王城、通路。
「ミレラ!久々に会った気がするな」
「ハイド。そう言えばそうだね。最近忙しくて…」
「やっぱ、戦争無くても、忙しいもんなんだな」
「……」
「どうした?」
「いや…戦争。始まるかもよ…」
「あ?何処とだよ?」
「そのうち分かるよ、それじゃ、まだ忙しいから…」
「……やっぱり、時間は無いままだな、ミレラ…」
魔族との戦争。
これを知っているのはごく一握り。
いつか、必ず起こると分かっていた魔王の復活。
知っている者は皆が思った。
"何故私が生きている内に…"と
まだ確証はない。だが、もし、本当だったとしたら…
大切な人を、失うかもしれない。
全て、失うかもしれない。
失った人間はどうやって生きるのか…
「スティーブ、お前も久々だな」
「おうハイド。俺はいつでも暇だぜ」
「切り込み隊は…訓練してるのか?」
「あぁ、してるぜ。たまにな」
「良いのかよ…それで」
「あぁ、そうだ。お前今日の夜、時間開けとけよ」
「は?やっぱお前そっち側なのか?ゴリマッチョだしな…」
「ハイド、偏見すぎるぞそれは。まぁ…」
「へ?なにその"…"は?マジなの?」
「冗談だよ、俺は"普通"だ」
訓練場。
「……」
「グスタフ•ヴィンクラー隊長。奥さんが来てますよ」
「……今行く……」
「やっぱり木の上好きなんですか?お猿さんみたいですね…」
「………………」
「冗談ですよ…客間です。それでは」
王城。騎士団用応接室。
「…久しぶりだな、エルゼ」
「そうですね。最後に会ったのは、一年前かしら?」
「…すまないな…"里"は遠い。時間が無い」
「すいません。待てずに私から来てしまいました」
「………」
「グスタフさん?」
魔族の討伐連合騎士団。
勇者だけでは当然勝てない。
連合は魔族の進軍を食い止め。
勇者は秘密裏に動き、魔王を討伐する。
かつてはそうしていた。
そして…連隊の最前線に出るものは…
一級、二級の魔具を持った兵達である。
「いや、なんでもない…城下町にでも行こう…ここは、汗臭い」
「えぇ、久々に、貴方の笑顔がみたいです」
「おうスティーブ。来たか。もうすぐ完成だぜ」
「マジか親父。予定通りだ」
「親父って言うな…お父さんと呼べ…団長さんから、たんまり金貰ってるからな…張り切っちまう」
「おーう…目が輝いてるな…妹は?」
「ローザなら買い出しだ。会いたがってたぜ」
「たく…城に来てくれば、いつでも会えんのによ」
「邪魔したくないんだよ…騎士団はみんなのヒーローだからな」
「……」
「団長。これもお願いします」
「ま、また紙が増えた…!私の髪が減っちゃいそうだ…!」
頭皮をマッサージするように手を動かす。
「……同情しますよ、同じ女性として」
「同情だけなら…誰でもできるよ」
「少しだけ変わってあげます」
「えっ!全然面白くない冗談だね」
「邪魔だからさっさとノードさんのところにでも行って下さい」
「ありがとう。そこでハイドの名前が出てくる意味がわかんないけど…ありがとう」
王城、庭。
「……」
「ハイド!」
「うお!」
突然声をかけられ、飛び上がるハイド
「なにしてたの?」
「いや、ちょっと。空の様子を…」
再び見上げるハイド、それにつられ、ミレラも目を空に向ける。
「なんもないよ」
「いや、何か…さいきん空の色が変って言うか…」
「……変わんないと思うけど」
「そうか?まぁいいけど。それで?何か用か?」
「んー、暇でね。なんとなく」
「忙しかったんじゃないのかよ?まぁ、いいか」
少しの間、二人は声を出さない
「…」
「…そう言えば…ハイドのお母さん元気?」
「…言ってなかったっけ…入団前にぽっくり逝ったよ」
「え?…え?」
「お前とは全然合わなかったからな。入団前はだけど」
「いやいや、もっと言う機会あったでしょ?なんで?」
「無かった。お前との時間なんてな。入団したばっかに、そんな話できないし…そのまま忘れちまった」
「……家族。居なくなっちゃったって事…?」
「まぁそうだな」
「ごめん…今更知って」
「?なに言ってんだお前。謝る理由何処にあんの?どっちかと言うと俺が謝る方だろう」
「そ、そうかな?」
「おう」
「今度は俺が質問するぞ」
「…う、うん」
「そのうち戦争になるってどういう意味だ?」
「…あ、しまった…」
「……秘密事項かよ…どうせだし、教えてくれ」
「……分かった」
彼女は、言ってしまった
王に、深く関わる者以外にはまだ話すなと言われていたが…
「…魔王か。なるほど。戦争か…」
「…うん」
「俺は…最前線に出れないわけか…国の最後の盾か…盾以下か」
「……」
「…俺は、この国の矛になりに来たんだ…バカみたいに死体ができて行くの眺めるためじゃない」
「…うん」
「俺は、この騎士団に来て…新しく守りたいものができた…」
「守りたかった人の近くに、やっと来れたんだ。そいつは今や騎士団長だけど…」
「えっ」
「まぁ、その、うん…俺は…」
「…ハイド…」
「…うん」
地下、深層牢獄。
「もう…終わりか?」
「ホルン副団長殿…これ以上は」
「…いや、こいつを使う…」
ホルンが取り出したのは…
短剣。いや、ナイフ
「…それは」
「やはり知っているんだな?男…こいつは…"幻想の爪"…」
「魔力を送れば、刀身に特殊な"毒"が浮き出る……」
「……ほう」
「この毒が体内に侵入した者は…使用者の思いのままに、"夢"を見せる」
ナイフを男に近づける。
手に、力を入れる。
「あぁ…よーく知っている…そいつは…」
ナイフの刃が、男の肌に近づき…
「勇者一行の一人が使っていた物だ…」
「何処まで知ってるんだ!?」
ナイフが…肌を切り…「潮時だな。時は満ちたぞ。さらばだ」
「なっ…逃げろ!看守君!」
その時、この世界を白い光が包みこんだ
それは全人類が目にし…
全ての魔物が…"喜んだ"
「東からの光…魔王は今復活した」
王城に、爆発音が響く
「!?」
「火薬庫か!?」
「いや…!」
「"地下"だ……!!」