※この作品はR-18です。

黒のテスカトリポカ   作:被害者宅

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第五十五話 思慮と姦邪

「あれ、オリーヴァさんとハインツさんはどこに?」

火種にする木の枝を集めに行っていたメリシアが戻ってきた。

「……食料が尽きかけてたみたいでな。何か狩りに行ってる…」

「そうでしたか」

「……」

「…?なに見てるんだ…?」

「いえ…ただ少し…」

「?」

「ピエラニオさん…でした?」

「…あいつがどうした?殺した事の説教か?」

「違います。むしろ感謝しています。あなた以外に…私を含めた三人に、人を殺す覚悟はないと思うんです」

「…オリーヴァの奴はそうでもなさそうだが」

「多分、あの人が一番殺せませんよ、昔から知ってますから…わかるんです」

「…そうか」

「私も…やらなければいけない時が来れば、努力します…でも…貴方に押し付けるような事ですけど…あの二人に危険が及べば、よろしくお願いします」

「……いい奴だな、お前…」

「臆病なだけです」

「…良いぜ、俺は背負う覚悟をしてこの旅に出た。やれる事はする」

「ありがとうございます」

今でも夢に出る。

メリシアとは特別仲が良かった訳では無いが…それでも…確かに仲間だったし、俺の殺しを肯定してくれた。

幾度かこの命を救われ…逆に救ったりもした。

だから、彼女が死んだ事を知った時は…悲しかった。

彼女だけじゃない、涙を流さないだけで…スティーブ…グスタフ…ホルン…

 

俺は今何を考えてるのか、俺自身にも分からない。

悲しみの所為か、必死に抑えている、爆発寸前の怒りの所為か…

俺は今、確かに背負っている。

恐らく、その重みが原因なんだろう。

 

だから…全部終わったら…解放されたい。

 

 

 

「ハイドの奴、なんかうなされてるぞ」

「あれ、本当ですね」

 

先に起きていたローザとトールがハイドの様子を見ていた。

 

「まぁいいか…なぁ、一つ気になってたんだが」

「ん?なにか?」

「お前なんでハイドに付いて来てるんだ?」

「あぁー。なんででしょうね」

「はぁ?お前そんなんで命賭けてんのか」

「いやまぁ…色んな魔物や魔人が見たいっていうのがあるんですが……ハイドさんが心配だから?」

「なんだそりゃ」

「さぁ…?」

 

 

 

 

 

その男とは道中でバッタリとあった。

ローザは少し見覚えが、トールは初対面。

ハイドは程々知っている。

その男の名は"フレイ"

植物を操る魔具を所有している者だ。

 

「おまえこんな所で何を…」

「おー!久しぶりだな、生きてたかハイド!」

(誰だ?うるせぇ奴だな)

「触んな…で、何してる?」

「えーと、言っただろ(確か)?奪われたものを取り返すって」

「?」

「それがこの近くにいるみたいでさ…」

「いる?」

「あぁ。大体予想付いてるんじゃないのか?」

「…あの植物を操る女の魔人か?」

「そ、この魔具も元は姉のでな」

「姉を取り返してどうするつもりだ?」

「正気に戻す方法を考える。まぁ…最悪の事態は覚悟してるさ…って事で、三人とも手伝ってくれよな」

「…」

「まぁ…」

「ハイドさんがいいなら」

「雇い主の命令なら俺も…知らぬ奴だが」

「本当か?別にお礼も何もないぜ?」

「…これでも俺は勇者一行なんでな…ハインツの奴が居なくて良かったな、多分、問答無用でお前の姉を殺してるぞ」

「…メリシアだっけ…今はその話は無しで頼むよ」

 

 

 

フレイによると、近くの廃村まで追い詰めたらしい。

だが、そこで他の魔人に邪魔をされたという事だ。

 

「…気配はありませんね。既に別の場所に移動したんでしょうか」

四人は村から少し離れた茂みに隠れていた。

 

「いーや。俺の感が此処に居るって言ってるんだよ」

「そういえば…フレイだっけか?他の魔人に邪魔されたって言ってたな?」

「あぁ。そうだった…影を操る奴だ。この時間ならさほど脅威ではないけど

「…………奴か」

「うーん…飛び込むのは危険だしな…」

考えを張り巡らせる。

 

 

「………ちょっと待て、聞いておきたい事があるんだが。フレイ」

「うん?」

「植物の魔人がお前の姉なんだな?」

「あぁ」

「あの魔人…普通に喋ってたぞ?」

「え?あぁ」

「……喋ってたんですか?確かハイドさんのお仲間さんは…」

「ホルン…カーク以外は意思の疎通が難しい。というか無理な状態だったが」

「…あぁ!それは"魔人に変えられたら"だろ」

「…?」

「元から魔人だし」

「なんだと?」

「魔物と人間の間に産まれた魔人だ。以上。それで?」

 

 

 

「お前…魔人か?」

 

「気付かなかったのか?」

 

暫くの沈黙が続く。

 

「おいおい、柄から手を離せよ二人とも…」

「冗談なら一太刀で許す」

「こっわ……俺は別に魔王の配下じゃない。戦争には興味がない。心底どうでもいい。だが…」

「…」

「姉と…もう一度静かに暮らしたいだけだ」

「………お前が少しでも変な行動をとったら、殺す…まぁ、魔人って事を信じた訳じゃないが」

 

(こんな嘘意味ないし得もない筈…だしな)

 

「大丈夫。というか、ローザだっけ?がつけてる魔具には勝てっこないよ。それの元の魔人の事知ってるけど、凄い奴だ」

 

彼の言ってる事が本当だとして…ハッキリ言って、魔人は問答無用で叩き伏せたいところではあるが、彼がこれまでに自分達に幾度か協力してくれたという事実がある。

だが一方、トールは信用できるはずがなかった。

 

(警戒する事に越したことはない…トールの事は放っておくか…)

 

「なんで魔具を使ってるんだ」

「便利だからだよ」

「この件が終わったら話を聞かせてもらうぞ」

「それが礼になるならいくらでも」

もしかすると、魔人と魔物の事に関して詳しく知るチャンスかも知れない。

 

「さっさと終わらせよう。俺とローザが正面から行って囮になる。流石に何かの行動を起こしてくるだろう」

「俺たちは?」

「トールとフレイはここで待機。こちらに何かが起こった様子なら来い。だが本命はどこか外から別の奴が来ないかの警戒だ」

「わかった、姉ちゃん見つけたらすぐ呼べよな」

「それじゃ行くぞ、ローザ」

「はい!」

 

二人は村に入っていく。

 

「静かですね」

「なぁ…お前なんで俺について来てくれるんだ?」

「え…急になんですか」

「昨日聞いたアレ…お前らの事が聞きたいって言ったろ?アレは…お前が俺について来る理由を知りたいってのもあった…一応、魔物が見たいからって最初に言ってたが…」

「んー……秘密です」

「まぁ…いいか…」

 

そこで、ハイドは足を止めた。

 

「ここ…周りに植物がないな。追い詰めたってのはこういう事か?」

「言われてみれば…」

「ここじゃフレイも不利か…なるほどな…」

「もう少し探りましょう」

「あぁ」

 

 

一方、トールとフレイは。

 

トールはフレイを警戒し、フレイは周りを警戒し…

お互い黙り、静かにしていた。

だが、トールが口を開いた。

 

「ハイドの奴は鵜呑みにしてたが…お前本当に魔人か?」

「俺は嘘は言わないよ」

「…どんな魔法を使うんだ?」

「そこまで言わないとダメかー?まぁ…この魔具の反対ってとこかな」

「反対?」

「秘密……ん?」

フレイの視線がトール背後、森の方へと移った。

それに釣られて、トールも振り向く。

「なんだ?」

「…来たな」

…影が広がっていた。

日の光を避けるように…影がより濃く、禍々しく。

 

「!」

 

男が一人立っていた。

見た目が変わっているが、あの時の影を操る奴だという事を確信する。

 

「また会ったな。魔人」

「あれ、お前も面識あるのか」

「お久しぶりです。と言っても…一月も経ってませんか。おや、そちらの方はあの魔人の弟さんでしたか」

「姉ちゃんはどこだ?」

「療養中です。貴方が手加減しない所為でボロボロだと仰っていましたよ?」

「答えになってないぜ」

 

ポケットから種を一粒取り出す。

それを地面へ落とし、急成長を行う。

「!…それが魔具の効果か」

「そう。魔力を消費し成長させ、魔力を流し込み、操る…奴は魔力体。俺向きの敵だよ」

「そうか…なら…俺が前に出て、隙を作らせる」

「そう簡単な奴じゃないよ。日は出てるけど、奴は強い」

「わかってる」

 

どうにかして影から奴を追い出す。

だが、その前に…

 

「お前、俺の事を知らないって言ってたな」

「えぇ、あれが初対面でしたが」

「そうか…紋章にも見覚えはないな?」

「無いですね」

「…もういい。さっさと殺されてくれよ」

「死ぬのは御免です」

剣を抜き、影の中へと飛び込んだ。

(奴を殺すには…光を当てて叩っ斬るか…魔力を含む攻撃…!一つはフレイって奴の魔具と…強化した俺の身体そのもの!…)

進路を横方向へ変える。

「ん…あの時みたいに隠れるつもりですか?」

 

(この状況、一番良いのは…)

 

「!」

 

木の影からまた別の影へと隠れる一瞬だけ見えるその姿…影の魔物は、トールが両手に持っていたある物に気がついた。

 

(火打ち石…ですか。舐められたものです)

 

「…」

 

そうではない。

トールの狙いは森への放火などではなく…

先日の城での騒動…城の住人から"お礼"として手渡された"ある物"!

 

「ッ!!」

 

魔物は油断していた。

自分の強力な能力と、経験に対して絶対的な信頼があったからだ。

反応が遅れる…

 

目の前に、一つの、掌サイズの"紙袋"が飛んでくる。

口から垂れた糸には火がついている。

 

(火薬…!?しまっ…)

 

「遅いぜ」

 

 

炸裂。

 

一瞬強い光を放ち、炎を放った。

 

「ッッッ…!!!」

 

(おぉ…一歩間違ったら自分が吹き飛ぶような事を…良くやるなぁ)

 

「!!!」

 

煙が晴れると、魔物の姿が無かった。

「逃げられた…!?あれで動けるのか!!」

地に大きな穴が空いていた。

 

(影で掘ったのか…クソ)

「トールだっけ?俺の存在忘れてるだろ」

「今はそれどころじゃあ…」

「もう捕まえた」

「なんて?」

突如地面が隆起し、巨大なツタが大量に飛び出す。

そして、そのツタに縛られてる影の魔物の姿があった。

「すげ…」

「どうよ」

「ははは…私とした事が…」

直撃はどうにかして避けたのだろう、数カ所が焦げ付いているのみである。

「それじゃあお前の目的を教えて貰おうかな…良いよな、トール」

「あぁ」

「教える訳ないでしょう」

「…」

ツタの締め付けを強くする。

「っ…!」

「早く言え。影を少しでも動かしたら…いつでも頭を潰せるからな」

「……少しだけですよ」

 

 

ハイドとローザの元にも、小さくだが炸裂音が聞こえていた。

「!」

「トールさんでしょうか…いきましょう!」

「……いや、向こうはあいつらに任せよう」

「え、なんでです?戦闘中かも…」

ハイドはいつの間にか刀を抜いていた。

「こっちも戦闘になるからだ」

「…!」

鳴り響く地響き。

(地震!?まさか…気配が無かったのは)

「……"下"にいたみたいだな」

二人からやや離れたから、地を突き破り、一本の巨大な木が出現する。

世界樹には遠く及ばないものの…

 

(まずい…か?)

 

そして、木の中央部が穴になるように崩れ落ちる。

その中から出てきたのは…植物を操る、女の魔人だった。

 

「アハハハハっ!全快…勇者一行が分かれたって話、本当だったのね」

「ハッキリ見るのは初めてか……弟が探してたぞ」

探りを入れる。

「あら、フレイを知ってるのね。そういえばあなた世界樹でちらっと…」

どうやら、フレイの言っていた事は本当のようだ。自身が魔人と言うことも信じて良いだろう。

「どうします?」

「…捕らえるのが一番いいが…おい、お前なんで魔王の方に肩入れてる?」

「んーそうねぇ…惚れちゃったからかしら」

「はぁ?惚れたって…魔王にか?」

「そうよ。貴方達が思ってるよりずっと良い方なのよ。別に貴方達が理解する必要は無いけれど…ところで…」

魔人は一本の薔薇を何処かから取り出した。

「私たち魔人が、魔王様から受けた使命は…持たざる者の殲滅。あなたは確か、ティトラカワンの魔力を使ってたわね?死んでもらうわ」

「そんな事よりお前の弟に黙って会ってくれたらお互い楽なんだが」

「嫌よ」

「そうか……ローザ、やってくれ」

「…!はい」

「あら?」

魔人は確かにその気配を感じ取った。

目には見えない、だが確かに体で感じる…

(これは…風を操ってる。まさかあいつの魔具…?)

そして、身を守ろうとした時にはすでに、自身の右手は地面へと落下していた。

「……厄介ね。あなたから殺すことにするわ」

「!?効いてないですよ!」

「ちっ…ローザ、お前はトールとフレイの方に。お前狙いになったみたいだ」

「でも…!」

「逃がさないわ」

巨大な木から、無数の木片…もはや矢と言っても過言では無いだろうものが飛来する。

「そのまま行け」

「ハイドさんは!?」

「……」

全身に大量の魔力を走り巡らせる。

 

「 突 っ 込 む 」

 

「!?」(消えた…!?)

 

一瞬にして二人の視界から姿を消し、矢の軌道がその衝撃で逸れる。

 

彼は魔力のより効率的な使い方を戦いながら学んだ。魔力の消費を少なく、それでいて攻撃力を高く…

(と言っても…今ので魔力を半分以上使った筈だ。もう使えない)

だがそれで十分…彼は既に魔人の背後を取っていた。

 

「……あらあら」

「あいつをフレイの所にやったのは…邪魔だからだとかじゃない…このままじゃ俺達がお前を"殺しかねない"から…フレイを呼んでくるように言った」

「殺さないの?優しいのね」

「メリシアの仇だ。それなりに苦しんで貰う…」

 

 

 

 

「それで、まずお前の目的は?」

最初にトールが影の魔人にそう言った。

「そうだですねぇ…魔王への復讐でしょうか」

「復讐?仲間じゃないのか」

「元々は仲間ですよ。かつての戦争の時に我々は捨てられたのです」

「捨てられた…ハイドが城にいた魔人から似たような事を…」

「あぁ。あの方も捨てられたんですよ…魔人だって魔物です。仲間を見捨てていい筈がない…」

「…そうか。今思い出したけど、100年前の戦争で"影の王"って呼ばれてたろ?」

「えぇ。雑兵の肩を持ったせいで追い出されましたがね。私があの時、城にいた理由はあの魔人を連れて行くためだったんですが…」

「連れて行くってどこにだ?」

「私は魔王の首を狩るつもりです。そのために兵を集めていたんですよ」

「それで姉ちゃんを…」

「魔王を…人間と手を組まないのか?」

「人間共と手を?嫌ですね絶対に。私は魔人と魔物しか救う気がないですし。魔王の次は人間を皆殺しにする気ですから」

「そうかよ。んじゃあ…死んで貰うか」

「律義に質問に答えたのは理由がありますよ」

「…!フレイ!早くや「遅いですよ」

…影が"爆発"する。

 

「!?」

周りは変わらず木々が囲んでいる。影に逃げられないよう、死なない程度に太陽を浴びるよう吊っていた。とにかく、木影から離れていた。

だが…辺りに影が…黒色の何かが飛び散る。

(これは…魔力か?どうなってる?)

 

「これは…まずいか?光を浴びても消えないぞッ」

トールがその黒い何かを浴びてしまっていた。

「うわ…とにかくそれ脱げ!」

 

「遅いですって」

 

「ッッ…な…に…?」

 

…その黒い何かが"棘"に形を変えた。

 

腹部を二箇所。貫通する。

周りに飛び散っていたものも一斉に棘に変わる。

 

「ガハッ…」

 

「トール!!クッソ…テメェ!」

影の魔物吊っていた筈のツタへ目を移すと、姿が消えていた。

「…これ使うと疲れるんですよ。影を何層にも展開し、光で消しても消しても消えない影を作ってるんです」

「!」

「そして爆発…もとい飛散、付着させ…ズブッ!っと…」

「ぶっ殺す!!」

鋭利なナイフのように成長させた枝を投げる。

「フッ…死んで貰いますよ!!」

枝は木陰から伸びた影に弾き落とされ、そのまま、フレイとその後ろに倒れているトールへ向かっていく。

 

(…!俺が避けるとこいつにあたるじゃねぇか!失敗したのは位置どりと…もう少し植物を隠して置かなかったことか)

 

「…!さっ…けろ!!」

 

「いや」

 

「!!」

 

フレイはその場所から動くことなく、棘をその身に受けた。

「グゥッ…!!」

「ば…か野郎…!!

「え?なんか言ったか?」

「!?」

「なっ…!まだ生きてるんですか!?」

 

棘は確かに、フレイの首と胸を貫いた…が。

 

「…!そう…か…魔人は人の姿のままじゃ…死なない…!」

「は?治癒能力が高いだけだ。不死な訳ないだろ…そのまま寝てていいぞ。もう終わらせる」

「……魔人?あなた、魔人なんですか?」

「気付かなかったか…?鈍感なやつだ。ほら、それにも気付いてないのか?」

「!!」

背後に無数のツタが迫っていた。

魔物はそれをさけ、また木々の中へと隠れる。

 

(まさかあんな距離の植物までできるとは誤算です…そもそもどこかに触れていたか…?まさか投げてきた枝に細工が?)

「おいおい、場所丸わかりだぜ」

(ここは距離を取りますか…)

 

「俺が避けなかったのは…致命傷にならないと判断したからじゃないぜ」

「……?」

「……人間が好きだから…それと…ここでトールに信用してもらいたいんでな」

「!」

新しく地から生えてきた草が、トールの傷口を押さえつける。

「そしてもう一つ…離れるべきだから…」

そう言うと、フレイは魔物を追うための木々に飛び込んだ。

 

「!」

「来ましたか…」

 

一方は影を使い、もう一方は植物を使い。

 

お互いの位置を常に把握できる状況にあった。

 

(光は少し差し込んでいるが…影が多い。全ての植物を移動させる"のは"魔力的に不可…!五分ッてとこか…今は)

 

(…周りは植物だらけ…油断できないのは奴も同じな筈ですから…邪魔をするなら…例え同族でも…死んで貰います)

 

「見つけたぜ!!」

 

「こっちの台詞です」

 

「うおおおおお!」

 

無数の大木がムチのごとくしなり、影の魔物へと襲いかかる。

 

「ちっ…!」

 

それを巨大な影の壁で塞ぎ止める。

 

「厄介な…!!人ですねぇ!!」

 

影を斜めに変形させ、木の軌道をずらす。

 

 

 

 

「?」

 

自身の影と木で確認できなかった前方への視界が開けると…

 

 

「……勝ちだな。俺の」

 

 

"広場"ができていた。

 

 

あった筈の植物が、大量に消えている。

 

 

「なっ…!?」

 

「姉と俺は正反対の性格だった。小さい頃から今までそれは変わっていない。性格と同じで、魔人としての"固有魔法"も正反対だった」

フレイの顔に、ヒビが入っていく。

 

(まずい…!まずいまずいまずい!!)

 

「俺の魔法は…"植物を枯らす"魔法だ」

ものの数秒で、周りから植物が枯れ、崩れ堕ちた。

「……油断…しちゃいました…ね」

日差しが、影の王へと…直撃、降り注ぎ続ける。

 

「同族を、主人を裏切ってまで大切にしようとする考えは正直感動したし、尊敬できる。でも…」

 

「わかってますよ…あなた方の親は…魔物と…人だ…大切にしようとして…当然です…」

影が引いていく。

 

「そうか…」

 

「……さっきの…トールさんって言ってましたね…」

 

「ああ」

 

「…本当は…紋章には少し見覚えがありました…"フレイジア"へ向かえと…伝えて下さい…」

 

「ありがとう」

 

「最後に………魔王の奴は絶対にぶっ殺して下さい!…ね」

体が灰色に染まっていき、時期に、灰に変わった。

風がその灰を吹き上げた。

 

「…思ったより良いやつだったな…他に…道はなかったのか」

 

トールの元へ戻るべく、彼は足を動かし始めた。

 

「疲れた…」

 

 

 

 

 

「あらっ??」

ハイドへの攻撃を繰り出そうとした筈の右腕が斬り飛ばされる。

「遅いな」

襲いかかってくる大量の枝を切り落としながら。距離を離さないように前進しつづける。

(早い!逃げられない…!!)

 

「痛覚がないのか?そういう趣味じゃないが残念だ」

 

「いいえ、慣れてるだけよッ…!」

斬り飛ばされ空中を舞っていた腕から一本の触手が伸び、ハイドの肩を貫く。

(今のうちに!!)

 

「俺もだ」

 

「!!」

 

次は両足が斬り飛ばされる。

 

「クッ!!最低な男ね…!!」

 

「ふむ…今更だが魔力体ってやつじゃ無さそうだな」

 

「………」

 

「動くな」

 

這いつくばっている魔人腹部に刀を突き刺し、動けなくすり。

 

「ッッ!!!」

 

「少し質問に答えろ。ミレラ•ソーガって知ってるか?」

 

「……」

 

「………………今少し、足下で振動があったな」

 

刀を更に捻り込む。

 

(なんでわかるのよッ!!!)

 

「いいか?俺は出来るだけお前たち魔物をぶっ殺したいんだ。今お前が生きている理由は、お前の弟と…俺の少しの理性のおかげだ…改めて聞く。ミレラ•ソーガって名前を聞いたことがあるか?本人を見たことがあるか?」

 

「……少しだけ…」

 

「…そうか。魔人か?」

 

「えぇ、そういう事に…なるわね…」

 

「………」

 

「…恋人かしら?」

 

「…………家族だ。このまま大人しくしてたら…もう、これ以上はしない…フレイが…来るまでな…」

 

「…家族…ね」

 

 

 

 

無事、彼らは合流し、しっかりとした拘束にかけることが出来た。

 

「これ植物だろ。意味あるのかフレイ」

「先に魔力を流し込んだ方がそれの主導権を得るんだ。ところでありがとう。こんな簡単に捕まえてくれるとは…」

「トールは?」

「怪我してね。ローザに治癒魔法をしてもらってる」

「あいつ…治癒は不慣れだからな…」

「そうなのか…で!姉ちゃん。もう逃がさないぜ」

「……あなた。魔法を使ったの?」

「え?うんまあ」

「すこし老けたわね」

「老ける?」

「俺の魔法は、使うと自分の寿命を食うんだよ。それで少し老ける」

「……そうか」

 

 

 

「突然魔王のところに向かった理由…教えてよ」

 

「……わかってるでしょフレイ」

 

「人間が…憎いの?」

 

「…私達が持っていない…幸せを持ってる…」

 

「幸せ?」

 

「……昔の戦争で人間が勝って。魔物達の居場所は失われた…」

 

「……魔物が先に人間に攻撃を仕掛けたんだろ。自業自得だよ、僕らのね」

 

「それでも…!」

 

「なぁハイド。お礼は質問って言ってたよな?」

 

「あぁ。いいのか?」

 

「その前に…少し…姉も知らない事だ。聞いておいてくれ」

 

「?」

 

 

 

「……魔物なんて。最初はこの世界にいなかった。この地は、もともと人間のものなんだよ」

 

 

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