「女神さま気持ち良いですか?」
「う、うん。良い感じだよ」
僕は今、地球から購入したボディーソープの泡をニーナに手で塗り広げられていた。
エロ同人みたいなシチュエーションだけど肌ってのは繊細で、お湯でふやけた所を硬いブラシやタオルで擦ると傷付いて肌荒れの原因になるから良くないんだ。熱すぎるお湯は身体の皮脂を洗い流してしまうから温いくらいの温度のお湯で身体表面の皮脂を浮き上がらせてから柔らかい素材のモノで優しく撫でるように洗うのが一番良い。シャンプーやトリートメントのすすぎ残しがあると雑菌が繁殖してニキビや肌荒れの原因になるから髪から上半身・下半身の順番で洗う。特に背中は見えないから洗い残してる可能性が多く、また皮脂汚れも多いから注意が必要なんだ。他人に洗って貰えるのならそれがベスト。
だから柔らかい手でボディーソープを前戯するよう塗りたくるエロ同人のシチュは実は理に適っているんだ。
まあ、年老いすらしないデーモンの物理的に頑丈な肌をそんな神経質にケアしなくても良いんだけどね。やっぱ一種のプレイな気がしてきた。
「んっ」
「あ……すみません」
「いや、その、大丈夫」
肘の内側とか脇の下とか胸の谷間とか下乳の部分とか、汗をかきやすいから特によく洗わないと行けないんだけど。そこ性感帯でもあるから丹念にさわさわと撫でられ続けるとヤバい。アミールに執拗に舐められて開発されたのかちょっと感じ易くなってる。
それに泡風呂で一面真っ白になったお湯の中、身体を洗うために膝立ちになって裸で真正面からニーナと向かい合ってると変な気分だ。
ちゃぷちゃぷと身動ぎする度に音がする水音すらもエロく感じる。ニーナも声音こそ平気そうだけど頬どころか首筋や耳の先まで真っ赤で僕を意識してない訳じゃないみたいだ。チラチラと視線が下の方に向いてるしさ。
「…………気になる?」
「い、いえ! そんな事、なぃですよっ!?」
ティーカップみたいなポータブルバスタブは複数人で入れるよう横には広いけれど、膝立ちになれば腰が水面に近付く程度には水深が浅い。多分、寝転がってお風呂を満喫するような感じの設計だ。そうすると、そのアレが薄らと見える訳で。しかも身体を弄られて起立してる状態のが。
ニーナのビスクドールのように整った顔が更に茹で上がったように赤くなって取り乱し始めた。植物状態から回復したばかりで身体の制御がまだ覚束ないのかフラフラと危なっかしい。
「キャ」
「ほら、あぶなっぃ!?」
足を滑らせてこちらに倒れ込んできたから受け止めたら湾曲した浴槽に片足が滑って変則的な格好になった。
しかも僕ってニーナより背が低いからどうしても下から身体を抱きしめる感じになる。
それで、どうなったかというと。
「あ、あれ? 痛い?」
「…………」
「え、え、え?」
「…………」
棒が何か刺さった。
ニュルリと柔らかい肉の中に入ってる感触を下の方に感じて言葉が中々出てこない。
「その。あの、ね。なんかゴメン」
「っ……! !? !!?」
パクパクと言葉にならない言葉を発するニーナと至近距離で無意識に抱きしめ合いながら見つめ合う。
うん。これ、どうしよう。
「ウッ、ウェッ、ウーッ」
「だ、大丈夫。大丈夫だから」
「エグッ、ウェェ」
「直ぐ抜くからね」
「い、いひゃい……です。動かないでっ下さい」
「ゴメン」
ニーナと抱きしめ合いながら泣く寸前の彼女を必死にあやすという謎の攻防を続けて暫く。
現状を把握したニーナが衝動的に泣き喚くのを堪えてジンジンする痛みを誤魔化す為か一層僕の身体に強くしがみつくようになった。
暖かいお湯の中で泡石鹸でヌルヌルした身体を強く押し付けられるのはヤバい。理性がなくなりそうだ。もうピッタリと身体が密着し合っていて隙間がない。
「本番はまだないから安心して良いよって言われてたのに」
「うっ」
「女神さまは優しいから無理やりはマズないって言われてたのに」
「ううっ」
「気になるなら触れ合ってみて嫌じゃないか一度試してみるのも良いんじゃないかって軽いノリで薦められて来たのに」
「うううっ」
「せめて初めてはもっと雰囲気のあるシチュエーションが良かったです」
「ご、ゴメン」
事故だし僕が謝る理由は特に無いような気もするけど、ここは謝罪一択。
僕だって本意じゃないなんて口にするのは最悪の選択肢だ。傷口に塩を塗り込むようなもの。こういう時の女性はそういう理屈が聞きたいんじゃなくて、酷いよねって共感が欲しいんだ。適当に相槌を打つのも駄目。論理的に破綻してようがどうだろうが、ちゃんと自分の話を聞いて感情をケアして欲しい訳。
実際、事故で処女散らすってそれが好きな相手でもちょっと嫌だろう。その相手がムードも解さない奴だったら更に傷口は大きくなる。
下半身を大きくしておいて、分かったような事を言ってるって自覚はある。もう僕の頭は煩悩に支配されきってる。今はニーナとピッタリ引っ付いて離れたくない。放したくない。
「………………」
「………………」
暖かいお湯を冷たく感じる程、ニーナの身体は熱く火照ってて柔らかい。汗が伝う裸体がエロい。
柔らかくつぶし合ってる胸の鼓動がドクンドクンとビックリするぐらい早く大きく伝わってくる。
「んっ」
「あぅ」
軽く身動ぎする度に色んな所が擦れてヤバい。キラキラ輝くプラチナ色の髪から良い匂いが漂ってくる。
触れ合う肌は滑らかでぷるんとしててもう全身が気持ち良い。下半身のアレとかもう溶けちゃってるんじゃないのってぐらい快楽に痺れててニーナとの肉体の境界線があやふや。いや、頭が茹だってるだけで、まるで抱きしめられているかのようなギュギュとキツい感触はあるか。
「……女神さまって胸が大きいですよね」
「え、うん。まぁ……」
「柔らかくて抱きしめられてると居心地が良いです。下の方はもう地獄ですけど」
でも、何も感じないよりは良いですとニーナは小声で言った。
植物状態の時は痛みすらろくに感じなくって意識も朦朧としてて夢の中に沈んで浮上できないような感じでした、そうニーナは零す。
時間感覚も曖昧で意識が浮上する度に時が進んでて傍にかけてあったカレンダーの月が変わっていたらしい。
「もしかしたら他に誰かお見舞いに来てくれてたのかもしれませんけど、私が聞いた声は親戚の私を罵る声でした。両親が結婚しなきゃ私なんて生まれて来なかったのにと、お見合いなんてさせるんじゃなかったと後悔してました」
「うん」
「そのまま淡い絶望の中、夢の中に沈んで二度と浮上しないまま死ぬ。それが私の最期だったと思うんです。そういう運命だったんじゃないかって」
「でも助かった」
「はい。女神さまに買われちゃいました」
フフッとニーナは小さな声で笑って。
「キスしてくれませんか。命が助かった事を後悔する暇もない程、情熱的に」
うん、と頷いた僕はニーナの口を塞いで。
私を買った事を後悔しないで、捨てないで、と縋る目を快楽に歪ませる事を決意した。
ニンフの性的魅力はデーモン国家の神々すら翻弄するレベルだ。
人一人の精神的外傷を塗りつぶすくらい訳ない。
ちゅっと唇に触れる軽いキスを段々とディープな舌を絡めるものにしながら僕自身もニーナとの情事に夢中になっていった。