その鳥が長い首に巻きつけている"布"
それにハイドは見覚えがあった。
決して綺麗とは言えないその布
その布とそれの持ち主には何度も命を救われた。
風を操る魔具『旋風のボロ布』
正式な名前だ。
それを操る男。
『旋風のグスタフ』
赤獅子王騎士団、弓隊隊長
"グスタフ•ヴィンクラー"
「…来る!走れ!」
「きゃっ!?」
エルフの女性を担ぎ上げる
走る。
「どこ向かうんですか!?」
「世界樹!上にいく!!」
感覚で分かる。
上空から迫る鋭い風、かまいたち。
走っている限り二人に当たる事はなさそうだったが
背後の地面が深く削られていっていた。
世界樹との距離は離れてはいない。近い。
「一番近い入り口は!?」
「そ、そのまま真っ直ぐで…!!」
揺れて少し苦しそうだった
ただかまいたちを避けつつ、ひたすらに走る
入り口は目前に迫っていた。
「ッッ!!」
今度はかまいたちではない
何度も食らった事がある。
"風の壁"
避けられない
「ああッくそ!!エルフだろ!なんとかしてくれ!」
「…わかりました」
「冗談だったんだが…」
エルフは魔法に最も精通している
彼女は何かを呟きだす
「じゅ、呪文かよ?道具は?」
「……」
当然、返答の代わりに呪文が聞こえる
「加護を…お許し下さい…」
「あぁ…!?」
「ッ!?」
真横に大穴が開く
「逸らしました」
「そんな平然と…!ついた!!」
飛び込む。
世界樹、上部
「今、大きな音がしたような…」
「それも下でね、気にせず進みましょう」
「明るくなってきた、あともう少し…」
「…」
「オリーヴァ?」
「魔具の匂いがする…それも多い」
「…本当?」
世界樹、下部。
「…今のは…ありがとよ」
「お、重かったですよね…?」
「…別に。登る、救出は後回しになった」
「もしかして、あの魔人を倒すんですか?」
「知ってるのか?魔人って事を」
「はい…あんな魔物見たことないですし、魔具の匂いが……あの魔具は…」」
「あぁ、あの魔具は厄介だ」
「…!どんな物か知ってるんですか?」
「まぁな。どんな顔な奴かも知ってるよ。話は後だ、待ってろ」
「…いえ、私も行きます」
「…まぁ好きにしてくれ…急…くそ…」
外で風が吹く音がする
それもかなり大きい。
「穴を開ける気だ、今度は自分で走ってくれ!」
世界樹
"最上部"
身体強化魔法を使用した
魔力を消費してあまり良いことではないが、一刻も早く上の様子を知りたかった。
「……」
広い。
ただただ広い。
穴が幾つか空いている。別の階段があるのだろうか
霧が出ていた。
「…いる!私たち以外の魔具の匂いが、はっきりする!」
「……魔具…あの魔人、持ってたかな…」
「遅かったわね…」
「ッ!!」
背後から聞いた事がある声がしたと同時に、剣を抜くハインツ
距離は間合いの範囲内だろう
振り向くと同時に薙ぎはらう。
が、
「残念。外れよ、勇者さま」
「…メリシアはどこだ…!!女の魔人!!」
遠くにあるその姿
植物でできた体
メリシアをさらった張本人。
「お久しぶり…魔物名はウーラ。昔の名前は秘密よ。勇者さま…」
余裕が過ぎている
「質問に答えてもらいたいんだが…」
「もーせっかちね…再開を喜びましょうよ…」
「お前ぇ…!!」
「操ってる兵に警護させてたのに…まさかここまで来るってね」
「ハインツ…」
「…なに?オリーヴァ」
「…かこ…まれてる…」
「…」
霧で周りは見えない
だが
「魔具の匂いが周りに…」
「…飛んで、オリーヴァ」
「ちょっ!」
剣の刀身を延長させるハインツ
「…!!」
居合い
「もう!!」
足を強化し、跳ぶオリーヴァ
「フンッ!!」
周り一体を薙ぎはらうハインツ
「……」
「とっ…!!手応えは?」
「ない…」
「もう、メリシアちゃんがすぐそばにいるのに。危ないわね勇者さま」
「あぁもう黙ってくれ。ウーなんとかさん」
「……すぐに返すと思ってるのかしら?来なさい、私を殺してみなさい」
「……!!」
「つ、ついた…!勇者達はいるのか?」
崖に立つ一人の男性
「待ってろ…"姉ちゃん"…!」
エルフの里、入り口
「もう兵が集まってるみたいですな」
「なんか様子おかしくない?」
「魔王」
「もう来てるみたいね」
「ふーん……ちょっとは強くなってるといいけど」