"生命の王"
100年前の戦争で封印された王の一人である。
最初に生命の"尊さ"に気づき、神に力を与えられた。
生命を操る力を持つ。
彼ら王は自身の事を魔人では無く、魔物と呼ぶことから。
魔物の始祖と考えられている。
「勇者が死んだって本当か?復讐も目的の一つだったというのに…だが、新しい勇者はその血を継いでるらしいな。面白い」
兵士達は何とか魔物の進攻を抑えることが出来ている。
(今はこちらに集中すべき…ね)
「奴は魔力体…屍体は俺が相手をする…お前が仕留めろ、ララ」
「当然よ」
「…詠唱魔法は取っておけ…魔力を溜めろ。一撃で終わらせるんだ」
屍体が一斉に飛びかかって来る。
その中には当然、兵も入っていた。
「チッ…お前は本当に嫌な奴だ…」
既に死んでいる、故に、首を切り落としても。心臓を潰しても…
彼らは止まらない。
(手足を捥ぐしかない…)
足を、腕を、斬りとばす。
「おお…!速くなったね…やはり君達は私の道具になるべきだ!」
「!」
突然、地中から突き出た、緑の鱗に覆われた腕…
(龍人…!!)
その腕に足を掴まれ、動けなくなる。
「どうだ?早い段階で屍体に侵入出来たから、状態が良いだろう。やれ」
まだ動く事が出来る屍体が、動きが止まったクリフへ襲いかかる。
が、その屍体たちは巨大な火球によって消し炭へと姿を変える。
「その龍人を!!」
(ララ…こいつらの鱗を引き裂くのは困難…なら)
その掴まれた足を強化し、全力で、上へ蹴り上げる。
足を掴まれたままで、地中に潜んでいた龍人が姿を現わす。
全身を真緑の鱗に覆われ、爪は非常に鋭い。
更には尻尾まで生えている。
「一本釣りってとこだな」
今度は足を勢いよく下ろし地面へ叩きつけると、掴んでいた腕が折れ、足から離れる。
「あー。貴重な龍人種を…まぁ純血のエルフも貴重だけど。さっさと屍体になってくれよ」
「断る……やれ、ララ」
「おお!?」
地面から徐々に水が湧き上がり、生命の王の足元に水溜まりが出来た。
「水…」
「氷よ」
王の体が少しづつ氷に包まれていく。
「凄いな。魔法はこんな事まで出来るのか」
「知らなかったの?…液体になる前に氷になれば…もう逃げられない」
「……おい。魔人。溶かせ」
「…なんですって?」
炎の魔人の火球が王の体を直撃する。
「まだ炎を出せたか…!」
(…無事では済まないはず)
黒い煙が辺りに吹き付ける。
「うおぉお!これは中々効くな」
少し炎が燃え移ってはいるが、ダメージは少ないようだった。
「ハァ…やる気が失せてきたな…痛みで…」
「…なんだと?」
「いや、冗談だ。ただ…もうやる意味は無くなった」
「逃げる気かしら」
「正直に答えよう。答えは逃げるだ…ここは私のテリトリーではないし分が悪い。第一…」
「もう魔王は侵入出来たらしい」
「!?なんだと」
「侵入?いったい何処に…?」
「それは当然。"城"だ」
「ララ、城へ」
彼女は無言で頷きその場を後にする。
「おい。私の言ったこと素直に信じるのか」
「万が一に備えてだ」
「……そうか。私はもう行く。後は彼らに任せてね…」
生命の王の体がゆっくりと溶けて行き、足元の溶けた水と混ざり、土に吸収されていく。
「………俺は魔物を殲滅するか」
そして
"王座"
王座へと続く大きな扉が、魔王によって開かれる。
そこにいたのは王座に座った王、ただ一人であった。
「…護衛は置いていないのかな、ここには…僕がここに来れた意味…わかってるね。王様さん」
「………」
「城の外にいた、あの…一級の魔具を持った四人は始末した。自分たちの事を勇者だとか言ってたけど…あれ死人だよね?」
「………」
「赤結晶…過去の英雄か何かかい?」
「一人で来たのか?」
王は立ち上がりそう言った。
「仲間が一人…城の外で待ってるよ…で。今日は君の首を貰いに来た」
「そうか………"悪手"だな」
「君もね…そのボロボロの椅子に座ることを選んだのは悪手だよ」
「このボロボロの椅子は座り心地が良くてな…だから…首を差し出すのは貴様の方だ」
王はその姿を変えていく。
「魔人が僕に楯突くか…」
「あぁ……行くぞ。"魔法の王"よ」
背中に二枚の大きな羽が生え、爪と歯が鋭く伸びる…
まるで、鳥のような風貌だった。
「来い、風の鳥よ」
その時、突如として壁に穴が開き、大風が吹き荒れる。
魔王を吹き飛ばそうと、風が城に吹き通る。
「………ははは…」
「…何が…おかしい?」
「……これまで気がつかなかったけど…"コレ"には魔力が含まれていない」
「…?」
「"ただ風を操っているだけ"…」
「…!!!まさか…!!!貴様ッッ!!」
風に一切怯まず、前進する。
「あぁ…僕は…」
かまいたちを起こし魔王を斬りつけるが、一切、無傷であった。
…風が体を透けていく。
「"肉"と"骨"を捨てた」
「"魔力体"になったのか…!!」
「あぁ…うん。じゃあね」
「…!グ…!」
一瞬で距離を詰めた魔王が、王の腹部を真っ白な剣で貫く。
「…"不死"はどこにいる?」
魔王は耳元で、小さく呟いた。
「あ…ぐ…」
剣を捻り傷口を抉る。
「もう、今の君に僕を倒す術はない…だから…死ぬ前に教えてくれると…楽だな」
「…し…ね…!!」
「なんだ、君は何がしたい…?まさか、人間どもに情が湧いたのかな?」
「……そうでもなければ…王座になど座らん…」
「そうか…さらばだ、嘗ての友よ」
「…!!!いや…教えてやろう…」
「後ろだ」
「なんだって…?ッッ!!」
剣が魔王の背中から胸まで貫通し、動きを止める。
「……君は…まさか…不死かい?」
「…………あぁ」
振り向くと、フードを深く被り、顔を隠した男が立っていた。
(この剣は…魔力を帯びているのか…)
「君から来るなんて馬鹿だね…この剣が見えないのかい?」
白い剣を引き抜き。掴んでいた王を投げ捨てる。
「死んだみたいだね」
「………唯一、不死を殺せる剣…だろ?」
「知ってるじゃないか」
その男へと斬りかかるが、容易に避けられてしまう。
「…当たらなければいい」
「"ハイズ•ノード"ッッ!!」
魔王の胸の傷が消滅する。
「……その剣を破壊する」
「へぇ?本気で言ってるのかい?千年後や一万年後に後悔しない?」
「 ありえない 」
魔王の剣を握っていた腕を切り落とす。
(早い…!!)
ハイズはその落ちた剣を足で踏みつける。
「俺はその覚悟で不死になった……お前には荷が重い」
「……!ティトラカワン」
「ああ」
「!」
壁に空いた穴から鏡の骸骨が現れ、ハイズを殴り飛ばす。
「…おい、殺さないように首を折れば直ぐに済んだのに」
「我に殴られる瞬間。強化を解きおった」
「………やるね。人間の割には…」
「ふん…ティトラカワンか。お前の魔力は相変わらず役に立ってくれてるよ」
起き上がる。
「ふむ。十数年振りだな」
「記憶には残っていない戦争……なぜ、そこに倒れている王が皆の記憶からそれを消す事を選んだか…わかるか?」
「いや。突然なんだい?
「お前と違って、人類を恨まなかったからだ。王が魔人と知れば…民は当然、不安になる…」
「そうかい」
「……今度は……封印じゃない。死んでもらう」
「おしゃべりが好きだね。ほら、僕の腕が治ってしまったよ」
剣を拾う。
「あぁ、こちらも…来たようだ…」
扉から一人の"女性"が入ってくる。
「…彼女…いや。彼は…」
「エルフの三騎士の一人だ…名は確か…」
「失礼ねぇ…"女性"よ。間違えないでねぇ!」
「気持ち悪いな」
「うむ」
「……俺一人で魔王を殺せるとは思っていないさ…だから…」
「久しぶりねぇ。"人柱"の人生は充実してる?」
「まぁな。やれ、エンディ」
「せっかちね…」
「なんだ…?」
「…"滾る血と業火"…」
「…"詠唱魔法"!止めろ、ティトラカワン!!」
「おっと。俺がいるぞ」
ティトラカワンの前に立ち塞がる。
「!!」
「"その血を燃やし、骸と化せ"」
「退いて貰うぞ!」
ハイズの顎を狙って下から拳を放つが、剣でそれを受け流す。
「詠唱魔法は禁じられている理由は三つ…一つは、詠唱さえ唱えれば、誰でもつかえるから…二つ目は、魔力の大量消費で常人なら死ぬから…」
「ムゥ!!」
「3つ…それは…」
「城を出ろ!魔王」
「……させる…か…」
「!!」
魔王の足元に倒れていた王が、逃すまいと掴みかかる。
「"灰を散らせ"」
「強力すぎるからだ」
詠唱者を中心とし、あたりが一斉に爆発する。
城の上部を完璧に吹き飛ばし、崩れる。
「…………痛みを感じる暇も無いとはな」
ハイズは邪魔な瓦礫を押しのけ、ボロボロになったフードを破り捨てた。
「魔王はもう消し炭みたいね」
「あぁだろうな。骸骨を仕留めるか」
「……フン」
「奴には魔法が一切効かない。もう帰っていいぞ」
「酷い人ね…勇者様はとても優しかったのよ?」
「俺は勇者じゃない」
「…我には、なぜお主達が勝った気でいるのか分からぬな」
「教えてやろうか…?魔法の王様が形もなく吹き飛んだからだ」
「………それは違うな」
「なに…?」
「その通りだよ。違う。僕は生きてる」
瓦礫の陰から魔王が無傷で現れる。
ただ、一つ…先ほどと、違う点があった。
「それは…その"鎧"は…赤獅子王騎士団、団長…ロニー•エイセルの…」
鏡のような、薄い鎧を身につけていた。
「"女神の甲冑"……女神じゃなくて、男のだけどね…骨だけの…」
「…」
「"魔法"が弱点の僕が…"魔法"を"無効化する鎧"を手に入れた!!」
「…なるほどね」
「さてと……」
剣を構える。
「君の不死を…僕にくれ!」
「それは無理だ……"色々な意味で"…な…」