いやお前だれだよってなると思うので、17話あたりを読み直すと思い出すかと思われます。
俺は、15と少しの時に家を出て城で働き出した。
最上級に位置する騎士団。
"赤獅子王騎士団"を作った、今は亡き親父のおかげですんなり仕事を貰えた。
ただ、15までの間に生活をしていたのは普通の城下町普通の家だ。
親父の残した功績はノード家を貴族へと昇華させるには十分だったらしいが、母と父はそれを拒んだ。
理由は知らない。
貴族に産まれたかったなど思った事はないし、憧れもない。そんな両親を恨んだ事も無い。
ただ、俺が城で働き出した理由は一つ。
騎士になりたかった。
周りには俺と同じ目的の人間が何人か居た。
だが、多くは…その夢を諦めた。
一人は心を折られ。
一人は俺に失望し。
一人は試験で死んだ。
まだ何人かいたが、理由は忘れた。
しかし、全員が諦めたんじゃない。
数少ないが、俺と。その幼馴染…ミレラ•ソーガ。
ミレラ、彼女はハッキリ言って天才だ。
10の時に魔物の大群から守られた事もあったし、剣を習ったこともあった。
……俺は憧れていた。俺より先に騎士団に入った彼女に、その背中に背負っている騎士団に。
だから俺は、城での仕事を死ぬ気で成し遂げ続けた。
これは……俺がフレイジアで学んだことの、"記録"だ。
最初の仕事は…警備だった。
初っ端なから城外の見回り警備…周りは俺のことをガキとして見ていなかった。俺としてはとても有り難い事だ。
これが案外ハードだった。
下級とは言え、魔物の群を相手する時もあったからだ。
城の決まりでは、中級までの魔物を城兵が…それ以上は適当な騎士団が対処する。
戦争のない今、それくらいしか仕事がないからな。
だがこの話は城内の警備での事だ。
城内での事件の原因は、下手な魔物より凶暴な酔っ払い盗賊自殺志願者ただの馬鹿…色々…中でも一番厄介なのが…他人に危害を加える奴らだ。
城での仕事三週目あたりの事だ。
「交代ですよ」
「んお…おぉ、ノードか。寝てた寝てた」
辺りは松明以外真っ暗…閉ざされた城門の内側の警備だった。
「んじゃあ後は頼んだ」
「はいはい…」
酒の匂い…彼は、「"どうせ今日も何もない"」とでも思ってたのだろう。なら残念、外れだ。
一時間ほど経った頃だ。
突然、民家群の方から女性の悲鳴が聞こえた。
明らかに普通じゃない、言うなれば命の危機に直面しているような。そんな声だった。
当然、自分は急いで向かった。
悲鳴が発せられた場所であろう裏路地…そこに到着するが気配は無かった。
だが、一つ…地面に横たわる人影があった。
暗い…光は手持ちの松明だけ…俺はその影に近寄って。照らした。
「うっ…」
傷口は右脇腹から左肩まで…
人が人を殺った…もう息はない。だが少し、まだ暖かい。
(近くにいる…!探すか!?先に応援を呼ぶか!?)
だが、探す必要は無かった。
"向こうから来たからだ"
そして、俺はそいつを知っていた。
"ピエラニオ•ペツィオ"
「なん…で…!?お前がここに…!!」
紫の刺々しい鎧に身を包み、左右に一振りずつ剣を握っている。
「え?なんでって…君に痛い目を合わせに?」
「なに言ってるんだお前…!これはお前がやったのか!?」
「あぁーうん。構えろよ、その槍。腰の剣でも良い」
正直、訳がわからなかった。
女性の悲鳴が聞こえ駆けつけると、かつての親友が血に濡れた剣を持ってる…そしてそいつは、自分と闘えと……
しかし、答えは直ぐに出た。
「城まで付いてきて貰うぞ…!理由はその時聞こう」
「そう、君はそれで良いんだ…槍かい?」
当時は槍術の訓練を重点的にやるように言われていた。
下級の魔物はもちろん、素人に対して無傷で制圧できるからだ。
何より…
(剣はもう十分振った!!)
「おお!やる気だね!」
相手の脇を狙って両手突きを放つが、剣でそれを弾かれる。
(!)
大きな隙ができる。
(今のを簡単に弾きやがった!!)
ピエラニオは体勢を低く、地を這うように飛び込んできた。
片方の剣を顔に向けて突き込んで来るが、それをなんとか避ける。
ただこれは、体勢を立て直す事ができたから避けられた訳ではなく、ピエラニオの持っている剣の刃渡が細いからだ。
要するに、首しか動かせ無かった。
頬を擦り血が流れた。
もう片方の剣が、今度は心臓を串刺しにしようと放たれる。
(剣は抜けない、間に合わない!!だが…)
手は動かせる。
槍を投げ捨て左腕でその刺突を防ごうとした。
腕を貫通し、胸に浅く突き刺さったが、命に別状はない。
「おぉ……!そうくるか……ッッ」
空いた右腕で渾身の一撃をピエラニオの頬に叩き込んだ。
その勢いで剣は抜け、奴は膝をついた。
「グフッ……かなり効くなぁ……でも駄目だね」
「なに?」
「殺らなきゃ殺られるぞ?」
「ッッ!?」
突然左足に走る痛み
矢が深々と突き刺さっていた。
「……!家からか!」
「どうしてあんな大きな悲鳴で誰も家から出て来ないのか…気がつかなかったか?」
「……何人いる?」
「家の数だけ…僕の"部下"だよ」
彼は続けた
「僕の夢は変わった!僕は僕の国を持つ!その為ならどんな汚い事もするし誰だって殺す!」
「…?俺を殺しても王には近づけないぞ…」
「ん?ハイドを殺すって誰が言った?痛い目に合わせるって言ったんだよ…」
「ますます分からんな…」
「"僕は君を超える"。君が騎士団だなんだと言ってる間。僕はもっと大きな夢を叶える……」
「根に持ってるのか?あのときの事…」
「そうだね。君には"失望"した。僕はハッキリ言って君に憧れていた。最後はいつもミレラに助けられるが、丸腰で魔物に向かって行った時は……泣きそうになった。君こそ"勇者"だと…」
「……」
「弱い者の味方で、口が悪いが誰にでも優しい……だが違った。僕たちの…いや、僕の友達があの赤い鎧に身を包んだ悪魔に無残にも殺されても…君は…弱かったからだと言った…」
(なんだ?視界が……悪く……ど…く…)
「だから……君は指を咥えて見ておけ…先ずは街を取る……僕の事を尊敬させてやる」
そこで完全に思考が途切れた。
気が付いた時は城門のそばに座り込んでいた。
しかも辺りは明るい…
目を覚ましたと同時に来ただろう交代も兵が俺に言った。
「板についてきたな」
「…………うっせ」
その後、急いで昨日の現場に向かったが、血の跡もないし騒ぎにもなっていなかった。
それどころか、兵舎に帰る際に、昨日の死体だった女が大量の買い物をしているのを見た。
昨日の事が、夢のように…
ただ唯一、身体に受けた傷が残っていた。
お前が道を外れるなら、俺は道を真っ直ぐ進んで夢へと到達してやる。
俺の夢が小さいと言うなら…俺は…団長の座を獲ってみせる。
そして、この国を…変える。
とにかくその時の気持ちは…
「剣はまだまだ振り足りないな」
(そう言えばこの事黙ってたらマズイかな…)