10日目
12時間以上も寝たのは久しぶりだ。
お陰で、昨日の疲労はすっかり取れたようだ。
とりあえず、目的である二つ目の玉は手に入れた訳だが……こんなものは、いくらあっても困らない。
まだまだ満喫しきってはいないが……熱海を去る決意を固める。
進路は変わらず大阪方面!
バイクでぶっ飛ばす。
その途中、何やら不審な車両を見つける。
監視の目もなく、法も関係ない、この止まった世界であっても、一般道で出していい速度、出せる速度には限界ってもんがある……一才留まる気のないスピードで通り過ぎる暴走車両。
いや、そもそも、この世界で動く車があるとすれば……
そこには運転手……やはり俺以外の探訪者がいるということ。
急いで俺は例の車両を追いかける。
アクション映画並みのカーチェイスを繰り広げる……予定だったが、向こうも俺の存在に気づいたのかハザードで知らせ急停車。
そんでもって、角で切り返して、こちらに向かってくる。
……ものすごいスピードで!?
慌てて避けたが、轢かれかけた……
絶対にドライバーは関わっちゃいけないような危ない野郎だ!
危険車両が再びUターンしてくるスキに、横切って逃げよう……そして念の為に、一体どんな奴が運転してるのか一目見ておこう。
通り過ぎる瞬間、横目で目視。
すると、不可思議!!……なんと、車の中は無人である。
最新科学の自動運転?それとも幽霊的な何かなのか?……いや、コイツはもしかして……
ゴーレムやスライムなんかとおなじ類?
市販品のテディベアも怪物化していたので、この危険車両も赤い玉を持つ怪物だという線が浮かび上がる。
だとすれば、逃げるのではなく、どうにか倒して、不思議な玉を手に入れたい。
なんせ、あの玉は何個あっても困らない!
引き返して、武器のバールを握ってみるが……こんなんで倒せるか?
これまでのように、消化器やバーナを使ったとしても、然程意味はなさそうだし……
ペットボトル手榴弾で吹き飛ばすか?
いや、ここでそれを使ったら、辺りの通行人も巻き込んでしまう。
操水術を使うしかなさそうだが……あるのは飲み水程度の水量……
海まで上手く誘導するしかない。
都合よく相手は俺を追っかけてきてくれたのたが……余りにもスピードが速く、後方から衝突されそうなので、小回りの良さを活かし、小道を小刻みに曲がる。
しかし、その作戦が裏目に出て、誘導するつもりが行き止まりに捕まり追い込まれてしまう。
ヤバい……これは轢き殺される……
そんな窮地に立たされたが、俺は今、こうして、この日記を綴っているわけだ。
なぜならば、この危険極まりない状況を打破し、前方に立ち塞がる危険車両をこの手で撃破したからだ!
方法はいたってシンプル。
相手は余程、俺を逃したくないのか、しばし牽制が続く。
こちらにとっては、無闇に突っ込まれるより、考える時間が出来る分、好都合だ。
そして、最大の切り口は、奴の真下がマンホールだったということ。
その下にある下水を利用し、操水術で力一杯、マンホールの穴から水柱を吹き上がらせた。
すると、危険車両は突き上げる水流で上空に吹き飛ばされ落下。
運悪く逆さまになり地面に叩きつけられたのだ。
ひっくり返った車体は身動きが取れず、タイヤはただただ空回りするばかり。
身動きが一才とれない車両に近づき、バールでガソリンタンクの蓋を無理やりこじ開けると、タンクの奥が何やら赤く光って見える。
口が小さく、手を突っ込もうとも突っ込めないので、ペットボトルの水を少量流し入れ、操水術を駆使して中の玉を、タンクの給油口まで運び出したのだ。
これまでに対峙した怪物たちの傾向からなんとなく予想は着いていたが……完全なる無機物であっても、この赤い玉があれば命を吹き込むことが出来るらしい。
俺はここまで旅を共にしてきた愛車のハーレーダビッドソンのガソリンタンクにその赤い玉を使った。
「おーい!ダビッドソーン!!」の一声で愛犬のように、どこからでも擦り寄ってくる。
パァンパァンッとホーンの音で返事をしたり、ウィンカーで目配せしてきたり……
可愛い奴だ!!
進路は再び大阪!
やはり操水術は疲労がハンパない……
俺は少し寝るから、ダビッドソン!舵は任せたぞ!