※この作品はR-18です。

タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。   作:Marchhatter

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53 言い出せない(6)(志)

 

 「さて、ここが大教室です。」

 

 「すごい広いーー。」「階段になってるんだ。」「遠くて黒板の字が見えるかなー。」

 

 「ここは今授業がありませんが、あとで授業をやってる教室をちょっとだけ覗いてみましょう。あと、もちろん少人数の教室もあって、そちらでは少人数での演習授業をやっています。この後で、どれか一つに行ってみましょう。ーー」

 

 僕たちは、多賀島大学の見学に来ていた。

 紫藤と僕とが開かずの部屋でイチャついた翌週の土曜日。

 その後、調布のグループや僕の仲間たちに声をかけて応じた子たちのうち、部活などで支障がない10人を選んで訪問することになった。

 大学全入時代だった僕の1回目の死亡時より、この時期はまだまだ大学の権威が高い。国立大学も民営化されてなくて、まさにお役所という感じのところもあったらしい。

 でも、大学の教授陣がかなり好意的で、教授だけでなく、僕たちの高校(多賀島中央)のOBの学生が案内についてくれている。

 

 時間も限られているということで、今回は理学部と教育学部が応じてくれた。

 学部の概要説明と、簡単なゼミ形式の模擬授業、そして施設見学をやってくれた。質疑も応じてくれる。

 調布や青山、烏丸とかのトップ層もいる。だから模擬授業のときは内容について、中身30オーバーの僕が聞いてもかなり鋭い質問もされてて、対応してくれた教授も感心してたみたいだ。

 大学入学後も君たちみたいにやる気が続いてくれたらいいんだけどね、って言ってる。

 入学後少しして、やる気をなくす人が多いんだろうな。五月病っていうんだっけ。

 冗談半分だろうけど、模擬授業の担当の教授から、うち来ない?と言われて調布や青山たちもまんざらでもなさそうだ。

 

 また施設見学となると、やはり理学部は面白い。教育学部は書庫は充実しているけど、後は教室だけ。

 理学部だと、すれ違うみんなが白衣を着ているのも、非日常感がある。

 僕たちのクラスは文科系選択で、理科は1科目しか履修しない。

 だけど多賀島大学の理学部は、理科1科目で受験できるのだ。

 そのため、特に男の子たちは気が惹かれている様子。

 「おれやっぱここ受けるわ」「俺も」みたいな会話が交わされてる。

 女の子も関心はありそうだが、その対象は設備とかより飼われてる動物とかだな。

 男の子は「物」に、女の子は「人」とか「生き物」に関心がある、という傾向がある?

 あくまでざっくりとした傾向だけどさ。

 

 ーーーーー

 

 「あー、あなた!」

 

 「大村先輩!この前はありがとうございました。」

 

 施設見学中に訪れた研究室。

 ちょっときりっとした感じの、調布に少し感じが似てる白衣を着た女子大生が紫藤を見て、びっくりした様子で呼び止める。

 連休中、紫藤が啓発のバイトにいったとき一緒に参加してた人らしい。

 冷徹そうな外見の人だが、かわいいもの好きなのだろうか。紫藤がハグされてる。

 先輩、僕も紫藤をハグしたいです。あと、それ僕のです。

 

 「ちょっとあれから関心が出てきて、先生に頼んで見学を入れてもらったんです。」

 

 「いいよいいよ、おいでよ!面白いよ!理学部。」

 

 生物系の研究だと実験生物の世話とかもあるし大変らしいが、面白いらしい。

 ただ、将来の聞きかじり情報では、たしか大学院を広げすぎてバイオ系は研究者志望だと就職が大変だったような気がするな。

 民間企業だと、生物にこだわらなければいくらでも進路はありそうだが。

 せっかくだから、この先輩に話を聞きたい。

 そっと近づいてお話を伺いたいのですが、というと、喜んで紫藤と僕に説明してくれた。

 もっともこの先輩も、3年生で研究室の仮配属みたいな段階。新人もいいとこ。

 だからまだまだ分からないことも多いらしい。

 仮配属で様子を見ての調整が入り、本配属は12月になるそうだ。

 

 この先輩の仮配属先の研究室では、海洋生物の研究をしている。

 この先輩は、エビとかカニの研究がしたいらしい。実家が関係してるとか。

 モクズショイやスベスベマンジュウガニの水槽を紹介してもらった。スベスベマンジュウガニは有毒らしいけどつるっとしててかわいい。

 

 それとなくヤツザキグループからの寄付の話も聞く。

 ヤツザキからの寄付は、理学部全体に対するものと特定の研究室に対するものがあるらしい。

 若返りで知られるベニクラゲの研究室に重点的に投入されていたようだが、ほかの研究室も理学部全体への寄付で潤っているらしく、悪感情は見られなかった。

 数年前までは結構介入的で指示が多かったらしいが、最近は一部を除き放任的とか。

 目的を達してしまったからかな?少しきなくさいな。

 

 動物はどれもそうなのかもしれないが、カニの飼育も意外に大変らしい。

 カニやロブスターは、ある種のアロマオイルに影響を受けやすいらしく、上級生のミスでごく少量のクローブオイルが誤混入した際、水槽のカニが泥酔状態(?)になったことがあるらしい。半分くらいは死んでしまったとか。

 それ以来、アロマは好きだけど念のため全部止めているのよね、と先輩は苦笑いしていた。

 僕は少し聞きたいことがあったので、紫藤をつついて連絡先を交換してもらった。

 流石に僕が聞いても教えてもらえないだろうし。でもこの時代、理系の人でもメールでなく電話なのね。

 そっちの話が一段落した後、その先輩(大村先輩というらしい)が、心配そうにみなりに聞いた。

 

 「あれ以来、諫早君たちからは何もなかった?」

 

 「はい、帰りにちょっと話しかけられたくらいで、その後は顔を会わせてません。」

 

 「ちょっと気を付けてね。○○部のエース級選手だったけど、最近は成績が低迷してて、いい噂も聞かなくてーー。」

 

 「そうなんですか。結構上手くやってるみたいなこと、ーー」

 

 「あれ、嘘じゃないかもしれないけど、話半分に聞いてた方がいいわ。あと、運動部も普通の人はちゃんとしてるから!」

 

 大村先輩はそう力説する。どうもその諫早先輩とかいう人、運動部のエース格だけどちょっと下がゆるいらしい。大学ではじけちゃった感じみたいだな。

 話から推測すると、バイトのときの、あの紫藤を脅迫してた、茶髪イケメンがそうらしい。

 

 「あと、その友達の松浦君、ほら一緒にいた眼鏡かけてた人ね。その人もちょっと、良くない噂があって。」

 

 優秀だったらしいが、それをネタに女の子を食い漁ったり、ヒモみたいなことをしていたり。

 放蕩のためか留年を繰り返してて、医学部だが医師への道は事実上無理っぽくなりかけてるとか。

 あの茶髪男といた、鬼畜眼鏡だな。

 うん、どちらも僕のような非モテの敵だ。だいたいわかった。

 

 「はい、気を付けます。」

 

 「あなたのこと、気に入ったみたいだったの。待ち伏せしよう、みたいなことをこの前言ってたのをちらっと聞いちゃってーー、」

 

 なに。それは聞き捨てならない。

 紫藤をガードしないとな。横で聞いていて、そう心にメモする。

 紫藤も何か思い当たる節があったのか、ちょっと眉をひそめて、ありがとうございます、気を付けます、と言っていた。

 

 聞きたいこともまだあるけど、そろそろ時間らしい。

 引率の三浦先生が終了を告げて、そこでの話はそれまでになった。

 声を揃えてお礼を言う。少し若めのお茶の水博士みたいな教授が、大村先輩たちと嬉しそうにニコニコして手を振ってくれた。

 忙しかっただろうに、ありがとうございました。。

 

 ーーーーー

 

 お腹いっぱいという感じに見学させてもらって、僕たちは帰路に就いた。

 土曜日の午後で、まだ日が高い。

 引率してくれた三浦先生が、よかったら喫茶店に行かない?と言ってくれて、用事や門限などがある数名が抜けた残りのメンバーでお茶をすることになった。

 

 高校にほど近い喫茶店で、いいところだから時々来てみてよ、と先生は言って、全員の分のオーダーを払ってくれた。

 確かにちょっと筋を入ったところで落ち着いてて、しかもほどほどにおしゃれな雰囲気だ。

 変な常連さんが居ついているような感じもしない。

 マスターも求道者って感じではなくて、気さくだ。うん、この普通さがいい。

 こういうところに慣れてる生徒もいるんだろうけど、多くはまだこわごわとして緊張してる。

 真面目な校風だしね。みんな何を頼んでいいか判断つかねてるような感じだ。

 

 

 何を頼んだかって?僕はよくわからないからブレンドだ。苦くて目を覚ましてくれれば、それでいいんだ。

 ちなみに紫藤も、紫藤と僕を挟む反対側の隣に座った調布も同調して同じものを頼もうとしたが、紫藤にはカフェラテを、調布にはカプチーノを勧めておいた。

 違いは何かって?僕に聞かないでくれ。この世界にはまだwikiもないし。

 1回目の世界でよく同僚のおしゃれそうな女の子が口に上せていたやつを、適当に勧めただけなんだ。

 紫藤はカフェラテを両手で挟んで啜りながら、ほんわかしている。

 調布もカプチーノの表面にラテアートをしてもらったのが、気に入ったようだ。

 あまり外さなかったようだ、よかった。

 

 気が付くと、引率してくれた浦和先生が僕をじっと見ていた。

 あの連休中に文芸部の和室の部室でいちゃついてるときに入ってきた浦和先生だ。約二十年後もきりっとしたところが残っていたが、こうして相対してみるとまさに鋭角的な美人先生という感じ。

 担当学年が違うのに、ここの教育学部出身ということで引き受けてくれたらしい。

 

 「志野くんって言ったっけ、君なかなかできるね。両側に女の子侍らせて、さりげない心遣いまでして。」

 

 はて。心遣いは特にした覚えがないけど。

 侍らせてるというのも冤罪だ。調布なんか、どうみても僕を下僕にしてます。

 

 「先生、男子が僕と青山しかいないからです。それは青山にも言ってください。」

 

 「でもなんていうのかなー。うん、親密さが違うっていうかねー。」

 

 先生がちょっと相好を崩して、しみじみとした風に言う。

 わざとらしく怖がった顔をして、調布が上半身をそらして僕と距離を置いた。

 ちょっと傷つくけど、まあ、この子はそういう娘なんです。

 

 「志野ってすげぇよな。頭もいいし、運動もめちゃできるんですよ。」

 

 会話を小耳にはさんだらしい青山から、過分な評価も。君の方がすごいと僕は思うけどな。

 少なくともバスケは青山の方が上手い。頭もいいしな。将来は金融だったっけ。

 あと青山がほかの3人の女の子を上手にリードして場を盛り上げてたことも指摘しておかねば。まさにハーレム王子。

 そんななんやかんやで緊張もほどけて、大学の印象を言い合ったりしてる。

 先生も母校のことだからか、にこにこしてうんうんと聞いてる。

 

 「先生は、もう一度高校生になったらどんな進路を選んでみたいと思いますか?」

 

 ふと思いついて、聞いてみた。

 

 「わたしは、また教員かなー。教育学部ね。この職選んで、面白かったと思ってるし。

 でも、今日色々見たり、またアポで大学の先生たちと話したりしてて、全然別のことやってみるのもいいかも、って思った。」

 

 三浦先生は、考えながらそう言った。

 

 「たとえば?」

 

 「理学部に行って、カニの養殖とか、野菜工場とかもいいかな、とか。

 今日はなかったけど、法学部に行って弁護士や裁判官になってみても面白いかな、とか。普通の会社ってのも、面白いのかもしれない。いろいろね。」

 

 可能性はいっぱいだね。君たちもまだ2年生なんだし、ゆっくり考えて決めればいいよ、でも今日みたいに大学でどんな事勉強してるか、ということを見るのは進路を考えるいい機会だよね、という。

 

 「先生、それで。大学のその先にある、地元の有力企業や、地元の観光産業とかも見学を、ーー」

 

 さすが調布。見事にカットインしてヤツザキグループとかの企業見学などを陳情している。先生も苦笑しながらうんうんと頷いている。

 先生の負担を増やさない感じでできたらな。結構なブラック職業だって印象がある。

 いじめ問題とかで叩かれるし、モンスターペアレンツ問題とかも出てくる。

 この時期からそうだったかは、わからないけど。

 

 「そういえば、紫藤さん。」

 

 三浦先生が、紫藤に向かって聞いた。

 

 「その、ご両親はその後、特にお変わりない?」

 

 「はい、二人とも元気です。」

 

 いや、元気です、じゃないだろう。

 継父は体罰するDV野郎、母は過労死寸前なんじゃないか。

 そういうところを相談しないから串刺し+内側から大根おろし+焼き焼きコースになるんだ。

 紫藤に代わって聞いてみる。

 

 「先生、何か良い奨学金制度とかあったりますか。」

 

 「ええ、授業料の減免制度もあるし、地元の企業グループとか東京の財団からそういう話も来てるのよ。

 企業見学もできたらと思うけど、2年生だと通常授業と重なるからね。

 ちょっと企業見学とは方向性は違うかもしれないけど、そういった奨学生制度とかに興味あったら、今度お話してもらえるよう頼みましょうか。」

 

 「是非、お願いします!」

 

 地元の企業グループ、ってヤツザキか。

 先生の目の色とかに不審な点はなく、むしろ紫藤を思いやる一心のようだ。

 多分、ヤツザキのグループの多くの人も、善意で行動してるのかもな。

 あの飯場は別として。

 いや、あの飯場もある意味最低最悪じゃない気もするんだよな。

 ところどころ、意外に待遇が悪くなかったりもする。

 谷津崎老人を取り除くだけで紫藤を救えるのか。

 もっと巨大な悪がグループにあって、そこをどうにかしないといけないのか。

 そこも不明だ。

 

 先生がちらっと時計を見た。そろそろ引き上げかな。

 調布はこのやり取りを聞いていたようだが、何も口を挟まなかった。

 今は軽く目を閉じ、流れるビートルズの曲を聞いていて、リラックスしているようだ。

 日本語に訳すと、僕のギターが優しく咽ぶ間、とかいう曲だっけ。

 横顔に視線を感じたのか、調布が目を開けて、睨み返してきた。

 だけど機嫌はよさそうだな。見つめあってて、調布の口元に笑みが浮いた。

 この喫茶店は気に入った。また来よう。

 

 ーーーーー

 

 学校に戻って解散。三浦先生には丁重に礼を言う。

 いいのよいいのよ。またなんかあったら相談とかしてね、と言ってもらえる。

 紫藤と調布と僕とで、なんとなく、例の仮部室となった資料室に来てみる。

 

 「いい部屋ね、結構落ち着くじゃない。」

 

 初めて来た調布が、早速ソファに掛けている。紫藤もその横に。

 僕は会議机の椅子を方向転換させて、ソファの前に座った。

 流石に調布も緊張していたのか、歩き疲れたのか。

 ふわぁ、とあくびしながら伸びをした。

 もちろん、突き出された胸を盗み見ると同時に、少し隙間が空いたブラウスとスカートの間を凝視する。

 うん、白だな。

 ふと気が付くと、紫藤の低温の視線が。

 怖い。

 

 「それで、あの話、していいかしら。」

 

 調布に促されて、計画の土台を話し、悩んでいること等を伝える。

 

 「そこまで心配しなくても、これでも十分にいけるとは思うけど。」

 

 「いや、犬もいるしな、あっちには車もあるーー、」

 

 「防御力高いってのはわかってる。でも、相手は中からの脱走を警戒してるのであって、外からの襲撃はあまり考えていないんじゃないかしら。」

 

 「ただな、近くに宗教団体があってな、ーー」

 

 その修験道関係のことを説明する。

 緊張関係にあるので、外からの襲撃に備えているかもしれないことを。

 大型犬3匹というのも、かなりの過剰戦力だろう。

 犬の戦闘力は軽く人間を凌駕すると聞いたことがある。

 

 「なるほど、そういうことね。だったらもう1つ、2つ切り札が欲しいわね。」

 

 計画をアップグレードしようと状況を再度整理し、計画を点検する。

 もちろん穴だらけだが、最低限、紫藤父だけ逃がせればいい。

 そのとき、紫藤がおずおずと切り出してきた。

 

 「ねえ、その飯場。女の人を呼んでる、って言ってたよね。」

 

 「うん、そうだけど、」

 

 女の子にはあまり話したくないことの一つだ。一種の売春、多分管理売春で違法行為だからな。

 特にクソ継父に売られて、被害者になりかけた紫藤には聞かせたい話じゃない。

 ただ、この女の人に協力してもらえれば計画はかなり確実になりそう。

 しかし、多少のお金で協力が買えるか怪しい。

 協力しても、ばれたら金どころでない、相当に高いリスクを負うことになるだろうし。

 風俗関係って、たいていはある程度やばい人たちがついてたりするじゃないか。

 

 「実はね、ーー」

 

 紫藤はもじもじしながらも、話してくれた。

 要は、紫藤の家にくる客の一人が、不穏な会話をしていたということ。

 飯場に派遣されてる女の人が、別の過酷そうな現場に売られそうであること。

 それだけなら、かわいそうだけど懸案だらけの僕たちがあえて介入すべきようにも思えないが。

 

 その話に出てきた女の人。紫藤父のいる飯場へ派遣されてる商売女である可能性が高い。

 あの飯場に派遣されてる女の人のは二人いるから、確実ではないが。

 あと、売り先はその近所のカルト教団のようなことを言っていたという。

 あの修験道の可能性が高い。

 僕は、直感した。これは、パズルの空いている部分へのピースになりうると。

 まったくの偶然で、むしろ都合がよすぎて疑うレベルではあるが。

 調布も関心を示している。

 

 「好きで体を売ってるんじゃないなら、お金でも協力してくれるかもとあたしは思ってたけど、高くつきそうよね。

 収入源すべて失う可能性も、元締めや女衒にヤキを入れられたりして、命を失ったりする可能性もある。

 ただ、もしその女の人が、その飯場に来てる人なら。

 ーー本人にこの話、危険なところに行かされる可能性を伝えて、恩を売る。

 そして脱出、足抜けへの協力を交換条件にした方が、いい結果になる見込みが高そうね。」

 

 もっとも、その人が逆にあたしたちを売る可能性もあるけどね、と。

 さすが調布は性格が悪いだけあって(?)、最悪の可能性も考えているようだ。

 

 「だよな。もちろんまったく別の現場なのかもしれないがーー、」

 

 「その現場の『近く』で、『竜神様』でしょう?

 出来すぎかもしれないけど、多分、その人、2分の1の確率で、同一人物よね。みなりの実のお父様の飯場に来てる人と。」

 

 「わたしも、もしまた来たら、話を注意して聞いてみるよ。

 ただ、こっちから聞くこと自体が不自然だから、聞き耳を立てるだけだけど。」

 

 「そうだな、危険性がないようにな。」

 

 もう少し意見を交換した後で、そろそろ下校時刻だ、ということで僕らは帰ることにした。

 僕と調布は、紫藤を挟んで歩く。ちょっと子供と両親って感じもするな。

 調布を見ると、調布もこっちを見た。レアなことに、ごく自然に微笑まれた。

 笑い返したら、振り向いた紫藤に見られた。むうって、頬を膨らませてた。

 駅までの道で仲直りしないと。

 

 ーーーーー

 

 調布は寄っていくところがあるから、と言って、先に僕たちを駅に向かわせた。

 前にも書いたが、最近、調布は何か部活ではないことをやってる。筋肉痛のことをこぼしたり、一度腕に包帯を巻いてきたと紫藤が言ってた。

 想像はつくけど、間違ってるかもしれない。

 いずれにしても、調布の能力には信頼を置いてる。悪いことにはならないだろう。

 重そうな紫藤のスクールバッグを持ってあげる。しかし、紫藤はそれが不満らしい。

 紫藤にとられるのを防ごうと高く上げた僕の腕に、ジャンプして飛びついて取り返そうとしている紫藤をあやしながら、僕はそう考えた。

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