「あれ、オリーヴァさんとハインツさんはどこに?」
火種にする木の枝を集めに行っていたメリシアが戻ってきた。
「……食料が尽きかけてたみたいでな。何か狩りに行ってる…」
「そうでしたか」
「……」
「…?なに見てるんだ…?」
「いえ…ただ少し…」
「?」
「ピエラニオさん…でした?」
「…あいつがどうした?殺した事の説教か?」
「違います。むしろ感謝しています。あなた以外に…私を含めた三人に、人を殺す覚悟はないと思うんです」
「…オリーヴァの奴はそうでもなさそうだが」
「多分、あの人が一番殺せませんよ、昔から知ってますから…わかるんです」
「…そうか」
「私も…やらなければいけない時が来れば、努力します…でも…貴方に押し付けるような事ですけど…あの二人に危険が及べば、よろしくお願いします」
「……いい奴だな、お前…」
「臆病なだけです」
「…良いぜ、俺は背負う覚悟をしてこの旅に出た。やれる事はする」
「ありがとうございます」
今でも夢に出る。
メリシアとは特別仲が良かった訳では無いが…それでも…確かに仲間だったし、俺の殺しを肯定してくれた。
幾度かこの命を救われ…逆に救ったりもした。
だから、彼女が死んだ事を知った時は…悲しかった。
彼女だけじゃない、涙を流さないだけで…スティーブ…グスタフ…ホルン…
俺は今何を考えてるのか、俺自身にも分からない。
悲しみの所為か、必死に抑えている、爆発寸前の怒りの所為か…
俺は今、確かに背負っている。
恐らく、その重みが原因なんだろう。
だから…全部終わったら…解放されたい。
「ハイドの奴、なんかうなされてるぞ」
「あれ、本当ですね」
先に起きていたローザとトールがハイドの様子を見ていた。
「まぁいいか…なぁ、一つ気になってたんだが」
「ん?なにか?」
「お前なんでハイドに付いて来てるんだ?」
「あぁー。なんででしょうね」
「はぁ?お前そんなんで命賭けてんのか」
「いやまぁ…色んな魔物や魔人が見たいっていうのがあるんですが……ハイドさんが心配だから?」
「なんだそりゃ」
「さぁ…?」
その男とは道中でバッタリとあった。
ローザは少し見覚えが、トールは初対面。
ハイドは程々知っている。
その男の名は"フレイ"
植物を操る魔具を所有している者だ。
「おまえこんな所で何を…」
「おー!久しぶりだな、生きてたかハイド!」
(誰だ?うるせぇ奴だな)
「触んな…で、何してる?」
「えーと、言っただろ(確か)?奪われたものを取り返すって」
「?」
「それがこの近くにいるみたいでさ…」
「いる?」
「あぁ。大体予想付いてるんじゃないのか?」
「…あの植物を操る女の魔人か?」
「そ、この魔具も元は姉のでな」
「姉を取り返してどうするつもりだ?」
「正気に戻す方法を考える。まぁ…最悪の事態は覚悟してるさ…って事で、三人とも手伝ってくれよな」
「…」
「まぁ…」
「ハイドさんがいいなら」
「雇い主の命令なら俺も…知らぬ奴だが」
「本当か?別にお礼も何もないぜ?」
「…これでも俺は勇者一行なんでな…ハインツの奴が居なくて良かったな、多分、問答無用でお前の姉を殺してるぞ」
「…メリシアだっけ…今はその話は無しで頼むよ」
フレイによると、近くの廃村まで追い詰めたらしい。
だが、そこで他の魔人に邪魔をされたという事だ。
「…気配はありませんね。既に別の場所に移動したんでしょうか」
四人は村から少し離れた茂みに隠れていた。
「いーや。俺の感が此処に居るって言ってるんだよ」
「そういえば…フレイだっけか?他の魔人に邪魔されたって言ってたな?」
「あぁ。そうだった…影を操る奴だ。この時間ならさほど脅威ではないけど
「…………奴か」
「うーん…飛び込むのは危険だしな…」
考えを張り巡らせる。
「………ちょっと待て、聞いておきたい事があるんだが。フレイ」
「うん?」
「植物の魔人がお前の姉なんだな?」
「あぁ」
「あの魔人…普通に喋ってたぞ?」
「え?あぁ」
「……喋ってたんですか?確かハイドさんのお仲間さんは…」
「ホルン…カーク以外は意思の疎通が難しい。というか無理な状態だったが」
「…あぁ!それは"魔人に変えられたら"だろ」
「…?」
「元から魔人だし」
「なんだと?」
「魔物と人間の間に産まれた魔人だ。以上。それで?」
「お前…魔人か?」
「気付かなかったのか?」
暫くの沈黙が続く。
「おいおい、柄から手を離せよ二人とも…」
「冗談なら一太刀で許す」
「こっわ……俺は別に魔王の配下じゃない。戦争には興味がない。心底どうでもいい。だが…」
「…」
「姉と…もう一度静かに暮らしたいだけだ」
「………お前が少しでも変な行動をとったら、殺す…まぁ、魔人って事を信じた訳じゃないが」
(こんな嘘意味ないし得もない筈…だしな)
「大丈夫。というか、ローザだっけ?がつけてる魔具には勝てっこないよ。それの元の魔人の事知ってるけど、凄い奴だ」
彼の言ってる事が本当だとして…ハッキリ言って、魔人は問答無用で叩き伏せたいところではあるが、彼がこれまでに自分達に幾度か協力してくれたという事実がある。
だが一方、トールは信用できるはずがなかった。
(警戒する事に越したことはない…トールの事は放っておくか…)
「なんで魔具を使ってるんだ」
「便利だからだよ」
「この件が終わったら話を聞かせてもらうぞ」
「それが礼になるならいくらでも」
もしかすると、魔人と魔物の事に関して詳しく知るチャンスかも知れない。
「さっさと終わらせよう。俺とローザが正面から行って囮になる。流石に何かの行動を起こしてくるだろう」
「俺たちは?」
「トールとフレイはここで待機。こちらに何かが起こった様子なら来い。だが本命はどこか外から別の奴が来ないかの警戒だ」
「わかった、姉ちゃん見つけたらすぐ呼べよな」
「それじゃ行くぞ、ローザ」
「はい!」
二人は村に入っていく。
「静かですね」
「なぁ…お前なんで俺について来てくれるんだ?」
「え…急になんですか」
「昨日聞いたアレ…お前らの事が聞きたいって言ったろ?アレは…お前が俺について来る理由を知りたいってのもあった…一応、魔物が見たいからって最初に言ってたが…」
「んー……秘密です」
「まぁ…いいか…」
そこで、ハイドは足を止めた。
「ここ…周りに植物がないな。追い詰めたってのはこういう事か?」
「言われてみれば…」
「ここじゃフレイも不利か…なるほどな…」
「もう少し探りましょう」
「あぁ」
一方、トールとフレイは。
トールはフレイを警戒し、フレイは周りを警戒し…
お互い黙り、静かにしていた。
だが、トールが口を開いた。
「ハイドの奴は鵜呑みにしてたが…お前本当に魔人か?」
「俺は嘘は言わないよ」
「…どんな魔法を使うんだ?」
「そこまで言わないとダメかー?まぁ…この魔具の反対ってとこかな」
「反対?」
「秘密……ん?」
フレイの視線がトール背後、森の方へと移った。
それに釣られて、トールも振り向く。
「なんだ?」
「…来たな」
…影が広がっていた。
日の光を避けるように…影がより濃く、禍々しく。
「!」
男が一人立っていた。
見た目が変わっているが、あの時の影を操る奴だという事を確信する。
「また会ったな。魔人」
「あれ、お前も面識あるのか」
「お久しぶりです。と言っても…一月も経ってませんか。おや、そちらの方はあの魔人の弟さんでしたか」
「姉ちゃんはどこだ?」
「療養中です。貴方が手加減しない所為でボロボロだと仰っていましたよ?」
「答えになってないぜ」
ポケットから種を一粒取り出す。
それを地面へ落とし、急成長を行う。
「!…それが魔具の効果か」
「そう。魔力を消費し成長させ、魔力を流し込み、操る…奴は魔力体。俺向きの敵だよ」
「そうか…なら…俺が前に出て、隙を作らせる」
「そう簡単な奴じゃないよ。日は出てるけど、奴は強い」
「わかってる」
どうにかして影から奴を追い出す。
だが、その前に…
「お前、俺の事を知らないって言ってたな」
「えぇ、あれが初対面でしたが」
「そうか…紋章にも見覚えはないな?」
「無いですね」
「…もういい。さっさと殺されてくれよ」
「死ぬのは御免です」
剣を抜き、影の中へと飛び込んだ。
(奴を殺すには…光を当てて叩っ斬るか…魔力を含む攻撃…!一つはフレイって奴の魔具と…強化した俺の身体そのもの!…)
進路を横方向へ変える。
「ん…あの時みたいに隠れるつもりですか?」
(この状況、一番良いのは…)
「!」
木の影からまた別の影へと隠れる一瞬だけ見えるその姿…影の魔物は、トールが両手に持っていたある物に気がついた。
(火打ち石…ですか。舐められたものです)
「…」
そうではない。
トールの狙いは森への放火などではなく…
先日の城での騒動…城の住人から"お礼"として手渡された"ある物"!
「ッ!!」
魔物は油断していた。
自分の強力な能力と、経験に対して絶対的な信頼があったからだ。
反応が遅れる…
目の前に、一つの、掌サイズの"紙袋"が飛んでくる。
口から垂れた糸には火がついている。
(火薬…!?しまっ…)
「遅いぜ」
炸裂。
一瞬強い光を放ち、炎を放った。
「ッッッ…!!!」
(おぉ…一歩間違ったら自分が吹き飛ぶような事を…良くやるなぁ)
「!!!」
煙が晴れると、魔物の姿が無かった。
「逃げられた…!?あれで動けるのか!!」
地に大きな穴が空いていた。
(影で掘ったのか…クソ)
「トールだっけ?俺の存在忘れてるだろ」
「今はそれどころじゃあ…」
「もう捕まえた」
「なんて?」
突如地面が隆起し、巨大なツタが大量に飛び出す。
そして、そのツタに縛られてる影の魔物の姿があった。
「すげ…」
「どうよ」
「ははは…私とした事が…」
直撃はどうにかして避けたのだろう、数カ所が焦げ付いているのみである。
「それじゃあお前の目的を教えて貰おうかな…良いよな、トール」
「あぁ」
「教える訳ないでしょう」
「…」
ツタの締め付けを強くする。
「っ…!」
「早く言え。影を少しでも動かしたら…いつでも頭を潰せるからな」
「……少しだけですよ」
ハイドとローザの元にも、小さくだが炸裂音が聞こえていた。
「!」
「トールさんでしょうか…いきましょう!」
「……いや、向こうはあいつらに任せよう」
「え、なんでです?戦闘中かも…」
ハイドはいつの間にか刀を抜いていた。
「こっちも戦闘になるからだ」
「…!」
鳴り響く地響き。
(地震!?まさか…気配が無かったのは)
「……"下"にいたみたいだな」
二人からやや離れたから、地を突き破り、一本の巨大な木が出現する。
世界樹には遠く及ばないものの…
(まずい…か?)
そして、木の中央部が穴になるように崩れ落ちる。
その中から出てきたのは…植物を操る、女の魔人だった。
「アハハハハっ!全快…勇者一行が分かれたって話、本当だったのね」
「ハッキリ見るのは初めてか……弟が探してたぞ」
探りを入れる。
「あら、フレイを知ってるのね。そういえばあなた世界樹でちらっと…」
どうやら、フレイの言っていた事は本当のようだ。自身が魔人と言うことも信じて良いだろう。
「どうします?」
「…捕らえるのが一番いいが…おい、お前なんで魔王の方に肩入れてる?」
「んーそうねぇ…惚れちゃったからかしら」
「はぁ?惚れたって…魔王にか?」
「そうよ。貴方達が思ってるよりずっと良い方なのよ。別に貴方達が理解する必要は無いけれど…ところで…」
魔人は一本の薔薇を何処かから取り出した。
「私たち魔人が、魔王様から受けた使命は…持たざる者の殲滅。あなたは確か、ティトラカワンの魔力を使ってたわね?死んでもらうわ」
「そんな事よりお前の弟に黙って会ってくれたらお互い楽なんだが」
「嫌よ」
「そうか……ローザ、やってくれ」
「…!はい」
「あら?」
魔人は確かにその気配を感じ取った。
目には見えない、だが確かに体で感じる…
(これは…風を操ってる。まさかあいつの魔具…?)
そして、身を守ろうとした時にはすでに、自身の右手は地面へと落下していた。
「……厄介ね。あなたから殺すことにするわ」
「!?効いてないですよ!」
「ちっ…ローザ、お前はトールとフレイの方に。お前狙いになったみたいだ」
「でも…!」
「逃がさないわ」
巨大な木から、無数の木片…もはや矢と言っても過言では無いだろうものが飛来する。
「そのまま行け」
「ハイドさんは!?」
「……」
全身に大量の魔力を走り巡らせる。
「 突 っ 込 む 」
「!?」(消えた…!?)
一瞬にして二人の視界から姿を消し、矢の軌道がその衝撃で逸れる。
彼は魔力のより効率的な使い方を戦いながら学んだ。魔力の消費を少なく、それでいて攻撃力を高く…
(と言っても…今ので魔力を半分以上使った筈だ。もう使えない)
だがそれで十分…彼は既に魔人の背後を取っていた。
「……あらあら」
「あいつをフレイの所にやったのは…邪魔だからだとかじゃない…このままじゃ俺達がお前を"殺しかねない"から…フレイを呼んでくるように言った」
「殺さないの?優しいのね」
「メリシアの仇だ。それなりに苦しんで貰う…」
「それで、まずお前の目的は?」
最初にトールが影の魔人にそう言った。
「そうだですねぇ…魔王への復讐でしょうか」
「復讐?仲間じゃないのか」
「元々は仲間ですよ。かつての戦争の時に我々は捨てられたのです」
「捨てられた…ハイドが城にいた魔人から似たような事を…」
「あぁ。あの方も捨てられたんですよ…魔人だって魔物です。仲間を見捨てていい筈がない…」
「…そうか。今思い出したけど、100年前の戦争で"影の王"って呼ばれてたろ?」
「えぇ。雑兵の肩を持ったせいで追い出されましたがね。私があの時、城にいた理由はあの魔人を連れて行くためだったんですが…」
「連れて行くってどこにだ?」
「私は魔王の首を狩るつもりです。そのために兵を集めていたんですよ」
「それで姉ちゃんを…」
「魔王を…人間と手を組まないのか?」
「人間共と手を?嫌ですね絶対に。私は魔人と魔物しか救う気がないですし。魔王の次は人間を皆殺しにする気ですから」
「そうかよ。んじゃあ…死んで貰うか」
「律義に質問に答えたのは理由がありますよ」
「…!フレイ!早くや「遅いですよ」
…影が"爆発"する。
「!?」
周りは変わらず木々が囲んでいる。影に逃げられないよう、死なない程度に太陽を浴びるよう吊っていた。とにかく、木影から離れていた。
だが…辺りに影が…黒色の何かが飛び散る。
(これは…魔力か?どうなってる?)
「これは…まずいか?光を浴びても消えないぞッ」
トールがその黒い何かを浴びてしまっていた。
「うわ…とにかくそれ脱げ!」
「遅いですって」
「ッッ…な…に…?」
…その黒い何かが"棘"に形を変えた。
腹部を二箇所。貫通する。
周りに飛び散っていたものも一斉に棘に変わる。
「ガハッ…」
「トール!!クッソ…テメェ!」
影の魔物吊っていた筈のツタへ目を移すと、姿が消えていた。
「…これ使うと疲れるんですよ。影を何層にも展開し、光で消しても消しても消えない影を作ってるんです」
「!」
「そして爆発…もとい飛散、付着させ…ズブッ!っと…」
「ぶっ殺す!!」
鋭利なナイフのように成長させた枝を投げる。
「フッ…死んで貰いますよ!!」
枝は木陰から伸びた影に弾き落とされ、そのまま、フレイとその後ろに倒れているトールへ向かっていく。
(…!俺が避けるとこいつにあたるじゃねぇか!失敗したのは位置どりと…もう少し植物を隠して置かなかったことか)
「…!さっ…けろ!!」
「いや」
「!!」
フレイはその場所から動くことなく、棘をその身に受けた。
「グゥッ…!!」
「ば…か野郎…!!
「え?なんか言ったか?」
「!?」
「なっ…!まだ生きてるんですか!?」
棘は確かに、フレイの首と胸を貫いた…が。
「…!そう…か…魔人は人の姿のままじゃ…死なない…!」
「は?治癒能力が高いだけだ。不死な訳ないだろ…そのまま寝てていいぞ。もう終わらせる」
「……魔人?あなた、魔人なんですか?」
「気付かなかったか…?鈍感なやつだ。ほら、それにも気付いてないのか?」
「!!」
背後に無数のツタが迫っていた。
魔物はそれをさけ、また木々の中へと隠れる。
(まさかあんな距離の植物までできるとは誤算です…そもそもどこかに触れていたか…?まさか投げてきた枝に細工が?)
「おいおい、場所丸わかりだぜ」
(ここは距離を取りますか…)
「俺が避けなかったのは…致命傷にならないと判断したからじゃないぜ」
「……?」
「……人間が好きだから…それと…ここでトールに信用してもらいたいんでな」
「!」
新しく地から生えてきた草が、トールの傷口を押さえつける。
「そしてもう一つ…離れるべきだから…」
そう言うと、フレイは魔物を追うための木々に飛び込んだ。
「!」
「来ましたか…」
一方は影を使い、もう一方は植物を使い。
お互いの位置を常に把握できる状況にあった。
(光は少し差し込んでいるが…影が多い。全ての植物を移動させる"のは"魔力的に不可…!五分ッてとこか…今は)
(…周りは植物だらけ…油断できないのは奴も同じな筈ですから…邪魔をするなら…例え同族でも…死んで貰います)
「見つけたぜ!!」
「こっちの台詞です」
「うおおおおお!」
無数の大木がムチのごとくしなり、影の魔物へと襲いかかる。
「ちっ…!」
それを巨大な影の壁で塞ぎ止める。
「厄介な…!!人ですねぇ!!」
影を斜めに変形させ、木の軌道をずらす。
「?」
自身の影と木で確認できなかった前方への視界が開けると…
「……勝ちだな。俺の」
"広場"ができていた。
あった筈の植物が、大量に消えている。
「なっ…!?」
「姉と俺は正反対の性格だった。小さい頃から今までそれは変わっていない。性格と同じで、魔人としての"固有魔法"も正反対だった」
フレイの顔に、ヒビが入っていく。
(まずい…!まずいまずいまずい!!)
「俺の魔法は…"植物を枯らす"魔法だ」
ものの数秒で、周りから植物が枯れ、崩れ堕ちた。
「……油断…しちゃいました…ね」
日差しが、影の王へと…直撃、降り注ぎ続ける。
「同族を、主人を裏切ってまで大切にしようとする考えは正直感動したし、尊敬できる。でも…」
「わかってますよ…あなた方の親は…魔物と…人だ…大切にしようとして…当然です…」
影が引いていく。
「そうか…」
「……さっきの…トールさんって言ってましたね…」
「ああ」
「…本当は…紋章には少し見覚えがありました…"フレイジア"へ向かえと…伝えて下さい…」
「ありがとう」
「最後に………魔王の奴は絶対にぶっ殺して下さい!…ね」
体が灰色に染まっていき、時期に、灰に変わった。
風がその灰を吹き上げた。
「…思ったより良いやつだったな…他に…道はなかったのか」
トールの元へ戻るべく、彼は足を動かし始めた。
「疲れた…」
「あらっ??」
ハイドへの攻撃を繰り出そうとした筈の右腕が斬り飛ばされる。
「遅いな」
襲いかかってくる大量の枝を切り落としながら。距離を離さないように前進しつづける。
(早い!逃げられない…!!)
「痛覚がないのか?そういう趣味じゃないが残念だ」
「いいえ、慣れてるだけよッ…!」
斬り飛ばされ空中を舞っていた腕から一本の触手が伸び、ハイドの肩を貫く。
(今のうちに!!)
「俺もだ」
「!!」
次は両足が斬り飛ばされる。
「クッ!!最低な男ね…!!」
「ふむ…今更だが魔力体ってやつじゃ無さそうだな」
「………」
「動くな」
這いつくばっている魔人腹部に刀を突き刺し、動けなくすり。
「ッッ!!!」
「少し質問に答えろ。ミレラ•ソーガって知ってるか?」
「……」
「………………今少し、足下で振動があったな」
刀を更に捻り込む。
(なんでわかるのよッ!!!)
「いいか?俺は出来るだけお前たち魔物をぶっ殺したいんだ。今お前が生きている理由は、お前の弟と…俺の少しの理性のおかげだ…改めて聞く。ミレラ•ソーガって名前を聞いたことがあるか?本人を見たことがあるか?」
「……少しだけ…」
「…そうか。魔人か?」
「えぇ、そういう事に…なるわね…」
「………」
「…恋人かしら?」
「…………家族だ。このまま大人しくしてたら…もう、これ以上はしない…フレイが…来るまでな…」
「…家族…ね」
無事、彼らは合流し、しっかりとした拘束にかけることが出来た。
「これ植物だろ。意味あるのかフレイ」
「先に魔力を流し込んだ方がそれの主導権を得るんだ。ところでありがとう。こんな簡単に捕まえてくれるとは…」
「トールは?」
「怪我してね。ローザに治癒魔法をしてもらってる」
「あいつ…治癒は不慣れだからな…」
「そうなのか…で!姉ちゃん。もう逃がさないぜ」
「……あなた。魔法を使ったの?」
「え?うんまあ」
「すこし老けたわね」
「老ける?」
「俺の魔法は、使うと自分の寿命を食うんだよ。それで少し老ける」
「……そうか」
「突然魔王のところに向かった理由…教えてよ」
「……わかってるでしょフレイ」
「人間が…憎いの?」
「…私達が持っていない…幸せを持ってる…」
「幸せ?」
「……昔の戦争で人間が勝って。魔物達の居場所は失われた…」
「……魔物が先に人間に攻撃を仕掛けたんだろ。自業自得だよ、僕らのね」
「それでも…!」
「なぁハイド。お礼は質問って言ってたよな?」
「あぁ。いいのか?」
「その前に…少し…姉も知らない事だ。聞いておいてくれ」
「?」
「……魔物なんて。最初はこの世界にいなかった。この地は、もともと人間のものなんだよ」