※この作品はR-18です。

黒のテスカトリポカ   作:被害者宅

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第十八話 無駄骨

 

「思い出すね、こんな事になるなんて、昔は思はなかった」

 

「俺も…お前がここまで…変わるなんてな…」

 

 

 

 

 

「…!目が…」

 

「ふらつくかい?幻覚だけじゃないようだね」

 

ハイドの身体に魔具の毒が侵入。

オリーヴァとハイドで二対一だが、少し不利だろうか

 

「女、近づくなよ?このロープを切ると、ギロチンの刃がどかんだよ」

拘束されているメリシア、ハインツ。

 

「…」

「ハイド、こいつは私がやる」

「…嘗められたもんだ。来なよ、女」

 

ピエラニオは魔具とは別に、一本のロングソードを取り出す。

 

「お前は…まだ二刀流にこだわってたのか…」

ハイドの顔に汗が流れる。何か見せられてるのだろうか

 

 

「昔とは違うよ。これで何人も殺したんだ」

「ふん、二人を返して貰うぞ!」

 

身体を強化する

 

(魔具にさえ注意すれば!)

 

 

二人の剣が弾け合い、薄暗い部屋を火花が明るくする

 

少し笑っているような表情のピエラニオ

 

 

 

 

(強い!…だが)

 

 

「ほら、よけなよ」

 

ピエラニオの片腕に炎が纏い出す

 

 

「攻撃魔法は私にだって使える!」

 

(脅しくらいだが…)

 

 

同じく、炎が音をたてる。

 

 

炎と炎がぶつかり合い、爆発する

 

「ゴホッ…煙が」

 

 

 

 

 

 

(……今の内に助け出す……か)

 

 

何とかふらつく身体を動かすハイド

 

目指すは拘束されたハインツとメリシア

 

 

(目覚ましたら…教えてやる…敵は魔族だけじゃない…)

 

(それにしても…あいつ…)

 

(魔法、"使えるようになったのか"…)

 

いま、ピエラニオが魔具と魔法を使っているのに違和感があった

 

 

 

 

魔具の毒のせいだろうか、古い記憶が目の前に映し出される。

 

 

 

 

 

フレイジア。城下町。

 

 

「ねぇ、ハイド君」

 

「なんだよキノコ。相変わらずキノコみたいだな」

 

「良い加減にピエラニオって名前で言ってよ」

 

彼らは当時10歳

 

二人とも人を殺す前である

 

 

「僕たちが魔法使えない原因ってなんだろうね」

「知らないよ。才能が無いんだろ…」

「ミレラは魔法使いになるのかな」

「だろうな…ま、俺たちにはこれしかないさ」

 

剣を手に取る二人

 

「……いつか、この国最強の騎士になる」

「…なれるかな」

「練習あるのみだよ。城のおっさんとこ行こうぜ」

 

 

 

 

王城、兵舎庭。

 

 

「おっ、今日もきたのか、坊主共」

「今日も剣の練習だぜ!おっさん」

「よろしくお願いします!」

 

彼は城の兵

"ラフィタ•パローネ"

 

「で、おっさんは騎士団に入れそうなのか?」

「実はな…雑兵のトップに勝ったんだぜ。行ける行ける」

「…無理だな。断言しとくぜ、なぁピエラニオ」

「僕に振らないでよ…そ、それより剣の稽古を」

「おう、手取り足取りだ」

 

 

彼らは毎日剣の稽古をラフィタから教わっていた。

 

 

「なぁ、ハイド」

「なに?」

「ぶっちゃけ、お前は剣の才能ないぜ」

「……オブラートに包めよ」

「じゃあ……下手だな」

「変わらない…」

 

「じゃあさ、キノコは?」

「ぼく?」

「結構見込みあるぜ、騎士だって夢じゃないかも!?」

「本当!?」

「あぁ」

 

「泣いてやろうか」

 

 

 

 

城下町。

 

「な、なんかごめんね」

「いいよ、才能があるってのは良いことだ」

 

「おーい!ハイド!」

 

夕焼けを背後に走ってくる一つの影

 

「"ミレラ"か…なんだよ」

「ミ、ミレラちゃん!?」

「ペツィオ君。二人ともまた稽古してたの?」

「あぁ…」

「それより、またハイドのお母さん風邪ひいたんでしょう?今日も私の家族と皆で食事だね」

 

「また濃口の地獄かぁ…」

「殴るよ」

「…またな、キノコ。いや…お前も来るか?」

「い、いや、良いよ」

「そうか。じゃ」

 

 

 

「あいつお前に惚れてるぜ」

「へぇ…何て言ったらいいのよ?」

 

 

 

 

 

「……」

 

彼が、欲しかったのは剣の才能や魔法の才能ではなく

 

友達だった。

 

彼には、心のそこから友達と言える存在はハイド…いや、ハイドも微妙な線だった

 

彼の心を唯一救っていたのは、好きでもない剣術だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ハイド君、聞いた?」

「なにがだよキノコ」

「今日さ、パローネさん騎士団の入団試験受けるらしいよ」

「え?とうとうか!死ななきゃ良いけど…」

「大丈夫だって、見に行こうよ」

 

 

 

 

王城、訓練場。

 

試験を見に来たのか、人混みに溢れていた。

「舞踏会場みたいだね…」

 

 

「ひ、人多いね」

「迷うなよ」

 

 

 

 

 

「…あうっ」

「…」

「…おふっ」

「…」

 

 

 

 

「あれ?キノコ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、ここどこだろう…」

 

試験生、控えテント。

 

試験はまだ始まっていない。

 

なら当然、いる。

 

(あ、パローネさん…)

 

 

 

 

 

「パローネ、とうとう騎士か」

「気が早いな。だが、合格すれば…」

「…ガキとも、会えないかもな」

「大丈夫さ彼な…彼らなら」

「俺が教えておいてやろうか?」

「…頼みたいことがある」

「なんだよ」

「ピエラニオの奴には、剣をやめさせてくれ」

 

(……いま、なんて…?)

 

その言葉の意味を一瞬で理解するピエラニオ

 

どうして才能があるのに、やめる必要があるのか…

 

(……そうか…そう言うことか)

 

 

 

 

 

「では一人目。前へ」

「あいよ…」

「…ふむ、君か。いい噂があるようではないか」

 

「まさか…"騎士団長"自ら試験を見てくれるなんてな…」

「来なさい。殺す気で、殺される気でね…」

騎士団長が着ている鎧が、鏡のように光輝く。

 

「はい…よ」

パローネが抜いた剣は、"二本"だった。

 

 

 

 

 

終了後。

 

 

「……パローネさん」

「…最近は騎士団も、カリカリしてるからな」

「……」

「"生きてる"だけマシだ、もう剣を振る腕はないけどな」

「どうして、平気なの?」

「…平気じゃないさ。ただ……終わっただけだ、おっさん夢が…」

「…嘘だ…前から思ってたよ!君は薄情だ!」

ピエラニオの顔が歪む

 

「…あ?」

同じく、歪む

 

 

「剣を…!抜け…!」

ピエラニオが持っている剣は…ペツィオと自分の剣の二本だった

 

 

「本気で言ってるのか?ピエラニオ…」

 

「あぁ…」

「…"努力"は…"怒り"は…"才能"すら凌駕するんだぜ…」

 

「行くぞ!」

「来い!」

 

 

 

 

 

 

 

身の丈にあっていない二人の剣は…

 

ただ怒りに任せ、ぶつかる。

 

 

だがハイドは…本気で剣をふれなかった

 

 

 

 

 

 

 

「……見るなよ……ハイド…!」

 

「……お前…」

 

「本当は才能なんて無いんだってさ!僕には!」

 

「!違う!お前には…!」

 

「うるさい!僕はもう、行くよ!この街を出てやる!」

 

「あぁ…何処へでも行けよ。お前にはこの国は向いてないよ」

 

「じゃあな!」

 

 

「……言えなかったな……なんでだろう」

 

 

彼は本当に、ハイドの目の前に現れる事は無かった。だが…"それだけでは無かった"

 

 

 

 

 

 

 

 

幻覚が消える。

 

毒の効果が薄れたのか、徐々にだるさも無くなって行く。

 

「……!くっそ…思い出すな……!」

 

拘束されている二人に駆け寄る。

 

ピエラニオとオリーヴァはいまだ、剣を走らせている。

 

 

 

しかし、少しずつ押され始めるオリーヴァ。

 

「くっ…!」

 

「ほらほら!死んじゃうよ!」

 

 

 

急いで二人の拘束を解くが、目を覚まさない。

 

「……」

 

「のんきにねやがって…!!起きたら…殴る…!」

 

そして…

 

「教えてやる…!この世界は"明るく"ない…!」

 

 

 

 

 

 

 

「ほらっ!切れちゃった!」

 

一瞬の隙を突いてオリーヴァの手首の健を切る

 

「…!うおお!」

 

治る。

 

「あれ?」

 

治癒のスピードは明らかに上がっている

 

「…!っ、危ない危ない」

 

「くそ…」

 

 

 

「オリーヴァ」

 

「なんだハイド。いまは集中したいんだが…」

 

「"2人を頼む"」

 

「…わかった。2人は治癒術でどうにかなるかもしれない」

 

「動けるのかい?ハイド」

 

「どうだ…?オリーヴァの剣は」

 

「良いんじゃないかな?けど、勇者一行とは思えないな」

 

「…なんでか分かるか?」

 

「人員不足かな?」

 

「…ピエラニオ」

刀を抜く

 

 

「…あぁ…行くぞ!」

 

「来い!」

 

走り向かう2人

 

 

二本の剣で、手数で攻めるピエラニオ

 

それを避け、刀を振る

 

 

「やっぱりハイド!君は凄い!僕は体を強化しているのに!」

「…!お守りのおかげかもな…"指輪"のな…」

 

 

「"ヒートライン"…!」

 

 

火炎魔法。

 

 

「魔法か…!だがな…」

 

「燃えろ!!」

 

「お前は剣の方が向いてるよ!」

 

ピエラニオを覆うように、炎は吹き出す。

 

それを、受ける

 

 

「うおおおお!」

 

 

振った

 

 

 

 

「あっ…ぐ…!」

 

 

 

大きな切り傷。

 

「…ピエラニオ。終わりだ」

 

「いや…」

 

魔具の短剣を捨て、抜いた一本の剣

 

 

それを見たハイドは、もう一度昔を思い出す。

 

「……二刀流か…」

 

「懐かしいだろ?」

 

彼もまた、継ぐ者なのだ。

 

 

だが、ピエラニオはもう、立つのがやっとだった

 

「いくぞ、ピエラニオ」

 

「…来い」

 

 

 

 

 

 

 

「おい、起きろ2人とも!」

 

解毒魔法使用したオリーヴァ。

 

効果は…

 

 

「…うーん……あれ」

 

「……ここどこです?」

 

あったようだ

 

 

(後で殴ってやる…)

 

「って、それよりだ!2人とも」

「…罠だったのかな?」

「…」

 

 

「よく、見ておいてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

「……またか……僕の、まけ…」

「…ピエラニオ」

 

倒れるピエラニオ

 

「……少し、剣の腕が落ちたか?」

「変わらないさ…昔と」

 

「いや、昔のお前はつよかった」

「やめてくれよ…もう…」

 

 

「……昔、言えなかった事がある」

「なんだい…?」

「お前は強い。そして…」

「…」

 

 

パローネが、剣をやめさせるように言った理由と

ハイドが知る、昔のピエラニオの弱点

 

 

「お前は優しかった」

「…」

「お前は…人を傷つけるのに向いてなかった…お前には、間違いなく剣の才能があったがな…」

「なんで…」

「…あの時に気が付けなかった…俺はお前に嫉妬していたさ…それも…もう」

 

 

 

 

 

「ハインツ、メリシア。起きてるな?」

 

「あ、あぁ」

 

「見とけよ…」

 

倒れているピエラニオに、刀を向ける

 

「!何やってる!?もう勝負は…」

 

「殺し合いだ」

 

「…ハイド」

 

 

 

「俺は…皆の"仇"を取る必要がある…こいつはもう、改心できるとは思えない…!!」

 

 

 

「…あぁ…僕はもう…」

 

 

 

 

「仇を取るまで!背中を刺されるわけには行かないんだよ!!」

 

 

 

 

「ハイド!拘束すれば…!」

 

 

 

 

「こいつの罪は消えない!そして!」

「今度変わるのは!お前ら2人の番だ!ハインツ!メリシア!」

 

 

 

 

「人を殺すなんて…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しかったよ…ハイド」

 

 

「ピエラニオ……いや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあな…キノコ」

 

 

 

 

「ありがとう…ハイド君…先に逝くよ」

 

 

 

 

 

 

刀を、振り下ろした。

 

 

 

 

 




次回からハインツに重点を置きたいけど…

どんな感じにしようかなぁ…
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