タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
ねえ、志野。
中間考査で、勝負をしましょう。
敗者は、何でも勝者のいうことを一つ聞く。
それでいい?楽しみだわ。覚悟しておくことね。
あたしも負けたら、覚悟しとけ、ですって?
あたしは負けない。無意味な仮定よ?それ。
でも、絵に描いた餅だとしても、餌は必要よね。
ーーそう、何でもっていう言葉に二言はない。
あなたのどんなに汚らわしい妄想でも、実演してあげましょう。
あたしをひざまずかせてみたい?靴底を舐めさせてみたい?
それ以外でも。あなたが命じたことは、どんなことも。
これでいい?
まあ、並行世界の話に終わるんでしょうけどね。
試験前のある日。そんな風に、勝負を調布からこっそり持ち掛けられた。
人の通らない渡り廊下。なぜか最近結ばなくなった髪を風になびかせて、活力に満ちた目をぎらぎらと輝かせて、挑戦された。
うん、ものすごい勢いで勃起した。もちろん、即、受けた。
だって、デメリットなくない?。
恐ろしい勢いで、調布を大回転させアヘらせる計画が練られ始めた。
負けてもいい。僕が調布に受ける家畜人ヤプー的扱いの妄想が捗る。
そのせいでその日の午後の授業の先生の話、ほとんど耳に入らなかった。
調布智美、恐ろしい策士だ。
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そして、その同じ日の帰り道。
ねえ、志野くん。
もし、中間考査でさ。わたしが志野くんに勝ったら、さ。
一つお願いをきいてほしいな。
え?もし志野くんが勝ったら?
うん、ーーなんでもわたしは聞くし、なんでもわたしにしていいよ?もちろん、アルバイトの範囲外のことでも。
あ、でも。
わたしたちの関係を終わりにする、ってのは、ナシで。
紫藤から、そんなかわいいお願いをされた。
もちろん、即、快諾。
えへへへ、っと紫藤が顔を赤らめて笑ってる。
辛抱たまらん。
もちろんバス停の近くの自販機の陰に引きずり込んで、キスしたよ。
紫藤みなり、かわいい天使さんだ。
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そして、その次の日の昼休み。今。
「ねえ、キミが志野とかいう男かな?」
権高に話しかけてくる女子生徒。
宝塚風なしゃべり。
「キミが、みなりんについてるダニなのかな?」
いや、いきなりなにを言う。失礼じゃないか。
「何も言えないのかな?驚きの表情が、まるでタマネギを剥き終わってしまったサルのようじゃないか。正鵠を突かれて絶句しているといったところかな?」
いや、なんでそんなに攻撃的なの。
「まあいい、話は簡単だ。みなりんから離れてほしいんだ。」
「何の話だ。」
ようやく答えることができた。
「顔だけでなく頭も悪いのかな、キミは。」
いきなり僕を多目的教室に呼び出したその女、国領ハルカは、いかにも唾を吐きかけそうな敵愾心を見せて、つけつけと僕に言った。
「小学生にも良くわかるようにボクが話してあげるよ。一、キミは凡庸な劣等人間だ。二、だからキミはみなりんにふさわしくない。三、だからキミはみなりんのことはあきらめろ。簡単だろう?」
「いやだね。なんでお前の言うことを聞かなきゃならないんだ。」
「ほう、聞き分けも悪いのかな!知性は保育園児といったところかな?」
ちょっと癖のある美貌を憎々しげに歪めて、その僕女、国領ハルカは続けた。
話し方もカンに障る。なんだそのカナカナは。セミ女め。
「じゃあ、理由をつけてあげよう。
劣った敗者が優れた勝者に道を譲るのは、当然だろう?
だから一つ勝負をして、誰が勝者かはっきりさせよう。
ーー聞いてるのかい?」
国領ハルカは、ずい、と僕に接近した。顔と顔の間、15センチ。これはもうキスの距離じゃないか。
最近、紫藤のキスが一日一回はないと家での自家発電が捗る僕は。
いけ好かない女ではあるが。思わずその、薄いがきれいなピンク色の柔らかそうな唇に反応し。
体に染みついてしまった動きで、自然に手を国領の肩に回し、引き寄せようとしてしまった。
「うっ、何をする!」
うわ、しまった。セクハラじゃないっスか。僕の。
とっさの反撃で、国領に突き飛ばされ、頬への平手打ちを食らってしまった。
もみじマークが残っちゃうか?どうにかしてくれ。
というか、まずいか?僕。訴えられる?
「はぁ、はぁ、やっぱりそうだ。キミは花にたかる品性下劣な毛虫。女と見れば見境のない色情魔なんだ!」
国領ハルカは、肩で息をしながら、嫌悪感の滴る口調で言い放つ。
「すまない。今のは、思わずなんだ、故意じゃない、」
「ボクがそんな言い訳に騙されると思ってるのかな!」
「いや、そんな柔らそうな唇、吸う
「くっ、今度は愚弄するのか!」
国領ハルカは、はっと手で口を押え、憤怒に赤く顔を染めながら。
でも今度は慎重に距離を取りながら、遠くの間合いから僕に言う。
「中間考査で勝負する。負けたキミがみなりんから離れる。OK?」
「それ、僕が勝ったらどうなるんだ。お前が紫藤から離れるのか?」
「何を言うのかな!」
世にも邪悪な言葉を聞いたと言わんばかりに、国領がぎょっと僕を見返した。
「そんなことはない、あっちゃいけない、正義が敗けるなんてことは!」
お前、自分が正義と思ってるのかよ。いけすかない。
この性格で、紫藤の親友なのか?
「それに、キミが勝つことはない。
ーーでも、一応は決めておこう。
キミが勝てば、何か一つ、言うことを聞いてやるよ。」
「なんでも、か?」
「キミは負けた後、みなりからは離れる。永遠に。ボクが負けることはないけど、」
「負けたら?」
「しつこいな。いいさ、なんでも言うことを聞く。」
「聞いておしまい、ってんじゃないんだろうな。言うことに従うんだな?」
「ああ、そうさ。従うよ。ーー望みは何だ?」
「聞きたいか?そう、あんなことやこんなこと。もう、ここでは言えないような、ほら。」
一歩、わざとらしく国領の唇を見つめながら詰める。
国領が、ぞくっとした模様で自分の肩を抱きながら一歩下がった。
「あんなことや、こんなことーー?」
「そうだ、もう口には出せない。ぐっちょぐちょ。奥歯ガタガタだ。」
「!」
国領が、こんどははっきりと、ぶるっと震えた。
怯えた上目遣いでこちらを見る。
少しおでこな、美少年的な細面。好みは分かれるだろうが、僕は美形だと思う。
ああ、獲物を追い詰めていく、ぞくぞくするような快感。思わず悪乗りしてしまう。
「そうだ。ーー経験したら、もう元には戻れないかもしれないな?フフフ。」
また国領が一歩下がった。目は見開かれてて、グルグル状態。恐慌の状態異常だな。
「さあ、どうする?やめとくか?ん?」
「はぁ、はぁ、いや、勝てる、はずだっ!その勝負、受ける!」
「その言葉で、引き返せた最後の機会を捨ててしまったのだということを、ーー」
今度は音もなく詰める。
息をのんで、凍りついている国領。
「ーー後から繰り返し、痛切に思い返すことになろうとは、そのときの彼女は知る由もなかったのだった。ーーまるッ!」
「うわっ!」
ダンッ、と最後にわざと音を立てて足を踏み出してやると。
魅了されていたように目を見開いて聞いていた国領は、驚かされた猫のようにびくっと呪縛から解かれて飛び上がり。
ついに逃げ出した!
勝った!志野は経験値10を得た!
しまった。
うん、思わず国領の反応がよくて、調子に乗って僕のキャラにあわないことをやってしまった。
だっていきなり罵倒されて、ちょっとむかっ腹がたってたんだ。
確か十数年後、紫藤のことについての情報提供の頼みを拒絶したのも、こいつだった。
でもなんなんだ、あいつ。
外見はいいけど、中身は結構、性格悪い上にポンコツじゃないのか?
ーーいや、あれは、もしかすると、やつの計算ずくか?
だって、勝負を受けてしまった。
負けたら紫藤をあきらめるって。いや、それダメじゃん。僕、何で、やすやすと乗っちゃったのさ!?相手は生徒会、成績優秀者の一角だぞ?
これは、負けられない。絶対に負けられない勝負になってしまった。
よく考えたら、調布との勝負もまずいじゃん。
多分ないとは思うが、紫藤と別れろって言われたらどうするのさ。
あいつも確か、この時期は成績トップじゃん!
そんな命令されたら、約束を踏み倒さざるを得ない。
だけど、調布の協力は得ておきたいんだ。女の子の間の人間関係の調整とか。勝手な都合なんだけど。
手が足りないんだ、いろいろ。
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その一週間。
不安が膨れ上がる。
紫藤には禁止しておきながら、睡眠を削り勉強する日々。
ほかは、そこそこ順調だったのが救いか。
電話帳を頼りに、元さんの探偵社も訪れた。このころはまだ零細だ、事務所も雑居ビルの一室でしかない。
まだ駆け出しの髪の毛のある若い元さんと学生バイト、あとパートの事務のお姉さん。払う給料を稼ぐために四苦八苦。
未成年だと契約取り消しの危険がある点は不安そうだったが、アキさんの名前を出し、札束で頬を叩く(比喩)と、呆気なく金の魔力に転んだ。
アキさんから何か聞いてたみたいで、信用してもらったのが大きいかな。
アキさん、秋月さんはこの頃はバリバリの武闘派らしい。元さんの口調には畏敬がみえた。あと十数年後はもっとフランクになるんだけどね。
仕事に困ってるみたいなので、元々は十数年後、元さんの調査会社を知るきっかけになった法律事務所を勧めておく。この、2回目の世界でもそのうち関係を構築するだろうけどね。
あ、その法律事務所に相談したいこともあるんだ。でもこちらは元さんの零細探偵社とは違って敷居が高いな。部活動、ESSあたりのインタビューを装うかな。
ーーー
飯場のことも父に聞いてお願いしていて、進んではいるのだが、結構難航しそうな気配だ。
要は、この時代の飯場、結構法律違反が多い、というよりはっきり違法、強制労働みたいなやり方もかなり大手を振ってまかり通っている。この辺の感覚がどうもよくわからないのだが、法律何それおいしいのっていう怖い組織もしっかりあって活動してたりするから、法律守って命失うのは阿呆らしいってことなのかな。都市伝説なのかもしれないが、反抗した労務者が生き埋めにされたとか、保険掛けられて遠洋漁船とか、ホラーな話も耳にする。うかつに手を出せない。
またそれと別に、ある種の修験者たちの霊場みたいなものの一部に、一連のダム建設計画が被ってるから、ピリピリしてるという特殊事情もあるらしい。父が苦笑いしてた。
ただ、図面とか地図とかこっそり見せてもらった。万が一だが、危なそうなタコ部屋なら、多少無理してでも紫藤実父を脱出させよう。もっとも紫藤実父かどうか、確証取れてないんだよな。そこは元さんに期待だ。
元さんには、これに限らずいろいろ頼んだ。高額な100万超の依頼を含む、数件を依頼。
かなり手持ちが目減りしたが、しかたない。金を使わず目的を不達成では本末転倒だ。
半端に残しても仕方ない、9月までが勝負。
元さんも顔を引きつらせてた。まあ駆け出しの探偵事務所にしては、かなりのヤマだろう。
障害となりそうなマイナス情報を開示しても、お任せください、と請け合ってくれた。頼もしい。
秋月さんも興味を示していたらしい。特に、その修験道関係。
竜神様に興味があるのかな?
ーーーーー
そして今。
脂汗を書きながら、試験に取り組んでる。
うん、ちゃんとわかる。大丈夫だと思う。
でも、まあ中の上くらいの僕がよくわかるくらいの問題。
トップ層ないし上位層の調布や紫藤、そして国領ができないはずがない。
負けたらどうしよう。特に国領。
土下座して、足に縋って慈悲を乞うか?
逆効果だろう。
弱みを握ってバーターするか?
女子高生に、大した弱みなんかないだろう。
しいて言えば、あの同性である紫藤への執着と男の子っぽいしゃべり。そこから少し推測しているところもあるが、本当にそうかはわからないし、仮にそうだとしても、この当時はともかく、十数年後はとやかく言われる指向でもない。
手段は選べないとはいえ、そんなやり方が紫藤に知られたら、という恐れもある。
まあ、無視して約束を踏み倒すしかない。
それで、何か悪いことがあるか?ないじゃないか。
紫藤の取り合いで、向こうが勝つことはあるのか?
ないと信じたい。
目の前の紫藤の背中を一瞥。
一定のペースでコリコリ書いてる。
調子よさそうだよな。
右前方の調布を一瞬だけ見やる。
背筋を伸ばして、高い身長に見合った座高を見せつけながら、これも堂々としたもの。
くっ、負けちゃだめだ。
目の前の応用問題を睨みつけながら、僕は再び長考に入った。
ーーーーー
試験の結果は、翌週末は出そろった。
僕は調布に負けた。
僕は紫藤と同点だった。
そして僕は国領に勝った。
一勝一敗一引き分け。
まずまずの戦果だ。
いつもクラスで10~20位くらい。中の上、といったところだった僕にしては、大躍進。
クラスで4位、紫藤と同順位だ。
調布はクラス1位奪還。パねえっす。
国領の同じクラスの奴から聞くと、国領はクラスでは3位でまずまずだが、総合計で僕と紫藤に負けたようだ。
まだ連絡はないが、何と言ってくるかな。
連絡あったら、国領にはお仕置きの時間だ。どうしてくれよう。
今後こんなことがないように、思い知らせてやらねば。
国領は、まあ性格は悪いが、外見は悪くない。好みが分かれるタイプだが。
趣味と実益を兼ねて、ちょっと困らせてやりたい。
レオタードで、目の前で踊ってもらうとか(国領は創作ダンス部を文芸部と掛け持ちしてるらしい)。
スカート膝上5cmを命じるとか。
ノーブラノーパ○で、一日過ごすよう命じるとか。
電池式リモコンローターを付けさせて、(以下略)
いかん、頭がそっち方向に流れてしまう。
試験と多忙とで、長らく抜いてなかったからかな。
今日くらいは発電量を増やして電力会社を助けよう。
そして多分調布には、お仕置きされる時間だ。
なんでこんな勝負を持ち掛けてきたかわからないが、最近は調布の当たりは強くない。
何かいいことがあったのだろうか。傍目からわかるくらいに生き生きとしている。紫藤の変化もあって注目されてる。同じ中学出身の奴らによると、昔はもともとああだったらしいが。
自意識過剰かもしれないが、この変化、僕に勝負で勝ったからかな?
だが、調布はこの時期は学年でもトップ層で、僕に勝つのは予定調和だったろう。1回目の世界では、紫藤の退学後、低迷していった記憶があるけど、もし防げればそのまま推移するかもしれない。
学期末に文化祭があるから、それで部活が楽しいのかもな。たしか、美術部だ。
勝負を持ち掛けたのも、部活関係で頼みたいことでもあるのかもしれない。
そうでなかったら?うん、いろいろ家畜人したい。
舌で足をきれいにする、とか?
できれば勝ちたかったな。多分調布は言葉は翻さない、せっかく18禁タグなんだから(略)
で、紫藤とはどうなるんだろう。
ぶっちゃけ、勝負無しでもお願いは聞いてしまいたいんだけど。
お互いに、1つずつお願いを言い合うってのがよさそうかな。
最近は、試験勉強や調査や根回し、あと試験終了後は部活もあって、あまり一緒にいられなかった。
卓球の決勝リーグが終わったら、ゆっくり時間を取りたい。
一緒にいたい。ぶっちゃけ、イチャイチャしたい。
ただ、試験が終わった前後あたりから、紫藤に何か悩みがあるように思える。
一緒にいるときは、悩んでる様子をあまり感じない。
見られていない、って紫藤が思ってガードが下がってるとき。
何か憂うつそうな、いや憂慮しているような様子。
離婚の話か。紫藤母の健康状態か。紫藤実父のことか。
話を聞いてあげるだけでもいいのかもしれないし、それを本人も望んでいるのかもしれない。
でも、紫藤を生き残らせるためなら、強引にでも介入したい。