彼は馬にまたがり、道を歩いている。
最終目的地は魔王の国。
その国に行く最短ルートは、フレイジアから、東に真っ直ぐ進むのみ。
だが、噂には魔族との戦争が始まっているようだ。
真っ直ぐ進むと、戦争のど真ん中に入ってしまう事になり、危険。
だから彼は、大きく回り道を選ぶ事にした。
一時的に彼は北に向かっている。
彼の現在の目的地は、フレイジア国内、田舎の村
【スラヴァ】
森の整備された道を歩む。
「……ふぅー」
彼はつけられていた。
一体誰に、王城の者が追いかけて来たのか…
「…賊か」
ハイドの言葉に、反応を示す、気の影にいる…
男たち。
「ふっ……ばれていたか」
「あれ、今の独り言だったんだけど」
「お、おいてめぇら!出てこい!」
少し戸惑いつつも、以下にも山賊の見た目の男が叫んだ。
「へへっ……」
「高そうな馬乗ってんじゃねぇか…」
「兄貴、やっちまいましょうぜ」
兄貴と呼ばれる男を含めて、全員で五人。
「まぁまて。最初は"交渉"だ。賊のお決まりのセリフ…」
「…」
「身ぐるみ全部置いてけ。抵抗すればただじゃおかないぞ」
「あぁ、口と見た目はスッゲー賊っぽいな。ただそれだけじゃ…な」
馬を降りる
「な、なんだ!?抵抗すんのか!?」
「身ぐるみ全部置いてけば、助けてやるよ」
「じゃかあしい!てめぇら!やっちまえ!」
「それも賊って感じだ…」
ハイドに斬りかかる名もなき山賊達
ハイドは冷静に、刀を引き抜く。
「初切りだ。感謝するんだな」
「良い剣だな!もらっ
男の首は身体を離れ、木に叩きつけられた。
「こ、この男!容赦ないですぜ!兄貴!」
「よくもゴーヤンを!許さん!」
「兄貴!ゴードンです!」
兄貴と呼ばれる男が、懐からある物を取り出した
「兄貴!魔具の出番ですね!」
その魔具の形は、手のひらに収まる大きさの石だった。
「この"死操の小石"の能力は!」
「おっ?」
頭の無い身体が一人でに動き始めた。
「オ……ウオ…」
「死に!魂が抜けた殻を操る!それがこの石の力!」
「結構すごい魔具じゃないか?」
「一級だぜ!一級!」
「そうか」
死体が剣を振りかざすが、動きは遅く、簡単に両腕を切り落とされる。
「とろいな」
「仏様になんて事を!」
「お前らもう黙れ、今なら見逃してやる」
「くそ…!」
「兄貴!逃げましょうぜ!相手が悪かった!」
「あぁ!村に逃げるぞ!早く!」
「お前ら本当うるせぇな」
「お前ら行くぞ!」
「ウ…ウウ…オ…」
「……」
男達と一体の死体は、街へと向かって走っていった。
「ちっ…スラヴァの方かよ…」
彼はなんだか面倒な事に巻き込まれそうだと、つぶやいた。
「それにしてもこの剣…刀?扱い易いな…」
その細身の見た目に反して、一切の刃こぼれが無かった。
「兄貴ィ!あの男のマントの隙間から見えた軽甲冑は…」
「あぁ…石獅子王騎士団の者だろう…」
「兄貴、赤です」
「どっちでもいい!俺のダチがやられたんだ。仇は取る!」
スラヴァの街、入り口付近。
森の道を通り、見えてきた村は、非常に賑わっていた。
(田舎って感じじゃ無いな…あの村を思い出すな)
「おや、貴方は旅人ですかな?」
突然の声、村人のようである。
「あぁ…少しやすもうかと」
「そうですか…なら、一つ忠告しておくことがあります」
「なんだ?」
「最近この辺りに賊が出現してましてな…村人が無残に殺されていまして––」
「それなら一人始末したぞ」
「えっ…本当ですかな?」
「あぁ、間違いなく首を切り飛ばした」
意外な答えに驚く老人、すぐに何か思いついたようだ。
「それじゃあその…残りの奴らも…止めてくれませんかね?」
「…」
「報酬ならその…はい」
随分な長旅になる予定である。"お礼"はいくらあっても困らない。
「わかった。今日中に済ませる」
「ありがたい!それでは、明日にでもここで」
「あぁ」
(けど、何の手がかりも無いな…)
悩みながら村の武器屋に入る。
予備の剣など、色々仕入れる必要がある。
「あー、店主さん。買うついでに聞いときたいんだが…」
「買うんなら良いぜ」
「五人…いや、四人組の賊みたいな奴ら見なかったか?」
「いや、一切見てないな。ほら、買え」
「分かってるよ、なんでも良いから剣一本と短剣一本…」
「結構買うな」
「まぁな…それと馬上戦闘用にロングソード一本だ」
武器屋、外。
「兄貴、まずいですって!」
「ばっか、俺らの安物装備じゃ絶対勝てないぜ…と言うわけでこの武器屋に強盗だ!」
「絶対店主怖い人ですって…」
子分の言うことなど一言も聞かず、扉を蹴り飛ばす兄貴。
「いきなりだが金と剣だせェ!!」
「ん?」
「ん?」
固まる賊四人。
当然、中にいたのはこれから殺りに行こうとしていた奴がいたから。
「店主、こいつら始末したら無料ってのは?」
「考えとく」
「あ、兄貴!来ますぜ!」
「お前ら!行け!」
「フッ!」
広めの店内で剣を振り回す子分三人。
「商品傷つけんなよ!」
「考えとく!」
古い床の板が軋む、刀を抜くと同時に、先に子分の一人に斬りかかる。
「うお!!」
それを何とか剣で受け止める。
「おい!今のうちに!」
「うら!」
「貰った!」
鍔迫り合い状態の刀はそのままで、壁に掛けられている剣を手に取る。
上段の構えで隙だらけの二人の腹を切り裂く。
「…!」
「っ…」
常人では避けられない速度
「こいつ…!」
鍔迫り合いしていた男を押し飛ばし、壁に叩き付ける。
「うぅ!」
頭から見事に壁に激突。動きが止まる。
「後はお前一人だ!剣を鞘に入れたままなら、指一本で勘弁してやる」
「…つ、つえぇー…」
「動くな」
「やるわけないだろ!逃げる!」
「待て!!」
子分に目もくれず、全速力で逃げる兄貴。
「おい、その剣買い取れよ。他はただでいい」
「あんがとよ」
(あいつを逃がしたのはまずかったか…?)
なんとか逃げ出した奴の情報を集めようとする。
逃げて行った方向にいた村人に聞いて行ったが、途中で有力な情報は得られなくなる
そうこうしているうちに、外は暗くなっていた。
「まずいな…」
空を見ると、はっきりと丸い月が出ていた。
(確か、満月だと魔具の性能が格段に上がるとか聞いたな…)
「ん…?」
遠い道の曲がり角。そこから、何者かの手がこちらを招くように動いていた。
「……挑戦と受け取るぞ、クソガキが……」
その手を追って行く。
全て、姿が見えそうな所で角を曲がって行く。
気がつくと、"墓場"まで来てしまっていた。
「…なるほどな」
「察しが良いな!騎士団の男!」
「!」
崖の上から見下ろす兄貴。
「こいつで、貴様を殺す!」
「…」
地面から大量の人骨が飛び出す。
「凄いぞ!この魔具!」
そして、囲まれる。
「嫌な事を思い出させやがって…今なら引き返せるが?」
「お前はもう!引き返せないぞ!」
「そうかよ!」
大量の骨達が押し寄せてくる。
「一本じゃ足りないな!」
背中に背負っていた一本のショートソードを引き抜き、二刀で迎え撃つ。
骨と骨がぶつかり合う音が辺りに充満する。
「今すぐ墓場に送り返す!」
骨達は全て素手。一瞬で致命傷を受けるような事は無いだろう。
だから、骨の海に飛び込む。
「うおおおおお!」
近くにいる骨を次々にへし折って行く。
時折、腕や服を掴まれるが、構わず剣を振り抜いて行く。
「う、うそだろ?」
人骨の数は数えられる数まで減っていた。
「ふぅ…」
「人間じゃねぇ!」
「そうか?俺にとっては褒め言葉だね」
背後に忍び寄っていた骨を蹴り飛ばす。
「っと!今のが最後の一体だな」
「く!くそぉ!」
「また逃げんのかよ?」
「あ?当然だ!」
「子分共を殺られて何も思って無いのか?」
「!」
「来いよ、今なら一太刀で済ませてやる」
その言葉を聞き、どう思ったのか崖を滑り降りて来た"兄貴"
「名前はなんだ?兄貴」
「グントラム•リート!いつかこの世界の頂点に立つ男だ!」
「夢がデカイな、だがそりゃ無理だ」
「うおおおおお!」
飛びかかる、グントラム。
「なぜなら…」
ショートソードをしまい、刀を上段で構える。
「今ここで"拘束"されるからだ…!」
刀と剣がぶつかり合い…
「なっ!」
グントラムの剣の刃は、宙を舞っていた。
剣を、折った。
「もう動くなよ…今度逃げたら殺す」
「くっ…くそ…!」
「お前は、これまでにやった事の償いを…」
「まるでこれまでに、俺が賊行為したみたいな言い方だな…」
「あぁ?」
「人を殺した事も無い……初犯だ…そして初ブタ箱行きだ…」
「えぇ?」
確か、最初に会った村人は。村の住人が殺害されたと言っていた。
「おい…適当言ってんじゃないぞ…」
「本当だぜ…」
「その魔具は旅人や村の住人から奪った物じゃ無いのか?」
「これは拾ったんだ!魔具って気が付いたのは最近だ!」
「これは…しまったな…」
完全なる人違いだった…何より
「…殺しちまった…」
あの子分達も恐らくは人を殺した事が無いだろう
「これは想像以上に…精神的にくるな…」
「?」
「と、とにかく、お前は縛らせて貰うぞ…」
グントラムの腕を縛り、村に戻った。