※この作品はR-18です。

黒のテスカトリポカ   作:被害者宅

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第六十話 再開と不動

小さな頃、エンディに言われた事がある。

 

「正直に生きないと壊れるわよ?」

 

…これだ。

 

確信した。

 

「フゥッ…」

暴れるタイタンの両腕を切り落とす。

両腕から血を吹き出し雄叫びをながら、再度倒れる。

これが僕の"正直に生きる"だ。

剣を振るたびに心にかかった影が振り払われるような、スカッとした感じになる。

「ハハッ…はははは…」

タイタンの首を切り落とす。

「!」

クリフが相手をしていたゴーレムが一斉に崩れ落ち、ただの砂と岩に戻る。

「………遊びすぎじゃないか、ハインツ」

「手強かったんですよ」

顔に付いた血を手で拭いながら、彼はそう答えた。そんな筈はないと、クリフは分かっている事を分かった上で、だ。

「……エンディとララに合流しよう。あと…逃げ遅れた奴の避難だ」

「えぇ…行きましょうか」

二人は、砂煙りの中を走り出す。

 

そして、ハイドは。

 

「ッ!」

寸分の狂いなく、ミレラだった魔人の首に刀を振るう。

だが、大きな跳躍により避けられ、距離を取られる。

 

(雑…避け方が雑だ。スピードに任せっきり…お前の戦い方はそんなんじゃない筈だろ)

 

拳を握り締める。

(いや…もうミレラじゃ無かったか)

とにかく、距離を取られたのは不利と言ってもいい。もしも奴がこれ以上の速度で突進してくれば、長くは持たない。

(防げてあと3撃…それ以上は魔力が持たない)

 

(なら……)

 

「ほう……」

その様子を見ているティトラカワン。

「正面から応えるか」

 

「…」

ハイドは当然、ティトラカワンが自分達の事を観察しているこt

ただそれでも、ティトラカワンではなく目の前の魔人を優先しているのは。

彼の優しさだった。

ただ…彼女を休ませてあげたい。

怒りよりも、悲しみが凌駕していた。

 

ミレラがハイドに向かい、一本のレイピアを向けて突進する。

 

(––––ッ!!)

 

完璧に見えた訳ではない。

感覚で、刀を振り下ろす。

「!」

狙い通り、最後の一本であろうレイピアを折る。

…これで次からの攻撃は限定された。

ミレラは引くことなくハイドの顔めがけて拳を振った。

「…」

そう来ることは読めていた。

 

通常、そのままなら頬を砕かれるだろうが…"頭突き"。

拳が額に当たるように仕向けた。

自身の早すぎる動きを止めることは叶わず…

「!」

拳がぐちゃぐちゃに曲がる。

ミレラの反応が鈍る。その瞬間を見逃さなかった。

 

(捕まえた……)

 

ミレラを"抱きしめる"。

力を徐々に強くする

 

(砕く……このまま……)

 

暴れる。

だが、この形が決まってしまえな、大の男でも抜け出せない。

 

 

 

 

騎士を目指す理由…

 

みんなには、"特にはない、かっこいいから"とか…"よくわからないが憧れだから"と…言っていた記憶がある。

 

違う。

 

嘘なんだ。

 

俺がピエラニオを犬の群れから助けた?

違うだろう。最後はいつもミレラが助けてくれた。

俺じゃないんだ…いつも。

 

 

俺は…お前に憧れた…

 

そして…

 

 

"お前を護ってみたかった"

 

(一度でもいいから……護りたかったッ!!!お前をッ!!!!)

 

両腕に全力の力を込める。

ミレラは体を強化しているだろうが、意味を成さず、簡単に…

音を立てて骨を砕いていく。

 

…暴れる事はなくなり、全身の力がぬけ、両腕に全体重がかかる。

「…ふむ…力任せに…」

 

 

「……ミレラ」

彼女の体を地に優しく寝かせようと…した。その時だった。

 

 

 

「…ハイド」

「!!!」

 

心臓が止まるほどの衝撃…喉が固まり声が一つも出ない。

あの時から、聞きたかったその声が…彼を悲しみのどん底に突き落とす。

 

(今…こいつと…声を交わせば…俺は…戦えるのか…これ以上…)

 

「……ハイド……?」

「………くっ…」

息をするのを忘れていた。

深呼吸を行い、彼は…

「俺だ…ミレラ」

「……会えて、良かった…」

「…今の自分の状況…わかるか?」

「ん…全部覚えてるもん…」

「…………」

 

なんだ…何を言えばいい?謝ればいいのか…?どうすればいい…

 

「……ミレ…ラ…」

「…な…に…?」

彼女の瞳から着実に、生命の炎は失われいく。

 

「……死なないで…くれ…」

 

…決めたのに。

自分がやった事だが…彼らに対しては出なかった言葉が、今の自分の未熟さを痛感させる。

 

 

死んでいったやつはこれを聞いてどう思う?

死んでも良かったと?

 

ちがう…でも…

 

 

「……"あっち"で…会お…いつか……」

 

「……!」

 

そうだ…

 

そうだそうだそうだ

 

 

ホルンが言った

 

不死になれと。お前しかないと。

 

 

 

 

お前達を殺したんだ。

 

俺は…お前達を"背負わなければならない"

 

今の彼らにできる最高の恩返しは。

 

"世界を救う事だ"

 

「………いや……ここで…最後だ」

「……」

「もう…あの世でも何処でもお前らに会う事はない。永遠に…」

「……そっか…」

「……だから……見ててくれ、みんなで…」

 

 

 

 

"全て終わったら、解放されたい"

 

…死にたいと。思っていたが…

 

 

そうだな…全て終わったら…

 

 

泣こう。

 

思いっきりな。

 

 

 

ミレラは静かに瞳を閉じた。

もっと時間があれば彼女に伝えたい事が山ほどあったが、今は目の間の事に集中する事を彼は決意した。

 

(もう迷うか)

 

と。

 

「……ふふ…始めようか。剣士よ」

 

「殺す」

 

湧き上がる怒りが、感傷を吹き飛ばす。

 

「…ちょっと待った」

「あ…?」

 

ハイズだった。

 

「おせぇよ。黙って見てろよ」

「…正直言うと、"今"のお前じゃ勝てないぞ」

「でもやる」

「…やっぱまだ子供だな。決めたんだろ?死なないと、不死になると」

「…」

「俺が相手する。お前はその子といろよ」

 

剣を抜く。

 

ハイドは下がった。

 

「……ハイズ•ノード。か今度は手を抜くなよ」

「ばれてたかぁ…どうしようかなぁ…?」

「ふんっ…!!」

 

ティトラカワンはハイズの足を払おうと蹴りを放つ。

だが避ける。容易に。

次は顎にめがけて拳をしたから上へ放った。

それも紙一重でハイズは避ける。

「……手抜いてるのはどっちかな」

「…ばれていたか?」

「当然…」

 

剣を振り下ろす。

それを腕で防ぐ。

 

「!」

隙が空いた。

腕の下を通り肋骨を掴む。

「おら…」

片腕で持ち上げる。

「よっ…!!…っと!!」

単純に、力任せに地面へと頭から落とす。

 

「…!!なかなかやるな」

平然と立ち上がるティトラカワン。

「そうかな…」

分かっていたのか平然とするハイズ。

「……まだだな。どうすればやる気を出す?ハイズ•ノード」

 

「……残念だが。出さないな。いや、出せないか…?」

 

「…出させてやる…ハイズ•ノード」

 

「……さっさと終わらせよう」

 

ミレラ程ではないが、かなりの速度でハイズの腹部に貫手を放った。

 

だが…

 

 

(…避けないだど?耐える気か…その程度の強化で)

 

「ふん…最初からそれやれよ…」

 

 

「!」

 

ティトラカワンの腕がハイズの腹部を貫いた。

 

 

" これでいい "

 

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