※この作品はR-18です。

タイムリープで同級生の残酷な運命を変えようと頑張る話。   作:Marchhatter

95 / 321
 本日の2回目の投稿です(2/2)。お読みになる際に順番にご注意ください。


95 文化祭(3)(紫)

 ーー今回の文化祭はいろいろ濃い。

 いや、文化祭だけに限った話じゃないけどね。

 わたしは烏丸さんとワゴンを運びつつ。

 さとみんと並んで、暗い講堂で観劇しつつ。

 何度も、そう思い返していた。

 

 ーーーーー

 

 昨日のタイムスリップ体験(これはちゃんと発動条件を検証しなきゃ。あの頭蓋骨というアイテムは必須なんだろうけど、それ以外は?日付?時間?人?)の後、わたしは志野くんのふとんにもぐりこんだ。

 

 だってわたしの横のハルカちゃんがナナメに、〼←こんな感じに寝てて、わたしの領土を侵略してたんだ。ハルカちゃんの寝相が悪いのは知ってたけど、あんまりだ。きっとハルカちゃんのおばあちゃんも苦労したことだろう。

 

 志野くんはびっくりしたみたいだけど、なんにも言わずにそっと腕の中に入れてくれた。

 衝立がすき間だらけだからだろうな。こっちのほうが風が通って涼しい。

 背中に志野くんを感じながら、わたしはふとうれしくて、ふふふと頬が緩むのを感じた。

 

 だって、このわたしは。

 本当に平凡な女子生徒にすぎないんだよ?

 同年代だけに限って言っても、日本に何十万人といるだろう女子高生の一人でしかない。

 鏡をみても、まあふつうの女の子が見返してくるだけだ。

 ちょっと小柄って以外に、特徴らしい特徴はない。

 ストーカーに追い回されたり、母の再婚相手と上手くいかなかったりとか。

 多少不幸な運命に見込まれてる気がするけど、それも普通にありうる範囲だと思う。

 

 でも、最近は明らかにその「普通」をはみ出てる。

 まあ、志野くんという彼氏(って言っていいのかな)ができたってのは、普通の範囲だろう。

 私の学校に限れば、珍しいことは珍しい。でもないわけじゃない。

 でもさ、志野くんとこんないろいろなことに遭遇するのは、普通じゃないよ。

 最近、ますますその「普通の範囲」からのはみ出し方がすごくなってる気がする。

 あのテレパシーみたいなのを聞いたのとか。

 今日、いやもう昨日かな、なんて、タイムスリップだよ、タイムスリップ。多分、未来への。

 そんな体験、絶対にない。世界の数十億人の中にだって。

 まあ、七不思議の伝承を聞くと、過去にはあのタイムスリップ体験をした人もいたのかもしれないけどさ。

 あれ、でも伝承では他の世界ってなってた気がする。別の体験だったのかな。

 

 ともかく。

 わたしは背中から抱いてくれてる志野くんからは見えないだろうことをいいことに。

 ふにゃあっ、と気の抜けた笑みを浮かべて。

 幸せな気持ちで、眠りについた。

 志野くんはわたしが思ったとおり、寝相は悪くなかった。

 わたしは朝まで、幸せな気持ちのまま。

 短いけれど、充実した眠りを貪った。

 

 ーーーーー

 

 朝、わたしはさとみんの怒りの波動で目が覚めた。

 うん。これはわたしがわるいよ。わたしが勝手にもぐりこんだんだ。

 でもさとみん的には許しがたいことだったらしく、志野くんがこってりと絞られてた。

 わたしの方はかいがいしく無事をチェックされた。

 でもね、さとみんも本当はわかってると思うんだ。

 志野くんは、その、さとみんやハルカちゃんもいるのに、わたしを襲うなんて。

 そんなこと、絶対ないよ。ましてや鼻血ブーなんだよ。

 だけどさとみんやハルカちゃんは志野くんが危険だと考えてるみたいだ。

 違うんだけどなあ。

 あとでフォローしよう。ごめんね志野くん。

 

 朝食をすませ、部屋を引き払い。

 朝9時にホームルーム。もう机が半分ないので、立ったまま、先生の話を聞く。

 この学校の先生は、やっぱりいい人が多い。ちょっと変わってたりするけど。

 わたしたちの担任の先生も変なあだ名をつけられてるけど、かえって誇りに思ってる気配。

 変人だ。変人だけど、悪くない。いい先生だと思う。

 

 5分で激励をすませると、さいごの設営とチェックだ。

 カーテンと暗幕とで、スタッフ待機所と更衣所を作る。

 テーブルに見立てた机には、テーブルクロス。一枚板でないので、たとえば足が当たって隙間ができてティーカップとかが落ちたら大変だ。だから、島にした机どうしは養生テープで連結するし、必ずトレーを使う。

 

 あとは招じ入れるだけだな。

 男子がみんなで円陣をつくって、おうって気合を入れてる。わたしたち女子もおもしろそうなので、入れろーと言って入れてもらう。

 結局、みんなで、そう、全員でやった。もはや中心とかわからずぐしゃぐしゃだったけれど、たのしい。

 

 9時半に移動、40分から開会式と全校集会。

 うちの大講堂は全学年が収容できる。後ろの方だと少し見にくいけど。

 校長先生の訓示を聞いて、生徒会長が開会の言葉を述べる。

 ハルカちゃんが生徒会長さんの斜め後ろに控えてる。

 こうしてみると、すごくきりっとしてて美人さんにみえる。

 すごくキャリアウーマン(?)っぽいんだ。

 

 さとみんと志野くんは、来訪してくるお客さんの受付に回ってる。

 ちょっと寂しい。

 ただ、わたしはさとみんグループの友達もいるし、何より今回の文化祭の準備でいろいろそれ以外の子たちと話す機会もできてる。だから、まあ大丈夫だ。

 今回の文化祭は楽しい。

 わたしの1年のときのクラス企画は「英語のことわざ」がテーマで、いい勉強にはなったけど、あまり面白くはなくてみんな目が死んでたからな。

 担任の浦和先生もちょっぴり可哀そうだった。

 

 ーーーーー

 

 特別講演は、うちのOBの作家の人の話。

 もう50近い人なんだけど、大学の話とかすごいおもしろい。

 ただ、昔は大学紛争とかがあって、機動隊と学生が殴り合ってたみたいなことも言ってた。

 今はそうじゃないんだろうけどな。すごく自由な感じ。

 大学、やっぱり行ってみたいよ。 

 

 その次がチアリーダーの演技。これはすごいよ。

 3階建てのピラミッド作るのは、わあすごい、って感じだったけど、まあ想定範囲だった。

 崩すのに度肝を抜かれた。あれ、上の人ってぱらっ、って後ろ向きに倒れて落ちていくんだ。

 で、下にいる遊撃手が抜かりなくキャッチ。

 すごい信頼関係がないと、無理だよね。

 去年も見たはずなんだけどな、こんなだったっけ。

 

 わたし的には、次の演劇のドラマが気に入った。

 いや、気に入ったっていうか。気になった、というか。

 「胸に余韻が残った」って感じかな。

 女性型アンドロイドと男の人のラブストーリーにみえるんだけど、ーー本質は違うんだと思う。

 女性型アンドロイドは、記憶容量の関係で、記憶がごく短時間しか保持できない。たしか3日間とか。

 もっとも、アンドロイドたちはロボットじゃない。それぞれ個性がある。

 そして数年単位の記憶容量を備えた特別な新型アンドロイドが作られたんだけど、逃げ出してしまう。

 それを追ってる男の人の話。

 でも、物語が進むにつれ、その新型アンドロイドじゃなくて。

 ほんの数日しか記憶が持たない、旧式アンドロイドに男の人は安らぎを、愛を見い出す。

 でも、少しずつ、旧式アンドロイドの記憶は劣化していく。

 少しずつ、休止する時間が伸びていくんだ。

 おそらく、その末に、アンドロイドの「死」があるんだろう。

 その宿命を暗示して、照明は少しずつ暗くなっていき。

 最後に、追想の中の二人の出会いのときの言葉をリフレーズして、劇が終わった。

 ずうん、ってした余韻が残ったな。

 いろんな捉え方があるんだろう。無理に何かの教訓を読み取る必要もないのかもしれない。

 ただ、わたしには。

 「特別なもの」と「平凡なもの」。

 ときどき考えてる、そのことに関係してる気がした。

 男の人が、いかにも特別な最新型アンドロイドでなく。

 スペックからいえば平凡な、たくさんある量産品の一つにすぎない、旧型アンドロイドを選んだこと。

 そしてその旧型アンドロイドは、まもなく壊れるであろうこと。

 それは、何を暗喩するものだったんだろう。シナリオライターは、何をそこにみていたのだろう。

 人を、いやこの場合はアンドロイドなんだけど、人を特別たらしめるものって、何だろうか。

 長命な新型アンドロイドでなく、短寿命な旧型アンドロイド。

 

 なんだか、わたしは志野くんとわたしのことを重ねて考えてしまった。

 平凡なわたし。平凡な旧式アンドロイド。

 平凡なものが特別たりうるには、ーーそれに見合うだけの悲劇を要する?

 ちょうど、質量保存の法則のように。

 輝かしい光を平凡なものが受けると、それを贖う悲運という影が投じられるのだろうか。

 ーーそうだとすると。

 平凡なわたしには、果たして、ーー。

 

 そんな思いを断ち切るように、吹奏楽部が賑やかにジャズのスタンダードナンバーを演奏。

 わあっと空気が明るくなり、わたしの心はそこから逸れた。

 ふと後ろの方をみると、さとみんと志野くんが戻ってきてた。

 手を振ると、さとみんがにっこりと振り返してくれた。

 

 ーーーーー

 

 午前中の、全校共通でのステージ発表が終わった。

 12時からは、クラス企画のシフトが入ってる。 

 普通の子は1時間ずつのシフトなんだけど、実行委員であるさとみんと志野くん、企画委員であるわたしとは1時間半入れておいた。

 最初の立ち上がりが肝心だ、って志野くんが主張して。わたしたちももっともだと思った。

 いや、はじめは本当にひやひやしたよ。

 マニュアルも作ったし、みんな一応練習もしたはずなんだけど。やっぱりぎこちなくて。

 さとみんが騎虎の勢いでさばいて見本を見せて、やっとエンジンがかかった。

 さとみんは艶めかしい感じの(既製品だと思う)深紅のチャイナドレスに身を包んで。

 頭をお団子2つにまとめ、軽く目元にも切れ長なシャドウを入れ、長いまつ毛をいっそう引き立たせて。

 本当に退廃的っていうか、妖艶っていうか。

 魔都の阿片窟が舞台の冒険小説に出てくる、謎めいた女間諜みたいな。

 そんな感じだった。

 すうっと片膝をついて、メニューを捧げ持つ姿に。

 相手のお父さんみたいな人も、明らかにどぎまぎしてたね。

 もちろん、志野くんも。

 目を皿のようにして、さとみんの(略)。

 罰だ。

 

 ともあれ。

 最近こそ緩んできてるけど、日頃は男嫌いを公言して塩対応のさとみんがそこまでやってみせる。

 それがなんだか女の子たちの心臓にぐっと訴えるものがあったらしくて。

 女の子の方は、かなりギアが入った。「あそこまでやるんだったらわたしたちだって」って感じかな?

 

 男の子の方はもう少しエンジンがかかるのに時間かかったけど。

 志野くん、高木くん、青山くんの三銃士ががんばって、こっちもなかなかさまになってきた。

 ちなみに志野くんは怪しげなターバン姿。高木君は怪しげなカンフー映画の主人公もどき。青山くんは怪しげな洋館の執事スタイル。

 みんなそれなりにかっこいいんだけどさ、怪しさ半端なかった。怪人三人組だったよ。

 

 志野くんと高木くんは、幼稚園くらいの男の子には大人気だったね。昇竜拳のまねごとを高木君がして、志野くんがうわあっていってやられるふりをして受けてた。よく思うけど、男子の精神年齢って女子-5と女子÷1.5の間くらいだよね。

 端正な甘い顔の青山くんは、保護者のママさん的な年代の人たちに大モテだったよ。うん、そこだけホストクラブの雰囲気だったね。行ったことないけど、たぶんそんな感じ。

 

 ーーーーー

 

 クラスのシフトが終わると、志野くんとさとみんとわたしの3人は、いっしょにごはんを食べて、一緒に文化祭をみて回ることにした。

 昼休み時間帯も来客はあるので、わたしたちのクラスはシフトを組んで交代で食事をとることにしてたんだ。とくにわたしたち3人は1時間半のシフトだったから、ちょっと長くてお腹がすいた。

 来客もあるので少し混んでる。わたしは今日はあっさりとおそばにした。さとみんは何かのお魚の定食を取ってる。志野くんは、ーーミートソースパスタか。うん、それもいいなとは思ったんだけどな。

 

 ふと志野くんが向こうを見やった。ーーあれ、根取くんだな。根取くんも、こっちをみてる。

 このまえわたしにちょっかいを出してさとみんに〆られてから、根取くんはおとなしい。すくなくとも、わたしには直接ちょっかいを出してこなくなってる。

 でも、その代わりにこんどはわたしとさとみんの仲があやしいって言ってるらしい。いまさらだよ!

 

 こんどなんかあったら、さとみんをけしかけよう。ただじゃおかない。

 そう思いながら、少し殺気を込めてにらみつけると、根取くんの顔が青くなった。

 プルプルしながら向こうを向いた。うん、それでいいよ。

 ちなみにこの間、さとみんは気づかずに志野くんの怪しげなターバン姿を冷やかしてた。

 志野くん、怪しいなりにすごくかっこよかったんだけどな。怪しいけど。

 

 クラス企画を眺めつつ、いくつか目星をつけてた部の出し物をめぐる。わたしは結構こういうのは好きだ。

 他のクラスも、それぞれ味わいぶかい企画を出してる。もちろん、等速直線運動の体験と称してボウリングもどきみたいなことをしてたり、入射角と反射角の関係を探ると称してビリヤードもどきをしたりしてる、しょうもないクラスもあるけどね。

 

 文芸部もちょっとだけ覗いてもらうことにする。さとみんは、もう見てるんだけどね。

 わたしは十三国記の紹介記事を書いた。ハルカちゃんは、粟本薫のファンタジー小説と、A・メリットの「イシュタルの船」の記事を書いてる。

 そういえば「イシュタルの船」も、確かにファンタジー小説なんだけど、考えようによっては神話が息づく超古代世界へのタイムスリップものなのかな。大神殿に潜入するんだよね。

 わたしたちも同じだ。巫女様じゃないけどお父さんたちを救出するんだ。

 

 ーーーーー

 

 英語劇の出演準備に講堂に向かう志野くんといったん別れて、クラスの様子を見に行く。

 うん、満員御礼だね。初めてすぐは客引きをしたけど、全く心配無用だったんだな。スタッフが足りないかな?と心配したけど、大丈夫そうで、みんな楽しそうに働いてる。

 かといって、あまりに多くて不平不満だらけになるほどでもない。すこしだけ辺鄙な場所にあるのも幸いしたかな。

 少しだけ様子をみて、講堂に急いだ。

 

 講堂では、有志の即席バンドによって少し前に流行したバラードがで演奏されてる。すごい。

 ラジオとかで聞くことはあったけど、エレキギターの生演奏は迫力が違うよ。

 恋愛ものの曲っていうか。こういうのって、わたしには関係ないやって思ってたけど、今聞くとすごい心が動かされる。

 ふと横目でみると、さとみんも目を閉じて聞き入っていた。

 端正な横顔に、どこか憂いを秘めて。

 わたしもなんだか厳粛な気持ちになって、同じく目を閉じてみた。

 頭の中に、いや心の中に、旋律が染み入ってきて。

 ふっと泣きたいような気持になった。

 

 そしてバンドの演奏が終わると、ESSによる英語劇だ。

 オーソドックスな演目で、抜粋でごく一部の部分だけやるって聞いてたけど。

 何を演るんだっけ。

 うん?

 ーー一幕目が、「『ロミオとジュリエット』から」ですと?

 わたしは横目で、さとみんを見る。

 さとみんも、横目でこちらを見ていた。

 

 ーーまさか、主役じゃないでしょうね。

 

 ーーまさかだよ、さとみん。もしそうだったら。

 

 ーーギルティだよね(わ)。

 

 そう、瞳で語り合う。

 このくらいのこと、女の子なら当然のようにこなせるんだよ。

 ましてわたしとさとみんなら、当然も当然。親友だしね。

 

 幕が上がる。

 キャピュレット家の邸に忍び込んでる、ロミオつまり志野くん。

 志野くんが、ちょっと時代がかった服装で現れて、朗々と台詞を述べる。

 そしてロミオのいとこたちの会話。

 ありがたいことに、原典の古英語じゃなくて、現代英語に直してくれてる。

 

 場面が変わる。キャピュレット家の邸宅の、中庭。

 ちょっと書割は稚拙だけど、まあわかる。

 あれかな?あれが来るのかな?

 そっと横目で、さとみんをみる。

 さとみんは、食い入るような鋭い視線を投げてる。

 もしわたしの勘違いでなかったら、これってあの有名な場面だ。

 たしか、ーー

 

 ”He jests at scars that never felt a wound.,---”

 

 志野くんが独白。そして、テラスに、ジュリエット役のすごい美人さんが出現。

 あ、これあの人だ。ESSの部長さんだよ。

 お姫様って感じの、豪奢な衣装もあいまって、半端なくきれいだ。

 華やかで清楚。白百合みたいに、清々しく咲き誇っている美しさ。

 

 ときどき廊下で志野くんと会って話してるのを、みたことがあるよ。

 根取くんも、なんかときどき言ってたっけ、ーー。

 ちらっとさとみんに視線を飛ばすと。

 舞台をみつめるさとみんの視線が、鋭さを増している。

 

 "It is the east, and Juliet is the sun!"

 

 ぎりっ。

 

 そう、音がした気がした。隣から。

 まるで、奥歯をつよい力でかみしめたかのような音が。

 次、ジュリエットの台詞だよね。

 

 "Oh Romeo, Romeo! why are you Romeo?"

 

 ばきっ。

 

 いや、さとみんが椅子を壊した音とかじゃないんだ。

 これは、あれだ。

 これはわたしの心の中で、生じた音だ。

 心の中で志野くんの首根っこをわたしが両手でつかみ。

 揺さぶってるときに起きた音だ。

 

 いつのまにか、わたしは片手で前の席の背もたれを固く握り。

 もう片方の手では、固くこぶしを握りしめていた。

 

 劇は進んで。

 甘い、あまい砂糖漬けのような台詞を。

 数百年前の天才が磨き上げた愛の台詞を、志野くんは臆面もなく聴衆の面前で吐き続け。

 それに嬉々として部長さんが応え。

 

 "I would I were your bird."

 

 "Sweet, so would I, --"

 

 ええいっ。志野くん。

 わかってるのかな。

 これは厳罰に値するよ。厳罰だ。

 こんないちゃつきを公衆の面前で。破廉恥だよ!

 うん、目にものみせてくれよう。そしてわからせてくれよう。

 輝く光には、対価としての影が伴うってことを。

 

 想念にとらわれて、舞台をみつめ。

 前の席の背もたれをぎゅうっと固く、かたく握りしめていたわたしの手に。

 そっと、やわらかい手が重ねられた。

 さとみんだ。

 

 そっと見上げる。

 見下ろす、微笑みかけているさとみんの瞳に。

 昏い炎が燃えているのが、わかった。

 そしてわたしも、感じていた。確信していた。

 それにこたえて微笑み返す、わたしの瞳に。

 さとみんと同じ。いやひょっとするとそれ以上の燃え盛る炎が、宿りつつあることを。

 

 わたしたちは、こくんと頷きあい、再びほほえみを交わした。

 心が、かよいあった気がした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。