※この作品はR-18です。

黒のテスカトリポカ   作:被害者宅

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第五十話 転機と終末

"生命の王"

 

100年前の戦争で封印された王の一人である。

最初に生命の"尊さ"に気づき、神に力を与えられた。

生命を操る力を持つ。

 

彼ら王は自身の事を魔人では無く、魔物と呼ぶことから。

魔物の始祖と考えられている。

 

「勇者が死んだって本当か?復讐も目的の一つだったというのに…だが、新しい勇者はその血を継いでるらしいな。面白い」

 

兵士達は何とか魔物の進攻を抑えることが出来ている。

(今はこちらに集中すべき…ね)

 

「奴は魔力体…屍体は俺が相手をする…お前が仕留めろ、ララ」

 

「当然よ」

 

「…詠唱魔法は取っておけ…魔力を溜めろ。一撃で終わらせるんだ」

 

屍体が一斉に飛びかかって来る。

その中には当然、兵も入っていた。

 

「チッ…お前は本当に嫌な奴だ…」

 

既に死んでいる、故に、首を切り落としても。心臓を潰しても…

彼らは止まらない。

 

(手足を捥ぐしかない…)

 

足を、腕を、斬りとばす。

 

「おお…!速くなったね…やはり君達は私の道具になるべきだ!」

 

「!」

 

突然、地中から突き出た、緑の鱗に覆われた腕…

 

(龍人…!!)

 

その腕に足を掴まれ、動けなくなる。

 

「どうだ?早い段階で屍体に侵入出来たから、状態が良いだろう。やれ」

 

まだ動く事が出来る屍体が、動きが止まったクリフへ襲いかかる。

 

が、その屍体たちは巨大な火球によって消し炭へと姿を変える。

 

「その龍人を!!」

 

(ララ…こいつらの鱗を引き裂くのは困難…なら)

 

その掴まれた足を強化し、全力で、上へ蹴り上げる。

足を掴まれたままで、地中に潜んでいた龍人が姿を現わす。

 

全身を真緑の鱗に覆われ、爪は非常に鋭い。

更には尻尾まで生えている。

 

「一本釣りってとこだな」

 

今度は足を勢いよく下ろし地面へ叩きつけると、掴んでいた腕が折れ、足から離れる。

 

「あー。貴重な龍人種を…まぁ純血のエルフも貴重だけど。さっさと屍体になってくれよ」

 

「断る……やれ、ララ」

 

「おお!?」

 

地面から徐々に水が湧き上がり、生命の王の足元に水溜まりが出来た。

 

「水…」

 

「氷よ」

 

王の体が少しづつ氷に包まれていく。

 

「凄いな。魔法はこんな事まで出来るのか」

 

「知らなかったの?…液体になる前に氷になれば…もう逃げられない」

 

「……おい。魔人。溶かせ」

 

「…なんですって?」

 

炎の魔人の火球が王の体を直撃する。

 

「まだ炎を出せたか…!」

 

(…無事では済まないはず)

 

黒い煙が辺りに吹き付ける。

 

「うおぉお!これは中々効くな」

 

少し炎が燃え移ってはいるが、ダメージは少ないようだった。

 

「ハァ…やる気が失せてきたな…痛みで…」

 

「…なんだと?」

 

「いや、冗談だ。ただ…もうやる意味は無くなった」

 

「逃げる気かしら」

 

「正直に答えよう。答えは逃げるだ…ここは私のテリトリーではないし分が悪い。第一…」

 

「もう魔王は侵入出来たらしい」

 

「!?なんだと」

 

「侵入?いったい何処に…?」

 

「それは当然。"城"だ」

 

「ララ、城へ」

彼女は無言で頷きその場を後にする。

 

「おい。私の言ったこと素直に信じるのか」

 

「万が一に備えてだ」

 

「……そうか。私はもう行く。後は彼らに任せてね…」

 

生命の王の体がゆっくりと溶けて行き、足元の溶けた水と混ざり、土に吸収されていく。

 

「………俺は魔物を殲滅するか」

 

 

 

 

そして

 

 

"王座"

 

王座へと続く大きな扉が、魔王によって開かれる。

 

そこにいたのは王座に座った王、ただ一人であった。

 

「…護衛は置いていないのかな、ここには…僕がここに来れた意味…わかってるね。王様さん」

 

「………」

 

「城の外にいた、あの…一級の魔具を持った四人は始末した。自分たちの事を勇者だとか言ってたけど…あれ死人だよね?」

 

「………」

 

「赤結晶…過去の英雄か何かかい?」

 

「一人で来たのか?」

王は立ち上がりそう言った。

 

「仲間が一人…城の外で待ってるよ…で。今日は君の首を貰いに来た」

 

「そうか………"悪手"だな」

 

「君もね…そのボロボロの椅子に座ることを選んだのは悪手だよ」

 

「このボロボロの椅子は座り心地が良くてな…だから…首を差し出すのは貴様の方だ」

王はその姿を変えていく。

 

「魔人が僕に楯突くか…」

 

「あぁ……行くぞ。"魔法の王"よ」

背中に二枚の大きな羽が生え、爪と歯が鋭く伸びる…

まるで、鳥のような風貌だった。

 

「来い、風の鳥よ」

 

その時、突如として壁に穴が開き、大風が吹き荒れる。

 

魔王を吹き飛ばそうと、風が城に吹き通る。

 

「………ははは…」

 

「…何が…おかしい?」

 

「……これまで気がつかなかったけど…"コレ"には魔力が含まれていない」

 

「…?」

 

「"ただ風を操っているだけ"…」

 

「…!!!まさか…!!!貴様ッッ!!」

 

風に一切怯まず、前進する。

 

「あぁ…僕は…」

 

かまいたちを起こし魔王を斬りつけるが、一切、無傷であった。

…風が体を透けていく。

 

「"肉"と"骨"を捨てた」

 

「"魔力体"になったのか…!!」

 

「あぁ…うん。じゃあね」

 

「…!グ…!」

 

一瞬で距離を詰めた魔王が、王の腹部を真っ白な剣で貫く。

 

「…"不死"はどこにいる?」

 

魔王は耳元で、小さく呟いた。

 

「あ…ぐ…」

 

剣を捻り傷口を抉る。

 

「もう、今の君に僕を倒す術はない…だから…死ぬ前に教えてくれると…楽だな」

 

「…し…ね…!!」

 

「なんだ、君は何がしたい…?まさか、人間どもに情が湧いたのかな?」

 

「……そうでもなければ…王座になど座らん…」

 

「そうか…さらばだ、嘗ての友よ」

 

「…!!!いや…教えてやろう…」

 

 

 

「後ろだ」

 

「なんだって…?ッッ!!」

 

剣が魔王の背中から胸まで貫通し、動きを止める。

 

「……君は…まさか…不死かい?」

 

「…………あぁ」

 

振り向くと、フードを深く被り、顔を隠した男が立っていた。

 

(この剣は…魔力を帯びているのか…)

 

「君から来るなんて馬鹿だね…この剣が見えないのかい?」

 

白い剣を引き抜き。掴んでいた王を投げ捨てる。

 

「死んだみたいだね」

 

「………唯一、不死を殺せる剣…だろ?」

 

「知ってるじゃないか」

 

その男へと斬りかかるが、容易に避けられてしまう。

 

「…当たらなければいい」

 

「"ハイズ•ノード"ッッ!!」

魔王の胸の傷が消滅する。

 

「……その剣を破壊する」

 

「へぇ?本気で言ってるのかい?千年後や一万年後に後悔しない?」

 

「 ありえない 」

 

魔王の剣を握っていた腕を切り落とす。

 

(早い…!!)

 

ハイズはその落ちた剣を足で踏みつける。

 

「俺はその覚悟で不死になった……お前には荷が重い」

 

「……!ティトラカワン」

「ああ」

 

「!」

 

壁に空いた穴から鏡の骸骨が現れ、ハイズを殴り飛ばす。

 

「…おい、殺さないように首を折れば直ぐに済んだのに」

「我に殴られる瞬間。強化を解きおった」

「………やるね。人間の割には…」

 

「ふん…ティトラカワンか。お前の魔力は相変わらず役に立ってくれてるよ」

 

起き上がる。

 

「ふむ。十数年振りだな」

 

「記憶には残っていない戦争……なぜ、そこに倒れている王が皆の記憶からそれを消す事を選んだか…わかるか?」

 

「いや。突然なんだい?

 

「お前と違って、人類を恨まなかったからだ。王が魔人と知れば…民は当然、不安になる…」

 

「そうかい」

 

「……今度は……封印じゃない。死んでもらう」

 

「おしゃべりが好きだね。ほら、僕の腕が治ってしまったよ」

剣を拾う。

 

「あぁ、こちらも…来たようだ…」

扉から一人の"女性"が入ってくる。

 

「…彼女…いや。彼は…」

「エルフの三騎士の一人だ…名は確か…」

 

「失礼ねぇ…"女性"よ。間違えないでねぇ!」

 

「気持ち悪いな」

「うむ」

 

「……俺一人で魔王を殺せるとは思っていないさ…だから…」

「久しぶりねぇ。"人柱"の人生は充実してる?」

「まぁな。やれ、エンディ」

「せっかちね…」

 

「なんだ…?」

 

「…"滾る血と業火"…」

 

「…"詠唱魔法"!止めろ、ティトラカワン!!」

 

「おっと。俺がいるぞ」

 

ティトラカワンの前に立ち塞がる。

 

「!!」

 

「"その血を燃やし、骸と化せ"」

 

「退いて貰うぞ!」

 

ハイズの顎を狙って下から拳を放つが、剣でそれを受け流す。

 

「詠唱魔法は禁じられている理由は三つ…一つは、詠唱さえ唱えれば、誰でもつかえるから…二つ目は、魔力の大量消費で常人なら死ぬから…」

 

「ムゥ!!」

 

「3つ…それは…」

 

「城を出ろ!魔王」

 

「……させる…か…」

 

「!!」

 

魔王の足元に倒れていた王が、逃すまいと掴みかかる。

 

「"灰を散らせ"」

 

「強力すぎるからだ」

 

詠唱者を中心とし、あたりが一斉に爆発する。

 

城の上部を完璧に吹き飛ばし、崩れる。

 

「…………痛みを感じる暇も無いとはな」

 

ハイズは邪魔な瓦礫を押しのけ、ボロボロになったフードを破り捨てた。

 

「魔王はもう消し炭みたいね」

 

「あぁだろうな。骸骨を仕留めるか」

 

「……フン」

 

「奴には魔法が一切効かない。もう帰っていいぞ」

 

「酷い人ね…勇者様はとても優しかったのよ?」

 

「俺は勇者じゃない」

 

「…我には、なぜお主達が勝った気でいるのか分からぬな」

 

「教えてやろうか…?魔法の王様が形もなく吹き飛んだからだ」

 

「………それは違うな」

 

「なに…?」

 

「その通りだよ。違う。僕は生きてる」

瓦礫の陰から魔王が無傷で現れる。

ただ、一つ…先ほどと、違う点があった。

 

「それは…その"鎧"は…赤獅子王騎士団、団長…ロニー•エイセルの…」

 

鏡のような、薄い鎧を身につけていた。

 

「"女神の甲冑"……女神じゃなくて、男のだけどね…骨だけの…」

 

「…」

 

「"魔法"が弱点の僕が…"魔法"を"無効化する鎧"を手に入れた!!」

 

「…なるほどね」

 

「さてと……」

 

 

剣を構える。

 

 

 

 

「君の不死を…僕にくれ!」

 

「それは無理だ……"色々な意味で"…な…」

 

 

 

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