※この作品はR-18です。

黒のテスカトリポカ   作:被害者宅

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遅れた…?くっ殺せ!


第三十五話 帰路の喪失

「ん…?」

 

「どうかした?ハインツ」

 

「いや…なんでも、今は…」

 

 

 

「…降参する気はないんだね?」

 

「説得なんて無駄よ無駄無駄。役目はキッチリこなすタイプなのよ」

 

ならば仕方がない…と、両手に炎を纏うハインツ。

 

「じゃ、オリーヴァは待ってて」

 

「え、援護は?」

 

「必要ないよ」

 

「嘗められたものね…じゃ、始めましょうか」

 

飛び出すハインツ。

 

(相変わらず殺気はないのね…勇者様)

 

植物の魔人ウーラ。彼女にとってここは最も戦いやすい場所であった

 

魔人が右手を掲げると、地面が隆起し、無数の触手が現れる

 

向かってくる触手を右手の炎を纏った剣で迎撃し、構わず突進し続ける

 

(僕の魔力の性質上。長期の戦闘は不利!一気にカタをつける…!!)

 

(触手が灰に…?それも一瞬で…)

 

再度触手走らせる…が、結果は同じ。

 

「ふーん…魔力を直接炎の形ににしてるわけかしら」

 

(バレた!?それとも知っていた!?だが…)

 

すでに剣が届く範囲にまで迫っていたハインツ

 

「もう!」

 

木の巨大な壁が目の前に現れる

 

(関係ない!)

 

左手で壁を殴りつけ、砕き、灰にする

 

「!?」

 

壁の向こうに魔人の姿はなかった

 

「残念。手加減するからよ勇者様」

 

「…クソ」

 

背後を取られていた

 

「私を嘗めた罰よ…種は教えてあげないわ。動いちゃダメよ?」

 

「いらないよ説明なんて…!」

 

「そこの…お嬢さんもね」

 

「…」

 

「もう少しお話しましょうか」

 

「話す事なんてない…」

 

「あるのよそれが。そういう命令なの。」

 

「魔王の…か?」

 

「そう…聞きたい事あるでしょ?私が連れ去ったあの子の事とかね」

 

「……メリシアは生きてるのか?」

 

「フフ…」

 

魔人はハインツの耳に唇を近づけ、こう言った

 

 

 

 

「生きてると思うの?」

 

「…ッ!」

心臓の鼓動が急激に速くなる

 

「これは戦争…魔族が人の捕虜を手に入れて国に身代金を願う筈がないのよ…まぁ彼女の身分によるけど。

ただ、別の使い道があったのよ」

 

 

 

汗が流れ出す

 

 

 

「いい材料になったわよ?"魔人"のね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…風が吹いたな…」

 

「もうすぐ頂上ってことですね…ハァ…」

 

木でできた雑な大階段を登るハイドとエルフの女性

 

「…あのデカイ鳥をどうにかしないとな…」

 

頂上に出れば間違いなく一方的に殺られる。

それは間違いない…が

 

「ハインツとオリーヴァが気になるな…」

 

「お友達さんですか…?フゥ…」

呼吸を整える

 

「…付いて来なくて良かったんだがな」

 

「いえ、私も少し、用事があるので」

小休憩が終わったのかまた登り始めるエルフ

 

(なに急いでるんだ…)

 

「あ!月の光見えてきましたよ!」

 

「…結構近かったな。頂上…」

 

「まぁ現在の最高到達点ってだけですから…行きましょう!」

 

「お、おい…気をつけろよ…」

 

一気に駆け上がる二人。大きな、扉も門もない出口。

 

 

「…霧…か、静かだな…」

 

周囲の気配を探るが

 

「…旋風も来てないと…」

 

「本当に来てないんですか?」

 

「まぁ、多分な…あの二人は…ん?」

 

その瞬間だった

 

「キャッ!」

 

「なんだ!?」

あたりの霧が全て消し飛ぶ程の衝撃波

 

違う。ハイドが幾度も体に味わってきたあの感覚…"風"

 

「ッッ!…"待っていた"のかよ…!この鳥!!」

 

「……」

 

息を殺し気配を殺し。その鳥は"ハイド"を待っていた。

 

動き出す。

 

 

「俺の声は届いてるか…?意識はあるか…?本当にやるのか…?」

 

刀を引き抜く。

 

「…今度は訓練じゃない…」

 

本当の殺し合い。

 

辺りに強い風が吹き出す

 

「……本当にアンタなのか?…なぁ…」

 

「…」

 

「…無口だな…クソ…」

 

ハイドの全身に突き刺さるような殺意。

これまでに受けた事がないほどの殺意。

 

(そんなに俺を殺したいか、グスタフ)

 

刀を構える

 

(元、仲間として…俺がアンタを葬ってやる…)

 

 

 

「アンタは下がってろ…エルフ…」

 

「…はい」

 

 

更に強くなっていく風、辺りを囲まれているようだった。

 

逃げ場はない。

 

 

全身の感覚を研ぎ澄ます。

それと同時に入ってくる情報。

 

(右側が一番"騒がしい"な…)

 

体に当たる風の量が僅かに多い

 

 

「じゃあ…行くぞ…」

 

地面を踏み砕く

 

彼は全力で飛び込んだ。

空ではなく、同じ高さにいる今がチャンスだった。

 

 

 

そして、彼らも同じ場所にいた。

 

 

「それは…彼女が…メリシアが死んだってことなのか?」

 

「ハインツ!惑わそうとデタラメ言ってるだけよ!!」

 

「私は嘘はつかないわ。答えないことはあるけれど」

 

「そうか……あんたの言う通りだ。僕はこれが魔族と人の戦争だということを忘れていた…」

 

「ハインツ?」

 

全身の力を抜いたような。二本の足でしっかりと立っているが、水のように流れ出しそうな脱力があった。

 

「僕が知らないだけで何人も死んでいるだろう。それと同じで魔物も…」

 

「"殺らなきゃ殺られる"」

 

「その通りだ、ハイドは間違ってない…だから」

 

 

 

 

 

「お前らを許さない」

 

 

 

 

水が流れる

 

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