※この作品はR-18です。

黒のテスカトリポカ   作:被害者宅

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第三十六話 戦争の初歩

無数に飛び交う見えない刃物

 

ハイドはそれを回り、跳び、滑り、しゃがみ、凌ぐ。

足や頬を掠めるが行動に支障は出ない。

 

いつのことだか…彼はグスタフから聞いた事がある

 

『視覚は数ある感覚の一つに過ぎない』

 

ハイドはその言葉に衝撃を受けた。

他の感覚に神経を集中させるとまるで、違う世界に降り立ったような気分になった。

その言葉が今の彼を生かしていると言っても過言ではない。

 

(何度も行ったアンタとの訓練…!)

圧倒的な戦闘力の違いに幾度も"意味がない"と思ったが…

 

彼は確実に距離を縮めている。

 

(くる…!)

 

大きな気配が前方より迫る

 

(この感じにも覚えはある!)

 

"澄み風"

 

形はハッキリとはわからないが…

 

『壁を飛ばしている』

 

と…彼は言っていた

 

避けられない。避けることが出来たことがない。

 

だったら…

 

『ただの壁だ…壊せない事は…ない…』

 

『避けなきゃいい…簡単だ…スティーブの馬鹿やお前の得意分野だろ…?』『聞こえてんぞグスタフ』

 

 

彼は足を止める事なく走る

 

『風を切れ』

 

「うッ……ォォオオオオオオッッ!!!」

 

見えない壁に向かって刀を振り下ろす。

 

(…ッ!)

 

だが刀は降り続ける。

 

「!」

 

突然両腕にかかっていた衝撃が消えた。

それでも力が込められたままの刀は地面に叩きつけられる。

魔具とは別の、また違った風を生み出した。

 

「…ッ!しまっ––––!」

 

背後、ハイド自身が発生させた衝撃、風に紛れての背後からの"壁"

明らかに反応が遅れた。間に合わない。

 

それが、頭に直撃した。

 

「ッッ!」

 

目の前が闇に包まれるようだった

 

 

 

 

 

 

 

「ハインツ!」

 

「あら?」

 

ハインツを縛っていた筈の魔人の両腕が宙を舞う

 

「!」

 

呆然としている魔人の顔の前には既にハインツの右拳が迫っていた

それを認識する前に、魔人の顔面に拳が叩き込まれ、後ろに吹っ飛ぶ。

 

「なっ!?」

 

離れていた所から見ていたオリーヴァにも、何が起きたか正確には分からなかった。

 

「見えなかったか?」

 

ハインツは予想外に落ち着いた雰囲気だった

 

(魔力は感じられなかった…!生身であの速度を!?)

 

「ふふ…」

ダメージがないのかあっさりと立ち上がる魔人

「攻撃の選択を誤ったわね…ただ、"殺す気"だったのは褒めてあげるわ」

そう言いながら無い両腕を地面に向けると、世界樹の枝を吸収するように、自身の両腕に変えた。

 

「世界樹ほど多くの魔を含んだ自然がある限り、貴方は私を倒せないわ」

「そうか」

 

彼は"全身"に炎を纏った。

 

「え?」

 

「これで復活は、無理だな」

 

ハインツを中心に魔力の炎の波が生まれた。

その炎は確実に燃え広がり、世界樹を焼き始めた。

 

「な、なにやってんのよアンタ!!」

「これが戦争だろ?」

戸惑った表情の魔人

「くそっ!」

「逃がすか」

逃げようとする魔人を追おうとするハインツ。

 

 

「ふふ…計画通りよ。勇者様」

「なんだと?」

 

飛び降りた。

 

(こんな端に居たのか!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…感覚が戻ってきた…)

 

霞んだ目を開くと、そこには…

 

「…んた…なにやって…」

 

「…」

 

あのエルフの女性が立っていた。

 

 

 

 

 

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