王城、玉座。
「長旅ご苦労だった」
「いえ、今日だけですがお世話になります。フレイジアの王よ」
「なに、そなたらは世界を救う身。我らの手は幾つでも貸すぞ」
「……」
「"勇者一行"よ」
勇者の称号を持つ男が一人。
剣と盾を持った女性が一人。
魔術師の女性が一人。
「今更だが…一人ほど足りてないようだが?」
「元々、この国の赤獅子王騎士団の団長が入る筈でしたから…」
「あぁ…そうだったな…そうだ、そなたらに頼みたい事がある」
「なんでしょうか」
「先日の騎士団幹部誘拐事件。あの事件が起きてから消えた男がいてな」
「聞いてます」
「そいつが魔族のスパイだったのではないかと言う話が出てな…」
「…なるほど」
「旅の最中に出くわす様な事があったら、ひっ捕らえてほしい」
スラヴァ、道。
「なぁグントラム。子分を殺されてどんな気分だった?」
「聞かないと分かんねぇのか?…俺だって人間だぜ」
「だよな…俺も似た感じだよ」
「……」
「まぁ兎に角、明日まで野宿だ。お前の分まで宿代払うとか嫌だしな」
「良いこと無いな……最近」
スラヴァの村近く、森の洞窟。
「頭領…もうそろそろ移動した方がいいですぜ」
「どうかしたか?」
「なんでも…勇者一行がこの村に向かってるとか王城から村までは半日程度の距離ですし…」
「…!なるほど。もっと慎重に行きたかったが…明日決行するぞ」
翌朝、スラヴァの村入り口付近。
「おお!剣士どの!」
声を掛けて寄って来た一人の男性、昨日賊の討伐を依頼してきた者だ。
「先に聞いときたいんだが…最近迷惑してる賊って何人組だ?」
「?数えられた人数はざっと20人ほどでしょうか」
「…すまないな、依頼失敗だ」
その言葉に露骨に落胆する男性
「別の賊なら捕まえたんだが…」
後ろに縛っていたグントラムを突き出す。
「…全く知らない顔ですね」
「だよな」
「俺もこんなおっさん知らん」
「今更だが、その賊達について詳しく教えてくれ」
「各地を移動しながら村や旅団なんかを襲ってるらしいです。
人数は20人前後で、変な魔術を使うとか」
「変な魔術?」
「えぇ、なんでも死人が動き出すとか。魔物が喋るとか」
「ん?」
「え?か」
その魔術…というか魔具には聞き覚えと見覚えがあった。
「おい、それって拾った物だよな?」
「あ、あぁ…」
そして
「魔人か…仕留める必要があるな」
「ん?」
それは突然すぎた
目の前にいる村人の肩に矢が突き刺さった。
飛んできた方向は、村の外。森からだった。
三人はすぐに民家の影に隠れる。
「大丈夫か!?」
「な、なんとか…」
そう言いつつも、顔は青くなって行く。
影から森の様子を見る。
「あれが賊共か…」
男達はざっと20人。
歩きながら弓を射っているのが10人。
後の10人は少ししたら突撃してくるだろう。
矢が空気を切り裂く音がする。
村の住人達は逃げようとするが、失敗に終わっている。
「おいグントラム。やるぞ」
「え?」
「衛兵の一人や二人いるだろう… …あと有志も…殺れるさ」
「いや何でおれが」
「このままじゃお前も死ぬ事になる」
賊。
「へっへ。静かになったな」
「気を付けろよ、どっかに警備兵でも潜んでるかも」
道に転がっている死体を踏み、村の奥に歩いて行く。
「おっ、兵達が来たぞ!遊んでやろうぜ!」
村の奥から走ってくる衛兵二人。
(本当に二人だけかよ……!!)
「まぁいい。ここは頼んだぜ、グントラム」
「……あぁ」
村の出口に向かい走るハイド。
魔具を握り締める。
(なんとなく人助けしてやるぜ)
矢をしまい、剣を引き抜く賊20人。
「おっ?」
足に違和感を感じる賊達
「なっ!死体が!」
魔具を使い、賊の動きを止める。
(そして…)
「俺たちも手伝うぞ!無能兵どもが!」
村人。
(あっ、武器屋のおっさんもいる)
「どこだ…どこにいる…」
森に侵入する。
彼は魔人を探していた。彼はどうしてもあの20人の中に魔人がいるとは思えなかった。
村人に聞いていた賊の数は20人前後。あの場に来たのは20人ぴったし。
見張りも置かずに全員で突撃とは思えない。
いる筈だ。
魔人が。
「…!」
草をかき分けた広場に一人の男。
(こいつだ…!!)
どこか、常人とは違う空気。
あの鏡の骨と雰囲気が酷似している。
「ん?」
「うおぉ!」
気付かれる前に斬りかかる。
処分したい相手に、騎士道精神など必要無い。
「なっ!!」
刀の刃が男の右肩から入り、左脇腹から出る。
「お…まえ…」
「まだ生きてんのか?当たりだったな」
とどめを刺そうと首に刀を当てる。
「その前に聞いときたい事がある」
「…ぐう…」
「鏡の骸骨を知らないか?」
「…知っ…て…るよ」
「どこにいる?」
「今度は…俺から…質問す…る」
「あぁ?」
「人外が簡単に死ぬと思うか?」
「ッッッ!」
男の腹部から、鋭い結晶の様な物が飛び出す。
なんとか刀で軌道を逸らすが、肩に深い切り傷が入る。
「た、確かにそうだな…!」
距離を取る。
「あぁ、ただの人間がよく俺に傷を付けれたもんだ」
体のあらゆる部位から鋭い結晶が生える。
「んー…気分が良いな」
気持ち良さそうに身体を伸ばしている男。
「あ、そうだ。俺探してる物があるんだ」
「魔人も何か落とすのか?」
「ご名答。俺の結晶から作った魔具を落としてな。魔人化しなくても能力が使えるから便利なんだが…」
どう考えてもあの魔具の事を言っている。
「…おい、まさか。死人を動かせるのか?」
「あぁ、お前が持ってるのか?まぁいいや…」
男の全身の結晶が赤く光だす。
「いま、村の部下共を生き返らせる」
「…」
「戻った方がいいじゃないかな?」
(この距離でも生き返らせれるのか…)
スラヴァ。
「ふー。終わったな、賊退治」
「人数がこっちの方が圧倒的だったな」
倒れている二十体の賊の死体。
「!」
突然、全ての死体が赤い光に包まれる。
「魔法か!?」
「噂の蘇らせる術かもしれん!急いで縛れ!」
「わかった!!」
近くの縄を適当に持ち出し。
死体に近づくが
「がっ…」
剣が腹を貫いていた。
民家、影。
(あの死体の動き全然見えなかったぞ!俺の持ってる魔具よりも強力なんじゃ!?)
グントラムは村人を魔具を使って援護していたようだ。気が付かれないようにだが。
魔人が操っている死体は明らかに、グントラムが操る死体よりも何倍も強化されているようだった。
(この状態で魔具を使ったら動きを止めれるか!?)
思い立ったが即行動。
彼は視界を地面から上に向ける。
「し、しまった」
一体の死体がこちらを見ていた。
距離はすぐそこ、逃げる暇はない。
死体は
こちらに向かって走り出した。
(やばいやばいやばい!!)
剣を抜くという選択肢が出てこなかった。
第一、抜いても勝てないだろう
(終わった)
死体がグントラムに飛びかかる。
目を閉じる。
頭の中に響く爆音。
(あぁ………ん?)
目を開けると、死体が粉々になっていた。
背後から見える三人の人影。
「今の魔法は威力が高すぎだったんじゃないか?メリシア」
「そうですかねオリーヴァさん?かなり加減したんですが…」
「その事はあとで、今は謎の人外の排除だよ!」
「「はーい"勇者様"」」
森。
「!!」
「どうかしたか?魔人」
「……まずいな」
「あぁ、俺も割と同感だ」
「時間がなくなった!!人間よ!死んでもらうぞ!!」
「やってみろよ」
やっとこ勇者登場ですが、当分キャラがブレブレでしょう。