フレイジア隣国。【アンゼリン】
「とうとう、フレイジア国外だな」
「まさか、馬を捨てる事になるなんて…」
「道が…無理だ」
大量の汗を流す四人。
当たり一面に広がる砂と岩の海。
「昨日まで森でしたよね…」
「メリシアの魔法でなんとかできないのかよ?」
「無理です」
「こんな時は不便だな…」
前回の魔人との戦闘と、勇者…ハインツの話で魔人について幾つかわかった。
魔人は、魔物になる前の人型の状態では致命傷は与えにくい(与えられない?)
魔物の状態でのみ、痛がるし殺せる。
そして、元々魔具は魔人達のからだの一部であったと言うこと。
(最後は結構驚いた)
人間が唯一、魔人以外から作ったとされる魔具は、たった数個
"勇者の剣"
前勇者が自分で作り、使用した剣。
今はハインツが持っている。形状は刀身に模様が掘られた剣。
(思ったより派手じゃないな…それにしても…)
(オリーヴァ……着ている鎧の装飾から見ても、貴族。名前も聞いたことがある…)
(なぜ貴族が…命に関わるような事を…)
「なにジロジロ見てる」
「…なんでも」
「ん?」
何か地面に違和感がある。
「おい、これって」
「はい、下になにかいますね」
「ハイド、気を付けろよ」
「…わかっ––
突然、ハイドが上空に吹き飛ばされる。
(また…このパターンか…よ…)
ハイドを吹き飛ばしたと同時に出てきた、一体の魔物。
「…芋虫」
【ストーンワーム】
ゴーレムの一種。
魔王の存在が確認されていないほど昔の人間が作った兵器。
管理者がいなくなり、暴走状態の物が多くいる。
弱点は他のゴーレムと一緒で、体内にあるコア。
「……」
「ハイド、大丈夫?」
「……お前の力見せてくれよ、勇者様」
「うーん、いいよ」
剣を抜くハインツ。
(勇者…って事は…)
勇者はあくまでも称号。
だが、前勇者の血を引く物がなる事が大半。
勇者の称号を得るのに必要な要素は、魔法、剣術、指揮性能。
全てがトップクラスでは無くてはならない。
だが、求められのはあくまでも戦闘での才能、それ以外はあまり見られていない。
「この魔剣は分かんない事がまだあるんだけど…」
魔力を注ぎ込んだことにより、剣の模様が光だす。
「こいつをやるには最適の…」
武器強化魔法。
刃の範囲を広げるように、魔力の膜が鋭く展開。
そして、魔力の刃は伸びる。
「…長」
ストーンワームの全長は最大で20m以上。
それ以上の長さになった魔力強化の剣を、天に掲げる
「一刀両断!」
振り下ろすと同時に、風が勢いよく吹く。
「うそだろ?」
ストーンワームの体が、崩れて行く。
「んー。軽いし、切れ味も良いし。お気に入りだ」
「……やっぱ魔法は羨ましいわ」
それから歩いて30分。街が見えてきた。
砂と岩の山に囲まれた街。
この街には、王がいる。
「やっとですね。まず水を浴びたいです。オリーヴァさんもどうです?」
「あ、あぁ」
「?」
「とーっちゃっく!!」
一番乗りは勇者だった。
「確かこの国の王に会うんだよな?」
「うん、協力をお願いするんだよ」
「ほぉ…」
「あ!大事な事を忘れてたよ、ハイド」
「勇者も物忘れるんだな」
「これこれ、これに名前書いといて!」
ハインツが取り出した一枚の紙。
「なんだこれ?」
そこにはハインツ、メリシア、オリーヴァの名前があった
「契約書みたいなものだよ、これに名前が載ってる者は正式に勇者一行」
「魔王が討伐できたら、褒美ががっぽがぽなんですよ!」
「なるほどな…」
正直、ハイドは名前を書くかどうか迷った。
別に、伝説の勇者一行の一人になりたかったわけでもなし。
金が欲しいわけでもなかったが
(城からの容疑なんか晴れるか…多分)
「オーケー、これで本当に勇者一行だよ」
「変な気分だ」
サルモーラ、王城
「大きいですね」
「玉ねぎみたいな物が付いてる…」
「行こうよ」
「んっんー、そなたらが勇者一行かね?」
「お初にお目にかかります」
膝をつく四人。
王座はどこも似たような物だ。
「さて、突然だが…勇者は魔王の討伐だけで無く、人助けも任務のうちだな?」
「えぇ、当然です」
基本の受け答えは勇者らしい
「よし、ならば助けが欲しい。先日、街の近くに人工ゴーレムが大量に発生していてな」
「…ほう、おかしいですね」
「あぁ、人工のゴーレムが突然大量発生はおかしい」
「明らかに、何者かの意図的な物と…承知いたしました」
「うむ。褒美は期待しておけ、勇者一行よ」
「で、場所はどこだった?」
「こっから北東、地理的にも危険だし。数日かかる事になるね」
「岩の谷ですか…」
全員、またあの灼熱の道を行く事になるのは嫌だった。
「一日くらい街で休みましょうよ!」
「けど急いだ方がいいよ?」
「私も休んでおきたいな」
オリーヴァもメリシアも疲れ果てているようだ。
「ハイド、いいかな?」
「まぁ、俺はどっちでも良いけど」
「じゃ、先に宿を探そう」
宿の看板が出ている石造建築の宿。
すぐに壊れそうな外装はともかく、立派な出来である。
「…」
「…」
「おい女性陣。嫌そうな顔をするな」
「てか野宿とかよりましだろ?」
比較的安価で、ふた部屋借りる事ができた。
ふた部屋ともベットが二つ。男性と女性で別れる事に。
「そのまえに」
片方の部屋に集まる。
「ハイド、君の話を聞かせてほしい」
「わたしたちも気になるな」
「…どんな事を?」
「君の旅の理由だ。今は勇者一行だがな」
「…仲間を誘拐された。助けるために、鏡の骸骨を探してる」
「それは騎士団の幹部の事だよね」
「…あぁ」
「そうか。魔法も使えないのに、魔具を持った人間と互角に戦える人間って…やはりハイドだったか」
「今更かよ?」
「確証がなかった…ま、今日はもう休もう」
本日の労働は終了。
みんながそれぞれのベットに横になる。
が、起きている人間が"二人"いた
「呼び出して何の用だ?オリーヴァ」
「剣は持ってきたな?」
宿の裏。少し街から出る形になっている。
二人とも戦闘時の服装、装備。
やることは一つ。
「正直言って私は。貴様を認めてはいない」
「だろうな」
ハイドが気になっていたオリーヴァの装備。
剣と盾は派手なだけで普通の物と変わりは無いようだが、
着ている白い鎧は魔具のようだ。
「…気になるか?」
「そりゃな」
「良いだろう。公平にだ。教えてやる」
「私の最も得意とする魔法は治癒術。そして、それを更に強化しているこの鎧…」
"アスクの癒膜"
人間が唯一殺す事ができた神
治癒の神アスクの死体から作ったとされる鎧。
本当に神を殺したか不明。
着ている者は、魔力を流し続ける限りどんな傷でも治る。
更に、着ている状態での治癒術を強化する。
勇者の持っている剣よりも古い物とされている。
「手加減しなくて良い。来い、ハイド」
「ああ。」
千年刀を引き抜く。
盾を構えて突進してくるオリーヴァ。
「避けないだと…」
あえて避けず。接触する瞬間に一撃を盾に加える。
「ぐぅッ!!」
盾が音をたてて少しへこむ
(人間の力じゃ無い!)
オリーヴァを怯ませるほどの力。
(こいつ…!)
盾の後ろから剣を突き出す。
受けれないと判断したハイドは横に避ける。
(反射速度も…!)
「…なっ」
ハイドに足をかけられ、剣を突き出した勢いで前のめりに倒れる。
「もう十分か?貴族の嬢さん」
「…!!貴様…」
起き上がり、闇雲に剣を振る。
「我慢しろよ…!」
一瞬の速度でオリーヴァの肩に切り傷を入れる。
「…っ」
だが、気にせずに剣を振る。
「貴族の嬢さんが戦争ってなんの冗談だ」
既に傷の再生が始まっていた。
「おいおい、凄いな…」
「スピードを上げるぞ!」
オリーヴァは完全に頭に来ていた。
いつの間にか、身体強化魔法もかけていた。
「何でそこまで切れてるのかわかんないが…」
(何故傷一つ付けられない!?)
「そんなんで、魔王討伐なんて出来るのかよ?」
ハイドはかなりの余裕を持ってオリーヴァの剣を受け、避け、挑発する
「なぜ私が貴族だと?」
「思い出したんだよ、ハイネ家はかなりの名前だ。忘れてたが」
「…」
「終わりだ、もう俺は寝る」
「…あぁ」
あくまでも…対人戦である
「さて、今度こそ出発だ!」
【岩の谷】
古代戦争の爪痕
大地がある魔法で大きく削られてできた谷。
また急いでしまった。
もっとゆっくり丁寧に行きたいけどなぁ