タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。 作:Marchhatter
前々話の続き、次の日のつもりですが、あまり進まなかったです。
細かい部分、推敲できなかったので後日修正します。
志野くんは最近、少し忙しそうだ。
まあ、わかるよ。
志野くんは、わたしのためにいろいろと時間を使ってる。
一緒に帰ったり、ときどき気を使ってお店を一緒にめぐったり。
場違いだとわかってるのか、終始うつむきながらだけど、おしゃれな喫茶店に入ってみたり。
正直そこまでしなくてもいいというくらいだ。
ところどころ、女の子がしてほしいところとはズレてることもあるけど、でも一生懸命だ。
あと、わたしが馬鹿なことをして、前の、本当のお父さんらしき人を見かけて騒いだあの飯場。
今も、あの飯場のこと、お父さんのことを調べてくれてるみたいだ。ありがとう。
あと、さとみんに文化祭実行委員に指名されて。
昨日(月曜日)も、昼休みが潰れたなー。
あと、なぜかハルカちゃんとときどき廊下とかですれ違ったときに、何か短く2、3語話しかけてる。。
なぜかいつもハルカちゃんが青ざめてる。なに言ってるんだろう。
あと、白百合みたいに清楚な美人さんの、ESSの部長さんと何かお話しして。
あと、あと、あと、---
うん、いろいろあるんだよ。
だけどその相手が女の子ばかりというのは、いかがなものか。
ほら、今もさとみんとなにか大人モードで話してる。
さとみんの席近くなので離れてて聞こえないけど、まあ、真面目な話だろう。さとみんが眉を顰めてて、眉間にシワが寄ってる。
うん、不機嫌そうだけど、かっこいい。美人さんは得だね。
わたしも志野くんの目がこちらに流れたときに合わせて、少し眉をしかめてみた。
ヒソミに倣う、ってまさにこういうことだね?
あ、志野くんの顔が青ざめた。
なんか浮気現場に踏み込まれた人っぽい。
冗談だよ、って笑って手を振ると、合掌された。
拝まれる?はて、瑞雲が漂ってたかな。
いいよ、あまり気にしてないし。
まあ、さとみんならね。
でも、いったい熱心に何を話してるんだろう。
文化祭関係なんだろうけど、気になる。
企画は決まってないけど、あれを候補に出すことにしたはず。企画は、金曜日のホームルームで決めるはずだ。
決まった後のことを話してるのかなー。
志野くん、また目線がさとみんの胸元に行ってるぞ。
形が分かりやすい中間服のブラウスだからといって、見とれない。
さとみん、気づいてると思うよ。まったく。
「ほらみろ、鼻の下伸ばしてるぞ。いいのか?」
「あ、根取くん。」
根取くんは志野くんのファンなのかもしれない。
じっと見ているらしく、志野くんがへまをしたり、女の子相手に鼻の下を伸ばしてたりすると、そのたびごとに通報してくれる。
正直、ちょっとじゃまくさいけれど、志野くんの動向がわかるのは重宝している。
最近は志野くんと、ハルカちゃん(国領ハルカという、わたしの文芸部の友達だ)や、さとみんとの接触度合いが多く、その上に烏丸さんや布田さんにも接触があった!とタレこみがあった。
そしてその度、根取くんがわたしの味方であることを強調する。
わたしの味方だってことは、志野くんの味方だってことだ。
きっと志野くんにもっと頑張ってほしいってことだろうな。
男の友情だね。
「根取くんは、志野くんが好きなんだねー。」
あ、いけない。思わず口から洩れてしまった。
思ってた以上に、しみじみとした口調になっちゃった。
「え?うぁ?いや、なんでオレが!」
好きなんかじゃないんだ、と力説してる。いや隠さなくていいよ、顔が赤くなってるよ。
大丈夫だよ、(男の友情に)わたしは理解があるんだ。
わたしがへまをしたときに、さとみんがしてくれるような優しい目を作ってそう言ったら、なんかがっくりして去っていった。
どうしたんだろう。理解者がいて喜ぶと思ったんだけどな。
まださとみんとの話が終わらない。
時計を見る。中休みだから、普通の休み時間より少し長いけど、もうそろそろ終わるよ。
あ、志野くんの目がまた、さとみんの胸に注がれてる。
やっぱり、見ちゃうよねー。
別にさとみんの胸は巨乳ってわけじゃない。バランスが取れてる。
ただ、体も大きいから、必然的に大き目ってだけのことだ。
わたしは自分のものをみる。
うん、小さいね。
ただ、最近は前に比べるとかなり育ったんだけどな。トップとアンダーの差が大きくなった。
ちゃんと測ってないけど、Aカップだったのが、ぎりぎりCにとどかないBになったって感じかな。
またさとみんのものを見てみる。
うん?
さとみんの胸、去年の同時期の記憶より大きくなってる気がするぞ?
おもわず視線が鋭くなる。
志野くんとの会話で何か面白いことがあったのだろうか、珍しく微笑んでいたさとみんが。
視線に気づいたのか、こっちを見て、そして青ざめた。
何か志野くんに話してる。私のほうを見るように促して。
そういえば。
先週の土曜日、千里のポークビ○ツを見せつけられたな。
まったく、姉をなんだと思っているんだ。
それに比べると志野くんのは巨大だ。たぶん、お父さんのものより。
そう思って、志野くんの制服の股間のわずかなふくらみに目を注ぐ。
さとみんの胸で、そのふくらみを大きくしてたら。どうしてくれよう。
あれ、少し大きくなってる?
なにっ。
まあさとみんならしかたないか。でも、ここは正妻(?)として、もの申さねば。
でも、それにしても。
志野くんのあれは、大きいんだよ。
わたしにあれが入るかなー。
もしダメだったら、どうしよう。
正確に大きさを思い出そうとして、思わず目が鋭くなる。股間をじっと睨む女子高生(わたし)。
折り重なったときにわたしに押し付けられてたけど、結構太かったよね。
このくらいかな、とグーチョキパーのチョキをつくってみる。
チョキの指と指の間の距離を、あの太さに見立てる。
もう少し細かったかな。少し縮めてみる。いや、もう少し太かったか。また広げてみる。
志野くんがさとみんに促されてこちらを見た。
あれ、わたしの目と手のチョキチョキの動きを見比べて、青ざめてる。
なんかさとみんに言われて、機械人形のようにコクコクうなづいてる。
またね、とか何とか言ったんだろう、志野くんがダッシュで帰ってきた。
もう休み時間、おわるよ。ほら、チャイムが鳴ってる。先生も来た。
志野くんが少し怯えをにじませた目で、お昼休みお話ししようってメモをよこした。
うれしいな。
あらためて振り向いてにっこりすると、怯えが加速した。
どうしたんだろう?
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お昼休み。いつもの二体(第二体育館ね)の横に行く。
志野くんはすでに来ていた。青ざめてる。
わたしがくると、バッと立ち上がって直立不動になった。
○くざの大親分が来たときの、子分たちみたい。
ちょっと気持ちいいけど、そんなにしなくていいって。
「いいよいいよ、どうぞ座って?」
「ハイ」
志野くんが恐る恐るという感じで座る。
どうしたんだろう。距離が遠いぞ。
「それでさ、話が聞きたいんだよ。」
「もちろんそうでしょうとも、ーー。」
突然、志野くんがベンチから流れるように滑り落ちて土下座した。
「ごめん!僕が悪かったよ!」
あれ、どうかしたのかな。
ああ、わかった。
もしかすると、さとみんと話してて、わたしがすねたと思ったのかな。
まあ、それは半分当たってるよ。
ふたりだけで話し込んでて、うらやましかったんだ。
でも、もう半分は、そうじゃない。
わたしは話したいこと、相談したいことがあったんだ。
思わずその内容に思いを馳せて、額にしわが寄る。
それを上目遣いに見た志野くんが、ひぃっ、と息をのんだ。
怯えすぎだよ。
わたしはそこまで嫉妬深くない、つもりだけどな。
ときどきさとみんの胸をもぎ取りたくなるだけだ。
「志野くん、「紫藤さん、僕に何かしてほしいことない?」」
被った。
志野くんが言い募る。できることは何でもやるからさ、と。
わたしは、ふと思いついたことがあって、ぽんと手を打った。
「そういえば志野くん、わたしは一つお願いしたいことがあったんだ。」
なんだい、と志野くんが希望を見出したように顔を上げる。オーバーだなあ。
前から気になってたんだよ。
「わたしのこと、名前呼びしてくれない?」
「へ?」
「あれ、そうだよね、やっぱりいやかなぁ、」
しょんぼりする。
「そんなわけないじゃないか!」
あ、目が生き返った。良かった。
「二人だけのときだけでもいいよ。」
「そうだね、二人だけの時は、--」
志野くんが顔を輝かせて何か言おうとしてる。
「みなり、ありがとう。大好きだ。」
「うわぁー、ーー」
結構破壊力が大きい。
わたしの顔は赤く染まってるだろう。なんなら湯気も出てるかもしれない。
伝染したのだろうか。志野くんもすごく赤い。
あまりのことにそのあとはしばらく無言になった。
ごはんが進んだ。
まあ、そういうことになった。しばらくして、わたしも志野くんも、なんとかいつもどおりになった。
まだ少しだけ顔のほてりが冷めてないけど。
楽しくおしゃべりして、お昼休みが終わった。
あれ?
しまった。大事なことを話すのを忘れた。
放課後だ。放課後に話そう。
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放課後。今日は少しゆっくり志野くんと話したい。
志野くんも、大会の終わった後だから部活は休むと宣言して、今いい感じに歩いてる。
そうだ、志野くんにはいくつか頼みたいことがある。
もちろん、あのことも相談しないといけない。
人の命にもかかわることだ。
そう考えて、志野くんの方を向いた。
志野くんも、こっちを向いてる。
うん、いいチャンスだ。
わたしは息を吸い込んで、
そのとき、志野くんが、しいっ、と口に指を当てた。
なんだろう?
志野くんの目線が、わたしの肩越しに、向こうに投げられている。
すぐに振り向くほど、わたしも単純じゃない。
一呼吸、二呼吸置く。
志野くんの顔をちらっと見上げる。
驚いた。
志野くんの顔が、今までにみたことがないほど厳しくみえた。
張り詰めた表情。ーーそして気のせいでなければ、怒ってる?恐れてる?両方?
志野くんは誰かをじっと見ていたようだったが、ふと目線を外した。
そしてさりげなく、わたしを隠すように動いた。
志野くんがわたしに会わせたくない誰か?志野くんが恐れるような?
口笛が流れてきた。誰かが通り過ぎた。
志野くんは、ほとんどわたしを電柱の陰で胸元に抱きかかえる感じにしていた。よそから見たら、典型的なバカップルだろう。
でも、汗のにおいからわかる。志野くんが、とても緊張してる。
口笛は、一度止まった。そしてまた再開し、遠ざかっていく。ちらっと、後ろ姿だけが見えた。
とても大きい、筋肉もりもりの外国人の男の人だ。頭はテカテカのスキンヘッド。
角を曲がってその姿が見えなくなる。
志野くんが、悩むように額に手を当てた。
「志野くん、後をつける?今の人?」
聞いてみると、志野くんがびっくりしたようにわたしを見た。
「そうだな、後をつけてもいいけど、もし見咎められたら、危ない。」
そう言って、肩をすくめる。
「それより、あいつが来た方が気になる。って、やっぱり?」
救急車の音。パトカーのサイレン。
何か事故が、あるいは事件があったのだろうか。
「ごめん、ちょっとだけ知りたい。--いい?」
口笛の人がやって来たのは、駅の裏手の、特にいかがわしい一角から。
騒然としてる。パトカーが数台、乗り付けてる。
志野くんが、通りすがりのちょっと年かさのおばさんを捕まえて、何か話を聞いてる。
おばさんも髪を染めてて、ここらへんの店の人だろうか。
礼を言って、志野くんが戻ってくる。
顔が青白い。
「事件だ。人が刺された、死んだかもしれない。そして、たぶん、さっきのが、犯人。」
そう、どこか辛そうに、つかえながら言う。
わたしは、そっと志野くんの手を引いた。
「警察に言う?」
「目撃者は、いる。たぶん、僕たちが言えることはないと思う。」
でも、わたしはその言葉に違和感を覚えた。
志野くんは嘘はついていない、でも隠してることがある。
目撃者はいるのだろう。そして、わたしたちが証言できることはほとんどない。口笛を吹いていた、ということぐらい。服装や体つき、もしかすると顔も、証言できる人はいるのだろう。実際、すれ違った人は多かったのだし。
でも、なぜわたしをかばったのか?
たぶん、志野くんはこの事件の犯人、あの男の人、を知っているのではないか。
それが知人だから?いや、そういう感じではなかった。
知人だとしたら、あの犯人も志野くんに気づいて何か言ったりするだろう。
一方的に、志野くんがあの男の人を知っていたのだ。
「ーーだそうだ。」
「ひどいわねえ、まだこれからなのに。」
道行く人が何か言い交してる。
話の切れぎれを耳に挟む。
被害者はまだ若い女性二人。
話をしてる人の一方が、救急車に乗せられていく被害者の一人を見たらしい。
ひどい状況だった、と。あちこち切り裂かれてた、内臓がほとんど出てた、って!?
死体には慣れている警官がゲロを吐いてた、とか。
救急車か。まだ生きてるのか。
志野くんの顔を再度見上げる。
真っ白だ。
おっと、貧血じゃないかな。
めずらしくわたしが、志野くんを支えるようにして、駅の方向に向かう。
きょうは早く返してあげよう。
「ーーみなり、お願いがある。」
そう思ったら。
「今日は家まで、僕に送らせてくれないか。頼むよ。」
一緒にいられるのはうれしいな。
でも、そんなんじゃ、却って心配だよ。
志野くん、体調悪そうなのに。申し訳ないなあ。
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志野くんがいつものバスに一緒に座ってる。少し座席が窮屈そうだ。
そっと志野くんがわたしの手を握る。わたしも握り返す。
何も言わずに、志野くんはわたしの顔を見ている。
時折、バスの外の窓に目をやる。
わたしも、ときどきは志野くんを見返してみたけど。
恥ずかしくなって、つないだ手をみつめていたりした。
志野くんの手は大きい。少し骨ばっているけど筋肉がついていて、青い血管が少し浮いてる。
志野くんは、生きてる。卓球の大会でいいところまでいくくらい、健康だしタフだ。
でもその志野くんを、こんなに脅やかした誰かがいたんだ。
わたしも、いろいろと地雷だらけだけど。
志野くんも、実は何かやっかいなことに巻き込まれてるのかもしれない。
それで、志野くんがいやになるかって?
そんなことはないよ。
逆だよ。
いっそう、志野くんのことが好きになるよ。
志野くんが元気ないのはうれしくない。でも、志野くんが、もっと身近になったような。
破れ鍋に綴じ蓋、みたいに、釣り合ってるんじゃないかな!とかね。
相手の不幸を喜んでるみたいで、われながら品性下劣なのかもしれないけど。
でも、わたしの偽らざる気持ちは、そうなんだ。
わたしは志野くんを神格化してしまってるけど、そうじゃない。
志野くんも悩みも多いし、もしかするとわたしが志野くんに言えないことがたくさんあるように、志野くんも私に言えないことがあるのかもしれない。
もちろんわたしだって、それを知りたい。
でも、わたしには、(まだ)知らせたくないと志野くんは思ってる。
そしてわたしは、志野くんを信頼してる。
もし必要があれば、志野くんはちゃんと教えてくれるだろう。
そう整理をつけて、わたしは志野くんの顔を覗き込んだ。
もうかなり志野くんも元気になってきてる。微笑んで、つないだ手に少し力が入った。
そして、うん、大丈夫だ。
そっと腕を抱え込むようにして胸を押し付けてみたら、ちゃんとあそこが大きくなったみたいだ。
大丈夫、大丈夫。
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バスから降りる。ざくろが丘中央まで来てしまった。
まずいな。
ゴウジたちがいる。向こうでしゃがみこんで、唾を吐き散らしてる。
タバコ吸ってて口の中がいがらっぽいんだろう。
わたしの足が、一瞬とまる。あの横を通り抜けないと。志野くんと。
あれ、だけど?
ゴウジがこっちを見て、少し慌てたように、まわりの取り巻きに何か言った。
周りの取り巻きたちも立ち上がった。ゴウジは取り巻きたちと一緒に、歩き去っていく。
ひとり、背高のっぽの坊主頭が振り向いた。あ、あれはあの子だ。
わたしが、ゴウジと茶髪プリンの彼女とかと話したとき、一緒にいた男の子だな。
なんか、怯えたような目をわたしに向けてる。
いやちがう、目線からして、わたしじゃないな。志野くんだな。
わたしは隣を見上げる。
志野くんをみて、なんか怖がったのかな?
よくわからない。背が高いから強そうだと思ったのかな。
志野くんがあのスキンヘッドの人を恐れるように、ゴウジたちが志野くんを恐れてる?
まさかね。
まあいい。
きょうは散々だったけど、うれしいこともあった。名前呼びしてもらったし。
でも、きょうはこれ以上重たいことは言わないでおこう。
明日だ、明日がある。