「やっぱりね、ハイド、中の傷開いてるわ」
「だから痛むって言っただろ…」
完治していない状態であの戦闘。
あまりいい事ではない。
「ハインツ、お前は?」
「もう大丈夫かな」
鉄の国から世界樹へ出発し、1週間ほどたった
「でけぇな。世界樹」
「もうすぐ兵の姿も見えるだろうね」
もうすぐ目の前にあるように見える
世界樹。
【エルフの里】
神は世界を支えるため柱を作った
それと同時に、柱を監視する者も作った
それがエルフ
多くの魔法を作った種族。
彼らはまだ里には入っていない
「兵だな、それも大量にいる」
「あそこで迎え撃つ気かしら?よりにもよって…」
「…オリーヴァ、世界樹の中ってある?」
「上までくり抜かれてるわ。言っておくとエルフがやったのよ」
「良いのかそれ。ローザ、兵にちょっと話を聞いてきてくれ」
「私ですかー?」
「顔を知られてないの君だけみたいだし……魔族がどこまで来ているかだけ」
「わかりましたよ」
低い崖を滑り降りる
兵たちの陣営に近づく。
武装した一人の兵に駆け寄る
「あのー…すいません…ちょっといいですかね」
「ん?あ!?兵でも傭兵でもないよね君!?」
「え、まぁ…え!?ちょっと!?」
「……おい」
「……」
「戦場に一般人が紛れ込んだら…当然連れて行かれるよね」
「どうやら戦線は近いらしい、メリシアを探すぞ」
「ローザちゃんもね」
都合上、国の者に見つかるのはマズイ
バレないように探す他ない
「兵たち妙に落ち着いてるけど」
「よく訓練されてるな。夜決行だ」
彼らはそこで数時間待機した
マントを取り外し、刀を背負う。
作戦は立てておいた
「ハイドはすぐそこの兵のテントをひとつずつ探る」
「残りの2人は…世界樹の中へ」
「どうして?」
「なんとなく」
「もう魔族が進入してる可能性がある」
関節部を保護する鎧を取り、マントを取り、刀を背負う。
「こんな時の訓練もしてる。また後で…」
「ご無事でー…」
エルフ達はどこにいるのだろうか
避難したのか、人と共に戦うのか
大型のテントがいくつもあり、
少しの松明が立てられている。
(見張りがいる…当然か)
ひとつのテントの入り口に、ぼーっと立っている兵が二人。
まずはローザを探す。
まだこの場にいるはずだ
(やり辛いな)
物影から物影へと隠れ移動、二人に接近するが…
今回は殺しに来たのでは無い
魔族と戦う英雄たちを殺す気は起きなかった。
(ん…?)
兵二人の異変に気がつく
(……)
(寝てる…?)
「……失礼」
背後を通る
世界樹の入り口は幾つかある。
兵がテントを張っている場所から近くにひとつある。
恐らく、どの入り口も守られているだろうが…
「魔族側の方の入り口はどうなってるやら」
「…簡単に入れたわね」
中は完全ではないがくり抜かれている感じだ
中を削って作った木の階段が、天井が見えない上まで続いている。
誰の姿も、なかった。
月の光が少し入ってきている。
大きな階段を登り始める。
「……なんだ…コレ…」
幾つかのテントに進入し、ついに見つけた。
中にあるのは大きな檻。
中で横になっているのは人。
「いや…エルフか?」
確信は無い。
檻に近づく
「ん…お前なんで…」
「ん…!ハイドさん!やっぱりきて…!」
ローザ
端の影で座っていた。
「デカイ声出すな…隣で寝てるのは?」
「エルフ…みたいです。人に囚われたって…」
「なんで人が……」
「それより出して下さいよ…!」
「あぁ…鍵なら持ってる」
「ヒュー」
檻の鍵を横たわっている兵から奪った。
解錠する
「あぁ…くそ…」
錆びついていて嫌な音が響く
「起きてない…な」
「放っておくんですか?」
「事情を知らない限りヘタな事はできない」
「兵に何をされるか…」
「わかったよ…見張っとくから起こしてけ」
一人づつ声をかけていく。
全員、怪我などは無いようだった。
「あ、あの…なんで兵が倒れて…」
五人の内の一人が口を開く
「…五人?少なくないか?」
しかも五人とも女性だ
「まだ別の場所に…」
「あーなんで細かく分けてるんだよ。場所がわかる人は?」
「私、別の場所から移されて来たんですが…」
手を上げた、一人のエルフ。
「よし…ついでに救助だ。ローザ、お前は残れ。後で説明してくれよ」
「留守番ですかー?」
「あんたは道案内を頼む。捕まった理由も聞かせて貰うぞ、後でな」
「はい…」
世界樹、内部
「あー!!!長い!登る必要あるかな?」
「特に無いけど……世界樹で待ってるって言ってたんでしょう?」
「まぁ…あの魔人がね。待ち合わせに遅刻された気分だね」
「私達が遅刻したんじゃなくて?」
「兵が生きてたんだからそれは……ッ!」
「なに?…人影?」
階段の先にある人影、それは鎧を着ていた。
(兵?見つかった!?)
「……お前ら、ここで何を…」
話しかけて来た。今にも消えそうな声で
「怪我をしてるのかしら?大人しくしてくれたら治療するけど…」
人影がゆっくりとこちらに向かってきた。
「いや…もう遅い…」
「!!」
月の光で少し照らされたその姿は、無残だった
傷だらけ、血だらけ、自分のものだけではないだろう。
「ち、治療を!!」
「こっちに!」
「もう遅いって…あぁ…目が…」
オリーヴァが即座に治癒魔法を発動するが
「血が…!」
少しの傷は確かに治っていくが、溢れでる血が止まらない
「お前らは…どうやってここに…」
「誰にこんな事を?あなた国の兵よね?」
「……気がついてないのか……?すでに我らは…"魔軍の攻撃を受けている"」
「いや、魔物の姿は見てない…」
「…気をつけろ…正常な奴は…もういない…
「…オリーヴァ」
「えぇ…」
「急いで降りてハイドと合流するか、このまま登るか…」
「…登りましょう。奴らは待ってる…気がする」
「さて、方向は?」
「こっちです」
他の場所に囚われた者を救出しに行く。
容易ではないが乗りかかった船だ。
(一応、勇者一行だしな…)
「…」
「なんだ?」
生ぬるい風が一体を包み込む
周りの松明の炎が消える
「……これは」
「う、上です!!」
「!?」
一匹の大きな鳥。
月を背にこちらに向かっていた。
「この…匂い…!覚えてるぞ…」
刀を抜く。
戦う。