※この作品はR-18です。

黒のテスカトリポカ   作:被害者宅

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第四十八話 漆黒と思惑

 

 

"体外に展開された魔法、魔力は、使用者の体と接していれば、魔力の消費を抑えることが出来る"

 

「魔力そのものを形にできるのは君くらいだがね。ハインツ」

「勇者の剣があってこそです」

「魔力の刀身か…消費も少なく強力か…こういう使い方もあるんだな」

「…それで、修行って何ですか?」

「……一つ、簡単な事だ……君の記憶を引き出す」

ナワルピリはそう言うと椅子から立ち上がった。

「はい?」

「…君は旅にでる直前まで、三人の師と修行を行っていたな?」

「えぇ。それが何か?」

「彼らから、少し昔事になるが…君の記憶の一部を消すように頼まれた」

「…え!?記憶を消すって…!そんな事ができるんですか!?」

「あぁ。君が忘れている記憶に関係がある……と、言うわけでオリーヴァ君は館の外で待っててくれたまえ」

「え。は、はい…」

 

オリーヴァは言われた通りに外へとでる。

 

(記憶を消すって……魔法で?聞いたこともないわね…)

 

「それじゃ…すぐに済む。目を閉じるんだ」

 

「は、はい…」

 

(……"聞いたことがない"……まさか……)

 

「"禁術"…?」

 

下りた階段を急いで駆け上がり、先ほどまで話をしていた部屋まで走る。

 

("禁術"には"対価"がある!もしも使用された側にもたいがあったとすれば…!!)

 

扉を叩き開ける。

 

「ハインツ!」

 

「いや。もう終わったぞオリーヴァ君」

 

「え……」

 

椅子に座っているハインツに変化はない…先ほどまでと一緒だ。

 

「安心しろ。これに危険性はない………うん…」

 

「…!!あるだろ何か!絶対に!」

 

「いや。大丈夫だよオリーヴァ。僕は平気さ」

 

「…本当に?」

 

「うん…そっかぁ…"禁術"かぁ…消すわけだね」

 

「禁術……またの名を…」

 

「 "詠唱魔法" 」

 

 

「言葉の持つ力は凄まじい…ただの魔法は精霊の力を借りて効果を発揮するが…詠唱魔法は違う。"神"から力を借りるのだよ」

 

「…えぇ…」

 

「言葉は思い出したな?ハインツ君」

 

「…"勝てる"…」

 

「…禁術が禁止されているのには理由がある筈です。そんな物を使用して…無事なわけ…」

 

「確かに対価はある…だがそれは人によって違う…現に私は"神様のお気に入り"だ」

 

「お気に入り?」

 

「……次は君の番だよ。オリーヴァ君…その魔具の上手い使い方を教えてあげよう」

 

「……変な意味に聞こえる…」

 

「………………至って真面目だ」

 

 

 

(詠唱魔法…僕の記憶から消したのは、不用意に使わせない為か……急がないとな……)

 

 

「この鎧の上手な使い方って、どういう事でしょうか?」

「かつての勇者一行の回復担当…まぁ大体君のお婆さんに位置する彼女は…触れていない、離れている者まで治癒する事ができた」

 

「…す、凄いですね」

 

「ここで一つ質問するよ。君はその魔具に"感謝"をした事はあるか?」

 

「え?感謝…?」

 

「…エルフが使う。一般的に矢避けの加護と呼ばれているものは、そこらにいる精霊に"感謝"をしているから使える物だ」

「さっきも言ったように……言葉は重要だ。基本的に魔力を対価に精霊は魔法を発動するのに助力してくれる…が、感謝すれば加護を受けられるのだ」

 

「その加護を受けられるのは、エルフだけだと聞いた事があります」

 

「そう。直接助けるのはエルフだけだ…理由は…とにかく、魔具は精霊の力を借りず、自身の魔力を直接注ぐ事で使う事ができる…が!ここでもう一つ…"魔具の場合、何に感謝するか"…だ」

 

「魔具そのもにするのでは?」

 

「惜しいね………全ての魔具って訳じゃないけど、魔人が自分から魔具になるのを受け入れた場合。その魔具に少しだけ"意識"が宿る場合がある」

 

「自分から…初耳です…この鎧には意識があると、そういう事ですか?」

 

「そう。心の底から感謝しろ。できるなら言葉に表せ。そうすれば…君の一族とは長い付き合いだからな。喜んで力を借してくれるだろう」

 

(感謝って……なんか…恥ずかしいような…だって魔具だし…)

 

「……まぁ今じゃなくてもいい。たが忘れるな」

 

「はぁ…はい」

 

「……正直言うと、今の君たちに教えてあげられる事はそれ位だ……今日はここに泊まっていけ。その後はここに残って自主練するなり、魔王の首を狙いに行くなり…好きにすればいい」

 

「…え、これだけって事!?」

 

「ああ。私は寝るから後はお二人で適当に…」

 

「めちゃくちゃだわ…」

 

「いや、十分収穫はあっただろう」

ハインツはいつの間に立ち上がり、側まで来ていた。

 

「まぁ…そうよね…何より、そんなにゆっくりはしてられない」

 

「そう……けど、記憶が復活したせいか、凄い眠たいんだよね…明日、出発しよう…戦場の最前線まで」

 

「えぇ、そうね」

 

 

(ハインツ…また様子が変わった?)

 

 

その後、深夜。

二人は館の中ではなく、外で火を焚いていた。

この辺りは、魔物が容易には入られないようになっているらしい。中より外で火を起こした方が暖かかった。

 

「あの人はまだ、絶対に何か知ってる」

「私もそう思うけど。教えてくれる感じじゃないわね」

「何か考えがあるんだろう……信用して良いのか?あの人の事を」

「少なくとも魔王の配下だとかでは無いでしょう」

「だと良いね」

「それで…」

「ん?」

「禁術って…どんなの?」

「あぁ…いくつか戦闘向きな奴が…」

「……へぇ」

「とにかく、戦う為に必要な物は揃ったはずだ…僕は寝るよ…」

ハインツは地面に無造作に横たわった。

「えぇ…おやすみなさい…」

 

彼女も、深く考えないようにして、横になった。

 

 

翌日。

日が昇り始めた頃に、二人は目を覚ました。

 

「…ふぅー。行こうかぁ」

「えぇ」

「お、出発かな?」

ピエラニオが館から眠たそうに出てくる。

「ナワルピリさん。少しだけどお世話になりました」

「いや…また会う事だろうし。急ぐのだろう?礼は良いからさっさと行きなさい」

「はい…」

準備を素早く完了させ、道につく。

 

「それではこれで」

「うむ」

 

オリーヴァとハインツは、目的地へと向かい歩き出す。

ナワルピリは、その二人の背中が見えなくなるまで見つめる。

 

「彼らは行ったぞ」

 

「お気付きでしたか。ナワルピリさん」

館の陰から、ロープを被った男が現れる。

フードを深く被り、顔を見る事は出来ない。

 

「結界に侵入されれば嫌でもな…昨晩からいたのだろう?」

「えぇ。少し、彼らの様子を伺いたく…」

「敵ではないか」

「"半分"だけ」

「魔人か」

「……」

「で、私に何か用事か?君は魔術師だな。弟子志望かね」

「……貴方の秘密は知っている」

「……どれの事かな?」

「僕に協力してくれ」

「そう来ると思ったよ」

 

 

「"ホルン"くん」

 

 

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