※この作品はR-18です。

タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。   作:Marchhatter

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91 前夜祭(3)(紫)

 

 中華料理屋さんの料理は、わたしの想像を超えて美味しかった。

 おそらくは他のみんなの想像をも超えて。

 

 「ふう、美味しかった!ボクはお腹いっぱいだよ。でも、」

 

 「デザートは、入るわよね。」

 

 「うん、ーー志野くん、いい?」

 

 「ああ、もちろんだ。時間は、ーーまだ大丈夫そうだしな。」

 

 そう言って、志野くんがデザートのメニューをもう一度召喚してくれた。

 みんなでメニューを見つめる。

 ふむふむ。

 

 杏仁豆腐?

 これ、缶詰のやつ、昔はときどき食べたことあるけど。

 フルーツポンチ劣化版って感じで、あまり好きじゃなかった。

 でも、この店のは美味しいかも?

 麻婆豆腐も、すごく辛くて美味しかったし。

 

 この豆腐花ってのも気になるな。

 豆腐。豆腐か。ヘルシーそうだよね。

 

 マンゴープリンって。

 マンゴー自体、食べたことないよ。

 

 「みなり、一つずつ取って交換しましょうよ。あたしは豆腐花。」

 

 「そうだね、ボクはこの胡麻団子というのを頼んでみるよ。」

 

 「僕は、これだな。ミルクプリン。」

 

 「わたしは、杏仁豆腐を!」

 

 この店の人はあまり愛想ない感じなんだけど、なぜかにこにこしながらオーダーを取ってくれた。

 温かい烏龍茶を飲み、周りを見回すと、なぜかさとみんたちがかわいいものを見る目でわたしをみているのに気が付いた。

 うん?なんだろう?

 わたしより、ハルカちゃんのほうがいろいろぴーぎゃー言ってなかったっけ。

 

 「いや、いいのよ。真剣に悩んでる様子が可愛かったの。」

 

 「そうだな。食い入るような目線がいい。」

 

 なんだか大人の雰囲気を、余裕を漂わせるふたり。

 うーん。

 わたしもちょっと、あのアダルトな雰囲気にあこがれるな。

 さとみんは強敵だ。敵じゃないけど。

 なにより、わたしよりも進んでるっぽいし。

 まあいい。すぐに追いつくよ!

 

 ーーーーー

 

 デザートを一口ずつ交換する。

 うん、こんどはこれもいい!

 胡麻団子もミルクプリンも、豆腐花も。

 (ちなみに胡麻団子のボリュームに負けたハルカちゃんは、ひとつだけたべて、志野くんのミルクプリンと交換してた。)

 だけど、想像をいい意味で超えてきたのは、わたしの選んだ杏仁豆腐だった。

 

 (フルーツポンチの親戚じゃ、ないんだーー!)

 

 わたしが今まで食べてたのは、何だったんだろう。

 出てきたのは、私の乏しい知識の範囲では、さとみんの家で食べたレアチーズケーキのような外観のもの。

 そして味は、ーー今まで杏仁豆腐と思って食べてたものと、比べ物にならない。

 美味しい。美味しいんだよ!

 べたべたに甘い訳じゃない。むしろ甘さは、ひかえめだ。でも。

 すごい。

 こんな美味なものがあったとは。

 薄く、あるいは厚く削って口に運ぶ。

 真ん中の赤い実も食べる。

 名残惜しく最後の一口を食べて。

 温かい烏龍茶。

 ふう。

 

 ん?

 ふたたび、みんなの生暖かい視線に気づく。

 赤面する。

 うん、わたしは大人になるんだ!

 かっこいい大人に!ミステリアスな大人に!

 

 挙措動作も、あらためるけどさ。

 まずは背を伸ばすべきなのかな。

 4人の中で、わたしが一番小さい。

 子供っぽいところのある、スレンダーなハルカちゃんも、身長ではわたしよりずっと高い。

 あの牛さんの牛乳も頑張って飲んでみて、鉄棒にぶら下がるのを日課にしてみようかな。

 

 ーーーーー

 

 もう8時半すぎ。みんなお腹も満たして、お茶を飲みながらクラスの人の話とか、先生の話とか、期末試験の結果の話とかしてる。

 試験は全科目帰ってきたけど、まだ集計結果は公表されてない。間に合わなかったな。今回はけっこう頑張ったんだけどな、志野くんに勝てたかな。

 志野くんはちらっと時計を見ると、そっと席を外して、会計をしに行った。

 

 「いいのかな?お金とか払いに行ったみたいだけどーー、」

 

 けっこうかかるんじゃないかな、とハルカちゃんが心配そうだ。

 お財布を取り出して中身を確認してる。あの不安そうな表情は、残額で足りるか自信がないときの顔だよ。

 

 「彼、こういうときに払わせないのよ。一応聞いて、いいってことだったらお礼を言って、別の機会にお返ししましょうね。」

 

 「ちょっと罪悪感があるよね。」

 

 うう、わたしなんかバイト代までもらってるよ。

 返すよ。いつか、必ず!

 

 「大人って感じだね!ボクは、ちょっと彼のことは誤解してたかも。」

 

 ハルカちゃんは、すこし安心した様子。

 うん?ちょっと雲行きが怪しいぞ。

 わたしとさとみんは、視線を交差させる。

 うん、考えてることはわかる。

 わたしもさとみんも、これ以上、ライバルが増えるのは避けたいんだ。

 いや、ハルカちゃんはいい子なんだけど。でもね。

 場合によっては、ちょっと志野くんの情けないところを吹聴してでも、ーー

 

 「ボクは、彼は恐ろしい邪悪なサディスト男だと思ってたけど、そうじゃない、ーーー」

 

 ん?んん!?

 ハルカちゃんが、志野くんの評価を改めてる。おそらくは、好意的に。

 うーん、ハルカちゃんだったら、まあいいけどさ。ーー

 

 「彼は、美味しいものを良く知ってる、大人っぽくて気前のいい、恐ろしい邪悪なサディスト男なんだ!」

 

 ずこっ。

 さとみんもはずされたのか。眠いときにひじが机から落ちたときみたいな表情。

 まあハルカちゃんは、こんな感じなんだよね。

 でも、ハルカちゃんの声からは、かつてはあったトゲというか、彼に対する敵愾心が抜けてる。

 まあ話すとわかるよね、実はシャイな純情少年だって。

 見かけのクールさとは、ぜんぜんちがう。

 ハルカちゃんも、わたしの大切な親友だ。志野くんにあまり敵意を持たれても困るし、そのくらいの評価でいてくれたら、まあちょうどいい。

 さとみんと、また目を見かわす。

 うん、たぶんさとみんも同じ思いだな。

 にこっと笑いかけられたので、満面の笑みで答えた。

 

 あ、志野くんが帰ってきたな。

 そろそろ出ようか。名残惜しいけど。

 志野くんに代金について聞いて、大丈夫だといなされて。

 お礼を言って、私たちは荷物をとりまとめ、店を出た。

 外は暑いけど、日中のあの耐えられないほどの焦げるような暑さはなくなってる。

 良く効いた冷房に慣れた身からすれば、心地よい気もする。

 お店の感想をわいわい言い合ったりしながら、わたしたちは学校に急いだ。

 

 ーーーーー

 

 9時が閉門だ。まあ、それに遅れても多分怒られるだけだと思うけど、そんなのやだ。

 8時50分、ややぎりぎり目に門を通過。

 

 「あ、しまった。おやつとか飲み物とか、要らなかったか?」

 

 飲み物はOKで校内に自販機もあるけど、おやつはグレーゾーン。

 大目にみてもらえることが多いけど、先生によってはダメ出しすることがある。

 

 「大丈夫でしょう。部屋にはお茶があるし。ーー大きな声じゃ言えないけど、少し持ってきたわ。」

 

 「さとみん、おやつは、ーー」

 

 おやつはグレーゾーンなんだよ。

 

 「大丈夫だよ、ボクは生徒会の一員ではあるけれど、それ以上にみなりんとさとみんの友人でもあるしね。友人は売らないよ。友人は、ね。」

 

 そっちの男は、別かもよ~。

 さあ、今のうちに悪事を白状して、媚びへつらって命乞いするんだ!

 と、ハルカちゃんが冗談を言ってる。

 うん、大丈夫そうだ。

 ハルカちゃんの友達枠から外されていじられてる志野くんも、苦笑しているが特に気分を害した様子はない。

 用務員さんに挨拶をして門をくぐり、旧管理棟に戻る。

 あとは、はみがきをして寝ることになるのかな?

 

 ハルカちゃんとさとみんが、何か文化祭のオペレーションについて話してる。

 さとみんは、もちろんすごいけど。

 こんなときのハルカちゃんも、おちゃらけたいつもの感じとはちがって、とても有能そうなんだ。

 

 「志野くん、」

 

 ちょっとぼんやりと考え事をしている志野くんに、そっとささやきかける。

 

 「うわっ、ああ、みなり。どうした?」

 

 「志野くん、あとでちょっと冒険しようよ。」

 

 夜のお散歩。楽しそうだと思わない?

 志野くんは、目を少し見開いて、そして笑って。

 意外とみなりは、勇敢で大胆なんだな。と、そう言った。

 いや、だってこんな機会って、あんまりないんじゃないかな。

 音楽室のピアノとか、確かめてみたいよ、本当に鳴るのか。せっかくだし。

 

 ーーーーー

 

 例の作戦のことについて、また少し打ち合わせて。

 みんなで流しに行って、はみがきをする。

 はみがきのタイミングというのは、家庭によって違うようだ。はみがき粉つけるかどうかも。

 朝起きたときとか、各食事のすぐ後とか、夕食後だけとか、寝る前だけとか。

 おもしろい。

 自分と同じような生活を送ってると思っても、全然違ったりするんだね。

 そこらへんがすごく違ったら、結婚とか大変だろうな。

 すごくきれい好きの人と、汚くても平気な人とか。

 

 あれ?そういえば。

 わたしは一度、すごく荒れた家を志野くんにみせてしまった気がするぞ。

 大丈夫かな。

 志野くんも、結構部屋が散らかったりしているのかな。男の子だし。

 鏡の中で無心に歯をみがいている志野くんをみながら、そう思った。

 

 ーーーーー

 

 10時消灯が建前。

 当直の先生が10時少し前に、宿泊者の確認をしにくる。

 先生も大変だな。でも、代休がたしかあるはず。

 先生におやすみなさいを言った後、一応は電気を消して、暗闇の中に横たわる。

 10時だ。

 

 うわっ!

 ひそやかに、忍び笑いがする!

 

 「もう、ハルカちゃん。何がおかしいの?」

 

 声の主を突き止めて、呼びかける。

 ちょっと、怖かったよ。

 

 「いや、このシチュエーションが、ね。」

 

 「ハルカは、初めてなのかしら?」

 

 「いや、去年も泊ったんだけど、さ。そこそこ楽しかったんだけど、こんなには楽しくなかったよ。」

 

 ごそごそ。

 

 ほうっと、小さな明かりが灯る。

 

 「ほら、蝋燭持ってきたんだ。もちろん、夏は怪談。九十九話だよね!」

 

 どこからか見つけてきた灰皿に、立ててる。

 

 「あら、あたしは今夜はトランプかと思ってたわ。」

 

 「ふたりとも!ーーー、」

 

 「志野も呼びましょうよ。ーーみなり、ハルカ、いい?」

 

 「あ、いいけど、ーー」「いいよ!」

 

 ハルカちゃん。やっぱり志野くんにアレルギーを示さない。

 いろいろ話して、志野くんのことがわかってきたってこともあるんだろう。

 餌付けされたのもあるからかな。

 

 「志野、聞こえてるんでしょ?来なさい。すぐに。」

 

 「ああ。」

 

 ごそごそ、と音がして、少し髪の毛がくしゃくしゃの志野くんが決まり悪げに現れた。

 

 「なんだ?」

 

 「ああ、そうね。ーーわたしたちの玩具になりなさい。」

 

 ええっ!

 

 「ああ?それは、いったいどういう「いいわね?」ーーハイ。」

 

 「さとみんっ!」

 

 さとみん、いつの間に!

 何か志野くんの弱みを握ったに違いない。

 でないと志野くんがこんなに従順になるはずがないよ。

 

 「冗談に決まってるでしょう。ーーねえ、志野。怪談とトランプ、どっちがいいかしら?」

 

 「そうだな。ーー両方でいいんじゃないか?」

 

 志野くんは、提案する。

 トランプで負けたやつが、1つ怖い話をする。

 そして、蝋燭を一つ消す。

 それでどうだ?と。

 

 ーーーーー

 

 「ーーそうすると、わかったんだ。それは、実はおじいさんじゃなかったんだ。おじいさんの皮をかぶった、ーーー」

 

 ゲームは、大貧民。

 1回戦目の敗者は、ハルカちゃん。じゃんけんの運がなかったね。

 なかなかに残酷かつグロテスクな話。

 おじいさんの皮をかぶった何物かが、孫娘の家を訪れる。

 孫娘のとっさの機転で助かるという話。

 語り口も、不思議に話にマッチして、ぞくぞくするものがある。

 寝る前のトイレはさとみんについてきてもらおう。

 

 「怖い、怖いよハルカちゃん!」「怖い話ね。」「グロい。」

 

 「えへへ、次だね!」

 

 また、トランプが配られる。

 志野くんの提案で、話をした人は貧民に上がることになった。

 ううむ。

 次はわたしが大貧民スタートか。

 

 トランプの札が行き交う。4人の影が、ゆらゆらと動く。

 衝立越しだから、外からは見えないはずだ。

 ともしびに照らされた顔が、陰影を深くする。

 不思議な夜だ。わたしはきっと、この夜を生涯、忘れないだろう。

 

 ゲームオーバー。

 志野くんが敗者に。

 苦笑いしながら、次の話をしはじめる。

 不思議な夢を見る話。遊園地にあるスリラーカーのような電車に乗って、するとそこに小人がやってきて、手に手に持った刃物ややぎざぎざスプーンで、電車の後ろの席の乗客から、ーーー。

 

 「うわっ、怖!」

 

 ハルカちゃんがプルプルしてるよ。わたしも、なんとも言えずぐわーんって感じに、重力が強くなったような錯覚を覚えた。

 はじめて聞く話だったな。

 ろうそくの明かりがまた一つ減った。暗闇が増している。怖い。

 

 「ああ、僕が考えついたりした話じゃない。昔、読んだ話だ。」

 

 すまなそうな顔で言っている。

 いや、自分で話を考えるって難しいよ。文芸部のわたしでも。

 

 「結構来るものがあるわね。じゃあ、次。」

 

 さとみんは頼もしいな。

 落ち着いた手ぶりでカードを配る。

 

 カードが行き交う。

 

 「あら、負けたわ」

 

 さとみんが苦笑い。

 さとみんは、捨てても捨てても戻ってくる、くまの人形の話。

 主人公の女の子、くまから逃げようとして、ーー

 これも怖かった。

 

 「もう、あと一つね。」

 

 「なあ、本当に最後までやるか?ここで止めとかないか?」「うん!」

 

 うんうん、わたし話す番になっても、「青い血」「悪の十字架」くらいしか持ちネタないよ!

 勝ち逃げしようと、同調するわたし。

 

 「あら、こわいのかしら?」

 

 「いや、そうじゃないんだが。」

 

 志野くんが少し落ち着かなげだ。

 たぶん、こわいんじゃないだろうけどな。志野くんは超合理的な人だ。

 でも、わたしたちに影響があるのを恐れてるのかもしれない。

 

 「あ、ああ。やめとこうよ。ボクも、みんなも明日は早いし、ね。」

 

 ハルカちゃんが珍しく同意。ちょっと青ざめて見える。

 怖かったのかな。

 

 ーーーーー

 

 みんなでトイレに行く。志野くんは、耳をふさぐようさとみんに厳命されてた。

 おとなしく従ってる志野くんは、かわいいと思う。

 

 おやすみを言い合って、布団に入る。

 風は適度に通ってる。昼は暑かったけど、今はそうでもない。

 わたしは暗闇の中、眠れずに天井を見つめていた。

 明日は、普通の文化祭。夜は、外泊しようか。

 明後日、いよいよ文化祭最終日。その後、すぐに準備を整えて、お父さん、本当のお父さんを救いに行く。

 志野くんも、ーーさとみんも、ハルカちゃんも、行く。

 いいんだろうか。

 見つかったら、バレたら、すごく怒られるだろうし。

 そもそも、相手がヤバい人かもしれない、って情報もあるんだ。

 そんなのに付き合わせて、いいんだろうか。

 そんなことをぐるぐる、考えていた。

 

 そのとき。

 

 かさ、と音がした。

 衝立の隙間から目を凝らすと、月明かりに照らされて、長い影が音もなく動いていく。

 志野くんだ!

 

 わたしも、すぐに。

 できるだけ、音を立てないように布団を抜け、立ち上がって歩く。

 人影は、入り口近くまで行っていたが、わたしに気が付いて立ち止まった。

 

 「みなり、どうした?僕はただ、トイレに行ったりするだけだぞ。」

 

 ささやき声。

 なんか、その声で下の名前を呼ばれると、ぞくぞくとうれしい。

 

 「うん、わかってるよ。でもさ、」

 

 わたしもいっしょに行きたいな。

 べつに、志野くんを鍛えたりしなくてもいい。ぎゅってしてほしい気がする。

 ただ一緒にいるだけでもいい。窓からお外をみるだけでも。

 そう言うと。

 志野くんは、頭を掻いた。

 

 「そうだな、ーーちょっとだけ、仮部室行くか?」

 

 あそこなら、先生も来ないだろうしな、という。

 わたしは、志野くんの顔を見上げて、満面の笑みで頷いた。

 

 ーーーーー

 

 仮部室まで来て、でもわたしたちは考えを変えた。

 どうせなら、開かずの間まで行こうと決めた。

 ゆっくりしたかったのは、ある。

 えっちなことをするためじゃ、なくて。

 あの二人だけの秘密基地に、行きたかったんだ。

 なんか、志野くんもそう思ってた気配だ。

 リスクは高いけどね。だって、今日は同じ階の他の和室にも人がいる。

 ほんのちょっとだけだ。

 

 カギを文芸部室に戻って手に取り、ほとんど真っ暗闇に近い中、そうっと足音を忍ばせて5階に上がる。

 すごい非日常感。どきどきする。

 まっくらなのにな。志野くんの視線を脚に感じる気がする。

 自意識過剰かな?

 

 開かずの間の2つの扉を抜けて。

、志野くんが、息を飲んだ。

 なぜ?

 わたしには、最初はさっぱりわからなかった。

 そう、志野くんには、何かがはっきりと見えているようだった。

 入った直後には、わたしには、わずかに鎧戸の隙間から差し込む月光の照り返しを除いては、まっくらにしか見えなかった、その部屋に。

 

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