※この作品はR-18です。

タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。   作:Marchhatter

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 ちょっと短めです。若干、次回投稿まで日が空いてしまうかもしれません。


42 猫の手も借りたい(1)(志)

 

 手が回らない。

 元さんの探偵社は、現時点では零細探偵社だし、十数年後の未来においても、傭兵でも警備会社でもなんでもない。もちろん現時点でも、あくまで浮気調査とかのほかの調査案件の合間を縫って、調査してくれてるだけだ。

 もちろん大口顧客(笑)だから、優先してもらってはいるが、それ以上の働きは期待できない。

 秋月さんは僕に好意的だと思うし、僕の依頼に応じてくれたら、戦力面での切り札になりうる。

 でも、報酬は高いだろうからめったには頼めない。1度、せいぜい2度か。

 また、ほかに仕事があればそちらを優先されてしまうだろうし、日本にずっといてくれるかすらわからない。

 当てにできるとは限らないのだ。

 手が足りない。時間は有限なのに、わからないこと、対策の取りようもないことばかりだ。

 少しでも、人手を獲得しなければ。

 そこで、僕は短絡的ではあるが、呼び出したわけだ。

 国領ハルカ、例の僕に喧嘩を売って勝負を挑み、返り討ちにあった間抜け野郎を。

 

 ーーーーー

 

 国領は見るからにきまり悪げな様子だ。

 自分が勝負に負けたことも、認識したらしい。

 

 「その、その節は、うん、ボクも悪かったよ。それで、」

 

 「ーーーー」

 

 沈黙と目線で圧力をかける。

 

 「今さら、こんなことを言っても、とは思うんだけどさ、」

 

 続けろ、と顎をしゃくる。うん、気分はマフィアの親分。

 ゴブレットか太い葉巻をジャラジャラ指輪を嵌めた手に持ち、毛足の長い絨毯の上においたソファにふんぞり返りたい。

 横の情婦は、うん、この場合は調布がいいかな。紫藤はほんわかしてしまう。

 

 「ボクが悪かったから!だから、その、志野くんのお慈悲を願いたいんだ。」

 

 ばっと多目的室の床に膝をつき。

 おお、きれいなDOGEZAだ。ちょっとふつうのやり方と違って、外国人が見よう見まねでやってるみたいな感じだけど。

 起伏に乏しい体つきではあるが、べたっと平伏して上半身を床につけてて、腰の上げ方っていうか、くびれが美しい。

 うん、スカート短めだから、真後ろに回ってのぞきこみたい。あと、背中側からむしゃぶりつきたい。もちろん、後ろから、後背位(dog style)で、ーー

 

 おそるおそる顔を上げる国領。

 ちょっと、僕をお尻に敷いた調布の気持ちがわかるかも。

 背徳的な快感がある。

 自分の頬に、嗜虐的な笑みが浮かんでるのがわかるよ。

 国領が、それを上目遣いの目に捉えて。ひっ、と息を飲む。

 

 「具体的には、どうしてほしい?」

 

 聞いてみる。

 

 「だからさ、その、」

 

 目をせわしなく動かす。唾をのんでいる。

 

 「ボク、まだ、その、知らないんだ。シたことがなくて。」

 

 「それで?」

 

 「だからさ、そのう、ーーそういうの、入れるのだけは、勘弁してほしいかな、って。ほら、ボクたち、まだ学生だし。」

 

 「ほほう。」

 

 「まだ、処女なんだ!好きな人と結婚するときに、純潔のままでバージンロードを歩きたいんだ!」

 

 意外だ。同性に好かれるからと言って、同性が恋愛対象とは限らないってことか。

 あと、夢見すぎだ。乙女かよ。バージンロードを歩く花嫁の9割以上は非処女だと思うぞ。

 

 「『なんでも。』」

 

 「えっ?」

 

 「たしか、この耳で聞いたぞ。『なんでもする』って。」

 

 「うぐっ、そ、それは言ったけど、こ、言葉の綾ってもので、ーー」

 

 「『なんでも』って、言ったよな。負けたらぐっちょぐちょにする、ってのも。」

 

 「う、うん、それは言ってたね。でもさ、」

 

 なにか言い訳をしているのを聞き流しながら、ゆっくりと立ち上がる。

 太陽は背後から差し込んでて、僕の影が見上げる国領の顔にかかる。

 向こうからは、影になった僕の顔はあまり見えていないはず。

 影を使った威嚇。

 

 「僕は、ちゃんと約束を守るつもりでいた。ーー紫藤と別れる決心。」

 

 「そ、それは悪かった。でも、」

 

 「半身をもがれるような痛み。それを、お前は強制しておいて。そして後出しじゃんけんで、なしにしようとしてるわけだ。」

 

 「ーーー」

 

 「誠意を見せてもらいたいんだよな。」

 

 「ボクだって、できることとーー」

 

 「紫藤。」

 

 「?」

 

 「紫藤が聞いたら。」

 

  「!」

 

  ばっ、と顔を上げる。顔色が、目に見えて悪い。

 

 「親友のハルカちゃんが。そんなことをしようとしてたなんて。」

 

 少しおでこな額。べったりと前髪が汗で貼りついている。

 そんなに今日は暑くないのにな。ほらほら。

 

 「さあ、もし知ったら。どう思うかなーー?」

 

 「わかった、わかったよ!」

 

 悲鳴のような声。よほどに紫藤に執着してるのか。

 ちょっと妬ましくなる。うん、恋敵に向ける感情だ、これは。

 

 「ボクが悪かった!できるだけのことはするから、許してよ!」

 

 「たとえば?」

 

 「ちょっとだけ、み、見せるくらいならーー。」

 

 「あれ?話が違うなハルカちゃんは。使える穴はあそこだけじゃないよな?」

 

 びくっ。

 

 上体を起こした国領。汗が浮いてる。土下座スタイルから足を横に崩して、じりじりといざりながら僕から逃げようとしてる。

 わざとやってるのかってくらいそそるけど、ーー腰が抜けてる?

 

 「おや?バージンは守れるよう、協力してやろうと思ったんだけどな。」

 

 M黒福造みたいに、ドーン!とか、してみたい。

 でもまあ、いじめすぎだ。さすがに良心が咎めてきた。

 年頃の女の子なんだし、くそ生意気で腹がたったから追い詰めてみたけど、こいつはこいつなりに紫藤の幸せを考えての行動だったんだろうし。しょうがないよな、僕、たよりなく見えるんだろう。

 

 「分かったよ、やればい「どうしてもいやなら」」

 

 被ってしまった。

 国領が、顔を上げる。

 しまった、言わせりゃよかった。口で抜いてもらえたかも。あのピンクの唇で。

 でもまあ紫藤に通報行ったら諸刃の刃だし。ここらで止めといて。

 

 「僕には、手が必要なんだ。」

 

 「手?手でいいの?」

 

 ん?なんか救いの光を見たような。まあいい。手が足りないのは否めない。

 調査、いや紫藤実父救出とかを手伝ってもらおう。

 

 「そうだ、手だ。だから、ちょっとこんど付き合え。」

 

 「つ、付き合う!?」

 

 「そうだ、ちょっと夜にかかるかもしれない。」

 

 「そ、そうだね、もちろんそうだよね、放課後だよねーー。朝まで?」

 

 「避けたいが、もしかすると、な。あと、動きやすい服装な。」

 

 「うん、ん?」

 

 「あと、足は速いか?走れるか?」

 

 「?うん、早い方だと思うよ?」

 

 「身は守れるか?空手とか合気道とか、したことあるか?」

 

 「週1回、公民館でやってるのに通ってるよ。あ、本格的なやつじゃないけど、合気道。」

 

 「よしよし。じゃあ、今度連絡する。1か月後くらいだ。」

 

 「あ、うん。」

 

 何か首をかしげてるな。日時が決まってないのが不安なのか。

 

 「大丈夫だ、多分土曜日か、翌日授業のない日だ。部活や試験で忙しい時期は外す。」

 

 「? ありがとう?」

 

 じゃあな、忘れるなよ?と釘を刺して、僕は帰った。

 国領はまだ腰が抜けてるらしい、ぺったりお尻を床につけたまま、ごにょごにょいいながら手を振った。意外といいやつかもしれない。

 だけど、こんなんで腰が抜けてたら、やっぱり荒事の手伝いはちょっと無理かな?

 でも足も速いらしいし、一応は護身術も身に着けてる、実用性は不明だが。何より手が足りない。

 後方支援くらいはやらせてもいいよな?

 

 タコ部屋の詳細が分かりかけてきたから、そっちの紫藤実父の救出の手伝いを、と思った。

 この仕事は、さすがに紫藤にはやらせられない。

 もし僕が調布に勝ててたら、調布がよかった。男勝りで戦闘力も高そうだし、体力もあって頭も回る。

 男の方がいいかもしれないが、そこまで頼めそうな、能力の高いやつが思い当たらない。

 国領も二の策としては、ありだと思ったんだ。

 

 ただ、国領も女の子だから、本当に危険なところは僕がやらざるを得ないだろう。

 でも保護した紫藤実父(まだ未確認だが)の護送くらいは任せたい。

 僕が紫藤実父を鉄条網の外に逃がした後、おとりでしばらく引っ掻き回す。そのすきに、国領に父親を保護してもらう、って感じで。

 あいつバイクとか乗れるかな。無理かもな。やっぱり車が出せる大人を引き込むべきか。

 だが車は音もする、接近したら絶対気づかれる。しかもあの近辺、あのゲート以外にもいくつか障害物が置いてあるみたいだ。自動車は出しにくい。

 森の中経由で逃げることを考えるべきだろう。

 

 なお、僕と紫藤が見た飯場。やっぱり、いわゆるタコ部屋だと思う。

 半分以上強制労働っぽい。まだ経過報告だが、一度元さんのとこのバイト君が双眼鏡で遠くから観察してたとき、労務者の一人が反抗したのか、ボコボコに殴られてたのを目撃したそうだ。別の時に、罰の紙を持たされて立たされて見せしめにされてる労働者を見た、とも。

 あまりホワイトとはいえまい。

 

 また、犬が数匹飼われてる。見張り用だとしたら、脱走は、工夫しないとかなり難しいかもしれない。

 だが、いわゆる管理側の人間は多くない。そこが付け目だ。

 羊とヤギのことを紫藤が言ってたので観察してたバイト君に聞いてみたが、飯場では目撃されてない。

 頭の隅では、獣姦に使われてるんじゃないか、とも思ってたんだが。

 餌を買った様子も、周りの草を食わせてる様子もない。どこか別に運んで行ったのか?

 あるいは捌いて食ったか。いや、そんなはずないな。相当に手間がかかるはずだ。

 大量に精肉店からくず肉を買った方がよほどマシだろう。

 犬に食わせるには上等すぎるしな。その線もないだろう。

 

 なお、これまでに2度、週に1度、日曜日のようだが、女が1回につき2人、タコ部屋に連れ込まれてる。

 多分これは商売女ではないか?との元さん情報。けがをした様子もなく、無事に街に返されてて、異常もなさそう。

 もしもっと後ろ暗い感じだったら、そっちから警察を動かすことも考えてたんだが。

 ブラックではあるが、とことんブラックってほどじゃないのかもしれない。

 ただ、妙なところもある。ところどころ妙に秘密主義で、しかも芋づるを伝うと、ヤツザキ系列。

 本職のひとたちも、なぜかこことは事を構えたがらないらしい。

 あの化け物爺が出張ることは考えにくいが、やっぱり後ろ暗い力と結びつきがあるのかもしれない。

 

 修験道のことはついでに、ということで情報は少ない。

 こちらが正義の味方ならいいんだが、どうもそうでもなさそう。

 カルトっぽい感じなんだよな。神道のガワをまとわせてるが、異国の蛇神、竜神信仰のようだ。

 東京で毒ガスを発生させたテロがあったが、あれに近い感じも受ける。

 そういえば、ーーあの宗教団体、あれ何か冠っぽいもの使ってたような!?

 ただ、この修験道的カルトは、それと別口らしい。

 竜神様の伝説があるこの地を、後から買収したという感じだ。

 潰しあってくれればいいんだが。

 

 紫藤実父関係は、遅くとも6月中にはめどをつけたいんだ。

 紫藤母がもし万が一倒れたときに、保護手段を得ておきたい。

 紫藤継父は、ちょっとDVっぽい感じだし。兄を介して谷津崎と結びつきそうなのが、きなくさい。

 

 本丸の谷津崎老人方面は、まだ調べも進んでないし、対策も考えつかない。

 あの圧倒的な暴力。

 人の頭蓋骨まで握りつぶせるような、あの非人間的な力に誰が対抗できるだろうか。

 僕には、絶対に無理だ。では、どうやって対抗できる?

 たとえば秋月さん。彼は強いが、あくまで人間だろう。あの動画の筋肉男とどっちが強いだろうか。

 そもそも、まだ雇えるかすら、わからないんだけどな。

 何か次善の策を考えつかなければ。

 

 さてと、そろそろ調布から話があるんじゃないかな。

 何を命じられるのだろうか。

 口で奉仕しろとか言われたら、喜んで奉仕するんだけどな。

 椅子になってもいいし、踏まれてもいい。

 楽しみだ。

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