太陽系魔法少女隊 触手エロパワーで人類を守り隊 作:purufeido
少女の日常
天井からさす白色LEDの鋭角なスペクトルの光で照らされた手狭な部屋。
壁面は清潔だが無機質な乳白色で統一され、全体的にのっぺりとした印象を受ける。
部屋の中には、4人の子供と1人の大人がアルミニウム合金の長机を囲うようにして座っていた。
4人の子どもたちで最も年齢が高いのは15歳の少女だが、
背丈はバラバラで年齢が最も小さい子供では8歳の少年、子供としては年齢が離れた集団だ。
彼らの前に広げられているタブレット端末には子供向けの学習教材が映し出されていた。
それぞれの学習内容は当然ながら全く違っていて、各々が別々の勉強を同じ場所でしているという塩梅だ。
長机の短辺に座る唯一の大人-40代なかば程の痩せ型の男性-は、教師というよりは見守り役という雰囲気である。
子どもたちが何かしら疑問点や理解し難い点に遭遇しているのを発見し、適切な助言を与えるのが主な役割だった。
子供たちとは言うが、この部屋にいる全員は血の繋がりのない他人同士である。
それでも、この場にいる全員がお互いのことを家族のように思っている。
というのも、恒常的人類居住地となる予定の施設のうち
現在地球から最も離れたここトリトン居住地にいる人員は150名を少し超える程度
子供に至ってはこの部屋にいる4人で全員揃っているからだ。
施設規模などに由来する偶然ではあるが
150人というのはダンバー数-ホモ・サピエンスが自然に維持できる”群れ”の最大数-に近い。
それぞれが運命共同体として一種の同種意識を保てるのはむしろ自然と言えた。
子どもたちはそれぞれカジュアルな子供服を着ているが
最年長の少女だけは教師役と同じ青色のフライトスーツを真面目さを感じさせるしっかりとした着こなしで身につけている。
ここでは、元々ロケットの船内で着用するフライトスーツが生存可能エリアでの作業着や仕事着になっている。
会議などもこれで行うことが転じて、人々にとってある種フォーマルな装いとして機能していた。
ところが、作業に従事しない子供は、ポリカーボネートを3Dプリンタを形成した平服だけしか着たことがない。
つまるところ子どもたちにとって、フライトスーツというのは「大人の着るもの」なのだ。
少女にとって単なる機能性を重視した衣類ではなく、一種の憧れでもあった。
故に、作業見学のために与えられてからというもの、毎日のように着用している。
子どもたちは皆がそれなりに真剣そうに画面を見つめ
映像視聴用とは別のタブレット型端末では個人用のメモをつけながら
授業を聞いていて、その様子は地球に住む普通の子供と何一つ変わりがない
しかし、そんな子どもたちも、時折気になる箇所があると動画を少し戻してから止めて考え込んでしまう。
いまこの瞬間においては、最年少の児童であるマテオがその状態に陥っていた。
その様子を見てか、今日の教師役であるグレッグは40代の男性としては少し高めの声色で優しく声をかける。
「どこか気になるところがあるかな?」
グレッグの本業は宇宙船運用技術者で、船に搭乗していない間は仕事の負担が少ない。
ゆえに高頻度で「子守」として充てがわれるため、子供たちとの交流が多い大人の1人だった。
彼がマテオの見つめている端末を覗き見ると、そこには地球の何気ない町並みが映し出されている。
それは、グレッグにとってはかつて見慣れた光景で、今更疑問を抱くようなものではない。
しかし生まれた頃から居住スペースが限られたトリトン居住地で暮らしてきたマテオには異世界とも見える光景である。
グレッグは以前にも子どもたちの似たような疑問に返答したことを思い出した。
「どうして僕たちはこんな不便な場所で暮らしているんですか?」
と、マテオは子供らしい素直な疑問を率直にぶつけてくる。
グレッグは短く切りそろえられた髪をこすりながら微笑みを崩さず
「そうだね、僕たちはちょっと気が早すぎたんだ」と、当たり障りなく答えた。
冗談めかしてはいるが、この回答は、彼の本心でもある。
「本当はもうちょっと早く核融合ロケット、あー、もっと気軽に地球と行き来できる便利な船ができる予定だったんだよ」
かつて、国際太陽系開発局が創設されたとき、宇宙産業は第4次拡大期を迎えたと熱気に溢れていた。
大型設備としての実用核融合炉によるエネルギー供給が可能となったこと
および実用的な核分裂-熱ロケット(Nuclear Thermal Rocket, NTR)の実用化・高性能化により
地球にとってもっとも身近な天体である月の恒久的開発が軌道に乗り
火星居住地さえも本格的に稼働して「真の宇宙時代の始まり」と過去に幾度か繰り返されたフレーズが再来した。
しかも、このころフュージョンX計画-核融合ロケット開発計画-がある程度の進展を見せていた。
ゆえに、「核融合ロケット時代」を見据えて先回りして太陽系の各地に人類居住地を建設するという
一見すると無謀とも言える巨大プロジェクト-ソーラーフロンティア計画-は、
この熱気と当時の国際的なカネ余りとが組み合わさって実現する運びとなった。
ところが、土星系や木星系までならばともかくとして
海王星系や天王星系までも居住地を作ってしまったのは当時から時期尚早と言われていた。
単純に地球から遠いとロケットの移動時間や消費燃料を使うからというだけではない。
人間が居住するには生存可能な温度などを維持するエネルギーが必要不可欠だ。
太陽から得られる熱量が小さいトリトン居住地では-計算法にもよるが-一人あたりで月面の20倍以上のエネルギーを消費する。
この生活コストに対して得られる利益は、たとえ核融合ロケット実用化後であっても、到底見合うものではないのではないか?
という当時からしても至極当然の疑問点は、核融合ロケットへの過大な期待が萎んだ後にはもはや無視し得るものではなくなっている。
トリトン居住地がただ地球で生産された資源を消費するだけの系から脱却できないのは、人類の技術的な限界故なのだ。
だけれども、グレッグは未来を担う子供に
---いっそカリストなどガリレオ衛星群の発展ペースが当初の想定を超えている木星系にでも人員を転用してはどうか
などと彼らの故郷を捨てさせるような考えを披露するつもりにはなれなかった。
だから
「でも、いつか人類が太陽系の外側に旅立つ拠点としてココが役に立つからね。その時のためにみんなで頑張ってるんだよ。」
と、グレッグは笑顔で未来に向いた答えをあえて選ぶ。
グレッグにとってこれはこれで、まるっきりの嘘やごまかしというわけでもない。
自分たちの世代では、それどころか子どもたちの世代でさえ到達し得ない先の話だとは思ってはいるが
いつか来るであろう未来には、きっと意味があると信じている。
マテオはグレッグの言葉に納得したのかしていないのか、 思いに耽るように再び動画を見つめ始める。
一方で、最年長の少女は笑いながら
「私が似たような質問をしたときもグレッグさんは同じような事を言っていたと記憶しているよ」
と、グレッグをフォローするように言葉を発した。
「たしかにそうだ。でも当時から考えが一貫している証拠さ。」
グレッグは少し照れくさそうにして頭をかきつつ、最年長の少女の指摘を認める。
そんなグレッグの様子を見てか
少女はグレッグにタブレット端末を差し出した。
そこにはトリトン居住地内の風景が映し出されている。
しかし、その風景に今やは見られなくなったものだ。
グレッグがトリトンに初めて来た時に見たものと全く同じ、開発初期の光景だ。
地下埋没型の居住区が完成前の一時しのぎの居住可能空間は今よりも格段に小さく、エネルギー節約のため光量も少ない。
いまの面影を残しているのは最優先で設置された核融合炉施設位のもの。
現状の居住地も発展しているとは言えないが、この当時と比べると格段に良くなっている。
「ある意味で未来というものがわかりやすく作れる環境は地球より面白い」
と、少女は意識して自慢気に微笑んで見せたかとおもうと
「などとブレリオさんが言っていたよ」
一転していたずらげな表情へと移り変わる。
グレッグは一本取られたばかりに苦笑して
「船長のセリフなら自分が下手に評価するわけにいかないな」
と少々わざとらしいジェスチャーで両手をあげる
しかしすぐに気を取り直して 画面の中で忙しく動き回る人々へ視線を向ける。
そして懐かしむように目を細めた。
トリトンの住民たちにとって、今や当たり前となっている光景。
それはグレッグたちが作り上げたものでもある。
だが、自分たちの努力が実った結果であるにもかかわらず
自分が成し遂げたことのようには半分くらいにしか思えなかった。
彼の本業は宇宙船の乗組員であって施設そのものには直接的には携わっていないからである。
「まあでも、船長が言うならともかく、みんなにそう言われると正直嬉しいよ。ありがとう。」
グレッグは感謝の気持ちを込めて、最年長者の頭の上に手を置く。
すると、彼女はくすぐったがるかのように首をすくめてみせた。
-------
-------
少女は午前-どの居住地でも地球標準時を未だ基準としている-の講義が終わった後
休憩時間にプロテイン粉末や多糖類粉末などを原料に食品用3Dプリンターで形成して加工した食事を味わい
午後の活動時間は職場見学として中央制御区画へと訪れていた。
居住地の中でも広めの部屋は先程の部屋と壁などの質感は基本的に変わりがない。
しかし大型の液晶ディスプレイが中央奥側に鎮座し、座席と机はコンソール兼用のタッチパネルで埋め尽くされている。
どの液晶画面もその座席の主が必要とする情報を出力するため、それぞれ違った映像を映し出していた。
例えば、少女が座っている席の正面にあるディスプレイは居住地の居住区画に関する情報を表示している。
また、彼女の背後では海王星系の各種天体および人工物の軌道要素が映し出されていた。
「どうだ?ここの数値の意味はわかるか?」
と、少女の後ろに立ってパネルに指を指しているのは40代後半の筋肉質な女性、名をハーパーという。
「ここが酸素濃度、二酸化炭素濃度、窒素濃度、水分濃度、ここは気温で、ここは気圧、ここは警報表示のエリアだろう?」
と少女は当然だとばかりにそっけなく返事をする。
「基本的にはそのとおりだ。我々が呼吸しているガス、これに異常が生じるとほぼ即座に全員の生命が脅かされる。」
ハーパーは設備運用技術者の中でも循環系維持専門家のひとりである。
呼吸可能な大気が存在しない天体では貴重な酸素などを簡単に外に捨てるわけにはいかない。
故に廃棄物などは可能な限りは回収して再び利用可能な形に整えなければならない。
万が一ここに重大な不備が生じれば、トリトン居住地は簡単に機能を失ってしまう。
だからハーパーたちは普段あまり表立った活躍のない裏方の存在であるが
同時に目立つ活躍をしないことが彼女たちの最大の活躍なのだ、と居住地の人々は理解している。
だからハーパーは普段はそんなことをわざわざ口に出すようなことはしない。
言わずとも皆が互いにそれぞれの仕事へ敬意を持っていると知っているからだ。
ハーパーは少女の背中から説明しつつコンソールの画面を遷移させていく。
内容はたとえば居住区の空気浄化装置に関するもの。
空調設備の細菌、ウィルス、有害物質を除去するためのフィルターが正常に作動しているかどうかをチェックする。
そして、それらの数値が問題ないことを確認して、次の項目へと移っていった。
少女はハーパーの説明を聞きつつ、目の前のモニターに表示される情報を次々と目で追っていく。
そこには居住区の環境を維持するために必要な様々な機器の状態が表示されており、少女は興味深げに見つめた。
しかし、同時にすこしソワソワしながら視線を泳がせ気が散っているといった様子。
ハーパーが不審がって 何か気になることでもあるのかと尋ねると、少女は慌てて居住まいを正す。
「その、後ろの話が気になってしまってね」
「正直言うとそれは私も気になっていた、が私の仕事を見に来たのだから集中しろ。」
二人の後ろの席では、年配の男性が熱心に手元の資料と画面の表示内容を照らし合わせながら作業に没頭している。
しかし、少女の声に気がつくと、資料を置いて顔をあげた。
そして、少女とハーパーの間に漂う微妙な雰囲気に気づくと、気まずそうに咳払いをした。
少女はその男性-サミュエル-に向かって気にしていないとばかりに微笑んでみせる。
サミュエルは少し照れたように毛の薄くなった頭を掻いて、それから
「まあいいじゃないか。君だって気になるだろう。未確認の飛翔体だなんて」
とハーパーへ手やらわかにしてやれと気取ったジェスチャーを送る。
その仕草にハーパーは呆れてため息をつくが、確かに彼の言う通り、この話題については彼女自身も気になっているところだった。
少女も好奇心に目を輝かせて 「どういう話だい?」と顔を向けて質問してくる。
サミュエルは少女の反応に満足そうにうなずくと、隣に座っている40代前半の男性-コルトン-へ目配せする
どうして自分に振るんだと苦笑を浮かべたコルトンは、仕方がないとばかりに説明を始めた。
「この太陽系ではいろんな物体が高速で太陽の周りを周回してるのはわかるな?
自分の仕事の一つにはその中でも危険そうな代物を発見したり、その優先対応度を評定することもある。
トリトンは大気が薄いから、地球だと大気で燃え尽きるようなデブリでも減速しきれないからな。
普段あまりこの仕事に取り掛かることはないんだが、たまに妙なものにも出くわす。
今回のは極めつけに妙な代物でな、能動的に加速して軌道変更したとしか思えないんだ。」
あらゆる物体は慣性によって同じ運動を続ける、逆の視点から言えば別の運動へ移行するには何らかの力が必要だ。
それは他の物体からの重力相互作用だったり、あるいは衝突によるミクロ的な意味での電磁気相互作用だったりする。
「なにか別の物体と衝突とかではないという理解でよろしいですか?」
と、少女は真面目な表情で聞き返すと、コルトンもうむと大きく首肯する。
「物体が自然物だと想定したときに予想される質量からすると
衝突による軌道変化と想定すると、逆算した衝突対象のサイズはこっちで十分に捕捉できるはずなんだ。
それにデータを照合すると短時間だが、一瞬ではない持続した加速をしている。
これは推進装置を持った何かと想定するのが一番現実的だろう。人工物だ。」
と、そこまで一気に説明すると、一拍置いて続ける。
もしこれが人工物であるならば、その正体は何かという疑問が出てくるはずだ。
少女も当然そうだろうと見越して
「もちろん、これまでいろんな人工物が補足されてきたから、頻度は低いけど特別なことというわけではない。
特に宇宙開発の歴史が長い地球系だと、ここなんかよりずっと大量の人工物が追跡されてる。
ただ、海王星系まで来る宇宙船なんて近年まで小型探査機くらいだったわけだから候補は絞られる。
おそらく、地球系からホーマン遷移で投入されたはずの貨物の一部がどこかで脱落したのものだろう。
前回ウチで追跡したのもそういう代物だった。」
と、説明を締めくくる。
少女は真剣な眼差しで話を聞き終えると、腕を組んで考え込むように黙り込んだあと
「加速した件は、偶然その内容物のガスか何かが漏れて噴射された・・・というのが考えられるかな?」
と、子供なりに考えて自らの推論を述べる。
それを聞いたサミュエルは微笑みながら首を縦に振った。
コルトンも横で同意するように軽くうなずいて
「そうだな、漂流している人工物が加速する原因を上げれば蓋然性としてはそれが一番高いだろう。」
と、少女の推論へ基本的に同意を示す。
「もちろん、我々が把握できていない宇宙船という可能性が無いわけではないよ。
いま追跡してるやつは軌道要素のデータと一緒に該当しそうな物を地球に照会してもらったばかりさ。
…もちろん、地球に通信が届くのは光速度で4時間ほど後のことだけれどね」
と、続けたサミュエルは肩をすくめてみせた。
少女はその言葉を聞くと、納得したのか、うんと一度小さくうなずくと
「ありがとう、仕事中に申し訳なかった。」
と礼を言ってからハーパーの方へ向き直る。
ハーパーは少女の視線に気づくと、コンソールを操作してモニターに表示されていた資料に目を戻した。
少女もそれ以上は何も言わずにハーパーの仕事ぶりを観察することにした。
今度は水の循環系に関する装置を一通り表示の確認をしている。
当然コンピュータが自動的に危険をデータから検出・余地して警告を発するが
究極的には人間がある程度までは直接目で確認する必要がある。
ハーパーが一通り点検を終えると、ふと思い立ったかのように少女に語りかけた
「そうだ。ひとつ仕事を手伝ってくれないか?何難しいことじゃない。ちょっとしたお使いだ」
突然の提案に少女は少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐに笑顔でうなずく。
ハーパーはその反応に満足そうに微笑むと、コンソールを操作する。
画面に地図を表示すると、目的地であろうポイントを指して示す。
「地表の第3デポにある修理用部品をとってきて仕事場まで運んで欲しい。詳しい情報は後でコンソールへ送る。」
と、説明を付け加えた。
少女は了解と返事をして席を立つと、そのまま部屋を出て行った。
ハーパーはその後ろ姿をしばらく見送ったあと、再び手元の端末に目を落とす。
そして少女へ送る情報をまとめようとしたとき、後ろのコルトンがふと困惑したような声をあげる。
「追跡対象から別の反応が別れた。何かが分離したのか?」
サミュエルは慌てて画面を確認すると、確かに先程まで存在しなかった小さな物体が2つ表示されている。
コルトンが言うように、それは追跡中の不明物体から分離したように見える。
隣り合う二人は目を合わせると、互いにどういうことだろうと不思議そうな顔をして首を傾げた。