──盗賊かな」
「わからないけど楽観できない。会いたくないわね。先に逃げましょう」
わたしたちは、道を急ぐが。
わたしは、行く手に人の気配を感じ取った。
「さとみん、まだ先だけど何人か男の人が部屋にいる──待ち伏せかも」
「ここらの部屋に入って、追手をやりすごしましょうか」
はさみうちよりは、まだましかも。
階段を、足跡が抜けた。来るのは時間の問題。
わたしたちは、手近の部屋に入った。
犬の吠える声が、近づいてきた。
──────
(志野視点)
温水を湛えた地下水路の流れはゆっくりで、特に危険なことはない。
僕はかなり浮板の操作にも慣れてきて(オールはないが、僕の背丈くらいの竹竿が浮板に乗せてあったから、分岐点ではこれを使ったりした)、この船旅を楽しみ始めていた。
そして、小一時間ほど経ったときだろうか。
僕はふと、あの僕がこの水路に乗ったときの船着き場のようなものをみつけた。
古い布の看板には、巻貝のようなしるしがある。
ここだ。僕は慎重に竿を使い、浮き板を船着き場に寄せた。
いざるようにして、体重の偏りを最小限にして上陸し、板も引き上げる。
地上へは、木のはしごがある。
まずは、服を着る。湿ってはいるが、濡れてはいない。
靴も履いて、はしごを登る。板も、一応持っていく。
ここも、建物の内部だ。床下に穴が開いている方式らしい。
しかし地上のふたはなく、軽い柵がつけられた穴のままになっていた。
そしてこのあたりは、木造でなくコンクリートの建造物になっている。ただし、古びているのは同じ。
上は、この船着き場の道具などが多少置いてある一室になっている。
板を持って帰れ、と言われたけれど、まあここに置いておいて構わないだろう、と。
僕は、他の板が並んでいる棚に並べて置いておいた。
部屋は無人で、僕の超感覚さんはあたりに人はいないと告げている。
とりあえず、僕は廊下に出て、地下の水路が流れていた方向に歩みをすすめる。
廊下はコンクリづくり。片方はコンクリートの壁の部屋が一定間隔で並んでいて、他方は木造の壁で、外がみえる。
ただ、外はもう夕方というより夜に近い。垂れこめた雲がみえる程度。
おそらく崖に張りつくような構造になっているのだろうな、と僕は推測した。
歩いているうちに、どことなく公衆便所を思わせる、不潔な臭いがしはじめた。
そしてひそひそという声がする一室がある。僕はすこし足音をしのばせて、部屋に近づく。
部屋の入口近くで、会話を傍受する。
「カイホリに出おったシコロクから、カガミで合図があったがね。ユウゼイロウでカモ、見かけたち。
──もういっちょで、こっちにカモが来やあすぞ」
「ほな、弓の張りを確かめんね」
「ただなんぞ、別ん組ん
「よそん
「そしたらば、シリコダマも肉も大漁じゃが!」
うわっはっは、という頭の悪そうな笑い声。
よくわからないが、ろくでもない相談なのはわかる。
「ひさしぶいじゃあ、お○こさ剥いてはよあわびさ食うぞ」「カモは?3匹か、やらん女はあの削った丸太に乗せっど」「3なら別々にすっか?」「んな、1ずつ、かわりばんこで」「儂、たまっちょっけぇ5回はいくるど」「儂もじゃ」「ここの6人だけでも、30回やなー、夜からはじめても明日の朝、んな、夕方までかかろうなー」「おめえは10数えるくらいしか
卑猥な笑い声がひびく。
ああ、こいつらも「シンイリ」を狙ってるわけか。
つまりあの老人や僕と、同じ穴の
──僕と同類。それなら、そしてどうせ夢の中なんだったら。
こいつらにまぜてもらっても、いいかもしれないな?
どこか本調子でなくてねじの緩んでぼんやりした僕の馬鹿頭は、そんな阿呆な思考にたどりつき。
しらずしらずのうちに、僕の頬には黒い笑みが浮いていたのだった。