※この作品はR-18です。

黒のテスカトリポカ   作:被害者宅

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第四十七話 暗黒と逆光

ネギエルの魔術学校。

 

ハインツは感じていた、あの時と同じナワルピリの魔力を。

呼ばれているような…不思議な感覚。

 

「……フゥゥゥ」

 

呼吸を整え、扉を開ける。

 

「……ナワルピリ…さん」

 

「ほぉ…生きていたか。勇者様」

 

「…お願いがあって来ました」

 

「あぁ、大体想像つくよ…負けたな?」

 

「分かってたんですか?あの時から…僕が魔王に敵わないと」

 

「正直言うと死ぬと思っていた。けどその剣の能力で壁を作ったのは予想外だった。あの時は驚いたよ…それは初めて見た」

 

"それは"

 

 

「知ってるんですか、この剣がどういった物か」

 

「当然だろう。それは"私が作った"からな」

 

「…?僕は初代勇者が作ったと…聞いてましたが?」

 

「まぁ正確に言うと共同作品だな。

 

「会った事があるんですか!?」

 

「会った。聞きたい事は山ほどあるだろう?彼女もここへ」

 

「…はい」

 

オリーヴァを呼んだ後、階段を上り奥にある一室へ三人は入る。

数え切れないほどの本がある、奥が見えないし天井まで積み上げられてもいる。

 

「読み切るには一生を捧げなくてはならん」

 

「魔法の本かしら…?「

 

「その通り」

 

ナワルピリは小さなテーブルの上に置かれた一冊の本を手に取る。

 

「ここにあるのは全て戦前の本だ」

 

「100年前の?」

 

「いいや違う。十数年前のものだ」

 

「十……別の地のものでしょうか?」

 

「この土地の戦争だ…十四…いや、もう十七年前になるか?」

 

二人はナワルピリの言っていることが理解できなかった。

戦争は100年前も魔王と勇者の最初の戦いから起きていない。人間同士の戦争もない筈だ。

記憶にも記録にも残っていない、ある筈のない戦争……

 

「疑問だろう?当然だ、その戦争は"消されたんだ"」

 

椅子に腰をかけ、続ける

 

「100年前の魔王軍の残党がフレイジアを襲ったのだ。目的は王の首だ」

 

「王を…なぜです?国を欲していたのでしょうか?」

 

「魔王と王には因縁があったのだ」

 

「…それもおかしい。魔王は100年前に封印され、その王とはエルフでなく普通の人の筈です…お互い顔も知らないのでは」

 

「……通常、寿命が100を優に超える種族は"エルフ"、"龍人"の二種のみとされている…が、一つ忘れているだろう?」

 

「…!」

 

二人の脳の奥底に一瞬走る衝撃…

 

「まさか…"魔人" ? 」

 

「正解だ」

 

彼は立ち上がり、山のように積まれた本を見つめて言った。

 

「そして、王の首以外にもう一つ…ある男を彼らは求めていた」

 

「少し思考が遅れているんですけど…その人物は一体?」

 

「ハインツ君と初めて会った時…話しただろう?神の魔力を受ける器が必要だと」

 

「人柱でしたか」

 

「初耳ね」

 

「その器とは、皆から"無能"や"持たざる者"と呼ばれる"魔力を持たない人々"の事だ」

 

「狙われたのは魔力を持っていない人だったと…」

 

「うむ。その者の名は–––––」

 

 

 

 

"ハイズ•ノード"

 

 

 

 

"そして、彼は死んでなどいない"

 

 

 

"器となり、不老不死となったのだ"

 

 

 

 

 

 

 

あれからどれ程の時間が経った?

 

この魔人に刀を向けてから…どれ程の攻防が…

 

ハイドはもう立てずにいた。

足に力が入らず地に膝をつき、刀を杖代わりにして辛うじて倒れずにいた。

 

「たのじがったよ……でも、これでおわり…」

 

(魔力はもう残っていない…)

 

「次の手を…」

 

"犬"は一歩づつ…迫る。

 

「いいや、もうひづような…」

 

その時、閉ざされていた扉がゆっくりと開かれた。

開くのを待っていたかのように、風が吹き狂う…

 

「……ボス」

 

「?しんでながった…か」」

 

立っていたのはボルバレスだった。

ハルバードを背負い…

 

「なんでここに…!」

 

「君には借りがあるあるからな」

 

「俺もあんたにあるだろう…帰って寝てろよ」

 

「いや駄目だ。君をここで死なせられない」

 

「なんだと?」

 

「君には…いや正確に言うと…とにかく、こいつを始末してからだ!」

 

傷は完治していない筈なのに、戦う気だ。

やめろと言ってもやめないだろう。

 

「…おい、こいつを使え」

 

ハイドはボスにある"魔具"を投げ渡した。

 

「…指輪?」

 

「そいつを使えば身体強化魔法とは比較にならない程の力が出せる」

 

「なら君が…」

 

「俺には使えない…俺には俺の魔力がないんだ…」

 

「もういいが?」

 

「……」

 

「何考えてるかわからない…が。無茶するなよ…」

 

 

装着し武器を構える。

 

「魔力を注げ」

 

全身に感じた事がない感覚が漲る。

 

「へー…いぐぞ」

 

 

既にハルバードの攻撃範囲内

 

踏み込み、振り下ろす。

 

犬はこれまでと同じようじ、背中の二本の腕でそれを迎える。

 

 

だが…

 

「なに"ッ!?」

 

砕き、貫く。

 

攻撃の進行を止めることはできなかった。

何とか横へ避けるが、遅れた左足が地面と共に抉られる。

 

動きはかなり封じられるだろう。

 

畳み掛ける。

 

「むうっ…!!!」

 

魔人は距離を取ろうと下がろうとするが、ボスは逃さない。

 

丁度良い間隔…間合い。

 

全身に力を込め踏み込み、突くには最も適した距離…

 

"殺れる"

 

「ぐ!!」

 

槍斧先端に備えられた刺突用のニードルが魔人の胸に深々と突き刺さる。

 

抜こうとするが力はボスの方が圧倒している。

下がろうとするがそのたびにボスが一歩踏み込む。

 

「この……」

 

「終わりだな、魔人」

 

「どうがな」

 

再度、下がろうとする魔人

 

それを追うボス

 

(このままぶち抜く!)

 

足に力を溜める。

 

もう一度魔人が後ろに跳ぶ。

 

(ここだ!)

 

魔人の両足が地から離れた瞬間、前に跳ぶ。

硬い胸に入ったヒビが大きく広がっていく。

 

(もらった!!)

 

(っっ!!)

 

(…いや…)

 

「ボス!!狙いは槍斧だッ!!」

 

「……あだり!」

 

魔人がニードルに大きく勢いの乗った肘を打ち込む。

砕け散る、そして

 

「!」

 

大きくバランスを崩したボスは前に飛び込んでしまう。

 

「もう一度!た"な"!」

 

ガラ空きになった頭に踵を振り落とす。

 

全身を地に打ち付ける

 

「…ッボス!!」

返答はない

「あれ?まちがえだ…まえは腹だっだっけ…」

 

首を掴み持ち上げる。

 

「……ぶっ殺す」

ハイドは刀を立て、立ち上がる。

 

 

 

 

一方、城外では。

 

闇を操る魔人と対峙するトールとローザ。

 

「奴が何してきたか…分かりますか?」

「奴の周りから黒い棘が、こいつは手強いぜ」

 

剣でも風でもダメージは与えられなかった、更に視界は暗闇のせいで良くない。

 

「良い作戦は思いつきましたかな?」

影に包まれた魔人が迫る。

 

「これまで会った魔人の中で一番厄介だぜ、お前…」

 

「む?魔人と言いましたか?今…」

 

「あ?あぁ、耳遠いのか?」

 

「……私は魔人などではない。正真正銘の"魔物"です」

 

「はぁ?」

耳を疑う。

 

「魔人などという雑種と一緒にしないで欲しい。貴方達みたいな奴らが一番嫌いだ……よッ」

 

「ローザ!」

「!」

 

二人の間に背後から大きな棘が割って入る。

 

「あぶ」

「ないですね…」

 

「おっとっと……避けましたか」

 

「……」

「トールさん?」

「いや…さっさと片付けようぜ」

 

「貴方達が片付けられる方ですよ」

 

男の周りに棘が現れ、広がる。

波にように迫り来る棘…

 

「ローザ、撒け」

「!はい」

 

二人を囲んで風が吹き上がる、そして、辺りの石や砂もそれにつられて行く。

 

「…姑息な…砂嵐ですか」

 

風や石と石がぶつかり合う音が激しく、音で位置を判断するのは不可能。

 

「次はどうするんですか!?」

「奴はまともに戦っていい相手じゃない!よく観察して弱点を見つけ、そこを叩く必要がある!」

「そんな暇ないです!」

「…一つはっきり分かることがある!」

「なんです!」

「闇は照らす、それだけだ!」

 

問題はどうやって光を得るか…月の光をは木々で隠され効果があるかはわからない、火を灯す必要がある。

(隠れられそうな場所は…無いよな…強いて言うなら木が密集してる場所だが…)

 

辺りの地形に高低差はなく木々のせいで逃げるには苦労する。

 

「…俺が奴の足止めをする!お前は城へ行け!」

「はい!?無茶ですよ!!そもそも本当に光が効くか分かんないんですよ!!」

「ハイドが言ってただろ!あの老人が敵なら、間違いなく魔軍の手先だと!俺が受けた依頼を達成するためには奴の持ってる情報がいる!!」

「…分かりましたよ!じゃあ開きますよ!!」

 

 

 

 

「む…風が…」

収まりつつあった。

次第に景色が元に戻る。

 

 

「お一人ですか?お嬢さんは…」

 

「誰もいなかったら逃げるだろ?お前」

 

「面白いですね、貴方」

 

棘を弾く。

 

「嬉しそうですね」

 

 

「当然だぜ…お前ほどの相手を…独り占めできるんだからなぁ!!」

 

 

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