※この作品はR-18です。

黒のテスカトリポカ   作:被害者宅

51 / 64
第五十一話 交代と安息

国と国の境界。

真夜中の山中で、ただ二人、話をしていた。

 

誰かに見られると面倒、だからこの場所を選んだ。

片方の男が、先に口を開いた。

 

「魔人がこの国を統治する…それで本当にいいのか?」

 

「彼は信用できる」

もう片方の男がハッキリと、断言した。

 

「なぜそう言えるんだ?」

「初代勇者が信用したからだ」

「なら、間違ってるな。イングレッド」

 

片方はハインツ•イングレッドの父、"ノヴァ•イングレッド"

もう片方はハイド•ノードの父、"ハイズ•ノード"だった。

 

「僕を呼んだ理由は、王の事かな」

「あぁ…あの王を縛る"枷"を作る」

「枷?」

「騎士団だ。腕の立つ連中を集めた。王が何かをしでかした時、その騎士団が王を殺す」

「それに納得してくれって事かな?」

「あぁ。一応、お前の意見も聞いておく」

「それは僕が口出し出来る事じゃ無いね」

溜息をついてそう言った。

 

「良かったよ」

「なぁ…一つ教えてくれないかな」

「なんだ?」

「"君は何年生きてる?」

「…君の父の事はよく知ってる。とだけ言っておこうか」

「…そうか」

「それで…だ。話はこれだけじゃない」

「なんだい?」

 

ハイズは立ち上がり、こう言った。

 

「"準備"するぞ。魔王はもうすぐ復活する」

「なに?封印が解けると?」

「あぁ。封印は完璧ではない」

「なぜ先代は魔王たちを殺さなかった?」

「彼は生き物を殺すのを極端に嫌った」

「……やっぱり似るものなんだね」

それを聞いたハイズは無言で頷いた。

 

「…"不老不死"を魔族の下に返す訳にはいかない。魔具を集めろ、戦争だ」

「なぜ封印が解けると?」

「…勘だ」

「君らしいね」

「さて…俺から呼び出して悪いが、もう行くよ。詳細は後日…」

「うん…あ、そういえば…奥さんに子が宿ったって聞いたけど本当かい!?」

「…噂は広まるのが早いな」

「不死の君がねぇ……それじゃあ、今度は僕が呼び出すよ」

「あー、またな」

 

お互い乗ってきた馬に跨り、その場を後にした。

馬を走らせて数分…ふと、ノヴァは思いだす。

 

「騎士団の名前…聞いとけば良かったな」

 

その時だった。

気が付く、気配。

 

後ろ…?右…?左…?上…?

読みはどれも違った。

 

(前に何かいる)

 

暗闇も向こうに、薄っすらと見える人影。

彼は瞬時に察した、"魔人だ"…と。

 

馬を止め、降りる。

 

「僕に用があるのかな?」

「うむ…現在の勇者で間違いないな?」

「ああ、君は?」

「我はティトラカワン…魔王の"半身"だ」

「用を聞いてるんだ」

「死んでもらう」

 

数日後、彼は遺体となって発見される。

彼と共に姿を消していたハイズは当然疑われる。

 

「どうする気ですか」

「この国を出る。騎士団は任せたぞ、エイセル」

「目星はついてる訳ですか」

「まぁな」

「それでは、赤獅子王騎士団は、私におまかせください」

「あぁ、力を蓄えておけ」

 

彼は一振りの、どこにでもある剣を手に、旅に出た。

 

魔力を集めるために。

 

 

 

 

 

そして現在…

 

(魔王は俺の読み通り復活した)

 

「ティトラワカン、不死は君がやれ」

 

魔王は骸骨へ不死殺しの剣を手渡した。

 

「うむ」

それを軽く素振りし、感覚を掴む。

 

「魔王に魔法が完全に効かなくなったけど…どうするのかしら…」

「お前はさっさと逃げろ」

「どうする気よぉ」

「…あの鎧を破壊する」

 

魔王が着る鎧…魔王には魔法も斬撃も無力だが、鎧は物理的に破壊できる。

鎧さえ無効化すれば…

 

「殺れる…」

 

「随分と自信があるようだな。ハイズ•ノードよ」

 

「…だな」

 

「行くぞ」

 

骸骨の全身から魔力が吹き上がる。

 

ハイズへ飛び掛り剣を振り下ろす。

それを剣で受け止める。

 

「ノヴァを殺ったのは貴様だな、骸骨」

 

「ならばどうする?」

 

「仕留めることに変わりはない」

 

 

「エルフ、君は何もして来ないのかい?」

 

「相性が最悪なのよねぇ…」

 

「そうかい。でも僕は容赦しないよ。エルフの殲滅も目標の一つなんだ」

 

「あら、そう」

エンディはそう言うと、足元に埋まっていた…

 

柱を片腕で引き上げた。

 

「お…重い」

 

「なら置きなよ」

 

それを魔王に向い投げ放つ。

とにかく、鎧の破壊を優先したのだ。

 

だが、それは…予想の範囲外のものによって阻止された。

 

巨大な鳥の脚…

 

全身を真っ赤な鱗で覆われた、怪鳥。

 

「紹介しよう」

 

「…龍?」

 

「古龍だ。ここに来る前に龍の谷にお邪魔してね」

 

威嚇をしているのか、巨大な喉を鳴らす音が響き渡る。

 

「古龍は…こういったことには興味がないはずだけど…」

 

「注目すべきは龍の背中だよ」

 

「?」

 

何かが龍の背中に立っていた。

全身を布でぐるぐる巻きにした、小さな人型が二体。

「僕が魔法の王なら…彼らは"魔物の王"だ」

 

「魔物を操れるってところかしらぁ」

 

「ご名答。100年前の戦争じゃあここまで上手くいかなかった…今回の戦争で僕らが優勢なのは、彼らのおかげと言っても過言じゃない」

 

「……」

 

(面倒ね)

 

「さて、僕は第二目標まで…あのエルフと不死は君達に任せるよ」

 

「逃がさない!」(操ってる奴を先に仕留める!)

掌に巨大な火球を作り出し、龍の背に向け放つ。

 

そのままなら二体まとめて仕留める事が出来ただろうが、古龍が軽く一歩横にズレるだけで当たる事はなく、背後の瓦礫に直撃し、爆発する。

 

「あぁ、もう!」

 

破片が辺りに飛来する。

 

 

ティトラカワンとハイズは今だ、互いに決定打を与える事が出来ない状況にいた。

互いの剣がぶつかり合い、火花が散る。

 

「なぜ、十年前の戦争が民の記憶に残っていないのだ」

骸骨は焦る様子もなく、剣を振りながらそう問いてきた。

 

「王が貴様のせいで姿を晒す事になったから…だ!!」

ハイズは隙をついて逆の手で突きを放つも受け止められる。

 

「ほお…"魔人"は信用されないと、あの風の魔人も自覚していたのではないか」

 

「あぁ…だが、今はそうでもないぜ…奴は民を逃し、ただ自分一人で残った…共存を選んだんだ。貴様達と違ってな」

 

「ふん…どうとでも言え」

 

「…俺はまだ信頼している。彼を…な」

 

「ムッ…!」

 

ハイズは全身を強化し、骸骨を上空に放り投げた。

 

(この力…!!どれほどの魔力を溜め込んでいたのだ)

 

「10年以上ほぼ毎日…お前が各地に放った強化された魔物を狩り続けた…自分の首を絞めてるんだよ、お前は」

 

「!」

その時、確かに感じた気配…

 

「風…!まだ生きていたのかッ!!どこからだ…!?」

骨の隙間から大量の魔力が放出される。

 

「もう遅い」

右方から発生した"風の砲弾"がティトラカワンを直撃する。

 

「!!」

 

吹き飛ぶ。

 

「生きてたか、王よ」

 

「…当然だ」

 

瓦礫の下敷きになった王が、ハイズの背後に隠れるように横たわっていた。

 

「魔人はしぶといな」

「……目的はなんだ?ハイズ•ノード…」

「剣を破壊。タイミングがあれば魔王の殺害…」

「違うな。そういう目ではない」

「そうか?」

「死ぬ気だろう?もう貴様には生きる気力が見受けられん」

「…」

「剣を破壊するタイミングはいくらでもあったはずだ…」

「鋭いな…そうだ。俺には限界が来たんだよ」

「息子に継がせる気だな?」

「…どうかな……まだだな」

 

 

ティトラカワンが立ち上がる。

「なかなか効いたぞ…王よ」

 

「チッ…死にたいなら手伝うぞ、ハイズ•ノード」

「いや…自分から死ぬ気はないさ…ただ、一つ」

「なんだ」

「……俺がもし、やられたら…剣を破壊してくれ、すぐにな」

「…いいだろう」

 

「それじゃ、二戦目だ。ティトラカワン」

 

「あぁ。こんなに楽しいのは久々だ」

 

全身に力を入れるが今ひとつ…なと言ったら良いか分からない。だが、確かに…気力が出ない。

 

「なんだ?先程までのパワーとスピードはどこに行ったのだ?ハイズよ」

 

「ッッ!」

 

周りの親しい人間は自分を置いて死んでいく。

不死になる事を選んだ時、そうなる事は覚悟していた。

 

だが、それでも…いつからか、生き続ける事が嫌になっていたんだ。

だから人を愛してしまった。

子を作ってしまった。

 

自分自身で逃げ道を作ったんだ。

 

「遅いな」

 

骸骨の鋒があらゆる方向から迫り来る。

弾く、避ける、受ける。

 

(…死…)

 

「なら…望み通りにしてやろう」

 

一瞬の隙をついて骸骨はハイズの腹部を突き刺した。

 

「これでいいのか?本当に死ぬのだろうな?」

 

「あぁ…ゴホッ…間違いない…"死"を感じる」

 

より深く剣を差し込む。

 

「そうか」

 

ハイズの腹部から剣へと、禍々しい"黒"が伝っていく。

 

「返して貰うぞ、不老不死の力…」

 

「………素直に返すか…馬鹿が…」

 

「なに?」

 

「…その剣は…俺たちが作った物…こんな簡単に騙せるとは思わなかったよ…」

口から血の塊が流れる。

 

「なんだと?」

 

「それは"不死を殺す剣"だ…!"与える"事はできない…!」

 

「!」

 

その瞬間、風の大槍が剣を打ち砕いた。

 

「……なんで避けなかった…ティトラカワン」

 

「…」

 

「お前…知ってたな?」

 

「…安らかに眠れよ。ハイズ•ノード」

 

「……息子によろしく言っといてくれ…」

 

 

 

 

「ここってどの辺りだ、ローザ」

「ちょうど直線ですね。まっすぐ行けば魔王城があったとされる"魔の境界"で、こっから後ろにずっと行けばフレイジアに行き着きます」

「よく知ってんなぁ」

「ま、旅が大好物なので」

「それじゃあ…行ってみるか?"魔王城"」

「偵察ですね」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。