※この作品はR-18です。

タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。   作:Marchhatter

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 本日1回目の投稿です。若干時間をおいて、本日中に2回目を投稿します。
 当方の事情で、数日投稿の間が空くかもしれません。


51 言い出せない(4)(志)

 金曜日のホームルームが終わる。

 文化祭についての企画決めが、主な内容だ。

 企画候補の提案は、おおむね好意的に受け取られた。

 

 まあみんな教室を使った迷路やただのポスター発表よりは、多少面倒ではあっても何かやりたいのだ。進学校であっても、特に女子の一部は。

 男子は当日は熱中するが、おおかた先のことに興味ない。現段階では、適当に苦労の少ないのにしてよ、と言う感じ。むしろ球技のクラス対抗戦に関心が行ってる。

 

 企画は喫茶、歴史衣装、心理が支持を集めたので、調布がこの3つを組み合わせ、お茶の産地に関係する歴史衣装でサーブ役が給仕し、待ち時間にお客さんが心理テストを受けてお茶を飲みながら結果をコンサルしてもらえると言う形で強引に一本化。

 歴メシならぬ歴茶、あるいは地歴茶みたいなもんだ。

 

 ただ、産地によりグループ分けして、余力がなければ簡素化していいことにした。他方で、優秀グループを表彰する。上手く行けばいいが。

 班分けはクジで。いや、仲良しグループでやりたいのはわかるけど、それはこまる。

 最終回のシフトだけ、有志でシフト組めるようにした。

 

 あとは衣装の準備の費用と手間だ。

 既存の服、たとえばインドのサリーやイギリスの執事服、中国のシルクドレスあたりは、提供できる人がいたりして、当てがありそう。

 それを提供してもらい、かつ参考にして、サーブ役の2、3枚ならそれぞれなんとか作れそうだとのこと。 

 ただそれを着て、全員みんなで一緒に写りたい、は無理だ。

 一部女子が残念がっていたが、調布ー烏丸ラインで、衣装の種類は統一でなくなるが、仲良しグループごとに記念撮影できるようにしようということで納得させた。

 この2人、いつの間に結託してるな?

 

 時間通りにホームルームが終わり、一言も発さず聞いているだけだった先生も満足そう。

 チャイムが鳴り、休み時間になると、先生に呼ばれた。

 

 文化祭企画の手腕を褒められ、激励される。そして本題。

 大学見学、理系学部・文系学部とも、平日夕方でも、土曜でもOK。

 ただし文系学部、土曜は授業は一部だけで、やや物寂しいかも、とのこと。

 5~10人くらい、希望者をとりまとめてみてと言われた。

 この企画、学年のクラス担任会議でも好意的な反応で、学年全クラスに広げたいが、まず実験的に一度試行しよう、ということらしい。

 まあ希望者数が読めないからな。

 

 なお時限的な企画サークル化(仮)についても、いいんじゃない、という反応らしい。

 場所だが、図書室の付属会議室をいつも予約して使うのも面倒だろうというので、使ってもいい空き教室を紹介してくれた。ありがとうございます。

 例の旧本部棟5階の和室はその中にはなかったが、それに近い位置の空き教室を借りることにした。

 もちろん、ずっと借りられるのではなく、今学期限り。

 もし活動が続けば同好会とかに格上げもいいかもね、とのこと。イベサーですか。

 

 ーーーーー

 

 紫藤にメモを渡して、昼休みを予約する。

 最近は昼休みも打ち合わせが入ったりして、なかなかゆっくりできなかった。

 紫藤の方も文芸部の企画があって、しばらく放課後も無理だったし。

 今日、それが無理なら明日の午後に話がしたい。

 場所、さっそく空き教室を使わせてもらおうかな。

 カギは基本、開けといてくれるらしい。もともとは資料室だったが、重複した資料とかを適当においてあるらしい。例の和室が良かったけど、まあ見てみないとね。

 

 昼休みに早速行くことにする。一応、調布にも断っておく。ばれたら後が怖い気がするからね。

 ふーん、できたらお掃除しててね、といわれて、手をひらひら振られただけだった。

 

 「結構いい部屋だよ。」

 

 「資料が突っ込んであるだけって聞いてたから、どんな惨状かと思ったけど、使えそうだね。」

 

 資料室というだけあって、背の高い本棚が半分くらい並んでいる。

 でも、その残りは会議机が一つと普通の教室にあるような机が数個並んでいる。

 古ぼけたソファも1脚ある。

 その横に大量の古新聞の束とかがあるけど、これは捨てていいんじゃないかな。

 いや、よく見ると本校が活躍したときのものみたいだな。ダメか。

 この未整理資料の整理もプロジェクトとして加えたらいいんじゃないかとふと念頭によぎる。

 できれば、口実をつけてもう少し長く使わせてもらいたいし。

 まあ今後の課題だな。

 

 北北西に面した部屋なので、日の入りはあまりよくない。

 だけどこれからは夏、かえってその方がいいかも。いや、少し西日が入るのか。

 ちなみにこの時代の高校の教室には、ごく一部を除き冷房設備などはない。

 くるくると教室回りを見てから、机部分に戻る。

 適当に席に座ってみる。紫藤がその一つ後ろの席に座った。教室とは位置関係が逆だが、前後で隣の配置。

 後ろに向き直る。紫藤が顔を上げる。

 

 「さて紫藤さん。」

 

 じいっと見つめられる。なにか、責められてる感じ?

 こほん。

 

 「さて、みなり。」

 

 「はい。」

 

 あ、赤くなって下を向いた。僕も頬が熱くなった。

 

 「それでさ、話したいことがある。」

 

 「うん。わたしも。」

 

 「交代で話す?」

 

 「先に、でいいよ。」

 

 「じゃあ、僕から先に、一つずつ交代で。」

 

 ようやく、飯場の話ができる。

 まだ最終確認はできてないけど、紫藤父で間違いないこと、飯場は結構過酷かもしれないこと、もし本人の同意がとれれば、足抜けしてもらおうと思ってること。正攻法で辞めさせてもらえればそれがいいけど、無理っぽい感じであること、場合によっては脱走になるし、法律違反もしてしまうかもしれないこと。

 

 紫藤はじっと聞いていて、話に区切りがつくと、ありがとう、と言った。

 

 「それで、できれば紫藤さん、あー、みなりにも手伝ってほしい。計画とか。」

 

 「もちろんだよ!計画じゃなくて実行もやるよ。さとみんがそれだけやるのに、わたしだけ安全な位置でのほほんとしておくわけにはいかないよ。」

 

 張り切っているな。

 

 「ありがとう。でも、役割分担は適材適所もあると思うんだ。荒っぽいこともあるし。でも、重要な役割を果たしてもらおうと思ってる。」

 

 当日のメッセージセンターとかを考えてる。

 当事者同士で連絡できればいいんだが、ポケベルをレンタルするか。

 でもポケベルでも電波届くかな。かなりのへき地だ。

 

 その話はそういうことになった。やっと肩の荷が一つ降りた。

 

 「わたしから、一つ目ね。」

 

 紫藤はちょっともじもじしていたが、やがて意を決したように言い始める。

 紫藤母が離婚を決意したこと。

 ただ、子供ふたりは無理なので、紫藤弟を母が、紫藤を継父が引き取ることになっていること。

 これは、重大ニュースじゃないか。

 

 評価が難しい。

 多分1回目は、ここまで話が進む前に紫藤母が倒れたんじゃないかと思う。

 よりによって紫藤を継父が引き取るのか。僕はこの男にいい印象がない。

 1回だけだが、元さんにも職場での評判を聞き込みしてもらった。外見は結構いい、二枚目だ。

 だけど暴力事件を起こしたこともあり、粗暴なのかもしれない。周りからの受けは、必ずしも良くない。

 紫藤は折檻を受けてると言ったが、エスカレートして、ーーということも十分に考えられる。

 子供二人を引き取るのは無理、というのも建前じゃないか?

 何より、1回目で紫藤が谷津崎に引き渡されたのは、紫藤の伯父、つまり、この継父の兄を介してだ。

 継父が紫藤を売る道筋をつけていて、それが整ったところで裏切られて消された、と考えるのは、うがちすぎだろうか。

 今回、紫藤を継父が引き取るというのも、あるいは、ーー

 

 僕の渋い顔を見て、紫藤がうっすらと笑った。

 ちょっとあきらめの入った笑みではないか、と僕は疑う。

 母については少ししか聞いてないが、普通の母親、まともな母親だと思う。

 それに見捨てられるとまでは言わないが、引き離されることには、思うところがあるだろう。

 

 「大丈夫だよ、志野くん、大丈夫。わたしの方がお姉ちゃんだから仕方ないんだ。それに、まだまだ先のことだよ。」

 

 まだ未定だが、今学期ではない。夏休みに入ってからだろうとのこと。

 それまでにはなんとかしないといけないということだ。もとより、そのつもりではあったけど。

 学校に通い続けられるのか、と聞こうとして喉で消えた。まだ紫藤にもわかってないだろう。

 

 僕は、そのことは少し考えさせてくれ、と言ったが、期待していない目で微笑まれただけだった。

 自分の無力に、怒りたい。

 紫藤はもう結婚できる年齢だが、僕はそうではない。今の制度で継父から紫藤を奪うのは難しい。

 折檻すなわち体罰くらいなら、この時代、好ましくはないとは思われてるけど、必要悪として普通にやってることだしな。

 沈黙を破って、紫藤が僕に、次は?と促した。

 

 「それで、次なんだが、」

 

 こんど土曜日に、あの開かずの間をもう一度探検してみようよ。

 この会議室が手に入ったので、あまり必要性は高くなくなったが、やっぱり気になる。

 そういうことを伝える。

 紫藤も目を輝かせている。好きなんだな、こういうのが。

 これは二つ返事でOKとなった。

 

 「それで、もう一つなんだけど、」

 

 紫藤がかなり赤くなってもじもじしてから切り出そうとしたとき、予鈴が鳴ってしまった。

 もうそんな時間か。

 

 「明日にしようか。」

 

 目を見交わす。肩の荷が下りたのか、すこしすっきりして表情をしている。

 もう少し話しておきたいことがあったよな。なんだっけ。

 そう思いながら、時間差をつけて帰還することにした。

 

 ーーーーー

 

 思い出したのは数点。

 まず、あの筋肉男のことを説明して、警告しておくべきだった。

 これも話しにくいことだし、土曜日に話そう。

 あのときの僕の挙動については、わからないが危険な感じがした、程度でいいだろう。

 実際、なぜ筋肉男に気づいたのかは自分でも説明できない。この前のゾーンの延長みたいなものか。

 都合がよく出てきてくれたが、その後は、あんな感覚は出てきていない。

 筋肉男に出くわした後、紫藤を送っていったざくろが丘であの金髪ヤンキーどもと再会しかけた時も、発動しなかった。

 たまたまだったと思うしかない。当てにはできない。

 

 紫藤母の状態についても確認しなければ。

 一時よりは元気を回復しているというが、離婚関係でいろいろあったのではないだろうか。

 そっちの心労を考えると、油断はできない。

 ただ、離婚時に継父に引き取られることになった紫藤が、紫藤母に隔意を抱いていたりしないか心配だ。

 僕だったら、多分憤る。だって偏見だけどろくなやつじゃなさそうじゃん、継父。

 そこも含めて聞きたいけど、まあ、明日(土曜日)だな。

 

 国領ハルカ、紫藤の文芸部における親友、にも手伝ってもらうつもりであること。

 これは言っとかないと、紫藤をバイパスして話してるところを見られたら、何か誤解をまねくかもしれない。

 あの後、国領とは廊下ですれ違う程度。避けられてる気配もある。

 脅しすぎたかもしれない。ちゃんと一度謝りたいが、ちょっとおはよう、とか元気?とか聞いただけですごい怯えられて逃げ出されてしまう。正直すまんかった。

 

 あと、根取益男とかいういかにもなやつ。

 別に敵対関係にするつもりはないが、向こうがときどき絡んでくる。

 僕と紫藤は不釣り合いだといいたいらしい。国領の同類だな。

 ときどき紫藤になにか話しかけてるのを見かける。不愉快だけど、対策のしようもない。

 僕が調布と話してるのを、べたべたしてるって言ってるらしいけどな。

 実際の調布と僕の会話聞いたら、ブリザード一歩手前だったりするんだけどな。

 最近は小春日和だけど、それでもチクチクと嫌味が織り交ぜられたりするし。

 ただ、それもなんか許してしまうというか。

 まあ中身は30過ぎ、もうすぐ40のおっさんだしな。

 うっかり親父ギャグを言ってしまったことが一回だけあった。すかさず調布にズタボロに酷評された。

 そこまで言うのひどくない?って感じで、聞いてた周りが引いてたりしてた。

 

 それにこの前、紫藤に見咎められて男根切断を示唆されて「めっ」されたときから、2、3回立ち話しただけで、調布とはあまり話してないぞ。

 うん、美術室でお尻に敷かれて話したりとかね。またあんな機会ないかな。

 あいつ、調布は調布で、忙しいのか授業が終わると最近はすうっと早く帰ってる。部活に行ってるのかと思ったけど、違うようだ。

 まあ、美術部はどうも絵や陶芸や彫刻を作って展示するだけらしいから、企画とかいう感じじゃないんだろうな。

 ポスター作製もあるな。これは美術部が作るもの、高校全体の文化祭実行委員会本部で公募するものとがある。

 ちょっと筋肉痛みたいなことをこの前言っていた。バイトか何かだろうか。

 

 ーーーーー

 

 金曜の授業も終わった。

 明日、土曜日は第2週でいわゆる補習だ。問題演習とかをやる。

 土曜日まで授業かよ、って、2回目の最初のころはうんざりだったけど、最近はもう慣れた。

 ただ、時間が使えないのは残念だ。いろいろやらなきゃいけないことがあるんだけど。

 予習をすませると、僕は図書館から借りまくってきた理科実験の本を読み進めた。

 僕は文系だけど、調べる目的があるとこういったものはとても面白い。

 ネットがないので、簡単に僕がやりたいことの情報が見つかるわけではない。数ページめくって放り出してしまう本もあれば、じっくり読みこみメモを取る本もある。

 あと生物関係とか山関係の本だ。道に迷わない方法、野生動物から身を守る方法とか。

 場合によっては、紫藤父を救出して夜の山を徒歩で越えることを考えている。

 むしろ先回りされると危険か?

 地図をみながら、車が入れないがバイクが入れそうな場所とか、バイクも入れないが自転車(マウンテンバイクだな。この時期大流行してた)が入れる場所とかの当たりをつける。

 あるいは徒歩だけの場所とか、だな。

 場合によっては紫藤実父に、逃げた後、山にこもってもらうのもありか?しかし犬がいる。追跡とかもできるだろうしな。

 犬対策が必要だ。

 そうして、NHKFMのフル金のDJの声を聴きながら夜が更けていった。

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