※この作品はR-18です。

時間停止日記   作:猿飛 助平

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8日目-怒-

8日目

 

昨日の日記の後、アドレナリン全開で寝ずに工作に没頭していた。

 

そして、早速、徹夜で工作した秘密兵器のテストを行う為、TSUBAKIと山梨県を目指す。

 

人気のない、だだっ広い場所が良かっただけなので、別に山梨まで行く必要もなかったが……父と昔、登山した南アルプス。

 

その中腹あたりに、確かだだっ広い高原がある……

 

俺がテストしたいのは、自家製のペットボトル手榴弾の動作確認だ!

 

記憶通り、ここなら大丈夫そう!

 

空のペットボトルに■■■と■■■を入れ、飲み口のフタを少し加工し、このハリガネを引き抜くと、数秒で爆発するはずである。

 

テストの結果、手榴弾は問題なく動作した。

 

そして想像以上の火力!!

 

コイツがあれば、あの頑丈そうなゴーレムも粉砕できるはずだ!!

 

動作テストを一通り終わらすと、そそくさと下山し、さらに西を目指す。

 

俺があのゴーレムを見たのは関西だった。

 

既に移動している可能性もあるが……あれほどの巨体だと移動の痕跡も残るはず。

 

特に他に手掛かりや宛てもない為、少々遠出になるが仕方ない!

 

……っと、その前に腹ごしらえ!

 

これからの戦いに、精力を付けるため、静岡でうな重を食す!!

 

タダで食う、うなぎに舌つづみを打っていると、遠くのほうで何やら音が鳴った気がする。

 

時間が止まった世界は基本的には無音の為、少々の音でも過敏に拾ってしまう。

 

もしかしてゴーレムだろうか?

 

残りのうな重を急いで掻き込み外に出て、辺りを巡回する。

 

何やら動く影を発見し、バイクを降り、慎重に近付く。

 

その時、誰かに後ろから激しく殴られた……

 

久しぶりに感じる痛み。

 

振り返ってみるが、当然TSUBAKIしかいない……

 

一瞬、TSUBAKIが暴走したのかとも思ったが、そうではない。

 

TSUBAKIと周囲を探索し姿を現せたのは、世にも奇妙な、ちょこまかと動き回る、可愛らしいテディベア……

 

しかも、手にはフライパンを持っている。

 

犯人はコイツだ!

 

あのフライパンで殴られたに違いない。

 

愛くるしい見た目なんかには騙されない!

 

恐らくアイツの中にも不思議な玉があるに違いない!!

 

戦闘不慣れな俺にとっては丁度いい相手だった。

 

俺は、テディベアに一直線に駆け寄り、持っていたバールを力一杯振り抜いた。

 

「決まった!これは会心の一撃!」

 

そう心の中で叫んだが、思いの外テディベアのボディーは弾力が強く、おもいっきり跳ね返された!

 

秘密兵器のペットボトル手榴弾を使おうかとも思ったが、数もそんなに多くない為もったいない……

 

今思うと、俺はヤツのことを、そんな風に甘く見ていたのかもしれない。

 

何か他に対抗できる武器はないか?

 

そんなことを考えている間にも、クマはちょこまかと動き、距離を詰めてくる。

 

そしてクマがフライパンを振りかぶる。

 

「避けられない!!」

 

その時、身をていして俺を守ってくれたのはTSUBAKIだった。

 

フライパンがTSUBAKIの肩に叩きつけられ、ゴンッと鈍い音を立てる。

 

TSUBAKIはその場に横たわり、心なしか悲痛の表情を見せる。

 

大好きな自分の推しアイドルを傷つけられた怒りで我を忘れた俺は、そのフライパンを蹴散らし、クマを地面に叩きつけ、マウントを取り動きを封じる。

 

たかだか、ぬいぐるみ……

 

何を今まで俺はびびっていたのか

 

最初から力でねじ伏せれば良かった。

 

ここから、どうしてやろうか……

 

ナイフでズタズタに引き裂く?

 

それとも腕力でブチブチと引きちぎる?

 

否!

 

俺はカバンから野営用に持って来ていた

ガスバーナーを取り出す。

 

じりじりと燃え、瞬く間に炎をあげる。

 

俺は、横たわるTSUBAKIの肩を抱きながら地面に座り、揺らめくその火が消えるまで、じっと眺め、考えていた。

 

推しのアイドルの身体が傷つけられるのが許せくて、俺は奮い立ち、拳を握ったのか?

 

いや……

 

本当は彼女に、守られてしまった自分が情けなくて……

 

こんな惨めな気持ちに、仕向けた彼女に苛立ち、テディベアに八つ当たりしただけなのかもしれない。

 

炎が消え、燃えカスの中にあった、お目当ての玉を拾い上げると、俺もフラフラだった。

 

気付けば37時間ほどぶっ通しで起きている。

 

幸いにもTSUBAKIの身体には、特にキズが残ることもなく、彼女はピンピンしている様子だ。

 

グッと睡魔を押し殺し、少しバイクを走らせると、海岸線が見えた。

 

温泉リゾートとして有名な熱海に辿り着く。

 

卑屈になるのも、疲れのせいかもしれない。

 

この一週間、なんやかんや動きっぱなしだったからな……

 

一旦寝て、目覚めたら、温泉にでも浸かってのんびりしよう。

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